放課後 軽音部部室
律「確かに、前衛的すぎて意味不明な曲もあるからな」
紬「夕暮れ、なんてフレーズが入ると切なく感じるわよね」
澪「窓を伝う雨筋も、結構切ないぞ」
唯「なるほど。その辺はさすが澪ちゃんだね」
澪「だけどそれがお菓子の飴になると、一気にポップな感じになる。その辺の対比が良いと思うんだ」
律「なんとなく澪ワールドの予感もするが、もう少し聞いてみようか」
澪「飴が一杯、太陽一杯。幸せ乾杯、アップルパイはスイートメモリー」
律「いまいち雨とは関係ないが、澪らしい歌詞ではあるな」
紬「澪ちゃんは、韻を踏むのが好きよね」
唯「でも韻って、結局はだじゃれじゃないの?」
澪「うっ、結構気にしてる事を」
紬「リズムを取るには大切だし、そこは仕方ないのよね」
唯「いっそ、落語とか聴いた方が良いのかな」
澪「最近聴いた中では、酢豆腐が結構面白いぞ」
紬「芝浜なんて、ちょっと切なくて良いわよねー」
律「ここは、いつから落研になったんだよ」
カチャ
梓「・・・済みません、遅れました」
唯「あずにゃん。酢豆腐、酢豆腐あるよ」
梓「どう見ても、レアチーズケーキなんですけど」
唯「あずにゃーん。そこは「酢豆腐は一口に限りやす」って言わないと」
律「だったら唯は、もういらないんだな」
唯「もう、りっちゃんのいじわるー」
澪、紬「あはは」
梓(で、酢豆腐って何)
梓「歌詞、ですか」
紬「梓ちゃんが作るとしたら、どうやって考える?」
梓「感動した光景とか、気持ちが動くような事とか。やっぱり、実体験を元にすると思います」
律「まあ、普通そうだよな」
唯「澪ちゃんみたいに想像で書くのは、やっぱり難しい?」
澪「私はあまり気にした事無いけど」
律「その辺は、ちょっと気にして欲しいんだが」
律「とはいえやっぱり、見た事や感じた事を歌詞にする方が簡単だよな」
澪「私だって、想像ばかりじゃないぞ。切ない光景を見れば、それを歌詞にするし」
紬「オーソドックスな所だと、さっき言ってた夕景や夕焼けよね」
梓「踏切もちょっと切なくないですか。警告音が鳴ると」
律「あー、分かる分かる。夕暮れの踏切なんて、たまんないよな」
澪「放課後の教室や、誰もいない廊下」
唯「何となく分かるね、それ」
澪「どこからともなく響く足音」
唯「はい?」
澪「こつーん、こつーん、こつーん。慌てて振り向くけれど、そこには誰もいないんだ。だけど、こつーん、こつーん、こつーん」
律「誰が怪談をしろと言った」 ぽふ
梓「なかなか難しいですね」
律「結局は澪の暴走なんだけどな」
澪「だって、こつーん、こつーん、こつーん。だぞ」
律「いや。何がだってか、全然分からん」
紬「やっぱり、何かを見ながらの方が良いのかしら」
梓「それなら、トンちゃんで考えてみますか?」
唯「ねえ、トンちゃん。どうしてトンちゃんって、言うのかな」
律「お前が名付けたんだろ」 ぽふ
カチャ
さわ子「あー、今日もよく働いた。ムギちゃん、ホットミルクお願い」
紬「かしこまりましたー♪」
唯「さわちゃんは、作詞って出来る?」
さわ子「私はどちらかというと、作曲なのよね。というかあなた達も楽器を扱う以上、作曲くらい出来るようにならないと」
梓「唯先輩は作詞作曲もですけど、もう少し音楽用語や知識を深めた方が良いですね」
唯「うっ」
紬「でも唯ちゃんは、自由奔放なところが魅力だと思うのよね」
唯「ムギちゃーん♪」
