もしも律と私の身長が逆だったとしよう。
それでもきっと、私は律を好きになっただろう。
もしも律が軽音部じゃなかったとしよう。
それでもやっぱり私は律が好きでしょうがないんだろうな…。

さて、そんな私の儚げな想いを余所に、こいつは遠慮もなく私に抱きつく。

澪「重い…」

律「いーの!」

今は部屋に2人きり。
律は私の膝の上に乗って、ご機嫌。背中に足まで絡めてきて…。誘ってるのか?誘ってるんだな?こいつは。

律「最近、さ…。その…澪…えっ…え、えっちぃ事ばっかりって言うかさ…だったじゃん?」

そりゃ『えっちぃ』事もしたくなる。今みたいに耳まで赤らめて私にしがみついてるような可愛い律を見てると、特に、だ。

律「だから澪が疲れてるんじゃないかな~。なんちて…」

ああ…どうすればいいんだ…。お前はどこまで可愛いければ気が済むんだ。うなじまで赤いじゃないか。

律「だからりっちゃん分注入?みたいな?」

ぎゅっと音がしそうなほどに私の首にしがみついたり…。
何の話しだっけ?そうだ、律が可愛いすぎてうなじペロペロしたい話しだよ。
りっちゃんペロリストマイスターの称号を持つ私は、もちろんペロペロする事に何ら躊躇いはない。伝説の律ペロリストと呼んでくれてもいいよ?
それはもう全身くまなく舐めまわした。
カテーテルなんて邪道なものを使わなくとも開発してしまったくらいなんだから。
いや…。今の発言は撤回させて貰う。
開発するも何も、どMもとい、天然誘い受けで全身性感体な律にはそんな言葉は不要。
嗚呼…可愛い…。

いつか私の顔の上に乗ってほしいな…。ペロペロしたいな…。
服装はもちろん白いワンピ。スカートの裾を律に幕し上げさせて、顔を真っ赤にして躊躇いながら私の顔の上に跨り…

律「あ、この雑誌読んでいい?」

澪「おぅ?!」

律「…?」

澪「わっ。わっつ?!」

律「えーっと…。お…欧米…か?」

澪「ち、違うけど?」

律「?」

澪「?」

律「あ~。雑誌、見て、いい?」

澪「い、いいよ!雑誌ね!雑誌!なるほど!」

律「さては聞いてなかったな」

澪「悪い悪い。ちょっと考え事してた」

律「…ふーん」

あれ?急に機嫌が…。

律「おっ、これ可愛い」

気のせい…か…?

律「よっこいしょーいち」モゾモゾ

澪「また懐かしい事を…」

……………!
こ、この体制は!

後ろを向いた律のうなじクンカクンカし放題?!

律「~♪」ペラペラ

澪「ハアハアハア」スーハースーハー

律「澪」

澪「ハ…はぃいい!」

律「息がくすぐったい」ペラッ

澪「」


…な、なんたる悲劇ッ!目の前にッ!目の前にッうなじがありながらクンカクンカできないとはッッッッッッ!ペロペロできないとはッッッッッッッッッ!まさに悲劇ッッッッッッ!

何故クンカクンカペロペロ出来ないかって?
部活の一環とも言うべきか、例のごとく部活で大富豪なんてものをやっていたら…軽音部なのにトランプ?なんて無粋な突っ込みはさておき、だ。
因みに私は律に色々ツッコミたい訳だけども、それもさておき。
ムギが華麗に大富豪を独走し、律が富豪。私が最終的に大貧民…この場合、大大貧民か?そして、ここはやはり軽音部。大富豪と富豪による恐怖の罰ゲーム!なんてノリになってしまった。
ここから悪夢は始まった。
始まってしまった…。
ムギは安定のムギ。と言うべきか。梓が唯に膝枕、後輩と先輩の逆転劇でシャランラシャランラするムギはやはりムギだなぁ、などと呑気な事を考えていた。
さあ、律の番だ。膝枕か?どんとこい。私だってシャランラシャランラしてやるさ。
しかし、だ。
この世界一、もとい宇宙一可愛い私の小悪魔はさらりと言い放った。

