雲ひとつない澄み渡った空
以前はこれくらい晴れていれば、彼の故郷のある島が見えていたのだが
今やその島は、別の島と入れ替わり、彼の故郷など、もうこの世界の何処にも存在してはいない
眼の前に広がる景色は彼の知らない海、彼の知らない島である
「…先輩。いい加減出てきたらどうですかね」
「気配、殺してたつもりだったんだけどな」
背後で苦笑を浮かべている男は元
十六聖天十六位の男、
田中茂
そして、眼下に海を見据える男は十六聖天二位、
佐藤次郎
「変わっちまった、な…」
「…この海はなんて言うんでしょうね」
本州最西端である兵庫県。本来あったはずの中国地方は宙を舞い
四国は自分が原因とも言える戦いで、焼失。そしてオーストラリアが新しい四国となった
ならばこの、最西端から見える海は何なのだろう。瀬戸内海なのだろうか。日本海なのだろうか
気づけば次郎は自嘲気味に呟いていた。自分がきっかけになったという責任を感じているのだろうか
「海は海さ。この広ェ海、全部繋がってんだぜ。お前が故郷で見てた海も、この海さ」
自分も器用な方じゃないとはいえ、下手な慰め方だな、と次郎は思う
だが、それでも、この不器用な先輩を次郎は決して嫌ってはいなかった
全てのきっかけとなった男だとしても
「っと、もうこんな時間か。仕事だから俺は行くぜ。乗ってくか?」
そういいながら、ボロボロの
カローラを茂は指さす
「…いえ、もう少しここで風に当たってますよ」
「そーかい」
そう笑いながら茂は腕をヒラヒラと振りながらカローラと共に去って行った
「ありがとよ、先輩」
(アンタと知り合って、このワケわかんねぇ組織に入ってから色々あったな…)
次郎の脳裏に戦いの記憶が蘇る…
最終更新:2008年10月11日 04:39