梓(全く、ムギ先輩は甘いな。甘い匂いがしてくるな♪) くんかくんか
さわ子「たまにはもっと、ハードでロックな歌詞も良いんじゃない?」
律「いや。そういう、デスデビル的なのはノーサンキューなので」
さわ子「どうしてよ。別に、歯ギターやれって言ってる訳じゃないんだから」
唯「あれって、本当に歯で弾いてるの?」
梓「顔で他に弾けそうな場所はないですしね」
さわ子「梓ちゃん、興味あるなら教えてあげましょうか?」
律「入れ歯だ、梓。まずは入れ歯の作り方から教えてもらえ。だははー」
さわ子「お前は明日から、豆腐しか噛めないようにしてやろうか。このデコッパチ」
律「あー、ひどい目に遭った」
澪「自業自得だ。……歯ギター、やらないよな」
梓「え、ええ。私達、そういうバンドでも無いですし」
紬「さわ子先生には悪いけれど、やっぱりポップで可愛い歌詞が良いわよね」
唯「澪ちゃんが書くような歌詞だよね」
澪「そ、そうかな。私は感じた事を、そのまま書き出してるつもりなんだけど」
梓(一体澪先輩には、この世の中がどういう風に見えてるのかな)
律「私達もちょっと、歌詞作りにチャレンジしてみるか」
紬「だったら、このチョコタルトで試してみる?」
唯「んまい、このタルト。もっともっと、食べられる」
梓「それは単なる感想です」
唯「えー、だったらあずにゃんもやってみてよ」
梓「・・・うっ。そう言われると、ちょっと出てこないんですが」
律「やっぱりある程度練習しないと、すぐ作るのは難しいよな」
紬「日頃の澪ちゃんの努力の結晶が、私達の歌になってるという訳ね」
律「歌詞の内容はともかくとしてな」
唯「だったら、私達のイメージで作ってみたら?」
梓「結構難しくないですか、それ」
唯「そかな、例えばあずにゃんでやってみようよ」
紬「・・・梓ちゃん、ぎゅっと抱いて。私幸せ」
律「シンプルだけど、それ程悪くはない気もするな」
唯「サンキュー、あずにゃんっ、パワフルあずにゃんっ。にゃん、あず、あず、にゃにゃっ」
律「・・・結局それはなんなんだよ」
澪「ただテンポは良いし、私は好きだぞ」
唯「澪ちゃん、ありがとー」
梓(私的には微妙だけど、みんなが楽しそうならそれで良いか♪)
律「次は、ムギでやってみるか」
唯「ほんわかぽわぽわ。パワフルムギちゃんっ」
律「パワフルって言いたいだけだろ」
紬「うふふ♪」
梓「・・・温かくて、優しくて。可愛くて、愛おしくて。私の大好きな先輩は」
澪「うん。ストレートに梓の感情が表現されてて、結構良いと思うぞ」
紬「自分の事を例えられると、ちょっと恥ずかしいわね」
唯「早く、私の番が来ないかな」
梓「必ず褒められるとは限りませんよ」
唯「あずにゃん、しどいよ」
律、澪、紬「あはは」
律「次は澪で行こうぜ」
唯「黒髪子猫ちゃんだぜー、ベイベー。みたいな?」
律「言わんとしたい事は分かるが、歌詞じゃないだろ」
梓「だったら、律先輩お願いします」
律「仕方ないな。・・・黒い毛皮の小さな子猫、低い音色で今日も鳴く。その声静かに、心に響く」
唯「うわ、りっちゃんぽくない」
律「うわって、言うな。うわって」
紬「りっちゃんは、澪ちゃんの事良く見てるのね♪」
律「本当は、適当に歌詞をパクってきたんですけどね」
澪「お前は、すぐそういう事を言う」 ぽふ
梓(さりげなく気遣う律先輩も、それに乗っかる澪先輩もさすがだな)
紬「じゃあ、りっちゃんは?」
