資料2

ペリ 《Peri》  出身地:イラン
 ペルシアに伝わる、勇者に知恵を授けるという高原の精霊。白い翼を持ち、羽衣をまとっている。名は「仙人」「仙女」などと訳される。白檀などの香を食べ、流す血は固まると宝石になり、水に浸けるとルビーになると言われた。

     シウテクトリ 《Xiuhtechhtli》  出身地:メキシコ
 中南米はアステカの炎の神。東方を守護し、また死者の霊が大地に溶け込むのを助ける。噴き上げる巨大な紅蓮の火柱の姿をとって現れるとされる。
 このシウテクトリの祭儀は残酷で、生きた人間を燃え盛る石炭の中にほうり込むという。

     ロイチェクタ 《Loycheckta》  出身地:スイス
 謝肉祭の木曜日に現れ、悪霊を追い払ってくれるという、醜い姿をした妖怪。山羊の毛皮をまとい杖を手にしたいでたちで、うなりながら現れるとされ、その恐ろしく醜い姿とは裏腹に、悪霊を払い、どんな病気も治してくれるという。

     キンナラ 《Kimnara》  出身地:インド
 インド神話の半馬人。馬の頭を持つ人間、もしくは人間の頭を持つ馬の姿をしている。カイラス山にあるクベーラの神殿の住む。美妙な音声で歌舞する天の楽神。
 仏教においては、緊那羅(きんなら)と漢音写し、北方守護神眷族天竜八部衆のひとりである。

     ロルウォイ 《Rolwoy》  出身地:オーストラリア
 神と妖怪の中間的な存在と言われる、アボリジニに伝わる精霊。胸と背にヤムイモを、両腕に4枚ずつのヤムイモの葉をつけ、黒い肌の前垂れをつけた若者の姿で表される。
 ジャングルを歩き回っていたヤムイモに、「おまえはイモなのだから、土の中でじっとしていろ」とロルウォイがいうと、ヤムイモはこれに従った。以降、ジャングルでヤムイモが取れるようになったのは、ロルウォイのおかげであるという。

     天狗 《Tengu》  出身地:日本
 日本古来の山の精霊。素戔嗚尊の体内から吐き出された猛気から生まれた天狗神(あまのざこがみ)が起源であるとされ、現世への執着を捨てきれずに死んでいった修行僧が天狗界という魔道に落ちた後、転生したものが天狗であるとみられている。
 その天狗の中にも善玉と悪玉がおり、善玉は影ながら修行僧の手助けをするが、悪玉は修行の邪魔をし、僧を自分と同じく天狗界に落とそうとする。人々を惑わす幻術や優れた飛行能力、念力や予知能力などの神通力を持ち、人に憑いて意のままに操る力があるとされる。一般的な民間伝承では、人をさらい(神隠し)、大木を倒し(天狗倒し)、どこからか投石し(天狗飛礫)、隠れて哄笑する(天狗笑い)という。
 種類はいくつかあるが、有名なのは鞍馬の山で牛若丸に武術と兵法を教えた鞍馬天狗、赤ら顔で異様に高い鼻を持ち天狗の中で最も強い神通力を持つ大天狗(高鼻天狗)、鷹か鳶のような顔をしたような烏天狗(小天狗)などがある。大天狗は山伏の衣装をまとい、片歯の高下駄を履き、11(または9)枚の羽団扇で大風を起こしたり、空中を自由に飛び回る。烏天狗の顔はインド神話の怪鳥ガルーダのイメージが取り入れられたと考えられる。
 中国では流星の尾を天の狗(いぬ)にたとえた。この名が同じ隠現自在の山の神にあてられ、現在の天狗のイメージが成立したとされる。

     シワンナ 《Sywanna》  出身地:北アメリカ
 ネイティブアメリカンのプエブロ族の間に伝えられる精霊。名は「雲の人」の意。
 「雲」は精霊と死者を表すと考えられ、シワンナも死者に関係する精霊と考えられた。池や泉の下にある山の中、または海辺の町の中などに住むとされている。

     キューピッド 《Cupid》 出身地:ローマ
 ギリシア神話の恋愛に関する媒介神。弓矢を持ち羽の生えた少年の姿が一般的。愛と美の女神アフロディーテの息子エロスが天使に重ねられた姿とされる。

