原案=ズワイガニ
編著=Дальний Восток(杏珠)
作=Ageha

電脳鯖民所記


外は豪雨である。豪雨の中、またしてもとある部屋から声が聞こえる。
「え、嘘やん」
「これ次消えるの俺か」
010号室である。
外は豪雨。中庭の底には簡単に水が張っている。中庭に詰められている芝生には侵入した何者かの足跡がいくつか残っている。
一方で003号室なんかの外は晴れて輝かしい。
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「え?」
ズワイガニが2枚の白いカードを取り出す。
「どこで手に入れたのそんなの」
「スーパーダンシングゴリラバトルの優勝賞品だよ」
「…」
そして2枚のカードが合わさる。次に生み出されたカードは緑色をしていた。
「え?緑?」
「あぁ、なんかそんなのあったな」
アカツキ、ガオーさん共に反応する。
「これ使うと天気を操れる」
「それだけ?」
「それだけ」
「え何に使えんの」
「和紙の予測が当たればここから使える」
意味深な発言。現状これと言って使い道はない。
「てかそれ黒カード1枚作れなくなるんじゃないの」
「それに関しては問題ない」
ズワイガニが勢い良く緑のカードを振る。すると内手の小槌のように2枚のカードが落ちてきた。
「実はこの白いカードって色々使い道があるんだよね」
「1回黒いカードにすると白いカードは効力を失って消えるけど、黒にさえしなければ何回でも使える」
「なにそれ俺知らないんだけど」
「電子生命体として電子空間彷徨ってた時和紙と杏珠ずっと色々調べたりしてたでしょ」
「確かにしてたけど」
「あとはこんなこともできるよ」
言い終わると同時にズワイガニは白いカードをアカツキが持つ013号室のドアに思いっきり投げつけた。
「え?めっちゃ軽くなった」
「多分この辺の仕様はジョイマンも知らん」
ズワイガニはガオーさんの方へ向かう。そして少しばかり作戦会議をするように話す。
アカツキはその声の殆どを聞き取ることができなかったが、ただ1文のみはっきりと聞こえた。

「ジョイマンたちがここに来るのも時間の問題か」
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「どうやったら地下いけんのこれ」
「俺もよく分からんけど中庭から入るしかないと思うわ」
「他に入り口がない」
「1回ここ下の奴らは後回しにした方が良くないか」
「それもそうやな」
人狼陣営。彼らもなかなか苦戦を強いられている。本来狂人は2人存在しなければならない。しかし、片方は職務を放棄し、かつて狂人であった2人のうち1人は独自の方法で空間から脱出。その片割れは地下で籠城しているのである。
ジョイマンの苛立ちも徐々に溜まっていく。もはやナナホシ探偵団の冷静なキャラを演じるほどの余裕すらない。
「001号室に6人集まってるからここ潰したいな」
「それは俺も思ってるんやけど、やっぱり人が多いから襲うリスクが結構高いんよな」
「たしかに」
「佐藤とかは1人やけど黒カード持ってるし」
「じゃあ010号室は?」
「あそこは天井裏のダクト塞がれてるから入れない」
「せっかく2人だけになって都合良かったのに」
「文句なら極東に言ってくれ」
「多分極東に塞がれてるからなあれ」
少し考え込む2人。そこでジョイマンが一言。
「…そろそろ使うべきか」
「なんか使えるの」
「1回だけ1分間透明になることができるんや」
「だからそれで殺せる奴を全員殺した方がいいかもしれない」
「そんなことできるならはよ言っとけよ」
「ごめんて」
「それ使えよ」
「さっさと終わらせてくるわ」
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001号室。雰囲気は重い。未だあの事を引きずっている。
聖は未だ窓の側にいる。そこにチルノが近付く。
「ひじり何してるの」
「別に何も」
「杏珠さんのめも?」
「そう」
2人と桜音、雨遊、紫猫、もかの距離感が明確に広がる。
天井裏のタイルが開く。
「!」
チルノが咄嗟に音に気がつく。しかし天井から降りてくる影はない。
「え」
その声が聞こえた途端、ベッドだとかソファだとかに座る人々は唐突に意識を失ったかのように力をなく倒れて行った。
少しの風を感じる。チルノのカードが光る。その瞬間、聖とチルノを包む蒼いバリアのようなものが展開される。
「なにこれ」
聖がそのバリアに見惚れている間に、その透明なる"見えない影"は玄関のドアを華麗に開けて消えて行った。
影が消えてドアが閉まった瞬間にバリアは消えた。チルノのカードの文字は"騎士"から"村人"に変わっていた。
部屋で起きた第2の惨状。
その場に力無く崩れ落ちた。
「嘘でしょ」
倒れた体の数々に静かに近付く。それに触れるとやはり粒子となって消えて行った。
はじめは20何人もいたこの空間の人々も、今や10人程度である。地面に落ちた4枚の証明カード。それはかつて彼らがここに存在したただ1つの証拠である。001号室に残された誰かが心の中で念じる。

「絶対に勝つ。」

チルノ、ころじゃん、佐藤、聖、蕣、ぬーん、ズワイガニ、アカツキ、ジョイマン、ガオーさん。

物語もいよいよクライマックスである。

  • 時刻は16時を回る…。-
最終更新:2025年08月12日 22:57