ガチャッ
梓「お疲れ様です。今日はちゃんと練習……」
律「ははっ、みーお。口元にケーキのクリームがついてるぞ?」ペロッ
律「ん、美味しい。澪のだからかな? より甘く感じるよ」
澪「や、やめてくれよ、恥ずかしい……」
澪「……でも、私がこんな姿を見せるのは律にだけなんだからな?」
律「分かってるさ。勿論、私の特別も澪だけだよ」
澪「嬉しい……そしてもっと嬉しいのは……そんな律と出会えたことだ」
律「澪……!」
澪「律……!」
梓「……お二人、どげんしたとですか?」
唯「あずにゃん、口調、口調」
梓「あっ、すみません。なにぶん、少し混乱していたもので」
紬「その説明は私から」
梓「百合店長!」
紬「実はね、りっちゃんと澪ちゃんは頭をぶつけてしまったの」
梓「はぁ」
紬「……」
唯「うんたん♪ うんたん♪」
梓「……」
梓「え、それで説明終わりなんです?」
紬「とても不幸な事故だったわ……ぐすっ……」
梓「(アレに至るまでの経緯が無茶苦茶気になるんですが……
後ろにチラッと見える薬のビンみたいなものは何なんでしょうか。私、気になります)」
唯「りっちゃんが澪ちゃんにイタズラする→澪ちゃん怒る→追いかけっこ→
りっちゃん転ぶ→澪ちゃんもりっちゃんに躓いて転ぶ→頭ごっつんこ→いけめん!」
梓「なるほど、早い話が頭のネジが外れてしまったんですね」
唯「さっきからずっとあんな感じでさ。正直、面倒臭いんだあ」
梓「互いに頭をぶつけただけですよね? じゃあ、時間が解決してくれるような気も……」
澪「時々、思うんだ。私は律と出逢えて幸せだったけど、律はどうなのかなって」
澪「私、いつも律を困らせてばかりだ。そんな私のことを律は……どう思っているのかな」
律「知りたいか?」
澪「……律?」
律「気持ちを伝えるのに言葉なんて邪魔だよな。澪、目を閉じて……」
澪「ふふ、何をする気だよ律……みんな見てるぞ」
律「澪を困らせることさ……んっ……」
梓「手遅れだったかー」
紬「ドゥフフ……//」ジー……
梓「ムギ先輩は何をしているのでしょうか」
紬「え? ただの超高性能ハンディカメラで二人を記録しているだけよ?」
憂「んー……ここはもう少し、色を足して……」ペタペタ
梓「そして、憂は何をしてるのかな? あと、どこから沸いてきた」
憂「紬さんに頼まれてね、律さんと澪さんの愛の営みを油絵で描いてるんだよ」ペタペタ
紬「ゆくゆくは絵画展を開くつもりです」
梓「こっちもアウアウだったかー」
唯「あうあう……//」
梓「唯先輩?」
唯「あずにゃん……見てこの本//」
梓「本? って、これ……律先輩と澪先輩の薄い本じゃないですか!」
梓「うわ……いや、でもこれは中々に……// 誰が描いたんだろう?」
純「急げ急げ! あと三十分までに原稿を印刷所に持ってかないと落としちゃう!」ダダダダ!
純「そんなことになったら、次のコミケは落選してしまうぞー!」ダダダダ!
梓「ブルータス、お前もか」
律「大好きだ澪。このまま、刻が止まってほしいと思う程に」
澪「私はそんなの嫌だな」
律「どうして?」
澪「だって私は……時間が経てば経つほど、律のことをもっと好きになる自信があるから」
澪「大人になった律、おばさんになった律、おばあちゃんになった律。
私は全部の律を見てみたいな。そして、そうなった私も律に見てほしい」
澪「……これって、欲張りかな?」
律「……欲張りだよ澪」
律「でも、全部澪にあげる」
澪「うん……律の全部貰った」
紬「オウフwww //」ジー……
ガチャッ
さわ子「話は聞かせてもらったわ! 軽音部は崩壊する!」バン!
