原案=
ズワイガニ
編著=Дальний Восток(杏珠)
作=Ageha
電脳鯖民所記
「汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる」
誰かの歌がホールに響く。もうそこには居ない何かの声である。
桜音は持っていた消火器を力無く地面に落とした。その場にはめろん、ころじゃん、佐藤、
メスガキ、X JAPAN以外の全員が集合していた。しかしそれに見合うほどの音はない。
はじめに桜音に近寄ったのは雨遊である。
「これに関しては日産が完全に悪いから私は桜音側に着く」
何者かの声が聞こえた気がした。声の正体は分からない。しかし、彼女にはそれが確かに聞こえた気がしたのである。
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一方でぬーんらは一連の光景にショックを受けつつも、人狼が21であること、つまりジョイマンが生きていることに確証を持っていた。
行きから気になっていた不自然にドアが取り外された013号室。ぬーんはそれが一段と不気味かつ不可思議に見えた。そして彼は静かに耳打ちした。
「これ21が人狼ってことはジョイマンも人狼ってことだよね」
「え」
「だってそうじゃない?」
「ジョイマンはもう最初の方で死んだからこれでゲーム終わりじゃないの?」
「いや、現に今終わってないし」
「そんなことある?」
「俺はあると思う」
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「この騎士の力があれば守れたのかな」
「あれは仕方ないっしょ」
チルノら001号室の面々である。
「そういえば杏珠さんが言ってたこと本当だったね」
「21?が人狼ならその相部屋の人も人狼か」
「ジョイマンじゃなかった」
「ジョイマンか」
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「ズワイガニなんかあったの」
「なんかスーパーダンシングゴリラバトルが起きてた(?)」
「あーね」
もうアカツキに関しては理解を諦めていた。そしてガオーさんは未だに昼ごはんを食べ続けていた。無駄に食べるのが遅い。
「ガオーさん食べすぎじゃね」
「歳やからな」
「えぇ…」
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「…」
「思ったより倒せんかった」
ジョイマンは下での会話を聞きながら上の通路に身を隠していた。
「21…」
狂人が寝返ったこの空間の彼にとっての唯一の味方である。そんな21は自分自身の目の前で儚く散っていった。
しかし、仲間割れによって村人側の人間が1人減ったのはジョイマンにとってかなり大きかった。
「ここからどうするべきなんやろ…」
現在生存しているのは蕣陣営、佐藤陣営、アカツキ陣営、聖陣営の約4陣営15人と突如として003号室に現れためろんところじゃんの2人。そして人狼であるジョイマン1人。合計17人である。
このうち蕣、ぬーん、珠妃は蕣陣営。佐藤、メスガキ、X JAPANは佐藤陣営。アカツキ、ズワイガニ、ガオーさんはアカツキ陣営。聖、桜音、雨遊、チルノ、紫猫、もかは聖陣営に属している。
ジョイマンが目をつけたのは比較的数の少ない蕣陣営、佐藤陣営、そして003号室である。アカツキ陣営に関しては把握すらしていないらしい。
珍しくジョイマンは頭が回った。
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003号室。狂人のカードを持つめろんところじゃん。めろんは外に広がる田園風景に夢中である。
「これ狂人ってどういうことなんやろ」
話を振る。
「さっきズワイガニが説明してたけどなんかよくわかんなかったね」
彼らは辛うじてここが人狼ゲームで106鯖民と掲示板民が集められているということは把握しているらしい。
その時、003号室の天井のタイルが一枚開き、1人の男が降りてきた。ジョイマンである。
「誰…?」
「驚かせてすまんな、ジョイマンや」
「えジョイマン!?」
「誰だ」
「千葉県団の人」
「ああ(よく分かっていない)」
そこに現れたのは紛れもなくジョイマンであった。
「お前ら、"狂人"やんな?」
003号室の2人の顔が少し変わる。
「そうだけど」
「俺は先言っとくけど人狼」
「あーね」
「だからお前らに手伝ってほしい」
「多分俺ら人狼側が勝たんと勝利ならんのよな」
「そう」
「俺は協力する」
「ちょっと自分は考えさせてほしい」
「とりあえず決まったら013号室まで来て欲しい」
「わかった」
こうしてジョイマンはドアから出ていった。今更にはなるが、ダクトは一方通行である。
少しずつホールに居る人々が眼前で起きた光景を克服し始めていた頃である。
めろんは未だ外の田園風景を見続けている。作者的にこの田園風景などというのは奈良県広陵町や山形県鮎川村などをイメージしてくれれば分かりやすいと思う。
「俺013号室行ってくるわ」
「わかった」
こうしてころじゃんも同じく部屋を出る。003号室にはめろんただ1人が残された。何か部屋の外の景色に魅力を感じているのか、はたまた何かこの空間がそう言った効果を発しているのか、やはり外の景色ばかり見ている。
そして、一言つぶやいた。
「ここから外に出られないかな」
最終更新:2025年08月09日 23:24