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《民俗学》空目恭一&アサシン - (2015/05/17 (日) 23:47:05) のソース

*《民俗学》空目恭一・アサシン◆ACfa2i33Dc



 昔**の国(後の**県)の村に住む若者が、山菜を採る為に山へと入った時にこんな事があった。
 若者が山を分け入る内に、見た事もない豪華な屋敷に行き遭った。
 この山の事は隅々まで知っている筈の若者が知らない屋敷に、いぶかしみながら周囲を探ってみたが、人の気配がまるでない。
 中を覗いてみたところ、居間の囲炉裏は赤々と炭火が起こっていた。
 ますます怪しんで中へと入り、屋敷の中を見て回ったが、人の姿はどこにもない。
 だと言うのに、屋敷の中はまるで直前まで人が住んでいたかのようで、座敷には食事の準備まで整えられていた。
 まるで神隠しのようだと思った若者は恐ろしくなり、一目散に屋敷から逃げ出し、どこをどう走ったかもわからないまま、ようやく見知った道へと着く事ができた。
 村へと帰った若者は村人に山奥の屋敷について聞いて回ったが、誰も知っている者はいなかった。
 若者はそれからも何度も山奥へと入ったが、あの屋敷も神隠しにあったかのように、ついに見つける事はできなかったということだ。

 ――**県の民話


 妖怪らしい妖怪と言えば、まず八雲紫の名前が挙げられるだろう。
 この妖怪は、根源に関わる能力の危険さもさる事ながら、神出鬼没で性格も人情に欠け、行動原理が人間とまるで異なっている事等、まず相手にしたくない妖怪である。
 姿は特に人間と変わりはない。派手な服装を好み、大きな日傘を使う。
 主な活動時間は夜で、昼間は寝ている。典型的な妖怪である。
 また、冬は冬眠していると言われるが、本人の談だけで実際は何処に棲んでいるのか確認取れていないので、真偽の程は定かではない。
 古くは、幻想郷縁起阿一著の妖怪録にも、それらしい妖怪が登場している。その時代にあった姿で現れるという。


 ――稗田阿求『幻想郷縁起』より抜粋


     *



 ……アーカム市の南部に建つ、アメリカでも名門に分類されるその学び舎の名を知らぬ者は、アーカムの市街には殆どいないと言っていいだろう。
 ミスカトニック大学……。
 40万冊以上の蔵書や地元紙のファイルを誇る大学付属図書館で知られるこの大学の、広いグラウンドの隅には、この異国の地には珍しい事に、桜が植えられていた。

 そして、その桜が、散っていた。
 校舎の合間を縫って吹いた風に乗って、花弁が散り、宙を舞う。


 ざわ、


 と桜の香を乗せた風が、ミスカトニックのキャンパスを吹き渡っていく。
 グラウンドでのスポーツに精を出すジョック達には省みられぬ、キャンパスの片隅の幻想的な光景。

 その桜の樹の根元に、黒い男が凭れ掛かっていた。

 髪は黒。そして、着ている衣服も、喪服のように真っ黒だった。
 校庭を渡り、キャンパスを移動する学生達に、その姿に振り向く者や声をかける者はない。それは、異様な装いをした異国人に対する差別や偏見を理由とするものではなく……、
 あえて言うならば、『拒絶』し、異常を自らの日常から『隔絶』しようとする、一種の、人間が持つ無意識の防衛機構によるものだった。

 男の体から香る、『異界』の空気が、常人を遠ざけていた。

「想定外だ。そもそも、想定も何もあった展開ではないが」
「ご不満かしら?」
「当然だ」

 男の周囲に、人の姿はない。
 ……だというのに、男が呟くように発した言葉。それに答える声があった。
 声はおそらくは成人した女性のもので、その女性の持つであろう蠱惑的な雰囲気を声だけでも感じ取る事ができる。
 しかしそれと同時に、その声だけで『まともな存在ではない』と理解できてしまうのだった。