「じゃあ、今週はずっとえっちぃ事禁止な。澪」

一瞬、どこかのスタンド使いが時間を止めたのではないかと思う程に静まり返った部室。私はこの光景を生涯忘れる事はできないのだろう。

ムギなんてショックのあまり卒倒してしまった。
卒倒しつつも、唯と梓にしっかりとカメラを向けたままの姿勢に見習うべき所があると私は思う。
恥ずかしながらそれ以降は全く記憶にない。
気が付けば私の家に居た。律曰わく、「なんか生気が抜けてる」表情で我が家にたどり着いたらしい。ビバ、帰巣本能。人間に帰巣本能なんてあったか?そんな事より律にキスしたいな。あああ、マジ可愛い超可愛い世界一可愛い。

律「澪はどれがいいと思う?」

澪「律」

律「は?」

澪「え?ご、ごめん。何?」

律「…」ムスッ

澪「り~つ~…」

律「…」

澪「りっちゃ~ん…?」

律「…もういい」

ふてくされる律も可愛い…って!言ってる場合じゃない!この状況はマズい非常にマズい。繊細な律は拗ねると本当にマズい。何がマズいかって?拗ねてもすぐに気にしないふりをして、元気なふりをして、後で1人落ち込むんだから質が悪い。そんな風に律を追い込むなんて私のプライドが許すはずないだろ?

澪「り~つ」

律「うっさい…」

澪「ごめんね?」

律「知らない」

澪「嫌いになった?」

律「澪はあたしの話なんてどーでもいいんだ…」

澪「そんな事ないよ。律が好きすぎて、ずっと律の事考えてたんだよ」

言いつつ、両手をゆっくりとお腹にまわす。
コツンと額を首筋に。
…しかし、相変わらず細いな、羨ましい。

律「……るい」

澪「なに?」

律「澪はズルい…」

律「そんな風に言われたら…」

澪「言われたら?」

律「っ!何でもない」

澪「聞きたいな~、続き」

律「わたっ私も、澪、の事、が…!」

律「す…すっ……」

澪「す~?」

律「う……嫌いじゃないよ?////」ゴニョゴニョ





ぁああああぁあぁあぁあぁあぁあぁ!可愛いよぅううううう!
なんだこの可愛い生き物?!そうだ律だった。可愛いと書いて律と読むなんて、律がこの世に産まれた瞬間からの常識だったのに。やれやれ、私としたことが…。

律「でさ!でさ!澪はどれがいいと思う?」

誤魔化しきれてない律可愛い。

澪「どれどれ?」

律「この中で一番可愛いの、この子だよな?」

澪「何だ、そんな事か…」

律「そんな事って…」ムッ

澪「そんなの、律が一番可愛いに決まってるだろ?」

律「なぁっ?!」

あ、固まった。

律「ちが、あたっわたっ私じゃなくて!この雑誌の中で!」アセアセ

澪「ん~…。律より可愛い子はいないな」

律「~~~!//////////////////」ボフン!