唯「私はドラム。どんどん、でんでん。どんでんでん」
律「・・・なんか、すごい嫌なんですけど」
梓「結構雰囲気は出てますけどね」
紬「うふふ♪・・・澪ちゃんは、どうかしら?」
澪「多分唯と同じ感じだぞ」
紬「良いから、良いから♪」
澪「仕方ないな。・・・いつもそばにいて、ずっと見てくれて。差し伸べられたその手を掴む度、私は強くなれる気がする」
梓(思い切り、澪先輩限定だし)
澪「きらめきはおでこのせいじゃない。眩い笑顔がそうさせるから」
梓(なんか、方向性違ってきてるし)
梓「えーと、唯先輩。唯先輩で最後ですね」
律「今日も食べて、今日も寝て。憂ー、憂ーで日が暮れる」
梓「あながち、間違えて無い気もします」
唯「しどいよ、二人とも」
紬「うふふ♪ぽかぽか、ぬくぬく。パワフル唯ちゃんっ」
唯「もう、ムギちゃんまでー」
澪「まあまあ。一人で作るのも良いけど、こうしてみんなとアイディアを出し合うのも悪くないな」
律「パワフルあずにゃんもか?」
澪「冷静に考えてみると、それはどうかと思うが」
唯「澪ちゃんもー」
律、紬、梓「あはは」
唯「最後に、私達全員っていうのはどう?」
澪「なるほど。それは見過ごしてたな」
梓「・・・いつまでも一緒に。ずっと一緒に。って、私後輩だから一緒じゃないですけど」
紬「私はいつも、梓ちゃんと一緒にいるつもりで過ごしてるわよ」
梓「あ、ありがとうございます、ムギ先輩♪」
唯「私は寝ても覚めても、あずにゃんの事ばかり考えてるよ」
梓「それはありがた迷惑です」
紬「でもありがたいんだから、悪い気はしてないのよね」
梓「そ、それはその」
唯「あずにゃーん」 ぎゅー
梓(本当に仕方ないな、唯先輩は♪) くんかくんか
律「改めて、考え直してみるか」
澪「いつまでも一緒に。ずっと一緒に。・・・君の居場所は、僕の居場所。これからも続く、僕と君のミラクルストーリー」
律「・・・少しハードルが上がった気もするが、続けてみようぜ」
紬「ちゃららー♪」
唯「もしかして、間奏?」
紬「そう。だから、最後まで頑張らないと」
唯「完走だけに?」
唯、紬「あはは♪」
律「空気も乾燥してるぞ、おい」
澪「いつまでも一緒に。ずっと一緒に。・・・君の居場所は、私の居場所。これからも続く、僕と私のミラクルストーリー。ちゃららー♪」
律「えーと、なんだ。・・・それは軽音部。私達の集う場所。それは軽音部」
唯「あ、なんかそれっぽくなったね」
梓(なんだかんだといって真面目だよな、律先輩も)
紬「ちゃららー♪もう一度入れておく?」
唯「是非、お願い」
律「誰も頼んでない」 ぽふ
澪「最後は唯だな」
唯「ちゃららー♪」
澪「おい」
唯「冗談だよ、冗談。えーと、こほん」
梓(本当に大丈夫かな)
唯「・・・運命的な出会いじゃなかったけど、私は幸せ。みんなと出会えて、今も幸せ。これからも幸せ。絶対幸せ」
澪「そう、そうだよな。絶対そうだよな」
律「まあ、唯っぽいと言えば唯っぽいか」
紬「サンキュー、唯ちゃんっ」
梓「はいですっ♪」
律「綺麗にまとまったし、今日は帰るとするか」
紬「私、曲を考えておくわね」
澪「それなら歌詞も、もう少し膨らませてみるよ」
唯「私もこれからは、作詞を勉強してみようかな」
梓「唯先輩はその前に、ギターの勉強をして下さいよ」
唯「しどいよ、あずにゃん」
律、澪、紬「あはは」
終わり
最終更新:2013年04月07日 02:03