     ハオカー 《Haoca》  出身地:アメリカ
 ネイティブアメリカンのダコタ・スー族の雷神で、「楽しい時には泣き、悲しい時には笑った。暑さにふるえ、寒さには汗をかいた」といわれる。
 日本の雷神と同じく、雷はハオカーの打つ太鼓の音であり、風は太鼓を打つバチだと考えられた。頭に角を頂いた狩猟神でもある。

     オンコット 《Onchott》  出身地:インド
 インド神話の猿軍の将軍のひとり。ハヌマーンの部下。

     ロア  《Lore》  出身地:ハイチ
 ブードゥー教の蛇霊。別名をズンビーといい、このロアを屍体に憑衣させたものがゾンビだという説もある。
 天神ダンバラ、死神レグバなどに代表される。

     メルクリウス 《Mercurius》  出身地:ローマ
 英名「マーキュリー《Mercury》」。ローマの商人を守る神。ギリシアのヘルメスと同一視される。魔術、文学、医学の神であり、神々の使者を務める。「プシュコポンポス=魂を導く者」と呼ばれ、死者の霊魂を冥界に送り届けるとされる。幸運の神でもあったため、商人や盗賊からも信仰を集めた。
 錬金術では水銀を表し、さまざまな金属がメルクリウスの中に溶けるため、重要な触媒とされた。

     コロンゾン 《Colomson》  出身地:イギリス
 叡知への扉を守っている魔物。20世紀最悪ともうたわれた魔術師アレイスター・クロウリーに呼び出されたことがある。コロンゾンから知識を得ようとしたが失敗した。

     マルト 《Marut》  出身地:インド
 『ヴェーダ』に表れる風神、降雨神。21または180の群神とされる。
 獰猛な神ルドラの息子でインドラの侍従。金甲をつけ鉄脚絆をはき、投槍のような雷電をもち、金の車で天地を震撼させる。彼らは恐ろしい戦士である反面、陽気な若者でもあった。また、清潔を好み、互いに体をこすりあうともいわれる。
 武勇と治病の神ともされる。

     磯羅 《Isora》  出身地:日本
 古代日本に漂流して来た南方系の海洋豪族・安曇族の水神。水を操る力を持つ。正確には安曇磯羅神(あづみいそらのかみ)。

     アプサラス 《Apsaras》  出身地:インド
 インド神話の水の精霊。どんな姿にも変身できる能力を持っているが、一般的には官能的な女性の姿をしていることが多い。
 アプサラスはガンダルバの妻であり、ガンダルバたちと共に楽器を演奏したり、舞を踊ったりして神々を接待するのが主な仕事である。他に、その容姿を利用して神々の敵となりそうな者を誘惑し、苦行をやめさせる、といったことも行っている。

     シャイターン 《Shaytan》  出身地:アラビア
 イフリートの曾孫とされる悪霊。サタンを起源にもつ邪悪な存在だが、アラーの名にかけて誓ったことは必ず守る。
 シャイターンの名はサタンの名に由来するとも言われる。

     ヴォジャノーイ 《Vojhanoy》  出身地:スラヴ地方
 人間を捕らえて食料か奴隷にすると言われる水の妖魔で、同じ水妖のルサールカを妻に持つとされる。人間よりも一回り大きく、魚人や蛙人間のような姿をしている。また、変身能力を持っており、人間に姿を変えることもあるという。

     アガシオン 《Agathion》  出身地:不明
 実体の無い精霊の使い魔。普段は壷や指輪などに封印され、必要に応じて呼び出される。アラビアに例が多い。
 アガシオンという言葉自体が、使い魔の総称として用いられることもある。



  4)妖精
 たいへん陽気な悪魔たち。正義だとか悪だとかいうものには興味がなく、気に入った者のみ関わりあい、自分たちの好き勝手に生きることを身上としている。その姿は美しい者が多く、特に女性形の者は、独特の魅力で出会った人々を惑わせる。


