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導入、あるいは名も無き魔術師の手記 - (2015/05/22 (金) 00:01:19) の1つ前との変更点

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*導入、あるいは名も無き魔術師の手記◆q4eJ67HsvU  素に無明の闇。傍に盲し白痴の王。  泡立つ虹には贄を。  四方を円に閉じ、炎を五芒へ示し、第五宮に至る陽を循環せよ。  閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。  繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を冒?する。  ――――Ancient(セット)  告げる。  汝の身は我が門に、我が命運は汝の鍵に。  星辰の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。  誓いを此処に。  我は全なる一の戒めを破る者、  我は一なる全の印を棄てる者。  汝、混沌の媒介を記す断章。  窮極の門より来たれ、銀鍵の守り手よ――――!                     ▼  ▼  ▼  ――この手記が単なる哀れな狂人の妄言と片付けられず、正しく理解ある者の手に渡ることを願う。  私が時計塔でその不可思議な儀式のことを耳にしたのは取り立てて特別な日でもなく、規定通りに伝承学の講義を片付けた後のことであった。  学生達が廊下で話すにしてはいささか不穏な内容ではあったが、魔術師に不穏という言葉は影のように付き纏うものであるし、  所詮は第十一科の、研究のことしか頭にないような考古学部の連中だったから、了見に欠けるのも致し方無いだろう。  とはいえその取るに足りないと聞き流しても問題ないような与太話を私が耳聡く聞き咎めたのは、他でもない、  かの鉱石科のロードであった先代のエルメロイ卿がかつて参加したとされる儀式のあらましと酷似していたからである。  エルメロイ卿は卑劣にも極東の田舎魔術師共の手に掛かって落命したと聞き、時計塔は大いなる才能を喪失することとなったものだが、  ともかくも魔術の名門アインツベルンまでが携わっているとされる魔術師同士の決闘儀式、『聖杯戦争』の名は私の記憶に引っ掛かっていた。  もっとも私が平和ぼけした学生を呼び捕まえて質問攻めにしたのは卿の仇を討とうなどという正義感に駆られたわけではなかったが、  少なくとも私の鬼気迫る熱意に負けたのか、学生は考古学部に相応しい貧弱な頭脳から私にその儀式について語るに至ったのである。  私はあらかじめ聖杯戦争について深く知識を持っていたわけではなかったから、学生共の語る内容は歯抜けの記憶の間を埋めることとなった。  しかしながら万能の願望器たる聖杯の降霊を目指すため、信仰によって人類種から精霊にまで達した歴史の具現、すなわち英霊を、  サーヴァントとして使役することによって行われる儀式であるという期待通りの情報は、私を大いに満足させることとなった。  この段階で既に、私の心は既にこの新たに執り行われるという聖杯戦争へ乗り込むことで隙間なく埋め尽くされていた。  かのロード・エルメロイⅠ世までもが果たせなかった聖杯の獲得を首尾よく私が成し遂げることが出来たならば、  今まではただのしがない伝承学部の二級講師に過ぎなかった私でも、時計塔内の派閥争いに加わることが出来ようというものだ。  だが、その聖杯戦争に加わるまでの道程は、あらかじめ伝え聞いていたものとはいささか異なり、私を当惑させた。  私は聖遺物を入手した上で極東の島国へ向かえばよいのだと考えていたのだが、新たなる聖杯戦争が要求するものは聖遺物ではなかった。  それは『銀の鍵』だという。ただの純銀製の鍵では駄目で、それ自体が深遠なる神秘を持つものなのだそうだ。  