「聖杯戦争。魅力的な話だとは思えなくて、魔王陛下?」
「思わん。一言で言えば胡散臭い。存在そのものが疑わしい」

 くすくすと笑う女性の声の聴こえる方へと顔を向けて、男は鬱陶しげに言葉を放つ。

「“聖杯”。聖書における“主の血を受けた器”の事だ。
 “聖杯伝説”は中世西ヨーロッパを中心に、世界中に存在する。騎士物語においては定番のモチーフだ。
 だが、“聖杯戦争”……あるいは、それに類似した物語は、俺も聞いた事がない」
「ですから信憑性がない……と、そういうわけかしら?」
「無論、俺がこうしてここにいる以上、何らかの超常的な現象が起きているのには否定の余地がないだろう。ただし、それが文字通りの“聖杯”であるかは疑問符が付く。
 聖杯戦争そのものは“聖杯を手に入れる為の苦難”をモチーフにしているのかもしれないが、しかしそれが目的ならば競争であれど殺し合いである必要性はない。
 “閉鎖的な空間における殺し合い”である事に意味があるとするならば。その最も安直なモチーフは、“蟲毒”だ」
「私達は、壷に放り込まれた蟲であると?」
「その可能性はあるという事だ。どのみち、聖杯が本物であるとして今ではもう興味もないがな」
「あら、淡白。クールに見えて、こんなところに連れて来られて怒り心頭なのかしら?」
「勘違いをするな。不満を持ってはいるが、怒ってはいない。
 更に言えば、俺が不満なのはこのような場所に連れて来られた事ではない。俺といる“神隠し”が、お前である事だ」


 男がそう言った時、気配が


 くすり、


 と笑った。……そして次の瞬間、目の前の空間が『割れた』。
 まるで、空間の『隙間』を開いて世界の裏側を開いてしまったかのように。
 そして、その『隙間』の向こうには、一人の女性の姿が見えていた。派手な衣装に、大きな日傘。ある種の人間離れした、金髪の美貌。年頃は少女にも、あるいは老婆にも見える。

「あら、フラれてしまいましたわ」

 その女性は先程までの声と同じように、くすくすと笑いながらそう言った。
 妖艶な笑みだった。それがこの世のものではないと知りながら、それでも惹かれてしまう者がいるような、そんな笑みだった。

「当然の話だ。あれは俺の所有物だ、勝手に持っていかれる謂れはない。そもそも、お前に俺の道案内はできないだろう」
「くふ、それは道理ですわね」

 そんな笑みを浮かべる女性に、男はにべもなく拒絶に近い言葉を言い放つ。女性はしかし、拒絶を受けても残念そうな素振りはしなかった。

「幻想郷は全てを受け入れる。それはそれは残酷な話ですわ」
「“神隠し”に誘われ、“隠れ里”に辿り着く、か。あまりにもそのままだな」
「あなたは道案内がいるから不要かしら?」
「何にしろ、その道案内を探さなければならん」