     オベロン 《Oberon》  出身地:ヨーロッパ
 妖精王。フランス、ドイツの伝説の小人アルベロン、アルベリヒの変形したもの。
 フランス13世紀初頭の武勲詩『ユオン・ド・ボルドー』に登場、ユオンの美女エスクラルモンドを助けて活躍。また、ドイツの叙事詩『ニーベルンゲンの指輪』にも登場し、ジークフリートとの戦いに敗れ、隠れ蓑を奪われた上、宝の番人をさせられた。後に、チョーサー、スペンサー、ウィーラント(ウェーバーがオペラ化)の作品、シェイクスピアの戯曲『真夏の夜の夢』にも登場する。
 妖精は人間に恋心を抱くことがあるが、オベロンも例外ではなく、『真夏の夜の夢』の中では、お互いのお気に入りの人間の事をめぐって妻のティターニアといさかいを起こしている。
 生まれた時に呪いをかけられたために体が小さく、3才の子供ぐらいの大きさをしている。様々な役目をもっており、月の光と夢を司ること、舞踏会用の靴や、舞踏会もろもろの儀式を取り仕切ること、優雅さの宝を預かる長、空気の精霊の守り神などである。
 まったくの余談ではあるが、天王星の第4衛星もオベロンという名前である。

     ティターニア 《Titania》  出身地:イギリス
 『真夏の夜の夢』に登場する妖精の女王で、オベロンの妻。「大地の娘」という意味で、ギリシア神話の狩猟の女神アルテミスと同一神格のローマ神話の女神ダイアナ(ディアナ)の通称からこの名前を受けている。
 一般的な妖精の女王というわけではなく、あくまで『真夏の夜の夢』における妖精の女王である。彼女は、気に入った男を見つけると、妖精の国に引きずり込み、飽きるまで愛をそそぎこむという。

     墨染 《Sumizome》  出身地:日本
 墨染桜。京都市伏見区墨染の伝説上の桜。上野岑雄が藤原基経の死を悲しんで、「深草の野べの桜し心あらば今年ばかりは墨染に咲け」と詠んだので墨染に咲くようになったという。

     ヴィヴィアン 《Vivian》  出身地:フランス
 蜃気楼の湖の中にある館に住む、「湖の貴夫人」ともいわれる、美しい女性の姿をした精霊。多くの騎士や召し使いとともに住んでいるという。
 『アーサー王伝説』に登場し、アーサー王に聖剣エクスカリバーを授けた。また、円卓の騎士の一人ランスロットの守護精霊であり、湖のそばにいた幼いランスロットを館へ連れていき、騎士として育てたという。

     スプリガン 《Sprigan》  出身地:アイルランド
 ケルトの妖精。巨大な醜い姿をもち、遺跡にある宝物などの番をする。また人間の子をさらい、かわりに醜い自分の子を残すことがある。

     ローレライ 《Lorelei》  出身地:ドイツ
 ライン川の巨岩の上に棲む妖女。その官能的な歌声は、聞くものを狂わせるという。
 もとはライン川中流右岸にそびえる岩山の名前。この付近の河床は狭く深く、水が渦巻き、舟行の難所だった。犠牲者の増加に伴い、この岩に妖精が立って船人を誘惑すると伝えられるようになった。
 その伝説は、ブレンターノやハイネなどの詩によって有名になった。ローレライに関する伝説の類いは数が多く、女神として、魔女として、そのほか悲恋の乙女と、バリエーションに富んだ内容となっている。


     仙狐 《Senko》  出身地:中国
 狐が修行をして仙位にまで上りつめたもの。人間に姿を変えることができ、全ての鳥の言葉を話すことができる。仙狐になるための修行をするには泰山娘娘という神の筆記試験をパスしなくてはならない。

     タム・リン 《Tam Linn》  出身地:イギリス
 妖精の女王に見初められ、むりやり妖精界に引き込まれた騎士。
 昼はカーターハウグの森の番人をし、夜は妖精の国に暮らしていたが、ジャネットという乙女の愛によって、ハロウィンの晩に人間界に連れ戻された。

     ナジャ 《Nadja》  出身地:フランス
 シュールレアリズム(超現実主義)を提唱したフランスの作家アンドレ・ブルトンの著作『ナジャ』に登場するエルフの少女。

     ドモヴォーイ 《Domovoi》  出身地:ロシア
 日本の座敷童子に近い民家に憑くと言われる精霊。毛の生えた人間の姿をしており、犬や猫などによく変身する。本当の姿を見てしまうと、不吉なことが起こるという。また、夜になると彼らの声が聞こえてくることがあるが、その声が悲しげであったりすすり泣きであった場合にも、近いうちに不幸が訪れるとされる。