いかなる鍵穴とも噛み合うその礼装をもって扉を開いた先に、目指す決闘儀式のための街があるのだと。  あるいは私は、この段階で踏み留まっておくべきだったのだ。  この話を聞いた瞬間の興奮が如何ようにも抑えられなかったとしても、せめて後日もう一度話を聞こうと考古学部を訪れた時、  あの褐色というよりは漆黒の肌をした長身痩躯の学生は第十一科の何処にもおらず、誰に訊いても会ったことがないと口を揃えて言い、  あの日彼と会話していたはずの学生からも要領を得ない返事しか帰って来なかった時点で、尋常ならざる事態に気付くべきだったのだ。  しかし愚かな私は、八方手を尽くして銀の鍵を手に入れ、扉を開いてしまった。  それがいかなることかを知っていれば、私は決してそんな蛮勇を振るいはしなかっただろう!  私が辿り着いたその街でいかなる恐ろしいものを目の当たりにしたか、それをこの手記にて詳らかにすることはご容赦願いたい。  何故なら私が感じた畏怖というものは文章に記すにはあまりにも漠然とした、それでいて魂の奥底から湧き出る本能的なものであって、  にも関わらず本質的な恐怖の真実の一端に過ぎないものであると他ならぬ私自身が理解しているからである。  しかし、警句のひとつくらいは残さねば、この手記を残した甲斐が無いというもの。あえて言葉として記すならば――  英霊、そは永久に横たわる死者にはあらねど、測り知れざる永劫のもとに『人』を超えるものなり。  例えるなら古代メソポタミアの英雄王、ギリシャはオリンポスの神々に連なる英雄達、トゥアハー・デ・ダナンの光の御子、  あるいは中東の暗殺教団、マケドニアの征服王、シャルルマーニュの十二勇士、そしてブリテンに名高い騎士王に至るまで、  英雄とは人にして人を超えたものであり、死に際してなお死を超えたものであることを、私はこれまで知らずにいたのだ。  だからこそ――私はそれを目の当たりにしたことが何より恐ろしい!  偉大なる神秘を前にしては人間などという矮小な存在などあっという間に竦み上がってしまうものだというその事実が恐ろしい。  もはや決闘の名誉などはどうでもよい。私はその街であらん限りの情報を掻き集め、何とか逃げ出すための計画を練ったのだ。  しかしそれも追い詰められた今となっては叶いそうにない。聖杯の加護を失った今、銀の鍵の秘蹟は時空への冒?に成り下がった。  ならばこそ、この手記だけでも元の世界に送り届けたいと願っている。  もはや時間の猶予はない――すでに部屋の鋭角という鋭角から忌まわしい煙が噴き出している――ひとまずここで筆を置くこととするが、  もしも銀の鍵の扉を越えた先でこの手記を読む者がいたならば、私がこれまでに知り得たうちで最大の教訓を最後に心に銘じていただきたい。  この聖杯戦争のそもそもの成り立ち、そのあまりに冒涜的な真実にだけは――くれぐれも関心を向けてくださるな!                     ▼  ▼  ▼  シオン・エルトナム・アトラシアは部屋の真ん中に倒れ伏す魔術師の男を路傍の石でも見るような目で一瞥すると、  彼が死の直前まで書いていたと思われる手帳のページにざっと目を通し、蔑むようにもう一度男を見下ろした。  汚い文字で書き殴られた手記とも言えぬ文章は熱病患者の譫言にも似て、まともに読めたものではない。 「既に発狂していたか。とはいえ、取るに足りないエラー未満の事象……つまらない死に方をするマスターもいるものですね」  その声色は落ち着いた女性らしいものではあったが、同時に機械めいた冷徹さを同時に秘めていた。  彼女が乱雑に散らかった食器の上に手帳を投げて火をつけると、男の妄言めいた言伝は灰とくすぶる煙とに変わった。  そのまま、乱れた部屋の中の様子にはほとんど目もくれることもなく、シオンは踵を返してそのアパートの一室から外に出た。  外界――この合衆国マサチューセッツ州に位置する地方都市『アーカム』は、彼一人死んだところでその歯車を違えたりはしない。  