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エリ「我ら桜高バレー部!」 34 - (2014/04/06 (日) 15:47:45) の1つ前との変更点

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  まき「大体ねー……私ばかりがねー……そんな不幸に……」 まき「……すぅー……」 三花「あれ、おやすみかな?」 とし美「ちょっと寝かしてくるよ。三花、そっち持って」 三花「ん」 アカネ「あ、私も手伝うよ」 とし美「いいっていいって。二人はそのままここで待ってて」 三花「そういうこと〜。じゃ、行くよ」 アカネ「あ……」 アカネ(……行っちゃった、のはいいんだけど、布団はここにあるんだよ?  あの子たち、まきをどこに連れて行っちゃったの?) エリ「……」 アカネ(……ああ、そういうこと。気を遣ってるってわけね。  いや確かにありがたいんだけど、突然すぎて心の準備が……) エリ「……銭湯で言ったこと」 アカネ「えっ?」 エリ「今二人きりだから、話すよ?」 アカネ「ああ、うん」 アカネ(心の準備なんて、悠長なこと言ってられないか) エリ「……」 アカネ(私の心はどんなにざわついてるか。エリは知ってるのかな。  そして聞いてくれるのかな、私のこの鼓動を……) エリ「えっと……それじゃ、まずは……」 アカネ(……まず私が伝えたいこと、それは……) エリ「ほ……本当にごめんなさい!!」 アカネ「えっ……?」 エリ「私、考えが足りなかった。自分の気持ちは、自分の中で解決するものだよね。  それもキスを使ってなんとかするなんて、許されないことだよね」 エリ「互いがそういう関係を受け容れてるならまだしも、  そうじゃないときになんて……私最低だった」 アカネ「……」 エリ「しかもそれを冗談で済ますとか……ありえないよね」 アカネ「そ、それは誘導した私も悪かったんだし、謝らないで……」 エリ「アカネに非なんて無いよ」 アカネ「ううん! 私、エリの言ったことが冗談であってほしいって!  きっと心のどこかで、そう思ってたんだよ。だから誘導なんかしたんだ」 アカネ「……私、怖かったんだ。なにかが変わって、壊れて、元通りにならないことが……」 エリ「へへ……それ私と同じだね」 エリ「アカネと同じ気持ちだったから、簡単に誘導されちゃった」 アカネ「エリ……」 エリ「でももう誘導されない。けじめはしっかりつけるから」 エリ「それに……元通りは無理だけど、私たちの関係は終わるわけじゃない。  ちょっといびつな形になっても、いつまでも仲良しでいれると思うから」 エリ「って、これ私のセリフじゃないよね。ごめんごめん」 アカネ「ううん。エリの口からそう言ってもらえて嬉しい。  私も同じ気持ちだよ。どんな形になっても、エリとは仲良しでいたい」 エリ「生きてる限り?」 アカネ「ずっとね」 エリ「……あー、もう!」 エリ「そういうこと簡単に言えちゃうんだよね、アカネは」 アカネ「まっすぐさではエリに負けるよ」 エリ「そんなに私、まっすぐなのかな?」 アカネ「まっすぐだよ」 エリ「アカネはそこまでじゃないってこと?」 アカネ「うーん、そうだね……エリに比べちゃうと」 エリ「そっか……」 アカネ「……あー、ごめん。やっぱ無理。今回ばかりは、私の方がまっすぐでいさせて」 エリ「えっ?」 アカネ「自分の気持ちに確かな答えなんて出せていない。  だけど、言わせて。私の方からこんなこと言うのもおかしいと思うけど、言わせて」 アカネ「瀧エリさん。私はあなたが好きです」 エリ「は……はいっ!?」 アカネ「……」 エリ「い、いや、なんで……、えっ!?」 アカネ「言ったでしょ。私、怖かったって。  でもエリは、一度変化したり壊れたりしても仲良しでいてくれるって、言ってくれた」 アカネ「それに、こうもエリは言っていたよね。  私と同じ気持ちだから、って。