人の幸不幸は考え方によって変わるのだと言う。今までそんな事を考える事なんてなかった。昨夜に見たテレビに衝撃を受けるあたり、私もまだまだ子供のような気がする。
幸いにも私は今までに不幸だと思える出来事に出会った事はなかったから。
もしかしたら、今までに生きてきた境遇の中で、他人から見れば不幸だと思える出来事があったのかもしれない。私は私でよかった。中野梓と言う人間でよかった。きっと私は運がいいのだろう。
それとも考え方がよかったのか。もし私じゃない誰かが私とまったく同じ人生を歩んでいたとしよう。その人は私の知り得ない所で『不幸』を感じた時、私は一体どんな気持ちでいたんだろう…。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、私はペンを置いた。

純「ん〜!よく寝た」

梓「もう!試験前に泣きついてきても知らないからね」

純「あれ?憂どこ行くの?」

憂「お姉ちゃん、お弁当忘れてるから届けに行くんだ。そしたら、お姉ちゃんがみんなでお昼食べようって」

梓「唯先輩…」

純「私も!私も行く!」

憂「うん。みんなで行こう」

      ♪

唯「憂〜。いらっしゃーい!」ブンブン

憂「お姉ちゃーん!」

梓「こ、こんにちは」

純「失礼します!」

律「お〜。来たか」

澪「憂ちゃんも大変だな」

紬「わ〜。今日は賑やかね」

憂「はい。お弁当」

唯「ありがとう憂。ささっ!どーぞどーぞ」

憂「えへへ。音楽室でお昼なんて新鮮だね」

紬「お茶もあるわよ」

梓「すみません。ムギ先輩」

紬「気にしないで」

純「これが噂の紅茶か…」

憂「わぁ〜。いい香り」

純「何かセレブになった気がする…」

紬「大げさね〜」

唯「りっちゃんりっちゃん!エビフライちょうだい」

律「やだよー」

純「憂の玉子焼きは絶品だね」

憂「そうかな?」

澪「梓のお弁当は小さいんだな」

梓「そうですか?」

紬「とっても可愛らしいわ」

唯「りっちゃ〜ん」

憂「エビフライなら明日作ってあげるよ」

唯「さすが憂!」

澪「それってどうなんだろう…」

律「ったく。唯、口開けろ。あ〜んだ」

唯「おお!さすがりっちゃん!あ〜ん」

憂「ご、ごめんなさい律さん!」

律「いいっていいって」

梓(唯先輩ってつくづく得な人だなぁ)ジッ

唯「なぁに?あずにゃん」ムグムグ

梓「いえ別に。ただ唯先輩は幸せそうだな、と…」

唯「うん!毎日幸せだよ」

律「そう言えば、昨日テレビで人生は幸せか不幸か〜、なんてのがあってさ」

梓「あ、律先輩も見たんですか?」

律「見た見た。考え方で幸せの度合いが変わるとか言ってたけど、なんかよく分かんなかった」

梓「そもそも幸せとか不幸とか…。何でしょうね?」

純「ズバリ!宿題が多い時は不幸だと思います!」

唯「だね〜」

律「うんうん」

梓「純は私や憂に頼ってばっかりじゃん」

純「書き写すのも大変なんですー」

澪「律も似たようなもんだろ」

律「てへっ☆」

紬「澪ちゃんは不幸だと思う時ってあるの?」

澪「私?私は…そうだな…」チラッ

律「ん?」

澪「誰かさんが『冬の日』に曲をつけるのを嫌がった時とか…」

律「な!?澪だって!『やっぱり恥ずかしくて歌えない』なんて言って唯に歌って貰ったくせに!」

澪「そうだけど、あんなに嫌がる事ないだろ!」

律「嫌なんて一言も言ってないじゃんか!」

純「あ…あの…」オロオロ

紬「純ちゃん気にしないで。いつもの事だから〜」

純「でも…」

憂「お2人は『喧嘩するほど仲が良い』みたいだよ。家に来た時も喧嘩してたのに、いつの間にか元に戻ってるし」

唯「私は喧嘩なんてしないけど、みんなと仲良しだよ」

梓「喧嘩する唯先輩が想像できませんが…」

唯「う〜ん。不幸…不幸…」

憂「真剣なお姉ちゃんかっこいい!」

純「それはもういいから」

紬「こうしてみると案外不幸って難しいのね」

純「身内に不幸が起こる…とか?」

梓「確かにそれは不幸だね」

唯「身内じゃなくても、誰かがいなくなったら寂しいよ」

梓「でも、亡くならない人なんていませんし…」

紬「亡くなったら悲しいけど、それは不幸なのかしら?」

梓「と、言いますと?」

紬「確かにとても悲しいし、寂しいし、辛い事だと思うの。でも、人はいつまでも生きてはいけないでしょ?そう考えると亡くなる事は不幸な事かしら?」

純「周りの人は悲しいですけど、そう考えれば不幸じゃないのかも…」

梓「不幸は不幸だけど、少し違うのかもしれませんね」

唯「人それぞれなんじゃないかな?」

澪「それじゃ元も子もないような…」

律「でもさー。誰も毎日毎日いつか死ぬんだー、なんて考えながら生きてるわけじゃないじゃん」

純「戻った…」

憂「ね?」

純「うん」

唯「じゃあさ、辛い事が不幸な事なの?」

律「うっ…。それは…」

澪「逆に幸せな時なら思いつくんだけど…」

梓「そうですね。皆さんがちゃんと練習してくれる時は幸せですし」

律「ドキッ」

唯「グサッ」

純「口で言った…」

紬「じゃあ練習してない時はずっと不幸?」

梓「不幸…ではないですね」

憂「私はお姉ちゃんが居ない時が、寂しくて嫌だなぁ」

唯「私も憂が居なかったら寂しいよ」

憂「でも、そのおかげで純ちゃんと梓ちゃんが遊びに来てくれたし、お姉ちゃんが帰ってきた時はすっごく嬉しかったし」

唯「結果オーライだね!」

律「ちょ〜っと違うぞ〜」

梓「もっと練習してくれれば嬉しいけど、練習してなくても不幸じゃないし…」ブツブツ

純「それじゃない?」

梓「何が?」

純「練習してる時幸せなんでしょ?」

梓「う、うん…」

純「それなら、梓が練習しないと不幸だーなんて思っちゃったら?毎日が不幸で、練習できたら幸せで…あれ?」

梓「考えがまとまってない訳ね…」

唯「演奏は楽しいんだけどね〜。お茶も楽しいよね」

律「バンド名にティータイムって入れちゃうくらいだし」

澪「考えたのお前じゃないだろ」

紬「やっぱり人それぞれね」

澪「一年の時のライブは不幸だったけどな…」

律「もう昔の事じゃん。忘れろって…」

唯「ちょっと運が悪かっただけだよ!澪ちゃん!」

澪「うう…」


結局、不幸が何なのか分からないまま、今日も楽しい1日を過ごしそうだ。
澪先輩は不幸だったと言うけど、そう言える今はきっと不幸ではないはず。
恥ずかしい思い出として残っているみたいだけど。
みんな簡単に不幸とは言うけど案外不幸とは、奥深いものだと知った今日この頃。
不幸って何だか難しいなぁ…。

梓「今日はみっちり練習しますからね」

唯 律「はい…」ショボ

以上になります。
ありがとうございました。