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 梓は時折、私に長文メールを送ってくる。
学校で話す機会があるにも関わらず、だ。
今日も来た。
メール冒頭の話題は、私達が卒業した後の部活に関する事だった。
人数を上手く集められるか、そういった内容だ。

 勿論梓にしてみれば、それだって十分な関心の材料だろう。
けれども、メールの最後の話題が本題のような気さえする。

『律先輩は、澪先輩に釣り合ってないと思います。
もっと、澪先輩の価値観に合う人間、探した方がいいと思います。
それが私であれば、澪先輩に釣り合うよう頑張れるのに。』

 梓のメールの内容は日により違えど、
メールの最後では必ずといっていい程、私への好意を伝えてくる。

 メールだけではなく、プレゼントをもらう事もあった。
私の部屋に飾ってあるこの腕時計も、梓から貰ったものだ。
この腕時計を、私は律が部屋に来る度に隠している。
その行動が示すように、私は律が好きだから、梓の好意に応えてあげる事はできない。

 それを伝えようと思った事は数知れない。
けれど、梓は好意を示すだけで、告白にまでは至っていない。
告白の前に断ってしまう事は、ルール違反のような気がしている。

 梓から貰ったのは腕時計だけでは無い。
菖蒲の押し花の付いた栞も貰った事がある。
こちらは高価では無い為、貰う事に躊躇は無かった。
故に律の前でも隠さないが、梓の前では決して使わない。
応えてあげられない思いに、期待を持たせたくなかったから。

「菖蒲の花言葉、知ってます?
愛、貴女を大切にします、私は燃えている。
そういった言葉なんです」

 梓はこれを渡した時に、そう言っていた。
実は他にも、花言葉はある。
それを教えつつ、梓の想いに婉曲な否を返そうかと思い立った。
それならルール違反とはならないだろう。私が勝手に決めたルールだけれど。
私は携帯を手に取ると、梓へと返信するメールを打ち始めた。

『大丈夫、来年、きっと部員は集まるよ。
そうだ、梓は前に菖蒲の栞をくれて花言葉を教えてくれたけれど、
菖蒲の花言葉は他にあるって知ってたか?
「良き便り」「うれしい便り」「吉報」
要するに、嬉しい手紙やメールに関する事だね。
私も待ってるよ、梓から新入部員が入ったっていう、吉報が届くのを。
梓に必要なのは、新しい出会いだから。
新入部員を含めて、新しい出会いでいい人が見つかるよう、私も協力する。
それ以上の直接的な協力はできないけれど』

 菖蒲の名を持つ大切な友人が、梓にできればいいのに。
それが梓の新しいスタートになるはずだから。
新入部員という形でも構わない。
他に大切な人を見つけて、私への好意を断って、歩んで欲しい。
私は菖蒲にそう願いつつ、メールの返信をタップした。


<FIN>


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最終更新:2012年10月13日 17:32