梓「聞き捨てなりません」
さわ子「だって、只でさえこの部活は練習しないのに、
りっちゃんと澪ちゃんがああなってしまったらもう終わりじゃない」
梓「そうですね、終わる原因は他にもあると思いますけど」
さわ子「私はお茶さえ飲めたら、後は知ったこっちゃないんだけど」
梓「聞き捨てなりません」
さわ子「まあ、落ち着いて。そこでさわちゃん考えたの」
梓「聞くだけ聞きましょう」
さわ子「二人を結婚させましょう!!!」
梓「ニャンダフル」
さわ子「え?」
梓「間違えました」
唯「けっこん!」
紬「もしもし、斎藤? 式場の手配をお願い」
梓「なぜ、結婚なんです?」
さわ子「りっちゃんと澪ちゃん結婚する→イチャラブ→あれ、なんか思ってたのと違うな→
これなら恋人同士の時の方が気楽だった→私達……もう終わりにしないか?→破局→さわちゃん策士」
さわ子「こうして、軽音部は平穏を取り戻しましたとさ」
紬「そ、そんなのダメー!」
梓「それ、私達が気まずい思いするだけじゃないですかー」
さわ子「机上の空論だったわ」
紬「ちゃんちゃらおかしいわ」
牧師「汝、健やかなる時も、病める時も、その者を永久に愛すると誓いますか?」
律「はい……誓います」
澪「……誓います」
純「急げ急げ! 律先輩と澪先輩の結婚式が始まっちゃう!」ダダダダ!
憂「澪先輩のウェディングドレス姿、素敵だなぁ~……あれ、純ちゃん原稿は?」
純「落とした」
唯「りっちゃん、タキシード似合うね~」
梓「え、結婚式やるんですか? というか、ここでするんですか? いつ準備したんですか?」
紬「戦いとは、常に二手三手先を読んでするものよ」
さわ子「ブーケトスは負けないわ」
ガチャッ
和「失礼するわね、律澪結婚式場はここで合ってる?」
唯「和ちゃーん!」ガバッ!
和「こら、唯。いきなり抱きつかないの……よしよし」
唯「えへへ~//」
和「律、澪、結婚おめでとう。正直、二人がそうなる日は近いと思ってたわ」
澪「ありがとう、和……」
律「和には何でもお見通しか」
和「あら、あなた達のことはあなた達が一番よく分かってるんじゃない? お互いにね」
律・澪「……//」
和「私も早く、良い人が見つからないものかしら」
唯「はーい! はいはい!」ビシッ!
憂「あっ! お姉ちゃん、ずるい!」
紬「My Justice 律×澪 唯×梓 唯×和×憂←New!」
梓「サラッと私の名前出てたなあ」
澪「律。私、幸せだ」
律「ああ、私も同じ気持ちだ。この幸せを誰かにも分けてあげたいよ」
澪「ふふっ、そういう律だから……私は好きになってしまったんだなきっと……」
澪「……」
澪「……と……その……//」
紬「唯ちゃん、電気消して!」
唯「ほいきた!」パチッ
梓「あの、何が始まるんです?」
紬「ニブチンね、梓ちゃん。そんなんじゃ、唯ちゃん取られちゃうわよ?」
梓「……」イラッ
和「梓ちゃん、新婚カップルが部屋の電気を消してすることと言えば何かしら? ヒントは新婚初夜」
梓「ごめんなさい、全く分かりません//」
和「残念。正解はセッ……」
純「……っくしゅ! うー……鼻水が……」
憂「純ちゃん、私ティッシュ持ってるよ」サッ
純「さんきゅ、憂」
律「澪……ちゅ……れろ……」
澪「はぁっ……! う……んん……り、律ぅ……//」
紬「ごめんなさい憂ちゃん、私にもティッシュ頂戴?」ポタポタポタポタ
憂「はい、いいですよ。ちょうど、ダース単位で持ってましたから。鼻セレブ」
紬「や、やっぱり本物は、本やビデオで見るのとは全然違うわね……!」ポタポタポタポタ
梓「こぼしてます、こぼしてます、池が出来ちゃってますから」
紬「三リットルまでは許容量よ」
梓「致死量って、一リットルじゃありませんでしたか?」
紬「大丈夫! たくあんを沢山、持ってきてるの!」
梓「だからどうだというのだ」
唯「アッチョンプリケ」
律「澪……いいよな?」
律「う、うん……来て……」
紬「キマシTower!!!」
和「これ以上は野暮ね。私達は外に出ましょう」
唯「そうだね、二人っきりにしてあげようよ」
純「ちぇー」
憂「むくれないの、純ちゃん」
さわ子「私、お茶飲みたいんだけどなあ~」
紬「ま、待って! せめて、このカメラを録画状態で机の上に置かせて!」
梓「それが野暮だって言うんですよ。行きますよ、ムギ先輩」ガシッ!