私も同じ気持ちなんだよ」 アカネ「……正確にはあの日、あのことを言われてからだけど。  でも一度意識しだしちゃうと、胸の奥が熱くなって、気持ちが抑えきれないんだ」 アカネ「これは一時の気の迷いみたいなモノなのかな、とも思ったよ。  それは今でもわからない。……その点もエリと一緒だね」 エリ「アカネ……」 アカネ「それに私とエリがそういう関係になった時には、多くの障害があると思う。  こんなでエリを巻き込むことが本当にいいのかって、自分でも思う」 アカネ「これから大学に行って新しい人と出会うのに、その出会いの一部……、  あるいは人生全ての出会いを変化させてしまうことには、大きな責任を感じてるよ」 アカネ「でも少なくとも。私たちの関係はここで終わらないって。そう確信できたの」 アカネ「……だから最後はエリ自身で決めて。エリ自身の言葉で聞かせて。  エリ自身の気持ちを、私に教えて」 アカネ「私はあなたと正式にお付き合いがしたいです。お願いします」 エリ「……」 エリ(……私の気持ち。そんなことわからない。  だからこそ、あんなふざけた言葉をぶつけちゃったわけで) エリ(ああ、でもダメだ。これ以上考えると、またアカネを利用するみたいになっちゃう) エリ(私はどうしたい? このままアカネと付き合うの?) エリ(……考え無しに言ったことで、あんなことになったっていうのに。  今度は考え無しに付き合ってみろってことなの?) エリ(……) エリ「……アカネ」 アカネ「はい」 エリ「気持ちはすっごい嬉しい。私も胸が破裂しそうだよ」 エリ「でも今は付き合えない」 アカネ「……そっか」 エリ「やっぱり駄目だよ、これじゃ。考え無しに付き合うなんて。  言えた口じゃないけど、恋愛に対しては私、真面目でありたいから」 エリ「今回の一件でそう思った」 アカネ「うん」 エリ「ごめんね、私が発端なのに……自分勝手で……」 アカネ「エリは自分勝手じゃないよ」 アカネ「一度目は考え無しだったけど、今度はしっかりとその意味を考えた。  私は考え無しで付き合ってみてもいいかなと思ったけど、エリがそうじゃなかっただけ」 アカネ「エリがこれ以上責任を感じる必要はないよ」 エリ「アカネ……」 アカネ「……あーあ、ふられちゃったなあ。人生初めての告白だったのに」 エリ「そ、そういうこと目の前で言わないでよ……」 アカネ「ふふ、ごめんごめん。じゃあエリ、二つだけいい?」 エリ「なに?」 アカネ「今後も友達でい続けてくれますか?」 エリ「……当然」 アカネ「それじゃ……もし時間が経っても、  エリのことを想い続けていたら、その時は……」 アカネ「またあなたを好きだと、言ってもいいですか?」 エリ「……当たり前じゃん。何度でもその気持ち、ぶつけてきてよ。  その度、私は悩んで悩んで悩んで、その時の答えを出すから」 エリ「それに……、時間が経てば、私の気持ちも変わるかもだし」 アカネ「エリの方から付き合ってくださいって言ってきたり?」 エリ「ど、どうだろうねー……?」 アカネ「その時には私に彼氏が出来てるかもね。もしかしたら彼女かも?」 エリ「うぐっ」 アカネ「……先のことなんか、わからないよ。わかるのは先が“有る”ことだけ」 アカネ「その中で私がどういう風に答えを出したり、変化させたり、壊したりするのか。  なんだかそれが楽しみで、ちょっとわくわくしてきたかも」 エリ「……そんなこんなで私のことを忘れていくかもしれないよね」 アカネ「エリにしてはネガティブじゃない」 エリ「だって……」 アカネ「大丈夫。こんな可愛いくて、私が大好きになった人のことなんて……」 エリ「アカネ……?」 アカネ「……忘れるわけないから」 エリ「あの、アカネさん……顔が近くないですか……?」 アカネ「今は近づくだけ」 エリ「えっ?」 アカネ「もう一つ段階を進めるのは、エリがそういう答えを出してからだから」 エリ「あ、うん……わかった……」 エリ(……なに残念そうに言ってるんだ、私は) アカネ「……」 エリ「……」 アカネ「……」 エリ「……」  「…………」 エリ(いつまで私たちは見つめ合ってるんだろう……) アカネ「……えり……」 エリ「ん……?」 