律「……もういい」

嗚呼、律。わざと拗ねた口調の律。雑誌で顔隠してるつもりだろうけど、にやけてる口元は隠せてない律。耳まで真っ赤な律。これだけで今週は乗り切れそうだよ……。





澪「そう思ってた時期が私にもありました」グッタリ

和「そう。澪がやつれた原因はそれだったわけね」

澪「ふふふ…私はもうダメかもしれない…」

和「遠い目を止めなさい。怖いから。それにまだ3日でしょ?」

澪「もう3日だよ…」シクシク

和「泣くほど?!」

澪「あと4日…4日…」ブツブツ

和「大袈裟…な訳でもなさそうね」

澪「干からびちゃいそうだよ。しかもキスまではオッケーなんて…」

和「よかったじゃない」

澪「よくない…」

和「そう。長くなりそうだから、生徒会行くね」

澪「聞いて!お願いだから聞いて!」ヒシッ

和「ええ…」

澪「律はキスが好きだから、『キスまでならいいよ』って言ったんだけど…………




澪(心頭滅却心頭滅却)カキカキ

律「みぃお~。何してんの~?」ゴロゴロ

澪「今日の授業の復習だよ」

律「澪ちゃんまっじめ~」

澪「今日やった所はテストに出やすいって、先生が言ってただろ?」

律「りっちゃん分かんな~い」

澪「テスト前に泣きついても知らないぞ」

律「ん~。どうでしょう」

澪「おい」

律「ゴロゴロ~」ゴロゴロ

澪「まったく…」

このまま無心で勉強していれば乗り切れる。そう思っていた私は甘かった…。

澪「えっと…」カキカキ

律「ごろ~ん」

澪(可愛い気配がするけど見ちゃだめだ見ちゃだめだ見ちゃだめだ)

律「ごろ~ん」

澪(集中集中集中集中集中集中)カキカキ

モソモソ

律「澪ぅ」クイクイ

うん。お願いだから服の裾を引っ張るのは止めてほしいな可愛いから。

モソモソ

あぁああ…。お腹に律の腕の感触がぁあぁぁ…。

律「こりゃ、聞いてんのか?」ギュム

なあ、律。お腹に顔くっつけるのはいいよ?いいんだけど上目使いは色々とマズいんだよね。

澪「聞いてるよ」

今更だけどテーブルなんて出さずに机でやればよかった…。

モゾモゾ

律「膝枕~」ポフッ

澪「こら、邪魔するな」

律「してないも~ん」

かっ…かわっ…

澪「ほら、どけって」

律「何で?」

うん。甘えた声でスリスリは止めようか。理性がちょっとマズい。

澪「何でって…」

律「えっちぃ事したくなった?」

はい。

澪「ばっ!バカ!」

律「んふふ~」スリスリ

律「ちゅうなら…」

澪「へ?」

律「ちゅうまでならいいよ?//」

キスって言うのが恥ずかしくて、ちゅうとか言っちゃう律マジ天使。

澪「!」ゴクリ

律「澪がどーしても、って言うならね」

澪「律…」スッ

律「あれ?ちょっとがっつきすぎでない?」

律の頬に手を添えると、ゆっくりと顔を…………………

澪「…」

律「澪?」

澪ちゃんうっかりしてました。今、律の頭は私の膝の上。つまりは何が言いたいかと言うと…

澪「と、届かない…」プルプル

律「ぶふっ!」

澪「笑うな!」

律「ぶっ…くくっ…だってさ…くふふっ」

柔らかく乱れる髪の感触が悔しいけど心地よい。

律「じゃあ、今日はおあずけな」

澪「えっ」

律「ほら、こーゆーのってタイミングって言うかムードって言うか…」

澪「えっ」

律「だから…ねっ?」

澪「えっ」






澪「生殺しだ…」

和「えぇっと…。お気の毒に?でいいのかしら」

澪「くっそう!あんな事になるなら無理矢理にでも…!いや、それは律に嫌われる可能性が!…いやでも…」

和「お気の毒で合ってたわね。あんたの頭が」

澪「ちょっと酷くないか和?」

和「そう?言い過ぎたのなら謝るわ」

澪「いいさ。これも律の可愛さ故…か…」

和「そこで律の名前が出てくる事、理解しかねるんだけど」

澪「はあ…。律ぅ」スリスリ

和「そうね。そう言えば聞くのを忘れてたけど、澪はどうして律の席に座ってるのかしら」

澪「何故って…。ここは律の席…。つまりいつも律のお尻と律の事を守っている席。サッカーで言えばゴールキーパー…守護神のようなものだろ?そこに私が…いつも律を守ってくれている席に私が座る…。あぁ!ほのかに律の残り香とぬくもりが!」ハアハア

