紬「あっ唯ちゃん」
唯「ムギちゃんはやいねー。他のみんなは?」
紬「まだ来てないみたい」
唯「そっか。二人きりだね」
紬「ちょっとまってね。お茶をいれるから」
唯「うんっ」
数分後
紬「はい、どうぞ」
唯「ありがとう」コクコク
紬「ふふ……」
唯「ねぇ、ムギちゃん。最近ちょっと元気ない?」
紬「えっ?」
唯「やっぱりそうだよね。上手く隠してるけどちょっとだけ元気ないでしょ」
紬「そ、そんなこと……」
唯「あるよね。上手に隠してるけど私にはわかるんだから」フンス
紬「……唯ちゃんって鋭いね」
唯「やっぱり元気なかったんだ。良かったら話してくれる?」
紬「うーん。話すようなことでもないと思うんだけど」
唯「そう言わずに」
紬「……最近ね、梓ちゃんが入ってきたじゃない」
唯「うんうん。かわいいよねー」
紬「ええ、とってもかわいいわ」
唯「うん。思わず抱きつきたくなっちゃう」
紬「ええ……」
唯「ムギちゃんもあずにゃんに抱きつきたいの」
紬「そうじゃないの……」
唯「……もしかしてムギちゃんあずにゃんのこと嫌い?」
紬「そ、そうじゃないけど、そうかも」
唯「えっ?」
紬「なんだかね、唯ちゃんがあずさちゃんに抱きついてるのを見ると…」
唯「うん」
紬「胸の奥がチクっとするような……」
唯「うん」
紬「しないような……」
唯「……なるほど」
紬「私、どうしちゃったんだろう」
唯「ふむふむ。ムギちゃんって子供みたいだね」
紬「えっ?」
唯「ムギちゃんはね、私が抱きついてくれないから拗ねてるんだよ」
唯「妹にお母さんをとられて拗ねてる子供みたい」
紬「そうなのかしら」
唯「うん。私もね、幼稚園ぐらいの頃はそう思ってたんだ」
紬「そっか……私拗ねてたんだ」
唯「ねぇ、ムギちゃんも私に抱きついてほしい?」
紬「……うん」
唯「抱きついてもいいけど、私はこっちのほうがいいなぁ」トントン
紬「唯ちゃんったら……」
唯「やっぱりムギちゃんの膝枕は最高だね」
紬「うふふ。唯ちゃんをお招きできて、お膝も喜んでるわ」
唯「それは光栄だよ」
紬「こうやって膝枕してあげるのも久しぶり」
唯「二人きりになれる機会が減っちゃったからねー」
紬「うん。ちょっと寂しいな」
唯「……私も」
紬「唯ちゃんも?」
唯「うん。あずにゃんが入ってきて賑やかになったのは嬉しいんだけど……」
紬「そう言ってくれるだけで嬉しいわ~」
唯「そういえばムギちゃんってファーストフード店に友達と行くのが夢だったんだよね」
紬「ええ、働くのも夢だったわー」
唯「どっちも叶っちゃったんだ?」
紬「うん。高校に入ってから本当に楽しいことばかり」
唯「それじゃあさ、こうやって誰かに膝枕してあげるのは夢じゃなかったの?」
紬「それは……どうかな」
唯「うん? どういうこと?」
紬「膝枕自体は夢じゃないの」
紬「でも膝枕をして看取ってあげるのは夢だから」
唯「看取るって……」
紬「ええ、漫画でね、そういうシーンがあって、すごくいいなって思ったんだ」
紬「あんまりよくない夢かもしれないけど」
唯「そっかぁ」
紬「でも、唯ちゃんに膝枕してあげるのは楽しいわー」
唯「楽しいんだ?」
紬「ええ、唯ちゃんがね、安心して私に身をゆだねてくれてるんだもの」
紬「愛おしい気持ちでいっぱいになって、とっても安らかで暖かい気持ちになれるの」
唯「私もね、ムギちゃんの膝枕は好きだよ」
紬「ありがとう」
唯「こうやってムギちゃんのお膝に頭を乗せてるとね、なんだか昔を思い出すんだ」
紬「昔?」
唯「うん。膝枕なんてお母さんにあんまりしてもらった記憶はないんだけどね」
唯「でも、なんだか包み込まれてるような優しい気持ち」
唯「子供の頃に感じていたような気持ちなのかなぁ……」
唯「そういうのをね、感じられるんだよ」
紬「そっかぁ……」
唯「うん」
紬「ふふふっ。ふたりとも子供になれるんだね」
唯「ムギちゃんの場合、どちらかと言えばお母さんだと思うけど」
紬「ふふふっ、拗ねてる子供でいーの」
唯「ムギちゃんがそう言うなら」
紬「うふふ」
唯「えへへ」
紬「あったかいね」
唯「うん」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「最近どう?」
唯「とっても楽しいよ。あずにゃんも加わったし。あっ……」
紬「いいのよ。続けて」
唯「……うん。部活も楽しいし、お茶も美味しいし、憂と和ちゃんは優しいし」
紬「そう」
紬「みんなとはどう?」
唯「そうだね。まずはりっちゃん!」
唯「りっちゃんとふざけるのはとっても楽しいんだよ」
紬「とっても仲良しだもんね」
唯「そうだよ。りっちゃんとは気が合うんだー」
紬「澪ちゃんは?」
唯「澪ちゃんも優しくて好きだよ」
紬「やさしくてかわいいわよね。澪ちゃん」
唯「美人さんで羨ましいよねー。ムギちゃんも美人だけど」