アカネ「すき……」 エリ「っ!?」 エリ(……もー、だから私はノーって言ったんだよ!?  アカネってこんな悪女だったっけ!?) エリ(いや悪女とは違うかもだけど) エリ(……ん? 扉の磨りガラスに人影が) エリ「あっ」 アカネ「んっ?」 エリ「ああああああー!!」 アカネ「ど、どうしたのエリ?」 エリ「……扉のところ、見て」 アカネ「扉のところって……」 アカネ「……えっ」 エリ(そう、二人はまきを別室で寝かせにいっただけ。  家の中から出て行ったわけじゃない) エリ(そして、しばらく待っていてはくれるかもしれないけど、  二人だって時間が経てば戻ってくる) エリ(でも……) エリ「……盗み聞きはよくないと思うよ三花、とし美!」 三花「げっ、ばれた?」 とし美「だから戻ろうって言ったのに」 アカネ「ど、どこから聞いてたの……?」 とし美「ついさっき戻ってきたところだから、そんなに多くの話は聞いてないよ」 三花「それに扉も閉まったから、声だって聞こえづらいし……」 三花「心配する必要はないよ?」 アカネ「ふーん……」 アカネ「……聞こえづらいってことは、聞こえてたときもあったってことだよね」 三花「うん、まあ……」 アカネ「……うわああああ……もうやだあ……」 三花「そんな恥ずかしいセリフを連呼していたの?」 エリ「人には聞かれたくなかっただろうねえ……」 アカネ「はあああ……最低な気分……今晩は飲ませて……」 とし美「の、飲みすぎないでよ?」 アカネ「うん、わかってる……」 アカネ「……うおおおお、もうヤケじゃあああい!!」 とし美「全然わかってない!!」 三花「図らずも聞いちゃったことは謝るから止めてー!!」 アカネ「誰も止めないで! うわああああん!!」 エリ「あははは……」 エリ(……こりゃ寝るまで収まりそうにないよ。うん、それだったら) エリ「それなら私もどこまでも付き合っちゃうよ、アカネ!」  ‐アカネの部屋‐ まき「……う、うーん。あれ」 まき「もう朝?」 まき(なんで私、アカネちゃんの部屋で寝てるんだろう) まき「……しかも一人だしー」 まき(皆、先に起きちゃったの?)  ‐リビング‐ まき「こ、これは……」 まき(私以外の皆が布団敷いて寝てる……) まき「……ひ」 まき「ひどいよ私だけ仲間外れにして! こんなのあんまりだよー!」 アカネ「まき、うるさい」 まき「あれっ、アカネちゃん起きてたの?」 まき「って、これは私も騒がずにいられないよ!  どうして私だけがアカネちゃんの部屋で寝てたの!」 アカネ「少し飲んだだけで爆睡したのはどこの子だっけ?」 まき「うっ」 アカネ「そういうこと」 まき「……まさか私があそこまで弱いとは思わなかったんだよー」 アカネ「私としてはイメージ通りだったけど」 まき「それで、エリちゃんとは元通り話せるようになったの?」 アカネ「ん……元通りってわけじゃないよ」 まき「えっ?」 アカネ「詳しい話は追々ね。その前に、皆を起こすの手伝ってくれる?」 アカネ「ご飯食べてから、近くの体育館に行こうと思ってるからさ」 まき「おっ、いいねー。前はビーチバレーだったけど、  今度は正真正銘私たちのバレーをするんだね?」 アカネ「だと思ったんだけど……」 まき「だけど?」 アカネ「エリが突然セパタクローしたいとか言い始めて……」 まき「セパタクロー!?」 アカネ「“足を使ったバレーってことでしょ?”とか気楽そうに言ってたよ」 まき「絶対気楽なスポーツじゃないよ、それ」 アカネ「だよねえ」 まき「……でもどこか乗り気なアカネちゃん」 アカネ「え、そう見える?」 まき「その顔を見たらわかるよー」 まき「だけど良かった。いつものアカネちゃんだ」 アカネ「いつもの私?」 まき「うん! いつものだよ!」 アカネ「……そっか、いつもの私かあ……ふふっ」 まき「ご機嫌だね?」 アカネ「まあね。