腰まで伸びた白く綺麗な長髪。
制服の上からでも主張を止めぬ豊満な胸。
そしてなにより見る者全てを虜にする美貌。

彼女の名は神緒ゆい。いま私立帝葉学園で最も話題の女子高生である。

そんな彼女だが、絶賛殺し合いに巻き込まれていた。

さて、彼女の様子はというと。

(恐い...助けて鍵人くん...奈央...!)

震えていた。
当然だ。運動神経抜群、成績優秀、人間関係良好な、優等生をそのまま絵にしたような彼女でも、この異常事態にすぐさま順応できるはずもなく。
恐怖に支配される彼女に出来ることは、なるべく目立たぬように隠れて震えることだけである。

「突然失礼...」
「ひゃうっ!?」

突如かけられた声に、ゆいはビクリと跳ね上がり思わず腰を抜かしてしまった。

「驚かせてごめんなさい。私の名は巴マミ。少しあなたに聞きたいことがあって声をかけさせてもらいました」

顔を上げたゆいの前に立っていたのは、ゆいと同じく豊満な胸を持ち、制服に身を包んだ、金髪ツインロールの少女だった。

「あ...あぅ...」
「立てませんか?よろしければお手をどうぞ」

スッ、と手を差し出す少女の挙動は、微塵も緊張や恐怖のようなモノは見えず、同性であるゆいですら見惚れてしまうほど凛々しく見えていた。

「あ、ありがとうございます」

立ち上がり、ぺこりと頭を下げお礼を述べるゆいに、マミは首を微かに傾け、にこりと微笑みを返した。

「このくらい当然です。それに...」

マミは左手で額から左側の縦ロールをさらりとかきあげる。

「困っている人は見過ごせませんから。ここではなんですし、もう少し見つかりにくい場所で話しましょうか」




「不思議ですね~、お互い学校がここに飛ばされてるなんて」
「まったくです。知り合いに会う為の目印にはちょうどいいんですけどね」

空いていた教室を借り、互いの持つ情報を交換するマミとゆい。
最初のうちは怯えていたゆいも、マミの柔らかい物腰に緊張が解れ、会話が出来る程度には落ち着くことが出来た。

「それで...神緒さんはこれからどうしますか?知り合いも連れてこられてるとか...」

名を連ねられている中でゆいの知る者は園宮鍵人、淡魂炎火、橘城アヤ子の三名。
親友である恵比寿野奈央が巻き込まれていないのは不幸中の幸いと言えるだろうか。

では、親友がいないからといって、生きるために殺し合いに乗れるかといえば否。
生きるためとはいえ、友人である3人はもちろん、人を殺すなどできるはずもない。
それは他の三人も同じはず。ならばひとまず合流するべきだ。
幸いここには自分を含めた四人に共通する施設もあり、時間さえあれば合流は比較的し易いはずだ。

そして奇しくもゆいが飛ばされたのはここ、私立帝葉学園である。
ならば。

「...私は、ここに残ろうと思います。もしかしたら、皆さんも来てくれるかもしれませんし...」

暗がりの学園など恐いことこの上なしだが、おそらく知人たちは一度はここを訪れるだろう。
下手に動いて入れ違いになるよりは、多少時間がかかっても確実に会える場所に留まるべきという判断である。

「わかりました。なら、私も残ります」

マミの申し出にゆいはえっ、と声を漏らす。

「万が一にも、危ない人が来る可能性がありますし、二人でいれば心強いでしょう?」
「でも、申し訳ないです。巴さんだって後輩の子たちが...」
「大丈夫です。あの子たちはしっかりとした子たちですから」

微笑みのまま同行を提案してくれるマミに、ゆいは申し訳ない気持ちになる。
確かに一人では心細いし、マミが一緒にいてくれたらどれだけ安心できるだろうか。
けれど、大丈夫と本人は言っているが、本心では会いたいはずだ。
自分の考えで残ってくれるならまだしも、気を遣って残られるのは申し訳が立たない。


(ひとまず、私は大丈夫ということからアピールしましょう)

ゆいはデイバックをごそごそと探り、支給品を取り出す。

「私のことは大丈夫です。ほら、支給品に木刀と防弾チョッキが入ってましたから。これで攻撃も防御も万全です!」

武器と防具。
シンプルながらも、誰にでも使えるという点ではかなり当たりの部類だろう。

「...そうですね。確かに道具があれば自衛には役に立ちます。けれど」

言うが早いか、マミは木刀を手に取りゆいの首にトン、と当てた。

「こうやって武器を奪われたらどうしますか?」
「あっ」
「誰にでも使える武器は確かに便利ですが、相手の手に渡れば厄介なことこの上ない。もしそうなった場合、神緒さん一人で対処できますか?」

