彼女は、良くも悪くも私の世界を百八十度変えた人物。
そしていつでも、どんなときでも私の世界の中心に立っている人物。
いつの間にか、彼女がいなければ今の私は百パーセント居ない、と断言出来るほどまでに私の中で彼女の存在は大きなものになってしまっていた。
彼女は、いつも私の手をとって色々なところへ連れていってくれた。
私は彼女にとても感謝をしているけれど、恐らく彼女はそんな小さなことは気にもしていないのだろう。
彼女は人柄が良く、沢山の人に好かれていた。
友達だって、私の十倍以上はいた。
けれど彼女が最後に頼ってくれるのは必ず私で、彼女の中でも特別だった…と思う。
そんないつも明るく私やみんなを笑わせてくれた彼女は、あるときを境に変わった。
いや、変わってしまったと言った方が正しいかもしれない。
昔の彼女の原型もとどめないほどに。
私は彼女を戻そうとしたけれど、私の声は彼女へは届かなかった。
律。
私がどんなにその名前を呼んでも、彼女が満面の笑みで私の名前を呼び返してくれることは、なくなった。
…私は、昔の彼女に戻ってきてほしかったんだ。
私の世界を百八十度変えてくれた頃の、彼女に。
…だから。
だから私は。
彼女の為に。
何より、私の為に。
…自分の全てを捨てることを、決めた。
律?
きっと今貴女がこの手紙を見ているとき、私はもうそばにいないんだろうね。
もう一度、話したかった。
もう一度、私の為に笑ってほしかった。
私はこんなカタチでしか思いを伝えられないけれど。
貴女のことを、いつまでも、いつでも一番に考えています。
最後に。
今までありがとう。
私は律に出会えて幸せだったよ。
ふふっ。
これじゃあ一緒にどこかで見た、映画のラストみたいだね。
…まだまだ書きたいことは沢山あるけれど、そろそろ時間なのでこの辺で終わりにしたいと思います。
じゃあね。
お元気で。
バイバイ。
貴女の親友。
秋山澪。
私は彼女を最初に見たとき、お人形さんみたいな子だなって思った。
可愛くて、恥ずかしがり屋で。
本当にまるでどこかで見たことがある絵本に出てくるお姫様みたいだったんだ。
そんな彼女に私は興味を持った。
最初はちょっかいを出して彼女を驚かすことしか出来なかったけれど。
徐々に、徐々に。
私と彼女は仲良くなっていった。
何時の間にか、私たちはお互いがそばにいることが当たり前になっていた。
勿論、お互いに違う友達も居た。
私は彼女の友達に嫉妬したりもした。
でも彼女は、私のそばから離れてはいかなかった。
こういうのが幸せなんだな、私は幸せなんだって、初めてそのとき私は身を持って知った。
…でも。
私はそんな幸せを、自ら壊してしまった。
沢山、彼女を泣かせてしまった。
彼女が私の名前を呼んでくれているのに、返事を返すことが出来なかった。
そして私も、沢山泣いた。
…そんなある日、彼女が急に私のそばから居なくなった。
急すぎて、何が起こったのか分からなかった。
皆が泣きながら私に説明してくれていたけれど、私の頭の中は真っ白で本当に、何もかも分からなかったんだ。
澪?
澪が私へ宛てて書いてくれた手紙、読みました。
ありがとう。
澪がそんなに私のことを想ってくれていたなんて、私は知らなかった。
でも、澪が居ないここは私には退屈だよ…。
澪…。
…私は早く澪の住むところへ行きたいけれど、今行ったら澪に怒られそうなのでもう少しだけこちらで頑張ってみようと思います。
澪は私の中にいるしね。
だからその時まで、ずっと私のことを忘れないでいてください。
また会える日まで。
少しの間。
ばいばい。
いつまでも永遠に貴女の親友。
田井中律。
終わりです。
最終更新:2013年04月17日 02:01