それじゃ、まきは皆を起こして回って。  私は朝ご飯用意してるから」 まき「わかったよー。……みんな、起きてー!」 アカネ(学校のある日は、毎日エリとお弁当を食べていた) アカネ(いま私が作ってる朝ご飯は、そんな毎日の終わりなんだ) 三花「ん〜……あれ、まきがこっちの部屋来てる〜……?」 とし美「そりゃ起きたら周り誰もいないもんね……焦る焦る……」 アカネ(……そう思うと、少しこの朝ご飯が特別に見えてきて) アカネ(なんだかじんわりきちゃうんだよね……) まき「ほらほら、しゃきっとして!」 エリ「朝から子供は元気だなあ……」 まき「こらそこ!」 アカネ(……とか一人思ってたけど、ちょっと待って) アカネ(私って今、エリとの京都旅行を計画しちゃってるよね?  案外早くそんな毎日が帰ってきちゃうよね? アカネ(いや正確には毎日ではないけれども、でもさ……) アカネ(うーん、なんというか、その……) アカネ「……釈然としない」 エリ「えっ?」 第二十六話「桜高バレー部の解答」‐完‐  ・  ・  ・  ‐数年後・京都府某所‐  えっ? なにか言った?。  ああ、ごめん。ちょっと泣ける話を思い出しててね。聞いてなかった。  怒らないでよ、謝るってば。ん?  いや我ながら情けなくて泣ける話。うんそう、全然良い意味じゃないんだよ。  いいよ話続けて。聞きたいことがあったんでしょ。  まあ久しぶりに会ったしね、聞きたいことも山ほどあるよねえ。  えっ、美容師? そりゃもちろんなったよ。  まだ勉強することが多いけど、もうそれなりに経験はあるよ。今度遊びにおいでよ。  ちょっとだけ安くしてあげるからさ。心配しないで、坊主にはしないから。  そっちはどう。大学生活で面白いこととか一杯あるんでしょ。サークルとかさ。  えー、飲みサーってどうなの?  あれ、エリは入ってないんだ。まあ飲む友達には困ることなさそうだしね。  私はね、髪切ってるときに色んな人と話すんだけど、この間びっくりしたことがあったの。  なんだと思う? 違うよ。もっと身近な人の話題。  あのね、大学で三花の友達っていう人が来てくれたの。  その友達の実家が、私の働いてるとこの近くだったみたい。  話を聞く限り、三花もまるで変わってないんだって。  不思議だよね、私とかエリは変わってるのに。それとも実際に会ったら違うのかな。  ほら、人から聞く話だけだと、わからないところあるじゃん?  いやいやエリも変わったって。私も変わってると思うよ。  髪型なんか高校の時とは変えてるし。……うん、ありがと。エリも可愛いよ。  照れないでよー、言ったこっちも恥ずかしいじゃん。  そういえばさっきからなにか握りしめてるけど、なにそれ?  昨日神社で買ったって……、昨日から来てるの? 日数が足りない? さすがね。  それで、なに買ったの? ……あ、可愛いお守りだね。  ちょっとよく見せてよー。なんでお守り一つでそんな恥ずかしがるのさ。  じゃあさ、どこで買ったのかだけ教えてよ。……ふーん、野宮神社っていうの。  計画の中に無いから調べてなかったけど、どんな神社なの?  ちょ、ちょっと! どうして逃げるの! 待ってってば! ねえエリ、そのお守りはなんなのー!?  ふう、やっと捕まえた。なんで逃げたりしたの。  ……なにそれ。まだその時じゃない、って言われても。  いつがその時なの? いつやるの? そう、今でしょ。  ごめんごめん、今のはわざと。  今日中に教えてくれるんだね。うん。それならいいよ。  ……答え合わせ、待ってるから。  ≪エリ「我ら桜高バレー部!」≫‐ お し ま い ‐ #openclose(show=あとがき){これでこの作品は完結です。途中から大きく更新頻度が低下してしまい、ご迷惑をおかけしました。 他の作品でも三年二組の子たちをはじめ、モブの子たちにスポットライトが当たればいいなと思います。 それでは、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。 また次の作品で会うことがあれば、よろしくお願いします。} [[戻る >エリ「我ら桜高バレー部!」]]