しかしこの街は、聖杯戦争というこの冒涜的な儀式のために作られた仮初の街に過ぎない。  この街に集められた人間達もまた、聖杯戦争の参加者たるマスター達を隠す肉の林にして生け贄に過ぎないのだ。  全ては聖杯降臨――その奇跡を成し遂げるため、ただそれだけのため。 「一にして全、全にして一なるもの、窮極の門のその奥に座す彼方なるもの、あらゆる時間と空間に隣り合うアカシャ年代記の具現、  その外なる神の無限の知識から引き出され、聖杯というフィルターを通して降臨する人類史の記憶、サーヴァント。  そしてその輝ける英雄にして邪神の記憶を従えるマスター達……そろそろ全てがこのアーカムに集う頃か」  その時シオンの輪郭が一瞬ぶれたのを目にした者は、恐らく誰一人としていなかっただろう。  二重写しになった、古代エジプトめいた衣装を纏う褐色の肌の女の姿はすぐに掻き消え、シオンは何事も無かったかのように空を見上げた。 「――さあ、銀の鍵を手にした探索者達よ。いよいよ、聖杯戦争を始めましょう」  そう誰にでもなく言い残し、『秘匿者(キーパー)』のサーヴァントはアーカムの影へとその姿を消した。 【邪神を巡る聖杯戦争、アーカムの地にて開幕】 【クラス】 キーパー 【真名】 シオン・エルトナム・アトラシア?@Melty Blood 【ステータス】 筋力D? 耐久E? 敏捷C? 魔力C? 幸運D? 宝具? 【属性】 中立・■ 【クラススキル】 情報秘匿:EX 「秘匿者」のクラス特性。対象者の記憶に干渉し、情報の隠蔽を行うスキル。 精密な制御はエーテライトを介して直接行うが、ごく単純な認識操作程度ならばアーカム全域に可能である。 基本的に一般人や対処の必要が生じたマスターの認識を操作し聖杯戦争を円滑に進めるために用いられるが、 真の存在意義はこの聖杯戦争の裏に潜む邪神の存在を隠蔽し、聖杯降臨の儀式を完遂することにある。 なお、傷となっている記憶を封じることで、一時的狂気を鎮めたり精神汚染スキルのランクを下げるという応用法がある。 真名看破:B 本来はルーラーのクラス特性であるが、キーパーはルーラーの変形クラスであるため所持。 直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・クラスなどの全情報を即座に把握する。 真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなどを持つサーヴァントに対しては幸運判定が必要。 なお、ルーラーの最終秘儀たる「神明裁決(令呪による強制権)」は有していない。 【保有スキル】 エーテライト:A エルトナム家に伝わる疑似神経。ナノフィラメントサイズの大きさでありながら一本で一人の神経を乗っ取ることもできる。 本来の使い方に加え、情報秘匿スキルの精密な行使にも使用する。 分割思考:A+ 思考中枢を仮想的に複数分割して行なう思考法。 超高速の思考を可能とするだけでなく、同ランク以下の読心等のスキルを無効化する。 神話技■:B 邪■とその眷■、そしてこの聖杯■争の成り立ち■ついて十分な知識を持つ。 格の低■神話■物であれば使い■とし■使役■■る可能性■あ■。 死徒:- 吸血に■って後天的■吸血種となっ■存在。 シオンは生前一度もワ■キ■の夜■■接触■ていな■。 【宝具】 『オ■■スの■』 ■■■■シオン■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■ステ■タス■偽装■■■■■真■宝具■■■■■■■■霊子■算■ヘル■ス■■ ■■■■■■■フォ■■ック純■晶■■■■■■■■■情報■■■■■■■■■■■■ ■キ■パー■■■■■■■■■■聖杯■■■■■■邪神■グ■ソト■ス■■■■■■■ 【weapon】 エーテライト。 【人物背景】 エジプト・アトラス院の錬金術師【以降の情報はキーパー権限によって秘匿されています】