     トロール 《Troll》  出身地:北欧
 北欧神話や民話に出てくる鼻の長い醜い巨人で、山、湖、川などに住み、雷の音を嫌う。小さな姿になることもできる。力は強いが知恵が足りない。財宝を盗み集める性癖があり、彼らの住居は金銀宝石で飾られていると言われる。
 後に凶暴なモンスターとして扱われるようになり、壁や天井を自在に這いまわり、馬や人間の子供を襲うようになる。
 小説やアニメのキャラクター、ムーミンもトロールの一種。こちらは元来の妖精としてのトロールのイメージが強い。

     バンシー 《Banshee》  出身地:アイルランド・スコットランド
 死の妖精。一般に天寿をまっとうせずに死んでしまった美しい乙女であるとされている。
 由緒正しい旧家や音楽の才能のある者の家につき、その家の者が死ぬ時に現れて泣き叫ぶ(キーニング)。特に徳が高い者が死ぬ時は、何人も現れて泣き叫ぶ。いつも泣いているために真っ赤な目をしており、青白い顔から長い髪をなびかせ、不吉な灰色のマントをまとっているという。
 本来バンシーとは単に「妖精の女」という意味である。すなわちケルトの大母ダヌーのことを指すとも言われている。

     仙狸 《Senri》  出身地:中国
 猫又がさらに長生きし、霊力を身につけたもの。

     ホブゴブリン 《Hobgoblin》  出身地:西欧
 もとは西洋の悪戯好きな妖精の総称であったのだが、ゴブリンが悪鬼の姿を取るようになるにつれ、ホブゴブリンもゴブリンの親玉として、醜く凶悪な小鬼というイメージが定着してしまった。

     エルフ 《Elf》  出身地:イギリス
 森を住み処とする妖精で、森の精霊として扱われることもある。男女共に透き通るような白い肌の繊細な体と、神々しいまでに整った容貌の持ち主である。月夜に音楽を奏でて踊るという。
 エルフの中でも特に暗い性質を持っている者たちのことを「ダークエルフ《Dark Elf》」という。光のエルフに対して一般的に醜く不格好で、よく人間に対して悪さをしたりする。このような悪意ある妖精たちは、たとえ親切にされてもしばしば手ひどい悪戯をもって応えることがある。スコットランドでは、灰やナナカマドの実で作った十字架や、堅いパンの皮を身につけていれば、彼らから身を守ることができると伝えられている。

     ケルピー 《Cerpy》  出身地:スコットランド
 スコットランドの水の妖精で、上半身が馬、下半身が魚という姿が一般的。人間を乗せたまま水中に飛び込み溺死させるという。

     ルサールカ 《Lusciarca》  出身地:スラブ
 水の妖精。美しい乙女の姿をしており、湖や泉に近寄る男たちを誘惑して水中に誘い込み溺死させる。水死した娘の魂が変化したものだという。

     シルキー 《Silky》  出身地:イギリス
 イギリスに伝わる女性の家霊。家の者が寝静まった後に現れ、家事をこなすという。絹の服をまとっているため、家事を行う際に衣ずれの音が聞こえてくるといわれている。
 また、シルキーの住む家に害を及ぼそうとして近づいてくる人を殺してしまうこともあるといわれている。

     ガンダルバ 《Gandharva》  出身地:インド
 インド神話に出てくる、空中や水中に住む精霊の集団。上半身は人間だが翼が生えており、下半身は鳥そのものの姿をしている。
 彼らは妻である水の精アプサラス(仏教では緊那羅)と共に神々の宴で音楽を奏でたり、死んで天界に昇ってきた英雄の魂を慰めることを仕事としている。また、ソーマの守護者でもあり、さらには人間に幸福を与えることもあるとされる。
 仏教においては、乾闥婆(けんだつば)と漢音写され、天竜八部衆のひとりに数えられる。