  まき「大体ねー……私ばかりがねー……そんな不幸に……」 まき「……すぅー……」 三花「あれ、おやすみかな?」 とし美「ちょっと寝かしてくるよ。三花、そっち持って」 三花「ん」 アカネ「あ、私も手伝うよ」 とし美「いいっていいって。二人はそのままここで待ってて」 三花「そういうこと〜。じゃ、行くよ」 アカネ「あ……」 アカネ(……行っちゃった、のはいいんだけど、布団はここにあるんだよ?  あの子たち、まきをどこに連れて行っちゃったの?) エリ「……」 アカネ(……ああ、そういうこと。気を遣ってるってわけね。  いや確かにありがたいんだけど、突然すぎて心の準備が……) エリ「……銭湯で言ったこと」 アカネ「えっ?」 エリ「今二人きりだから、話すよ?」 アカネ「ああ、うん」 アカネ(心の準備なんて、悠長なこと言ってられないか) エリ「……」 アカネ(私の心はどんなにざわついてるか。エリは知ってるのかな。  そして聞いてくれるのかな、私のこの鼓動を……) エリ「えっと……それじゃ、まずは……」 アカネ(……まず私が伝えたいこと、それは……) エリ「ほ……本当にごめんなさい!!」 アカネ「えっ……?」 エリ「私、考えが足りなかった。自分の気持ちは、自分の中で解決するものだよね。  それもキスを使ってなんとかするなんて、許されないことだよね」 エリ「互いがそういう関係を受け容れてるならまだしも、  そうじゃないときになんて……私最低だった」 アカネ「……」 エリ「しかもそれを冗談で済ますとか……ありえないよね」 アカネ「そ、それは誘導した私も悪かったんだし、謝らないで……」 エリ「アカネに非なんて無いよ」 アカネ「ううん! 私、エリの言ったことが冗談であってほしいって!  きっと心のどこかで、そう思ってたんだよ。だから誘導なんかしたんだ」 アカネ「……私、怖かったんだ。なにかが変わって、壊れて、元通りにならないことが……」 エリ「へへ……それ私と同じだね」 エリ「アカネと同じ気持ちだったから、簡単に誘導されちゃった」 アカネ「エリ……」 エリ「でももう誘導されない。けじめはしっかりつけるから」 エリ「それに……元通りは無理だけど、私たちの関係は終わるわけじゃない。  ちょっといびつな形になっても、いつまでも仲良しでいれると思うから」 エリ「って、これ私のセリフじゃないよね。ごめんごめん」 アカネ「ううん。エリの口からそう言ってもらえて嬉しい。  私も同じ気持ちだよ。どんな形になっても、エリとは仲良しでいたい」 エリ「生きてる限り?」 アカネ「ずっとね」 エリ「……あー、もう!」 エリ「そういうこと簡単に言えちゃうんだよね、アカネは」 アカネ「まっすぐさではエリに負けるよ」 エリ「そんなに私、まっすぐなのかな?」 アカネ「まっすぐだよ」 エリ「アカネはそこまでじゃないってこと?」 アカネ「うーん、そうだね……エリに比べちゃうと」 エリ「そっか……」 アカネ「……あー、ごめん。やっぱ無理。今回ばかりは、私の方がまっすぐでいさせて」 エリ「えっ?」 アカネ「自分の気持ちに確かな答えなんて出せていない。  だけど、言わせて。私の方からこんなこと言うのもおかしいと思うけど、言わせて」 アカネ「瀧エリさん。私はあなたが好きです」 エリ「は……はいっ!?」 アカネ「……」 エリ「い、いや、なんで……、えっ!?」 アカネ「言ったでしょ。私、怖かったって。  でもエリは、一度変化したり壊れたりしても仲良しでいてくれるって、言ってくれた」 アカネ「それに、こうもエリは言っていたよね。  私と同じ気持ちだから、って。私も同じ気持ちなんだよ」 アカネ「……正確にはあの日、あのことを言われてからだけど。  でも一度意識しだしちゃうと、胸の奥が熱くなって、気持ちが抑えきれないんだ」 アカネ「これは一時の気の迷いみたいなモノなのかな、とも思ったよ。  それは今でもわからない。