*導入、あるいは名も無き魔術師の手記◆q4eJ67HsvU  素に無明の闇。傍に盲し白痴の王。  泡立つ虹には贄を。  四方を円に閉じ、炎を五芒へ示し、第五宮に至る陽を循環せよ。  閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。  繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を冒?する。  ――――Ancient(セット)  告げる。  汝の身は我が門に、我が命運は汝の鍵に。  星辰の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。  誓いを此処に。  我は全なる一の戒めを破る者、  我は一なる全の印を棄てる者。  汝、混沌の媒介を記す断章。  窮極の門より来たれ、銀鍵の守り手よ――――!                     ▼  ▼  ▼  ――この手記が単なる哀れな狂人の妄言と片付けられず、正しく理解ある者の手に渡ることを願う。  私が時計塔でその不可思議な儀式のことを耳にしたのは取り立てて特別な日でもなく、規定通りに伝承学の講義を片付けた後のことであった。  学生達が廊下で話すにしてはいささか不穏な内容ではあったが、魔術師に不穏という言葉は影のように付き纏うものであるし、  所詮は第十一科の、研究のことしか頭にないような考古学部の連中だったから、了見に欠けるのも致し方無いだろう。  とはいえその取るに足りないと聞き流しても問題ないような与太話を私が耳聡く聞き咎めたのは、他でもない、  かの鉱石科のロードであった先代のエルメロイ卿がかつて参加したとされる儀式のあらましと酷似していたからである。  エルメロイ卿は卑劣にも極東の田舎魔術師共の手に掛かって落命したと聞き、時計塔は大いなる才能を喪失することとなったものだが、  ともかくも魔術の名門アインツベルンまでが携わっているとされる魔術師同士の決闘儀式、『聖杯戦争』の名は私の記憶に引っ掛かっていた。  もっとも私が平和ぼけした学生を呼び捕まえて質問攻めにしたのは卿の仇を討とうなどという正義感に駆られたわけではなかったが、  少なくとも私の鬼気迫る熱意に負けたのか、学生は考古学部に相応しい貧弱な頭脳から私にその儀式について語るに至ったのである。  私はあらかじめ聖杯戦争について深く知識を持っていたわけではなかったから、学生共の語る内容は歯抜けの記憶の間を埋めることとなった。  しかしながら万能の願望器たる聖杯の降霊を目指すため、信仰によって人類種から精霊にまで達した歴史の具現、すなわち英霊を、  サーヴァントとして使役することによって行われる儀式であるという期待通りの情報は、私を大いに満足させることとなった。  この段階で既に、私の心は既にこの新たに執り行われるという聖杯戦争へ乗り込むことで隙間なく埋め尽くされていた。  かのロード・エルメロイⅠ世までもが果たせなかった聖杯の獲得を首尾よく私が成し遂げることが出来たならば、  今まではただのしがない伝承学部の二級講師に過ぎなかった私でも、時計塔内の派閥争いに加わることが出来ようというものだ。  だが、その聖杯戦争に加わるまでの道程は、あらかじめ伝え聞いていたものとはいささか異なり、私を当惑させた。  私は聖遺物を入手した上で極東の島国へ向かえばよいのだと考えていたのだが、新たなる聖杯戦争が要求するものは聖遺物ではなかった。  それは『銀の鍵』だという。ただの純銀製の鍵では駄目で、それ自体が深遠なる神秘を持つものなのだそうだ。  いかなる鍵穴とも噛み合うその礼装をもって扉を開いた先に、目指す決闘儀式のための街があるのだと。  あるいは私は、この段階で踏み留まっておくべきだったのだ。  