紬「後生、後生だからぁ~!」ズルズル……
ガチャッ バタン!
澪「ひゃ……あぁ……は……あっ……! //」
律「ん……ああっ……! み、みおぉ……//」
紬「はぁはぁ……//」
梓「聞き耳を立てちゃ駄目です!」
紬「だって、だって、だってぇ~!」ウルウル
梓「子供ですか!」
紬「子供でいいもん! ふんす!」
梓「じゃあ、なおさら駄目です、子供には刺激が強すぎますから。ここから先はR指定です」
紬「私、大人だったわ」
梓「大人なら空気を読みましょう」
紬「ぐぬぬ……」
唯「……で、私達はいつまで部室の前で待ってれば良いの?」
和「それは……終わるまでよ」
純「終わるまでですね」
憂「終わるまでじゃないかな」
唯「参ったなあ……ギー太、部室の中に起きっぱなしだよ」
唯「もし、プレイがエスカレートしてギー太を使われたらどうしよう」
梓「? どうやって使うんですか?」
紬「私も気になる所ね」
和「それは当然、ネックの方を……」
「「いやああああああああああっ!?」」
唯「ギー太の声!? まさか!」
梓「違いますから。どう聞いても、律先輩と澪先輩の声でしょう」
憂「私もギー太かと思った」
梓「……ええ? ギー太って、喋るの?」
唯・憂「喋るわけないじゃない」
梓「二人とも、そこに直れ」
純「先輩方に一体何が?」
和「中に入りましょう、ムギ!」
紬「ええ、和ちゃん!」
紬「りっちゃん! 澪ちゃーん!」ガッシャーン!
梓「普通に入りましょうよ……ガラス突き破る意味ゼロだよ……そこのドアノブは何の為にあるんですか……」
さわ子「これ、絶対後で校長に怒鳴られるわ」
和「律、澪ー? 居るー?」ガチャッ
梓「和先輩は普通に開けて入っちゃったよ! いや、正解だけど!」
紬「何があったの!? ねえ、詳しく!」キラキラ
紬「やっぱり、最初は痛いのかしら?」キラキラ
梓「ドクターストップ」ガシッ!
紬「むぎゅむぎゅ……!」
唯「りっちゃん、どうしたの?」
澪「なななななななななな……! //」
律「な、なんで私ら、こんなことしてるんだ!? //」
梓「もしかして、正気に戻ってます? 急にどうして……」
紬「バカな……後、三時間は効果があるはずよ!?」
梓「え?」
憂「うん? シーツに血……ハッ!?」
唯「どうしたの憂?」
憂「あくまでも、推測だけど……初体験による痛みのショックでお二人は正気に戻ったのでは」
純「おれは しょうきに もどった!」
和「目から鱗だわ……まさか、そんな真実が……」
律・澪「い……」
唯「ちなみにりっちゃんと澪ちゃんはさっきまで~とか、~なことをしてたよ!」グッ!
梓「追い討ち!?」
律・澪「いやああああああああああーーーっ!? //」
さわ子「これが若さか……」
あれから……澪先輩は行方不明になりました。
「もうお嫁に行けません」とだけ書かれた書き置きを残して。
律先輩は一カ月、家に引きこもっていました。ですが吹っ切れたのか、
「嫁に行けないのは私も同じだ! なら、私が澪を嫁にもらってやる!」
と、言い残して澪先輩を探しに行きました。
残された私達はどうしたかと言うと、さわ子先生とお茶を飲んでいました。
純ちゃんの原稿が夏コミに間に合うことを信じて――
fin
最終更新:2013年03月12日 08:23