ゆいは思わず言葉を詰まらせる。
直接身に着ける防弾チョッキはともかく、木刀は己の手で握る物である。
素人相手ならいざ知らず、喧嘩慣れしているような輩相手なら苦労もなく取られてもおかしくない。
だが、二人いれば対処はいくらでもできる。ならば彼女が共に残らない理由がない。

「...参りました。不甲斐ないです。私の方が年上なのに教えてもらってばかりで」
「不甲斐なくなんかありませんよ。こんな状況でも人のことを気遣える、それだけでも立派じゃないですか」
「そ、そうでしょうか」

自身を頼りない、不甲斐ないと思いつつも、褒められて嬉しくないはずもなく。
ゆいの頬がほんのりと赤みがかった。

「...では、その、巴さん。不束者ですがよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「それでは、校内を案内しますね。私に着いてきてください」

ゆいはマミに背を向け、意気揚々と歩き出す。

(最初に会えたのが巴さんでよかった。彼女みたいに、落ち着いてやれることをしっかりとやりましょう)

ゆいは決心する。

炎火の人形に恐れおののいた時のように、恐いからと震えているだけでは、ただ助けられるだけでは駄目だ。
一人で抱え込み解決しようとするだけでは駄目だ。
前を向こう。そうすれば、自分にできることもなにか見つかるかもしれない。
そうして、みんなで力を合わせて頑張ろうと。

だから。

パァン、という音と共に走った後頭部の熱さがなにかがわからぬまま、彼女は意識を手放した。



「......」


マミは、俯せに倒れる少女に歩み寄り見下ろした。

「ごめんなさい神緒さん...でも、これも救済のため...」

己の心臓が冷えていくのを実感する。

これまで魔女や魔法少女とは何度も戦い、銃で撃ってきたが、一般人を撃つのはこれが初めてだった。
マギウスの翼――魔法少女の運命からの脱却を願う者の集いの、事実上の幹部として行動していた時も、魔女やウワサを育てることはしても、直接人を殺したことはなかった。
けれど撃つしかなかった。魔法少女でない彼女よりも優先すべき者がいるから。

「本当ならこんなことはしたくなかった...けれど...」

神子柴が上空に投げ出された時、マミは神子柴を倒すことで殺し合いの開催を防ごうとした。
けれど失敗し、殺し合いは始まってしまった。
ではどうするべきか、マミは考えた。
脱出―――首輪がある限り不可能だ。解析しようにも機械の知識は乏しく、かといってほかの参加者が解除するのを待つなど希望的観測に等しい。
そんなに簡単に解除できる人間を参加者に混ぜる意味はない。それだけでこの殺し合いが成立しなくなるからだ。

それに、あの老婆は首輪を自在に爆発させることができる。逆らえば首が飛ぶ。
もしも、万が一、マギウスの計画の中枢たるアリナ・グレイを失うことになれば、マギウスによる魔法少女の解放が叶わなくなってしまう。
ならば―――乗るしかない。

参加者を殺し尽くし、最後に自害しアリナを優勝させるしかない。

だから、マミはゆいに苦しみや恐怖を与えぬよう背後から頭部を撃ったのだ。

「神緒さん...私のことはいくら恨んでも構いません。けれどあなたの犠牲は必ず多くの魔法少女の救いとなります。どうか安らかに...」

マミは落ちていた鎖を握りしめ、ゆいの冥福を祈るように片膝を着き両目を瞑った。

72: 内秘心書 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:36:39 ID:75XJdN6M0

「人を撃った割にはずいぶんお優しいことだなーオイ」

かけられる声に、マミは反射的に目を開く。
同時に。
下あごから衝撃が走り、マミの身体が後方に吹き飛ぶ。

なにが起きた。

マミは己の居た位置を確認する。

足だ。
繊細な芸術のように綺麗な足が振り上げられていた。

(蹴られた...あんな無茶な体勢からあの威力で?それよりも、なぜ彼女が生きているの?)

マミは確かに殺すつもりでゆいを撃った。血も出ていたし確実に当たっている。なのになぜ生きている?

「―――!?」

目を凝らしているうちに異変に気が付く。
先ほどまでは髪から服まで純白だったゆいの身体が瞬く間に黒く染めあがっていくではないか!

