「エリ「我ら桜高バレー部!」 13」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

エリ「我ら桜高バレー部!」 13 - (2014/04/06 (日) 15:32:15) のソース

  *  *  *


エリ(……なんという……)

まき(接戦!)

とし美(でも、あと一点とれば、私たちの勝ち……。
 このチャンスを逃すわけにはいかない……!)

とし美(……でも)

後輩C「はあ……はあ……」

とし美(みんな、スタミナを想像以上に消費している。
 やっぱりアカネがいない穴は大きかった)

とし美(どうする……どう、攻撃する……?)

三花「……」

とし美「……三花?」

三花「とし美。さっきはアカネの我が侭を聞かなかった私だけど……。
 一度だけ、私の我が侭に付き合ってくれないかな?」

とし美「えっ……」


  *  *  *


とし美(あの後、タイムアウトを取った私たちは、
 先生に直接訴えてみた)

とし美(たった三十秒で、この案が採用されるとは考えられない。
 そう思っていたのに、今私たちはそれを実現してしまった)



アカネ「……」



とし美(アカネが、私たちと同じコートに立っている!)

三花(……これは賭け。もちろん、私個人が成功の確信を持っている賭け。
 アカネをコートに呼びもどし、攻撃の選択肢として加える!)

三花(こちらからのサーブで決まれば上等、だけどそう上手くはいかない。
 なら、返球されたものを、相手コートにぶちこむ以外の道は無い)

三花(前衛には私、とし美、アカネ。全員三年生。
 さらに後衛には、エリとまきもいる。
 三年生が全員集結しているこの瞬間、生かさず殺す道理がどこにある!)

とし美(先生が提示した条件は一つ。
 この一回で決めなければ、アカネを再び下げる)

とし美(……十分すぎるよね、三花)

とし美(だって三花は、この瞬間しか見てないんだから!)


 「ピーッ!」


エリ「……いくよっ! はい!」

まき(良いサーブ! ……だけど、相手も上手い。
 見事セッターに二球目を返してる)

まき(ボールは相手のレフト、つまりエースへ。それなら、私の役目は!)

とし美「まき!」

まき「任せて! それっ!」


後輩B(凄い! あんな剛速球を、三花先輩の元へ返すなんて!)


三花「良いよ! それじゃ、あとは頼んだ!」

後輩C(三花先輩のトスが上がる。そして、とし美先輩の頭上にボールが……!
 でも、相手が警戒しているのはアカネ先輩!)

とし美(……後は任せたよ)


後輩A(やっぱりとし美先輩はおとり……。
 本命はアカネ先輩の強烈なスパイク!)

後輩A(でも相手も、それに気付いている!
 駄目! もうマークされちゃってる!)


とし美(……そうだろうね)

後輩C(あれ? このボール、やけに伸びていく……)

とし美(全く、うちの部長は本当怖いよ)

アカネ「……ふう」



アカネ「……さあ決めちゃって、エリ!」

エリ「でやあああっ!」

とし美(アカネを“おとり”として使うんだからね!)