     ポリスーン 《Porisoun》  出身地:スラブ
 森の精。まわりの植物にあわせて背丈を変えることができ、森を迷路のようにして旅人を迷わせることもある。

     ドリアード 《Dryad》  出身地:ギリシア
 ギリシア神話の木の精霊。小柄で緑色の髪を持つ美しい女性の姿をしている。
 人間にはおおむね温厚で、自分からは危害を加えようとはしない。ただし、彼女たちの住む樹を切り倒そうとしたり、約束を破った場合にはかなり手ごわい相手になる。
 ドリアードは自分の樹から離れることはできないが、蜂を操ることができ、これを使って遠くにいる敵を攻撃することができる。

     ジャック・ランタン 《Jack o'lantern》  出身地:イギリス
 イギリス西南部の妖精の故郷、コーンウォール地方に現れる鬼火。彷徨える死者の魂と考えられていることから、日本でいう火の玉、人魂であると思われる。ウィル・オー・ウィスプと呼ばれることもある。
 余談だが、ハロウィーンなどで子供が作る、目、鼻、口をくりぬいたカボチャ提灯のこともジャックランタンという。

     ジャック・フロスト 《Jack o'frost》  出身地:イギリス
 冬だけに現れる霜の精。雪と氷でできていて、春には溶けて消えてしまう。元来は雪男のような化物で、笑いながら人間を凍らせるという恐ろしい妖精。

     ゴブリン 《Goblin》  出身地:イギリス
 元は民家などに住む悪戯好きの妖精であったが、現代では好戦的で醜く、背の低い残虐な鬼として描かれることが多い。

     ペナンガル 《Penangal》  出身地:マレーシア
 ジャングルの木のてっぺんに住む蜂の守護精。蜂の巣を監視し、蜂蜜を奪おうとするものを襲う。ペナンガルに捕まると命を奪われ、運よく逃げられたとしても、全身を蜂に刺されたような激痛に見舞われ、動けなくなってしまう。
 夜になると火の玉のように飛び回り、呼吸ができなくなるような悪臭をたてるという。

     キジムナー 《Kijimun》  出身地:琉球
 ガジュマルの木に住む、悪戯好きな木の精。年経た樹木がキジムナーを産むという。キジムン、ブナガヤとも。
 人目のない夜に歩き回り、古い樹木の前に砂で小山を作っておくと、その上に足跡が残っていることがある。魚やカニが好物だが、魚は片目を食べてしまうと飽きて残りは捨ててしまう。ただし、タコだけは大嫌いで、その姿を見ただけで逃げて行くという。

     ピクシー 《Pixy》  出身地:イギリス
 イギリス南西部に住む小妖精。花や木の精霊と考えられている。赤毛で緑の目を持ち、いつも緑色の服を着ている。一般には手のひらに乗るサイズだが、人間と同じ大きさになって現れることもあるという。
 ピクシーはずる賢く悪戯好きであり、特に旅人を道に迷わせたりするのが大好きとされる。同じ場所を延々歩かされるのは「ピクシーの惑わし《pixy-led》」と呼ばれる。このようなちょっとした悪戯をよくするが、根は善良で人助けをする妖精としても知られており、チーズやミルクを与えると、お礼に家事の手伝いをするともいわれている。



  5)夜魔
 実体は薄く、アンデッドに近い存在。その名のとおり主に夜に行動する。闇に対する恐怖の象徴でもあり、夜がこれほど似合う悪魔もいないだろう。妖精や精霊たちと同様に人間に悪戯をするが、悪質なものも多く、時には相手を死に至らしめてしまうこともある。


     リリス 《Lilis》  出身地:バビロニア
 グノーシス派におけるアダムの最初の妻。であったのだが、後にアダムにはねつけられて(一説にはリリスの方から男性優位の結婚を拒んでアダムのもとを去った)からは悪魔の妻、あるいはその母と呼ばれるようになる。後にアダムはイヴと結ばれ、人類の祖先を生み出すが、その前にリリスとの間にも子をもうけている。リリスはイヴに復讐するため、蛇を使ってイヴを誘惑し、禁断の林檎を食べさせるのである。ルシファーの実の娘という説もある。
 後期には、男を惑わし精気を抜き取る夢魔、あるいは男を喰う悪魔として描かれるようになった。