この話を聞いた瞬間の興奮が如何ようにも抑えられなかったとしても、せめて後日もう一度話を聞こうと考古学部を訪れた時、  あの褐色というよりは漆黒の肌をした長身痩躯の学生は第十一科の何処にもおらず、誰に訊いても会ったことがないと口を揃えて言い、  あの日彼と会話していたはずの学生からも要領を得ない返事しか帰って来なかった時点で、尋常ならざる事態に気付くべきだったのだ。  しかし愚かな私は、八方手を尽くして銀の鍵を手に入れ、扉を開いてしまった。  それがいかなることかを知っていれば、私は決してそんな蛮勇を振るいはしなかっただろう!  私が辿り着いたその街でいかなる恐ろしいものを目の当たりにしたか、それをこの手記にて詳らかにすることはご容赦願いたい。  何故なら私が感じた畏怖というものは文章に記すにはあまりにも漠然とした、それでいて魂の奥底から湧き出る本能的なものであって、  にも関わらず本質的な恐怖の真実の一端に過ぎないものであると他ならぬ私自身が理解しているからである。  しかし、警句のひとつくらいは残さねば、この手記を残した甲斐が無いというもの。あえて言葉として記すならば――  英霊、そは永久に横たわる死者にはあらねど、測り知れざる永劫のもとに『人』を超えるものなり。  例えるなら古代メソポタミアの英雄王、ギリシャはオリンポスの神々に連なる英雄達、トゥアハー・デ・ダナンの光の御子、  あるいは中東の暗殺教団、マケドニアの征服王、シャルルマーニュの十二勇士、そしてブリテンに名高い騎士王に至るまで、  英雄とは人にして人を超えたものであり、死に際してなお死を超えたものであることを、私はこれまで知らずにいたのだ。  だからこそ――私はそれを目の当たりにしたことが何より恐ろしい!  偉大なる神秘を前にしては人間などという矮小な存在などあっという間に竦み上がってしまうものだというその事実が恐ろしい。  もはや決闘の名誉などはどうでもよい。私はその街であらん限りの情報を掻き集め、何とか逃げ出すための計画を練ったのだ。  しかしそれも追い詰められた今となっては叶いそうにない。聖杯の加護を失った今、銀の鍵の秘蹟は時空への冒?に成り下がった。  ならばこそ、この手記だけでも元の世界に送り届けたいと願っている。  もはや時間の猶予はない――すでに部屋の鋭角という鋭角から忌まわしい煙が噴き出している――ひとまずここで筆を置くこととするが、  もしも銀の鍵の扉を越えた先でこの手記を読む者がいたならば、私がこれまでに知り得たうちで最大の教訓を最後に心に銘じていただきたい。  この聖杯戦争のそもそもの成り立ち、そのあまりに冒涜的な真実にだけは――くれぐれも関心を向けてくださるな!                     ▼  ▼  ▼  シオン・エルトナム・アトラシアは部屋の真ん中に倒れ伏す魔術師の男を路傍の石でも見るような目で一瞥すると、  彼が死の直前まで書いていたと思われる手帳のページにざっと目を通し、蔑むようにもう一度男を見下ろした。  汚い文字で書き殴られた手記とも言えぬ文章は熱病患者の譫言にも似て、まともに読めたものではない。 「既に発狂していたか。とはいえ、取るに足りないエラー未満の事象……つまらない死に方をするマスターもいるものですね」  その声色は落ち着いた女性らしいものではあったが、同時に機械めいた冷徹さを同時に秘めていた。  彼女が乱雑に散らかった食器の上に手帳を投げて火をつけると、男の妄言めいた言伝は灰とくすぶる煙とに変わった。  そのまま、乱れた部屋の中の様子にはほとんど目もくれることもなく、シオンは踵を返してそのアパートの一室から外に出た。  外界――この合衆国マサチューセッツ州に位置する地方都市『アーカム』は、彼一人死んだところでその歯車を違えたりはしない。  しかしこの街は、聖杯戦争というこの冒涜的な儀式のために作られた仮初の街に過ぎない。  この街に集められた人間達もまた、聖杯戦争の参加者たるマスター達を隠す肉の林にして生け贄に過ぎないのだ。  全ては聖杯降臨――その奇跡を成し遂げるため、ただそれだけのため。 