 ・

 ・

 ・


 「ピーッ!」


 ・

 ・

 ・


 ‐外‐


エリ「……」

アカネ「……」

三花「……」

とし美「……」

まき「……終わっちゃったね」

三花「終わっちゃったね〜……」

とし美「あの学校に勝てても、次の学校がもっと強いなんて。
 そうなんだろうって、知ってても、ね」

三花「あそこ強すぎるよ〜」

とし美「全く、同感。インハイ出場を何度も果たしてる学校なんだってさ」

三花「そりゃ強いわけだねっ」

アカネ「……」

まき「でもでも、三花ちゃんのあのトス凄かった!
 角度と飛距離が絶妙で、三人のうち誰が攻撃していてもおかしくなかったよ!」

三花「ん、ありがとさん!」

エリ「……」

三花「……ほらほら、エリもアカネも、だんまりは駄目だよ〜。
 なにか喋ってくれないと〜」

エリ「……だ、だってざあ……!」

三花「な、泣くなよ〜……。そんなの、反則だよ……」

アカネ「……うっ、うううっ……!」

三花「先に泣かれちゃあ、駄目なんだってば……」

まき「……うわあああん……!」

三花「もう、まき! なんで泣ぐんだよ゛お〜……!」

まき「三花ちゃんこそおおお……!」

三花「ち、違うし……別に゛……」

とし美「……三花……」

三花「と、とし美……?」

とし美「良いんだよ、もう……終わっちゃたんだから゛ざ……」

三花「……ばかあ……とし美の、ばかあ……!」


 「うわああああん……!」


  *  *  *


後輩A「……」

後輩B「おっ、泣いてるのかな?」

後輩A「うるさい」

後輩C「……涙は人に隠したいもの」

後輩C「だけど、私は知ってる。
 今この目から出ている涙は、とっても綺麗なものなんだって」

後輩A「……慰めのつもり?」

後輩C「とことん泣いて良いよっていう、許し」

後輩A「……全然可愛くない」


  *  *  *


三花「……集合!」


 「……」


三花「本日をもちまして、私たち三年生は引退します。
 ですが、それでも私たちはあなたたちの先輩です」

三花「……困ったことがあったら、なんでも相談しにきてね?」


 「はい!」


三花「では、三年生全員から一言ずつ頂こうと思います。
 というわけで、まずはとし美!」

とし美「えっ、私?」

エリ「緊張するんじゃないよー!」

とし美「してないしてない」

とし美「えっと……、今まで三年生はお疲れ様でした。
 二年生は部活の最高学年として、部を引っ張って上げてください。
 一年生はそんな先輩の姿を見て、得るモノは得てください」

とし美「私は副部長という立場でみんなを見ていましたが、
 きっと大丈夫だと思います。みんな、充分実力があります」

とし美「もちろんそれは、バレーの技術という面だけでない。
 ……ということも私の方から加えて言っておきます」

とし美「ありがとうございました!」


 「ありがとうございました!」


とし美「次、まき」

まき「私はこの部活に入って、精一杯頑張って、
 みんなと笑いあって……本当に楽しかったです」

まき「先輩らしくない扱いとかも沢山受けてきましたが、
 それでもここまで走りきることが出来て、
 本当に良かったと思います。ありがとうございました!」

後輩B「まぎぜんばい〜……!」

まき「はい次、エリちゃん!」

後輩B「うう……」

まき「……よしよし」

エリ「では、まきの唯一といってもいい
 先輩らしさを見せてもらったところで、私の出番です」

エリ「みんな、こんな私たちについてきてくれて、ありがと!」

エリ「思えば苦労だらけの二年半だったけど、
 それ以上に楽しいことも沢山ありました」

エリ「そんな時間を過ごせた仲間に、ありがとうございました!
 そして、あとは任せました!」


 「はいっ!」


エリ「ラストはアカネ!」

アカネ「こういうのって、普通部長が最後じゃないかと思うけど」

三花「だって私、最初に言っちゃったんだもん〜」

アカネ「いちいちこういう役回りなのは、私の人生なのかもね……」

アカネ「……さて、みんなお疲れ様。
 大体言いたいことは外の先輩たちが言っちゃって、
 私に言葉なんか残されてないんだけど」

アカネ「私の個人的なことを一つ」

アカネ「みんなに残された時間は、思った以上に短いです。
 人生という物差しで測れば、高校生活なんてあっという間」

アカネ「だけど高校三年間の密度の高さは、
 二年生はわかっていると思うけど、他の三年間を凌駕しています」

アカネ「そんな三年間があっという間、ということは、
 もうみなさんに立ち止まってる暇はないということです」

アカネ「……後悔しないよう、全力を尽くしていってください!」


 「はいっ!!」


三花「……それじゃ、解散! ありがとうございました!」


 「ありがとうございましたーっ!」


  *  *  *


三花「じゃあね、二人とも〜」

エリ「じゃあねー!」

アカネ「……」

エリ「……いやあ、終わったねえ」

アカネ「部活が終わっても、受験があるでしょ」

エリ「うっ、痛いところを。き、今日ぐらい多めに見てくれないかな?」

アカネ「まあ……それでいいなら、いいんじゃない?」

エリ「そうやってアカネは意地悪言うー……」

アカネ「……」

エリ「……ねえ、アカネ」

エリ「私ね、楽しかったよ。みんなとバレーが出来て」

エリ「みんなのこと、大好きになった。当然、アカネのことも大好きだよ」

アカネ「……ありがと」

エリ「……だから」


 「ぎゅっ」


エリ「私の胸を、貸してあげようではないか!」

アカネ「……なんか頼りない胸だね……」

エリ「おいこら」

アカネ「でも……」



アカネ「私も大好きだからね、エリのこと……」

エリ「……ん、そうかい……」



第十話「桜高バレー部の終幕」‐完‐


[[14>エリ「我ら桜高バレー部!」 14]]