     ジャヒー 《Jahy》  出身地:ペルシア
 ゾロアスター教の最強の女魔。アンリ・マンユの愛人ともいわれ、世の中の売春婦の支配者。女性の月経を引き起こした張本人とされる。

     ニュクス 《Nyx》  出身地:ギリシア
 ギリシア神話のカオス(混沌)の娘。黒い衣をまとった夜の女神である。ギリシア語で「母なる夜」という意味があり、世界の始まりと終わりに存在する、混沌とした漆黒の闇が化身したものである。ドイツの水の精霊ニクシーたちの産みの親である。
 古いキリスト教では、彼女は死者を神格化する役割を持っており、そのためにキリストに反する存在とされた。キリストは人類を死と罪から救済する救世主であるので、死者を神格化することはキリスト教の教えにそぐわない行動なのである。

     トラソルテオトル 《Tlasorteotl》  出身地:メキシコ
 古代アステカの肉欲と淫行を司る堕落と性に関する不浄の女神。「トラエルクァニ(排泄物を食す者)」の別名を持つが、これは贖罪と浄化に関連する神であることを表したものだと言われている。テスカトリポカの媒介役。

     ヒュプノス 《Hupnos》  出身地:ギリシア
 ニュクスの若く美しい息子。名は「眠り」を意味する。決して光が差すことのない冥界で、息子である「夢」に囲まれて、柔らかい寝所で眠っている。
 ヒュノプスは人々に対して慈悲深い性格であり、疲れた者の額に魔法の杖で触れては眠りを授けるのだ。ヒュノプスのもつ眠りの力は神にもおよび、たとえゼウス神であってもその例外ではなかったとされる。ゼウスを眠りに陥れようとして逆に夜の鳥に変えられた。

     ヴァンパイア 《Vampire》  出身地:ルーマニア
 スラブの伝説を起源にして、西洋で広く信じられている吸血鬼のこと。アンデットモンスターの一種であり、人肉を食べる代わりに、人間の血を吸いそれを生命力に変える魔物である。吸血鬼の伝説は世界中に見られるが、特にスラブ諸民族の間ではこれに対する恐怖が著しく強い。
 吸血鬼の定義は諸説紛々だが、大ざっぱにいって、埋葬された人間が何らかの原因で蘇り、生者の血を吸うというものだ。ブラム・ストーカーの著作『ドラキュラ伯爵』のように特別な者もいるが、一般的なヴァンパイアはもっと汚らわしい姿であると想像される。曲がりくねった長い爪と、血に染まったように赤い皮膚をして、口からは鮮血をしたたらせている。昼には棺の中で眠っており、夜になると犠牲者の血を求めて歩き回る。
 ヴァンパイアは伝説化され、小説、映画と語り継がれていく間に様々な特徴が付加されていく。明け方の日光に弱く、流れる水を渡ることができず、ニンニク、十字架などの神聖なシンボルを嫌う。白木で作った杭を心臓に打ち込むと滅びて灰になるが、その灰に生き血をたらすと再び復活する。処女の生き血を好み、ヴァンパイアに咬まれた者の首筋には、ふたつの小さな牙の痕が残る。犠牲者は次第に衰弱し、死に至ると新たなヴァンパイアになり、永遠の僕となる。体の大きさを自由に変えることができ、狼、蝙蝠、霧に変身できる。障害物を何の苦もなく通り抜けることができるが、家の人間に許されなければその家に入ることができない。また、鏡にその姿がうつることがない、などなど。これらの特徴は全て後世になって付加されたものに過ぎない。もとは単なるアンデットでグールと同じようなものなのである。

     サキュバス 《Succubus》  出身地:ドイツ
 いわゆる夢魔。寝ている男性の夢の中、あるいは現実に淫媚で肉感的な美しい女性の姿で現れて男性を誘惑し、性交に到り、その男の精を絞り取ることを目的とする。女性に免疫のない男ほどのめりこむという。聖職者をよく誘惑する。
 禁欲主義をとるキリスト教では、この夢魔を大変に恐れ、多くの研究を行って対処に努めた。
 サキュバスという名前は「下に寝る」という意味のラテン語に由来している。

