原案=
ズワイガニ
編著=Дальний Восток(杏珠)
作=Agehaかもしれない人
電脳鯖民所記
「みみくちおうさんこんにちは」
001号室。見慣れない人影が1つ。どうやら同部屋の人間と情報共有をしに来たらしい。前回の不穏な終わり方と、黒カード持ちでない2人の孤立。この時点でなんとなく先の展開は見透かせるだろう。
"蛇足"にはなるが、私は深く語らない展開が好きである。
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「結局侵入者って誰なんだろう」
「全然人前に現れないよね」
001号室。
チルノ、紫猫らの横では桜音が雨遊から慰められている。
聖なんかは外に広がる景色を見ていたが、どこぞの少年のようにそこへ出たいと言う衝動は湧かなかった。夢見心地。どこか現実でない、夢のような感覚でありました。
聖の手にはいつか杏珠が渡したであろうメモ書きが握られていた。
「汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる」
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「唐突に昆布が消えた理由はなんなんだ」
「それが1番謎よなw」
「急に消えるってありえる?」
010号室。ある時突然010号室にいた昆布が消えた。珠妃の相部屋であるマニもそうである。また他の毒きのこ、れぃらも同様に消えたとされている。彼ら彼女らに一切の共通点はない。
「杏珠もいないし…」
「ズワイガニはどこ行ったの」
彼女らは不憫なことに未だ途中で消息を絶った杏珠、ズワイガニらの行方も掴めていない。
「やっぱり013号室に何かがある…?」
ぬーんが紙を見ながらそう呟く。そして、自然に横の014号室にも目をズラす。
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013号室。1人逃したものの、それを除けば上手くいったと言える。
ホール上の通路での会話。
「想像以上に上手くいったわ」
ホールにはもう誰もいない。あの惨劇が全く何もなかったかのように、ただ静かである。
「やっぱり能動的に動く人間はできるだけ排除したいな」
「能動的ってなんや」
「自分から動くような人間のこと」
「この中だと取り逃がした佐藤とかズワイガニか」
「ズワイガニいんの」
「居るけどずっと下の方に芋ってて出てこない」
「別に下の方に奇襲仕掛けて殺せば良いんじゃないのか」
「俺らは1階入られへんねん」
「クソ仕様すぎるだろ」
少しの間が空く。
「…侵入者も1階に居るっぽいな」
そう言うとジョイマンは013号室に繋がる通路を歩いて行った。
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ジョイマンは今まで禁ずるべきものとしていたレバーの前に立つ。そして、目を瞑り少し汗をかきながら、勢いよくレバーを倒した。
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「杏珠をいつでも呼べるってことなの」
「杏珠は知らないけどジェイさんならいつでも呼べる」
「それも結構チートでしょ」
「元狂人の特権な」
チーター陣営改めアカツキ陣営。現状最も力を持っている勢力とも言える。
「てかガオーさん居るのにカードの効力のせいでほぼ行動できないのおかしいでしょ」
「ここしか安全な場所ないの」
「いや、和紙はここも安全じゃないと思う」
「ここも安全じゃないの」
「多分ジョイマンは和紙らの場所普通に気付いてる」
「襲われたら詰むくねそれ」
「詰む」
「え?」
「詰むから布団叩きで光速で布団を叩いて時空を歪ませるんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
「普通に真剣にやばくないそれ」
「でも和紙らに今更帰る場所があると思ってるのか」
「…それはそうかも」
「しかも部屋に戻ったとしても精々安心なのは010号室ぐらいだし」
「え、なんで」
「010号室は天井から人狼が部屋に侵入するためのダクトがどっかのトリックオアトリート史上最悪の狂犬ジェイヌに塞がれてるから」
「はぁ」
「結局ここにはどこにも安全な場所はないってことだ!閉廷!令和の前の元号は平成!」
ズワイガニはうわべ能天気を演じながらも内心少しばかりの焦りを感じていた。頼りの綱であるガオーさんの力は例のカードによってほぼ封じられてしまっている。そして自身はなにより蕣らにバレると非常にまずい。唯一頼れる?かと思われるのはアカツキのドアシールドのみである。
「結局ガオーさんに使ったガード一回分も役に立つのかな」
「カードの無駄遣いか」
アカツキが愚痴を垂らすように言う。
「カード?」
「…カードか」
「おもいついた」
「え、なに」
「それはこれからのお楽しみよ」
"全てを照らして 色を増すように"
「やっぱりか」
「さすがに人狼側も俺が黒カード持ってるのは把握してそうな感じあったよな」
1人になった005号室で静かに2人の体に触れる。その体はかつて昆布がした時のようにほこりのように散ってゆき、跡形も残らなかった。やはりこの空間では体が粒子状になって消えるのが定型らしい。
「この仕様も前来た時と変わらない感じか」
いつかの重圧、記憶、衝撃、そして目の前で起きた信じがたいことにメンタルが押し潰されそうであった4人とは違い、彼は冷静だった。
かつてどこかでその景色を見たかのように。
最終更新:2025年08月11日 23:28