……その点もエリと一緒だね」 エリ「アカネ……」 アカネ「それに私とエリがそういう関係になった時には、多くの障害があると思う。  こんなでエリを巻き込むことが本当にいいのかって、自分でも思う」 アカネ「これから大学に行って新しい人と出会うのに、その出会いの一部……、  あるいは人生全ての出会いを変化させてしまうことには、大きな責任を感じてるよ」 アカネ「でも少なくとも。私たちの関係はここで終わらないって。そう確信できたの」 アカネ「……だから最後はエリ自身で決めて。エリ自身の言葉で聞かせて。  エリ自身の気持ちを、私に教えて」 アカネ「私はあなたと正式にお付き合いがしたいです。お願いします」 エリ「……」 エリ(……私の気持ち。そんなことわからない。  だからこそ、あんなふざけた言葉をぶつけちゃったわけで) エリ(ああ、でもダメだ。これ以上考えると、またアカネを利用するみたいになっちゃう) エリ(私はどうしたい? このままアカネと付き合うの?) エリ(……考え無しに言ったことで、あんなことになったっていうのに。  今度は考え無しに付き合ってみろってことなの?) エリ(……) エリ「……アカネ」 アカネ「はい」 エリ「気持ちはすっごい嬉しい。私も胸が破裂しそうだよ」 エリ「でも今は付き合えない」 アカネ「……そっか」 エリ「やっぱり駄目だよ、これじゃ。考え無しに付き合うなんて。  言えた口じゃないけど、恋愛に対しては私、真面目でありたいから」 エリ「今回の一件でそう思った」 アカネ「うん」 エリ「ごめんね、私が発端なのに……自分勝手で……」 アカネ「エリは自分勝手じゃないよ」 アカネ「一度目は考え無しだったけど、今度はしっかりとその意味を考えた。  私は考え無しで付き合ってみてもいいかなと思ったけど、エリがそうじゃなかっただけ」 アカネ「エリがこれ以上責任を感じる必要はないよ」 エリ「アカネ……」 アカネ「……あーあ、ふられちゃったなあ。人生初めての告白だったのに」 エリ「そ、そういうこと目の前で言わないでよ……」 アカネ「ふふ、ごめんごめん。じゃあエリ、二つだけいい?」 エリ「なに?」 アカネ「今後も友達でい続けてくれますか?」 エリ「……当然」 アカネ「それじゃ……もし時間が経っても、  エリのことを想い続けていたら、その時は……」 アカネ「またあなたを好きだと、言ってもいいですか?」 エリ「……当たり前じゃん。何度でもその気持ち、ぶつけてきてよ。  その度、私は悩んで悩んで悩んで、その時の答えを出すから」 エリ「それに……、時間が経てば、私の気持ちも変わるかもだし」 アカネ「エリの方から付き合ってくださいって言ってきたり?」 エリ「ど、どうだろうねー……?」 アカネ「その時には私に彼氏が出来てるかもね。もしかしたら彼女かも?」 エリ「うぐっ」 アカネ「……先のことなんか、わからないよ。わかるのは先が“有る”ことだけ」 アカネ「その中で私がどういう風に答えを出したり、変化させたり、壊したりするのか。  なんだかそれが楽しみで、ちょっとわくわくしてきたかも」 エリ「……そんなこんなで私のことを忘れていくかもしれないよね」 アカネ「エリにしてはネガティブじゃない」 エリ「だって……」 アカネ「大丈夫。こんな可愛いくて、私が大好きになった人のことなんて……」 エリ「アカネ……?」 アカネ「……忘れるわけないから」 エリ「あの、アカネさん……顔が近くないですか……?」 アカネ「今は近づくだけ」 エリ「えっ?」 アカネ「もう一つ段階を進めるのは、エリがそういう答えを出してからだから」 エリ「あ、うん……わかった……」 エリ(……なに残念そうに言ってるんだ、私は) アカネ「……」 エリ「……」 アカネ「……」 エリ「……」  「…………」 エリ(いつまで私たちは見つめ合ってるんだろう……) アカネ「……えり……」 エリ「ん……?」 アカネ「すき……」 エリ「っ!?」 エリ(……もー、だから私はノーって言ったんだよ!?  