     インキュバス 《Incubus》  出身地:ドイツ
 夢魔の一種。寝ている女性の夢の中、あるいは現実で女性を誘惑し、性交に到ることを目的とし、その結果デーモンが生まれるという。インキュバスは基本的に色気のある美男子の姿で現れるが、魔女の前では羊の頭を持つ淫らな性欲の化身の姿を取ることもある。インキュバスはサキュバスが集めた精液を受け取り、それを人間の女性に注ぎ込むのである。ただ、インキュバスとサキュバスは同じ悪魔が、男と女の姿を使い分けているだけだという説もある。
 中世ヨーロッパにおいて、教会に烙印を押される魔女などの異端者は、このインキュバスの子とされた。
 近代ではインキュバスに取り付かれた者は教会で祈祷を受けると良いとされるが、それも追い払うのが精一杯で退治することはできないという。

     ワイルド・ハント 《Wild Hants》  出身地:ヨーロッパ各地
 ケルト、ゲルマンの民間伝承に伝わる狩人の亡霊たち。夜な夜な猟犬の幽霊を引き連れて空を駆け巡る。悪魔の烙印を受けた異郷の女神に率いられているのだともいう。
 山野を駆け巡って各地を荒廃させるとして恐れられ、この霊団を見てしまったものは身を異界へと移され、さらに話しかけてしまった者は死を運命づけられるともいわれている。

     ルゲイエ 《Rgeye》  出身地:デンマーク
 デンマークの民間伝承に見られる睡魔の一種。正しくは「オーレ・ルゲイエ」。眠らない子供のところに年配の男の姿で現れ、目にミルクを差し込んで眠らせる。七色に輝く絹の服を着て、足は忍び歩きをするために靴下しかはいていないと言われている。
 素直な良い子には、片手にもった絵の入った傘を広げ美しい不思議な物語の夢を与えるが、しつけの悪い子には、もう片方の手の無地の傘を広げ、朝まで夢を見れないようにするという。

     ニ・カロン 《Ni Caron》  出身地:バリ
 バリ島の魔女ランダの手下の魔女。ランダがバロンに倒された後、次代のランダとなる。
 テングのような鼻にざんばらの髪、大きな口にはヒゲまで生えているという。

     チュルルック 《Thyrurck》  出身地:バリ
 バロンの敵、ランダの使い魔。白い顔にむき出した歯と歯茎、黒く長い髪が特徴。

     リリム 《Lilim》  出身地:イスラエル
 男に淫らな夢を見させて精気を吸い取る女夢魔。ヨーロッパでは同じような性質のラミアやサキュバス、ハッグ、エンプーサなどと同一視されることもあるが、リリムはヘブライ神族の血筋も正しい、アダムとリリスの間に生まれた娘たちである。
 伝承によれば、リリスはアダムの最初の妻であったとされるが、男性優位の結婚を拒みアダムのもとを去った。神と天使たちに戻るよう命じられたが、逆にたくさんの悪魔たちと交わって1日に100もの子供を産んだという魔女である。このため、神はアダムの肋骨からリリスよりも従順な女としてイヴを創らなくてはならなかった、というのは余談である。
 さてリリムもこうした性格を受け継ぎ、多淫多情と言われる。しかし「百合=リリー」の語源にもなっている彼女らは、単にそうした多淫の魔女としては片付けられないかもしれない。というのも百合は、純潔と精神的な愛の象徴であるからだ。

     飛縁魔 《Hi no Enma》  出身地:日本
 吸血鬼。夜に現れては男の血を吸い取る、美しい女の姿をした魔物。中国の妲己(だっき)も同じものといわれる。
 丙午(ひのえうま)生まれの女は夫を殺すという迷信から生まれたと思われる。

     パリカー 《Parica》  出身地:ペルシア
 ゾロアスター教。神話において、英雄たちを誘惑する女魔。妖艶な魅力と邪悪な魔力を持ち、世界を破滅させようとしている。