「一にして全、全にして一なるもの、窮極の門のその奥に座す彼方なるもの、あらゆる時間と空間に隣り合うアカシャ年代記の具現、  その外なる神の無限の知識から引き出され、聖杯というフィルターを通して降臨する人類史の記憶、サーヴァント。  そしてその輝ける英雄にして邪神の記憶を従えるマスター達……そろそろ全てがこのアーカムに集う頃か」  その時シオンの輪郭が一瞬ぶれたのを目にした者は、恐らく誰一人としていなかっただろう。  二重写しになった、古代エジプトめいた衣装を纏う褐色の肌の女の姿はすぐに掻き消え、シオンは何事も無かったかのように空を見上げた。 「――さあ、銀の鍵を手にした探索者達よ。いよいよ、聖杯戦争を始めましょう」  そう誰にでもなく言い残し、『秘匿者(キーパー)』のサーヴァントはアーカムの影へとその姿を消した。 【邪神を巡る聖杯戦争、アーカムの地にて開幕】 【クラス】 キーパー 【真名】 シオン・エルトナム・アトラシア?@Melty Blood 【ステータス】 筋力D? 耐久E? 敏捷C? 魔力C? 幸運D? 宝具? 【属性】 中立・■ 【クラススキル】 情報秘匿:EX 「秘匿者」のクラス特性。対象者の記憶に干渉し、情報の隠蔽を行うスキル。 精密な制御はエーテライトを介して直接行うが、ごく単純な認識操作程度ならばアーカム全域に可能である。 基本的に一般人や対処の必要が生じたマスターの認識を操作し聖杯戦争を円滑に進めるために用いられるが、 真の存在意義はこの聖杯戦争の裏に潜む邪神の存在を隠蔽し、聖杯降臨の儀式を完遂することにある。 なお、傷となっている記憶を封じることで、一時的狂気を鎮めたり精神汚染スキルのランクを下げるという応用法がある。 真名看破:B 本来はルーラーのクラス特性であるが、キーパーはルーラーの変形クラスであるため所持。 直接遭遇したサーヴァントの真名・スキル・クラスなどの全情報を即座に把握する。 真名を秘匿する効果がある宝具やスキルなどを持つサーヴァントに対しては幸運判定が必要。 なお、ルーラーの最終秘儀たる「神明裁決(令呪による強制権)」は有していない。 【保有スキル】 エーテライト:A エルトナム家に伝わる疑似神経。ナノフィラメントサイズの大きさでありながら一本で一人の神経を乗っ取ることもできる。 本来の使い方に加え、情報秘匿スキルの精密な行使にも使用する。 分割思考:A+ 思考中枢を仮想的に複数分割して行なう思考法。 超高速の思考を可能とするだけでなく、同ランク以下の読心等のスキルを無効化する。 神話技■:B 邪■とその眷■、そしてこの聖杯■争の成り立ち■ついて十分な知識を持つ。 格の低■神話■物であれば使い■とし■使役■■る可能性■あ■。 死徒:- 吸血に■って後天的■吸血種となっ■存在。 シオンは生前一度もワ■キ■の夜■■接触■ていな■。 【宝具】 『オ■■スの■』 ■■■■シオン■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ ■■■ステ■タス■偽装■■■■■真■宝具■■■■■■■■霊子■算■ヘル■ス■■ ■■■■■■■フォ■■ック純■晶■■■■■■■■■情報■■■■■■■■■■■■ ■キ■パー■■■■■■■■■■聖杯■■■■■■邪神■グ■ソト■ス■■■■■■■ 【weapon】 エーテライト。 【人物背景】 エジプト・アトラス院の錬金術師【以降の情報はキーパー権限によって秘匿されています】 |BACK||NEXT| ||投下順|Saber01:[[《覇王の卵》ローズマリー・アップルフィールド&セイバー]]| ||時系列順|Saber01:[[《覇王の卵》ローズマリー・アップルフィールド&セイバー]]| |BACK|登場キャラ|NEXT| ||キーパー([[シオン・エルトナム・アトラシア?>オシリスの砂]])|OP:[[運命の呼び声~Call of Fate~]]|

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