紬「もうっ……梓ちゃんは?」
唯「あずにゃんはねー。抱きつくとってもかわいいんだよ」
紬「今度私も抱きついてみようかしら」
唯「うんっ。それがいいよ!」
紬「いいんだ? 独占したいのかと思ってた」
唯「そんなことないよ。私が独占したいのは……」
紬「うん?」
唯「この膝だけだもん」ギュッ
紬「ゆ、唯ちゃん」
唯「ムギちゃんのひざもみもみ」モミモミ
紬「こらっ、いけませんっ!」ポカ
唯「ごめんなさーい」
紬「ふふふ、でも膝は独占したいんだ」
唯「こんないい膝他にはないからね」
紬「そんなに褒めても……お菓子くらいしか出ないわよ」
唯「わーい」
紬「じゃあちょっと動いてくれる、お菓子を用意するから」
唯「……」ギュ
紬「唯ちゃん。離れてくれないと立てないわ」
唯「もうちょっとだけ……」ギュッ
紬「もうっ……」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「ねぇ、ムギちゃん」
紬「どうしたの、唯ちゃん?」
唯「うーんとね」
紬「うん」
唯「呼んでみただけ」
紬「そうなの?」
唯「うん」
紬「そう」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「ねぇ、ムギちゃん」
紬「どうしたの、唯ちゃん」
唯「えっとね」
紬「うん」
唯「なんでもない」
紬「そうなの?」
唯「うん」
紬「そう……」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「ねぇ、ムギちゃん」
紬「なぁに、唯ちゃん」
唯「私ね、実はね」
紬「うん」
唯「ムギちゃんのことも独占したいんだ」
紬「そうなの?」
唯「うん」
紬「そっかぁ」
唯「……」
紬「……」
唯「……」
紬「……」
唯「返事は?」
紬「必要あるかな」
唯「そっか」
紬「うん」
唯「……」
紬「……唯ちゃんのにへら~とした顔はじめてみたわ」
唯「っっ~~~~見ちゃ駄目!!」
紬「ふふふ、なんだか夢みたい」
唯「そ、そんな変な顔してた?」
紬「そっちじゃなくて、こっち」ピト
唯「あっ……」
紬「本当に夢だったらどうしましょう」
唯「ほっぺをつねってみる?」
紬「駄目よ。夢だったら覚めたくないもの」
唯「ムギちゃん安心して、これは夢なんかじゃないから」
唯「でも、もし何かの間違いでこれが夢だったとしても、目が覚めてからもう一度言うから」
紬「唯ちゃん……私ね、ずっとね」
唯「お婆ちゃんになっても私の傍にいたいんでしょ」
紬「……!」
唯「ごめんね。はっきりとじゃないけど聞いてたんだ」
唯「昔、私が寝てるときに告白してくれたんだよね」
紬「……」
唯「でも、関係を進めたら、ムギちゃんとの心地良い感じが壊れちゃう気がして……」
紬「なら、どうして告白してくれたの?」
唯「それでムギちゃんが傷つくのはもっと嫌だから」
紬「唯ちゃん……」
唯「それにね、逆の立場だったら耐えられないと思うから」
紬「えっと……?」
唯「ムギちゃん、あずにゃんに抱きつくのはほどほどにね」
紬「もう……唯ちゃんったら」
唯「絶対だよ!」
紬「はいはい。わかりました」
唯「それにしても、みんなこないねー」
紬「そうね。ね、そろそろ本当にお菓子を用意するから、どいてくれる」
唯「うーん。もうちょっとだけ駄目かな」
紬「いいわよ。ふふふ。このお膝に感謝しなきゃ」
唯「ひょっとして私、お膝が好きだと思われてる?」
紬「違うの?」
唯「違わないけど、違うよ。だって私はムギちゃんのこと……」
紬「ね、唯ちゃん、なんで私のことを好きになってくれたの?」
唯「それはね、ムギちゃんがムギちゃんだからだよ」
紬「どういうこと?」
唯「私ね」
唯「ムギちゃんのお母さんみたいなところも」
唯「お婆ちゃんみたいなところも」
唯「お父さんみたいなところも」
唯「子供みたいなところも」
唯「ぜんぶ、ぜーんぶ、だーいすきなんだ」
紬「私ってお婆ちゃんみたい?」
唯「うん。お婆ちゃんみたいにとっても優しい」
紬「私ってお父さんみたい?」
唯「うん。お父さんみたいに頼り甲斐がある」
紬「私ってお母さんみたい?」
唯「うん。お母さんみたいに優しい」
紬「そっか」
唯「うん。そうだよー」
紬「ね、唯ちゃん」
唯「なぁに、ムギちゃん」
紬「ふつつかものですが、これからもよろしくお願いします」
唯「うん! これからも一緒だよ!」
紬「ええ、一緒」
唯「ムギちゃんの最後の夢が叶うまで」
唯「ずっとずっと一緒だから」
おしまいっ!
母の日、父の日、敬老の日と書かせてもらったけど、子供の日でお仕舞い
他の3つも読んでもらえたら有難い
唯「ムギちゃんってお母さんみたいだよね」
唯「ムギちゃんってお父さんみたいだよね」
唯「ムギちゃんってお婆ちゃんみたいだよね」
最終更新:2013年05月07日 07:53