     ナイトメア 《Nightmare》  出身地:西欧・アメリカ
 人間に悪夢を見させる悪魔。いわゆる夢魔。この悪魔の名前から派生して、悪夢自体もナイトメアと呼ばれるようになった。英和辞典にはそのまま[nightmare(名)悪夢、恐ろしい物事]という単語が載っている。「夜の悪魔」が原義となっていて、「悪魔」という意味の古代英語《mara》から派生した名前だと言われる。この《mara》は魔王マーラと同じなのである。
 彼らの行う悪さとしては、寝ている人を窒息させようとしたり、寝ているところに乗っかって実際に体が苦しい悪夢を見せる、金縛りにさせる、などというものがある。
 イギリスでナイトメアがよく黒い馬として描かれるのは、メア《mare》が牝馬と同じスペルだからである。

     エンプーサ 《Empusa》  出身地:ギリシア
 夢魔あるいは吸血鬼だとされる、主に女性の小悪魔。名は「力づくで押し入る者たち」の意。1本の足が真鍮か青銅でできており、もう片方の足には大きな鉤爪がついていて、皮の翼を持っている。あるいは冥界の女王ヘカーテに仕えているため牝犬の姿にもたとえられる。
 他の夢魔と同じく、眠っている男性を誘惑して精気を吸い取ったり悪夢を見せたりする。時には犠牲者が貪り食われることもある。美しい女性の姿をとって男性に近づくことが多いようだ。彼女たちは主人ヘカーテにつき従って、夜の街道を出歩き、旅人を苦しめることもする。特に交差点、三又路に好んで出没する。

     ザントマン 《Sand mann》  出身地:ドイツ
 ドイツの民間伝承に伝わる、眠りをもたらす妖精。彼らがかついでいる袋には砂が入っており、その砂をぶつけて目を閉じさせる。砂をかけられても我慢して目を開けていると、まぶたの上に座り込んで強引に目を閉じさせる。それでも眠らない子供は、目玉をえぐり取ってしまうという。
 夜更かしをする子供をおどかすために、親が話して聞かせるもの。

     キャク 《Cyak》  出身地:ネパール
 体中がたくさんの毛で覆われている、奇妙な姿の悪魔。日本の座敷童子のような悪魔で、害はない。
 キャクダンスは厄払いとして行われる、ユーモラスな軽業を含んだ舞踊である。

     アルプ 《Alp》  出身地:ドイツ
 夢魔の一種とされ、黒く毛むくじゃらの姿が想像される。たいがいが小悪魔程度と見なされるが、恐ろしい悪魔の仲間とも考えられた。
 アルプスは彼らの棲む魔の山である。北欧神話ではアールヴともいい、イギリスに伝わってエルフとなった。元々は太陽よりも美しいとされる「白い光のエルフ」のリョースアルプと、地中深くに住む「黒い闇のエルフ」のデックアルプの2種族に分かれているが、普通アルプといえばリョースアルプを指す。彼らは高潔で善良な性格をしており、人々の崇拝の対象ともなったと言われている。
 天上のエルフたちの国アールヘイヴに住み、月の光を浴びながら踊ったり、木々の間でたわむれたりしているという。

     キキーモラ 《Kikimora》  出身地:スラブ
 鳥の顔と脚を持つ、ポーランドの家の精。家事を手伝ってくれるが、主婦が怠け者だと夜中に子供たちをくすぐって悪夢を見せるという。

     インプ 《Imp》  出身地:イギリス
 悪戯好きの妖精、小鬼、あるいは魔女の使い魔であるとも言われている。インプという言葉には、「植物の若枝」「子供」という意味がある。
 元々は人間をからかったり、物を盗んだりする小さな妖精だったのだが、16世紀に入ると、インプはデビルの子供や魔女の使い魔という意味で文献に登場するようになり、その姿も蝙蝠の羽を持つ小鬼に変化した。

     ナハトコボルト 《Nacht kobold》  出身地:ドイツ
 夢魔。「夜のコボルト」の意味。子供部屋などへ忍び込み、死に至らしめることを得意とする。

     モコイ 《Mokoi》  出身地:オーストラリア
 アボリジニに伝えられる人間によく似た姿の妖怪。フクロウと共にジャングルに生息しており、夜に活動するとされる。人間には似ているが、頭が異常に大きく、舌を持っていないので言葉を話すことができないという。
 人間の陰の魂の生まれ変わりであるともいわれ、人間の女性と交わることもあれば、生まれた子供を食べたり、また人間と戦ったりすることもあるという。


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最終更新:2011年02月22日 23:40
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