 そう言うと、男はむくりと起き上がる。痩身に纏った黒いコートが、風に靡く。

「こうなった以上、お前にも手伝ってもらう。いいな? アサシン」
「仰せのままに、魔王陛下」

 ……男の名は、空目恭一。『神隠しの被害者』。
 女の名は、サーヴァント・アサシン……その真名は、八雲紫。『神隠しの主犯』。

 彼らが探すのも、やはり『神隠し』だった。


 ……枯草に鉄錆の混じった匂いが鼻に届いた気がして、空目は鼻をすん、と動かした。


---



【クラス】アサシン
【真名】八雲紫@東方Project
【パラメーター】
筋力D 耐久C 敏捷D 魔力A 幸運D 宝具?
【属性】
混沌・中庸
【クラススキル】
気配遮断:A++
 『神隠し』。
 自身の気配を消す。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。
 ただしスキル『神隠しの主犯』との組み合わせで、特定の行動に限り気配遮断のランクを保ったまま行動できる。
【保有スキル】
神隠しの主犯:A++
 幻想郷で神隠しと呼ばれる現象を境界を操作して起こす犯人。
 神ではなく、妖怪少女の仕業。
 宝具である『境界を操る程度の能力』を使用する時に限って、気配遮断の効果を持続させたまま行動する事ができる。
妖怪:A
 人間に畏れられ、人間に退治される存在。
 与えられる物理ダメージを低減し、その代わり精神干渉を受けた場合ダメージ化する。
 また、ある種の信仰を集める存在である事から、Eランク相当の『神性』スキルの効果を内包する。
 更に『畏れられる』存在である事から、敵マスターが正気度喪失の判定を行う際の達成値にマイナス補正をかける。
飛行:C
 空を飛ぶ能力。
 ふわふわと浮遊するように飛翔する。
【宝具】
『境界を操る程度の能力』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大補足:?人
 八雲紫の持つ、『「境界」と名の付くものならほぼ何でも支配下に置く事が出来る』程度の能力。
 本来は『全ての事象を根底から覆す能力』、『論理的創造と破壊の能力』であるらしいが、アサシンはマスターにより『神隠し』の面を強く現界させられているため、『空間の境界を操ってスキマを作る』という用途にしか使用できない。

 このスキマの中は一種の亜空間のようになっており、多数の目が見える。これは外の世界の「欲望が渦巻いている様子」と言うイメージの表れ。また道路標識などの漂流物が漂っている事もあるが、これも「外の世界の役に立たない物」としてのイメージから来るもの。
 これにより離れた空間を繋げる事が可能。

 また、何故かこの聖杯戦争においては『90度以下の鋭角』がないと、空間を繋げる事ができない。

 ――隙間によって繋がれた『異常な角度を持つ空間』を目撃した者は、その精神にダメージを受ける。

『神隠奇譚(ネクロ・ファンタジア)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:? 最大補足:?人
 アサシンの持つ『神隠し』という特性が、マスターである『神隠しの被害者』空目恭一により偏向され、希釈され、そして尖鋭化した事により発生した宝具。
 特定の条件を満たした犠牲者を、『異界』へと連れ去る。
 条件は三つ。

・アサシンに対する正気度喪失の判定に一度でも失敗している
・宝具発動時の幸運での判定に失敗する
・アサシンの真名を知っている

 マスターが異界送りにされた場合、そのサーヴァントも同時に異界へと送られる。

『真名を知っている者に害を与える』という、聖杯戦争の常識の逆を行く宝具。
『異界』はアサシンによって作成される限定的な陣地であり、『赤い空』をした現世と同じ場所に同じ状態で重なり合って存在している。
 脱出はアサシンと同じように空間を操る術を持っている者か、あるいは結界破りの術を持った者でもない限り不可能。(あくまでもアサシンの作った陣地のため、アサシンが消滅する事でも解除はされる)
『異界』の内部そのものには(おそらく陣地効果によって強化されたアサシンが冒涜的な角度から襲いかかってくるだろう事を除いて)危険はないが――
 常人が現世から遠く離れた異界に長く留まる事は、当然ながらその正気を大きく損なう結果となるだろう。

【weapon】
『なし』
 ただし、前述したスキマの中に漂う物体を武器として扱う事ができる。
【人物背景】
 神隠しの主犯。スキマ妖怪。

 本来のクラスはキャスター。このため式神や自在に扱える結界のスキルを失っている。

【サーヴァントとしての願い】
 女性には秘密があるものですわ。



【マスター】空目恭一@Missing
【マスターとしての願い】
 ない。
【weapon】
 ない。
 強いて言うならば豊富な知識。
【能力・技能】
 “異界”の匂いを覚えている嗅覚。

 異形:
 空目恭一は、最後は詠子が呼び起こした“山ノ神”を異界へ返すため、“神隠し”のあやめと共に自ら生贄となり、『“本物”の怪談スポットに入る者に忠告する男女』という物語と化した。
 その為、既に人ではない彼はSANチェックに対して非常に有利な補正を得る。あるいは、微細な異常ならばSANチェックを無視できる。(ただし、全てのSANチェックを無視する事はできない)
 ――ただし、『異界』の住人となった空目恭一は、常人にとっては忌避される対象となる。
 云わば、既に“精神汚染”相当の障害を得ている状態に等しい。
【人物背景】
 神隠しの被害者。
【方針】
 あやめを探す。