「まさかこんな形で解かれるとは思ってなかったぜ」

立ち上がった彼女は、先ほどまでの白いゆいとはまるで別物だった。
おっとりとした佇まいと綺羅やかな白髪・白服は消え失せ、見る者を射殺すような鋭い目つきと漆黒の黒髪・黒服へと変貌していた。

「なんで立てるのかって聞きたそうだな。人間の頭蓋骨ってのは思ってるより硬いんだ。しかもたまたま撃った場所が髪飾りだったもんだから威力は半減以下。
お陰様であたしはかすり傷で済んだのさ」
「あなたいったい...!?」
「神緒ゆい(スケバン)だ。そういうお前こそタダ者じゃねーな。だからあんな余裕があったんだろ」
「っ...!」

マミは直感する。
神緒ゆいは魔法少女ではない。それは、先ほどさりげなく見せた指輪にも無反応だったことからわかる。
だが、彼女は魔法少女に類する脅威だ。侮れない。

ならば、出し惜しみなどしない。

マミの身体が発光すると同時に、黄金の装飾に彩られた衣装に包まれる。

魔法少女―――否。ただの魔法少女ではない。

これが魔法少女を超えた存在、神浜聖女の姿である。

「私たちの邪魔はさせない...私たちは必ず救済を成し遂げるわ!」
「よく吼えるじゃねーか...嫌いじゃないぜ、そういうの」

獲物を見つけた肉食獣のように、ゆいの口角がニヤリと上がった。

「久々に暴れがいがありそうだ。付き合ってもらうぜお嬢ちゃん」






――神緒ゆいの脳内世界にて――


『......』
「そんな落ちこむんじゃねーよ。裏切りなんてどこにでも転がってるもんだろ」
『違うんです。ただ、ちょっともやっとしてしまいまして...』
「あん?」
『どうして巴さんはあんな回りくどいことをしたのか...不思議なんです』
「そりゃ油断させるためだろ」
『必要でしたか?あなたならいざ知らず、私に対してですよ?木刀を持った時に叩きのめすことだってできたのに...』
「あー...言われてみりゃあな」
『殺すつもりはあったんだとは思います。でも、あそこまで徹底的に安らぎを与えられて...彼女の本心がわからない...だからもやっとしてしまって...』


「...あいつの本心、知りたいのか?」
『...はい。で、でも、それであなたが危険に晒されるのは』
「遠慮すんなよ。前も言ったろ、感情を発散するのはあたしの役目だって」
『......』


「そんな暗い顔するなよ。確かにあいつは強い。スケバンランクSにも届くかもしれねえ。けど勝ち目がないわけじゃない」
『え?』
「あいつからは蟲と似たような気配もする。そいつさえひっぺがしゃああんたも話くらいできるだろ。てか、あたしが出来るのはそこまでだ。あいつが何を思ってようがどうでもいいしな」
『つまり...そこからは、私の戦い...』
「そういうこと。まあ、あまり気負うんじゃねーぞ。どのみちあたしも殺し合いなんざするつもりはねえ。どう頑張ってもあたしに出来るのは、腹パンで腹の虫を出させるまでってことだ」
『...わかりました』

「そんじゃ、あたしらの肝も据わったところで―――行くとするか」




『スケバン』。それは人間。あるいは女王。あるいは―――戦士。

つまり。

世界が違えど戦う女は皆スケバンである!



いざ尋常にスケバン勝負!!

神浜市聖夜の最終射撃人造『魔法少女(スケバン)』巴マミ

VS

東京都蟲狩りの神緒ゆい!!





【B-5/私立帝葉学園/1日目・深夜】


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]下あごにダメージ(小)、ホーリーマミ化
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1~3
基本方針:魔法少女救済の為にアリナを優勝させる。
0:神緒ゆいを倒す。
1:アリナと合流、指示を仰ぐ。
2:鹿目さんと暁美さんと佐倉さんはできれば殺したくはないけれど...
3:環いろは、七海やちよ、二葉さなは排除する。

※参戦時期はマギアレコード本編八章でやちよと交戦前です。


【神緒ゆい@神緒ゆいは髪を結い】
[状態]頭部出血(小)、黒ゆい化
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~1 大谷悟の木刀@サタノファニ、烏丸の防弾チョッキ@サタノファニ
[行動方針]
基本方針:ゲームからの脱出
0:巴マミをブッ倒す。
1:鍵人、炎火、アヤ子との合流。


※参戦時期は修学旅行前。



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