梓「こんばんは」
紬「梓ちゃん。きてくれたんだ」
梓「はい。ムギ先輩のお誘いですから」
紬「うふふ」
梓「それで、何をはじめるんですか?」
紬「それはね、これを作るの」
梓「これは‥ ‥ペーパークラフトですか?」
紬「ええ、これはね、雛人形を作れるペーパークラフト。インターネットで探して印刷したの」
梓「この紙‥ ‥光沢紙ですね」
紬「ちょうどいい固さで、発色もいいから」
梓「なんで今更雛人形なんですか? もうひな祭りは終わりましたが‥ ‥」
紬「この前みんなで話したじゃない。どのお家でも雛人形は出さなかったって」
梓「はい。さすがに私達の年齢だと‥ ‥」
紬「でも、一年に一度の女の子の日でしょ。お祝いしないのは勿体無いと思うから」
梓「それで雛人形ですか」
紬「えぇ、前々からペーパークラフトをやってみたいと思ってたのもあるから」
梓「なるほど」
紬「えっと‥ ‥あんまり乗り気じゃない?」
梓「そんなことないです。さっそく作りましょう」
紬「ええ、50枚くらいしかないから、すぐに終わると思うわ」
梓「はい」
―少女たち作業中―
梓「あれ、ちゃんとお内裏さまとお雛様なんですね」
紬「えっ?」
梓「ムギ先輩のことだからお雛様を二人にするのかと思いました」
紬「‥ ‥梓ちゃん。何か勘違いしてるみたいだけど、私は男女の恋愛もきらいじゃないのよ」
梓「‥‥えっ」
紬「女の子のことを好きになっちゃっただけで」
梓「‥ ‥そうでしたか」
紬「ええ、そうよ」
梓「‥ ‥」
紬「‥ ‥」
梓「こうやって作業するのも結構楽しいです」
紬「そう?」
梓「はい。私不器用だからどうなるかと思いましたが」
紬「‥ ‥」
梓「‥ ‥む」
紬「どうしたの?」
梓「フォローしてくれないんですか?」
紬「えっと‥ ‥アズサチャンハブキヨウナンカジャアリマセン!」
梓「むむむ」
紬「なにがむむむよ」ダキッ
梓「ふん。どうせ私は不器用です」
紬「梓ちゃんは不器用でもいいのよ」
梓「‥ ‥どうしてですか?」
紬「私がいつも傍にいるから」
梓「‥ ‥またそういうことを面と向かって」
紬「梓ちゃん、顔が真っ赤」
梓「‥ ‥なんだか悔しいです」
紬「ふふふ。私のほうが一枚上手みたいね」
梓「でもいいです。ずっと傍にいてくれるなら」ギュ
紬「あ、あずさちゃん」
梓「くすっ、ムギ先輩も真っ赤です」
紬「さて、作業作業」
梓「はい。作業を再開しましょう」
―少女たち作業中―
紬「できた」
梓「あっさりでしたね」
紬「明日の昼、りっちゃんたちを呼んで簡単なひな祭りをやろうと思うのだけど」
梓「もう誘ってあるんですか?」
紬「ええ」
梓「そうですか。あの‥ ‥」
紬「どうしたの?」
梓「今日は泊まっていっていいですか」
紬「そのつもりで来たんでしょ?」
梓「‥ ‥はい」
紬「ふふ。帰るって言っても帰してあげないんだから」
―消灯後―
「おいで‥ ‥」
梓ちゃんは黙ったまま、私の腕に収まってくれました。
私は梓ちゃんのツインテールを解いてあげます。
自由になった髪ををそっと撫でてあげました。
梓ちゃんは目を細めてリラックスしてくれたみたいです。
私は抱きしめる力を弱めます。
すると梓ちゃんは一言。
「今夜は冷えますね」
私は梓ちゃんをもう一度強く抱きしめました。
すると梓ちゃんもぎゅっと抱きしめてくれました。
肌が密接してる部分にじわっと汗が滲んでくるのがわかりました。
梓ちゃんはちょっと熱いぐらいが好きみたいです。
だから、この不快感にも既に慣れちゃいました。
梓ちゃんは私の首筋に顔を近づけて、匂いを嗅いでいます。
なんでも私の匂いを嗅ぐと安心して眠れるそうです。
ちょっと嫌だけど、梓ちゃんが望むなら断る理由なんてありません。
おかえしに、私は梓ちゃんの耳を優しく噛んであげます。
何かを抗議したそうな顔でこっちを睨みつける梓ちゃん。
それが可愛くて、私は何度も何度も甘噛します。
梓ちゃんから甘い声が零れてくる頃、私は甘噛をやめます。
エッチなことはまだしません。
私達にはまだ早いから。
二人とも大学生になったら、そのときは‥ ‥。
‥ ‥と、まだまだ先のお話です。
しばらく私の匂いを嗅いだ後、梓ちゃんは私の胸に顔を埋めて丸くなりました。
丸くなった梓ちゃんは猫みたいで。
私は猫になった梓ちゃんを抱きしめたまま、眠りました。
―次の日―
紬「あと3時間ぐらいでりっちゃんたちが来ちゃうね」
梓「ふたりきりの時間もあとちょっとですか」
紬「ふふ。今週末も楽しかったわ~。梓ちゃんは?」
梓「私は‥ ‥。私も楽しかったです」
紬「そう? それならよかった」
梓「だけどムギ先輩」
紬「うん?」
梓「‥ ‥なんの用事もなくても誘ってくれていいんですよ」
梓「いつだって駆けつけますから」
紬「梓ちゃん‥ ‥」
梓「特に寒い日は湯たんぽとして重宝しますから」
紬「むー」
梓「いいことじゃないですか」
紬「むむむ。夏は私なんていらないの?」
梓「夏は‥ ‥私が抱きついて冷やしてあげます」
紬「‥ ‥たぶん逆効果」
梓「いいんです。ふたりで抱きついていっぱい汗かきましょう」
紬「‥ ‥梓ちゃんってちょっと変わった性癖よね?」
梓「そうかもしれません。だから‥ ‥いつでも呼んでくださいね。ムギ先輩」
紬「うんっ!」
おしまいっ!
最終更新:2013年03月10日 23:40