アカネってこんな悪女だったっけ!?) エリ(いや悪女とは違うかもだけど) エリ(……ん? 扉の磨りガラスに人影が) エリ「あっ」 アカネ「んっ?」 エリ「ああああああー!!」 アカネ「ど、どうしたのエリ?」 エリ「……扉のところ、見て」 アカネ「扉のところって……」 アカネ「……えっ」 エリ(そう、二人はまきを別室で寝かせにいっただけ。  家の中から出て行ったわけじゃない) エリ(そして、しばらく待っていてはくれるかもしれないけど、  二人だって時間が経てば戻ってくる) エリ(でも……) エリ「……盗み聞きはよくないと思うよ三花、とし美!」 三花「げっ、ばれた?」 とし美「だから戻ろうって言ったのに」 アカネ「ど、どこから聞いてたの……?」 とし美「ついさっき戻ってきたところだから、そんなに多くの話は聞いてないよ」 三花「それに扉も閉まったから、声だって聞こえづらいし……」 三花「心配する必要はないよ?」 アカネ「ふーん……」 アカネ「……聞こえづらいってことは、聞こえてたときもあったってことだよね」 三花「うん、まあ……」 アカネ「……うわああああ……もうやだあ……」 三花「そんな恥ずかしいセリフを連呼していたの?」 エリ「人には聞かれたくなかっただろうねえ……」 アカネ「はあああ……最低な気分……今晩は飲ませて……」 とし美「の、飲みすぎないでよ?」 アカネ「うん、わかってる……」 アカネ「……うおおおお、もうヤケじゃあああい!!」 とし美「全然わかってない!!」 三花「図らずも聞いちゃったことは謝るから止めてー!!」 アカネ「誰も止めないで! うわああああん!!」 エリ「あははは……」 エリ(……こりゃ寝るまで収まりそうにないよ。うん、それだったら) エリ「それなら私もどこまでも付き合っちゃうよ、アカネ!」  ‐アカネの部屋‐ まき「……う、うーん。あれ」 まき「もう朝?」 まき(なんで私、アカネちゃんの部屋で寝てるんだろう) まき「……しかも一人だしー」 まき(皆、先に起きちゃったの?)  ‐リビング‐ まき「こ、これは……」 まき(私以外の皆が布団敷いて寝てる……) まき「……ひ」 まき「ひどいよ私だけ仲間外れにして! こんなのあんまりだよー!」 アカネ「まき、うるさい」 まき「あれっ、アカネちゃん起きてたの?」 まき「って、これは私も騒がずにいられないよ!  どうして私だけがアカネちゃんの部屋で寝てたの!」 アカネ「少し飲んだだけで爆睡したのはどこの子だっけ?」 まき「うっ」 アカネ「そういうこと」 まき「……まさか私があそこまで弱いとは思わなかったんだよー」 アカネ「私としてはイメージ通りだったけど」 まき「それで、エリちゃんとは元通り話せるようになったの?」 アカネ「ん……元通りってわけじゃないよ」 まき「えっ?」 アカネ「詳しい話は追々ね。その前に、皆を起こすの手伝ってくれる?」 アカネ「ご飯食べてから、近くの体育館に行こうと思ってるからさ」 まき「おっ、いいねー。前はビーチバレーだったけど、  今度は正真正銘私たちのバレーをするんだね?」 アカネ「だと思ったんだけど……」 まき「だけど?」 アカネ「エリが突然セパタクローしたいとか言い始めて……」 まき「セパタクロー!?」 アカネ「“足を使ったバレーってことでしょ?”とか気楽そうに言ってたよ」 まき「絶対気楽なスポーツじゃないよ、それ」 アカネ「だよねえ」 まき「……でもどこか乗り気なアカネちゃん」 アカネ「え、そう見える?」 まき「その顔を見たらわかるよー」 まき「だけど良かった。いつものアカネちゃんだ」 アカネ「いつもの私?」 まき「うん! いつものだよ!」 アカネ「……そっか、いつもの私かあ……ふふっ」 まき「ご機嫌だね?」 アカネ「まあね。それじゃ、まきは皆を起こして回って。  私は朝ご飯用意してるから」 まき「わかったよー。……みんな、起きてー!」 アカネ(学校のある日は、毎日エリとお弁当を食べていた) アカネ(いま私が作ってる朝ご飯は、そんな毎日の終わりなんだ) 三花「ん〜……あれ、まきがこっちの部屋来てる〜……?」 