京子はいつもずるい。
私が言いたいことを簡単に言ってしまう。
「ずっと一緒にいられるね」
私もそう言いたかった。
「私のこと好き?」
京子は冗談で言っているのだろうけど、
私は心の奥から言いたかった。
京子にはかなわない。
ちょっと悔しい…
だから、私はこの我慢できない想いと共に、
態度で示してみようと思う。
「結衣、どうしたの?」
私の好きな笑顔で呼びかけに応じてくれる。
私は平静さを装いつつ京子に近づく。
鼓動が大きくなる。イケナイことをするって分かっているから。
でも、もうとめられない。
京子、今日こそ私の想いを知って。
京子の肩に手をかけるとそのままくちび
「がさっ!」
「…ちなつちゃん?」
京子が驚いた顔でちなつちゃんのことをみる。
ちなつちゃんは京子特製紙芝居ばーじょん2とやらに見事に手刀を決めていた。
私はまたもやさぶいぼを大量発生させて固まっている。
あかりはおろおろと京子とちなつちゃんをみている。
「はっ! 私、またもや」
ちなつちゃんは手刀を決めたままで慌てだした。
「そもそも…なんなのこれ?」
ぎこちない口調で私は尋ねてみた。
「積極的な結衣を想像して描いてみた」
「勝手に妄想するな」
「え~、だって、結衣が攻めとか、普段じゃありえないもん」
「うるさい…」
なんて勝手な妄想なんだ…あっ。
私はいいことを思いついた。
「そんなに積極的な私が見たい?」
「うん、見たい」
「そう、わかった」
私はまだ手刀を決めているポーズのちなつちゃんに近づき、おでこに唇を押し当てた。
唇からちなつちゃんの体温が上がってくるのを感じる。
「な、な…」
京子のわななきが聞こえてくるまで3秒、私は唇を離した。
「どう? 積極的でしょ?」
私はしてやったりって顔で京子を見る。
「うるさいっ!」
京子は本当にくやしそうだったけど、すぐに立ち直ると、
「私にもヤらせろ!」
ちなつちゃんに飛び掛っていた。
いや、その字はないだろう、京子。
ちなつちゃんは京子の攻撃から逃げるため、私の後ろに隠れる。
京子はちなつちゃんを奪い取るために私に襲いかかろうとする。
私はその隙をついて、京子のおでこにもキスをしてあげた。
「え…?」
京子の動きは止まり、驚きの瞳が私をとらえる。
京子のおでこから流れてくる体温もすぐにあがってくるのがわかる。
そして、3秒おいて唇を離し、京子の顔を見る。
「これで我慢して」
「え、うん…」
京子は意外にもすぐにおとなしくなってその場に座る。
私は大騒動にならずに済んで安堵のため息をつく。
なんだかんだで今日も極楽部…もとい、娯楽部は平和だった。
「あかりだけ、なんで…」
そんな呟きが聞こえてきた気がするけど、気のせいにしておこうと思う。
最終更新:2010年03月31日 22:21