とし美「そりゃ起きたら周り誰もいないもんね……焦る焦る……」 アカネ(……そう思うと、少しこの朝ご飯が特別に見えてきて) アカネ(なんだかじんわりきちゃうんだよね……) まき「ほらほら、しゃきっとして!」 エリ「朝から子供は元気だなあ……」 まき「こらそこ!」 アカネ(……とか一人思ってたけど、ちょっと待って) アカネ(私って今、エリとの京都旅行を計画しちゃってるよね?  案外早くそんな毎日が帰ってきちゃうよね? アカネ(いや正確には毎日ではないけれども、でもさ……) アカネ(うーん、なんというか、その……) アカネ「……釈然としない」 エリ「えっ?」 第二十六話「桜高バレー部の解答」‐完‐  ・  ・  ・  ‐数年後・京都府某所‐  えっ? なにか言った?。  ああ、ごめん。ちょっと泣ける話を思い出しててね。聞いてなかった。  怒らないでよ、謝るってば。ん?  いや我ながら情けなくて泣ける話。うんそう、全然良い意味じゃないんだよ。  いいよ話続けて。聞きたいことがあったんでしょ。  まあ久しぶりに会ったしね、聞きたいことも山ほどあるよねえ。  えっ、美容師? そりゃもちろんなったよ。  まだ勉強することが多いけど、もうそれなりに経験はあるよ。今度遊びにおいでよ。  ちょっとだけ安くしてあげるからさ。心配しないで、坊主にはしないから。  そっちはどう。大学生活で面白いこととか一杯あるんでしょ。サークルとかさ。  えー、飲みサーってどうなの?  あれ、エリは入ってないんだ。まあ飲む友達には困ることなさそうだしね。  私はね、髪切ってるときに色んな人と話すんだけど、この間びっくりしたことがあったの。  なんだと思う? 違うよ。もっと身近な人の話題。  あのね、大学で三花の友達っていう人が来てくれたの。  その友達の実家が、私の働いてるとこの近くだったみたい。  話を聞く限り、三花もまるで変わってないんだって。  不思議だよね、私とかエリは変わってるのに。それとも実際に会ったら違うのかな。  ほら、人から聞く話だけだと、わからないところあるじゃん?  いやいやエリも変わったって。私も変わってると思うよ。  髪型なんか高校の時とは変えてるし。……うん、ありがと。エリも可愛いよ。  照れないでよー、言ったこっちも恥ずかしいじゃん。  そういえばさっきからなにか握りしめてるけど、なにそれ?  昨日神社で買ったって……、昨日から来てるの? 日数が足りない? さすがね。  それで、なに買ったの? ……あ、可愛いお守りだね。  ちょっとよく見せてよー。なんでお守り一つでそんな恥ずかしがるのさ。  じゃあさ、どこで買ったのかだけ教えてよ。……ふーん、野宮神社っていうの。  計画の中に無いから調べてなかったけど、どんな神社なの?  ちょ、ちょっと! どうして逃げるの! 待ってってば! ねえエリ、そのお守りはなんなのー!?  ふう、やっと捕まえた。なんで逃げたりしたの。  ……なにそれ。まだその時じゃない、って言われても。  いつがその時なの? いつやるの? そう、今でしょ。  ごめんごめん、今のはわざと。  今日中に教えてくれるんだね。うん。それならいいよ。  ……答え合わせ、待ってるから。  ≪エリ「我ら桜高バレー部!」≫‐ お し ま い ‐ #openclose(show=あとがき){これでこの作品は完結です。途中から大きく更新頻度が低下してしまい、ご迷惑をおかけしました。 他の作品でも三年二組の子たちをはじめ、モブの子たちにスポットライトが当たればいいなと思います。 それでは、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。 また次の作品で会うことがあれば、よろしくお願いします。} [[戻る >エリ「我ら桜高バレー部!」]]

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