和「とんだオウンゴールね」

澪「ふふ…。私が律の心のネットを揺らす…とでも言いたいのか?」

和「キーパー何ひとつ守れてない上に、澪はゴールネット突き破ってるじゃないの。むしろ突き抜けてると言っても過言じゃないでしょ」

澪「それに、だ。こうやって律の席に座ってると、こう…、わいてこないか?」

和「頭が?」

澪「活力と欲望が」ハアハア

和「救急車が先か警察が先か…それが問題ね」

ドア「ガラッ」

律「みっおちゃ~ん!あんまり遅いからりっちゃん様が迎えに来てやったぞ~…って、なんであたしの席に?」

和「あら、もうこんな時間?」

澪「あ…。ごめんな和。こんな時間まで付き合わせちゃって」

律「な~んだ。和と一緒だったのか。んで?何でそこに座ってんの?」

澪「じゃあ私も部活に行くよ」

和「そう。頑張ってね」

律「あれぇ?無視?」

和「知らない方が良いこともあるのよ」ポン

律「??ふ~ん。」

律「それよりさぁ、これ見てくれよ。姫子から教えてもらったリップ!つけてみたんだー♪」

和「あら、いいじゃない」

律「だろー?澪はどう思う?」ズイッ

澪「どうって…////」ゴクッ

澪「いいんじゃないか…」フイッ

律「こーら、こっち見ろよ」ズイッ

澪「似合うよ」フイッ

律「ぜんっぜん見てないだろ」ズイッ

澪「見たよ」フイッ

律「…」ズイッ

澪「…」フイッ

律「…」ズイッ

澪「…」フイッ

和「なにこれ」

澪(くぅぅ!直視できない!律の可愛らしい唇が…!はだけた制服から見える鎖骨が…!私の理性が!)

律「みぃお?こっち見て?」

澪「ぐふっ!」



こうして澪さんは地獄の一週間をすごしましたとさ☆
めでたくなしめでたくなし。




次はおまけ編を投下致します。


地獄から天国編


純(うわー…)

紬「」ドヨン

純(梓から聞いてたけど、これほどとは…)

紬「私のジャスティスが…」ドヨン

純「ムギ先輩。一週間なんてすぐですよ。元気だして!」

紬「そうね…。ありがとう純ちゃん…」

紬「スキあらばイチャイチャしようとする澪ちゃんと、人前だから拒絶する振りをしてるけど本当は満更でもないりっちゃん。そんなりっちゃんの心中を察して甘い言葉で翻弄する澪ちゃん。そして、何だかんだで絆されかけて正気に戻るりっちゃん達のイチャイチャも来週には見られるもんね」

純(重傷だなぁ…)

純「そうだ!」

紬「?」

純「お二人を見習って私達もイチャイチャしてみませんか?なーんて「本当?!」

純「あれ?」

紬「はいはいはい!私すっごくイチャイチャしたいです!」

純「わざわざ手をあげなくても…」

紬「とっても素敵ね!純ちゃん!」

純「そ…そうかなー?」

紬「うん!」

純(まさか冗談ですとは言えない…)チラッ

紬「イチャイチャかぁ…」キラキラ

純(絶対言えない!)ダラダラ

紬「それで?いつイチャイチャする?今日?明日?明後日?」

純「先輩落ち着いて!」

紬「はっ!ごめんなさい!私ったら…////」

純(今更だけど…)

紬「あのね!私、純ちゃんがイチャイチャしようって言ってくれたのが嬉しくて……」

純(時々すごくギャップがある人だなぁ)

紬「それでついワーッってなっちゃって…」

純(まあ…)

紬「ワクワクしたのが抑えきれなくなって…」

純(そんな所も好きなんだけどね)

紬「…もしかして、呆れちゃった?」

純「いいえ。ぜーんぜん!それでどうやってイチャイチャしましょうか?」

紬「!」パァァ

紬「はい!」

純「何でしょう?ムギ先輩!」

紬「手を繋いで帰るなんて凄くイチャイチャしてませんか!?」

純「いいですね~。恋人繋ぎなんてもっとイチャイチャしてないですか?」ニシシ

紬「いいの?!」

純「もっちろん。何と言っても私達恋人同士ですから」

紬「恋人って素敵ね!好きな人と手が繋げちゃうんだもの」

純「さらに休日にはデートもできます」

紬「放課後デートもできるね」

純「恋人の家にお泊まりだってできちゃいますよ」

紬「恋人同士って素敵な事だらけなのね」クスクス

純「へっへー。じゃあ今日は手を繋いでイチャイチャしましょうか」

紬「よろしくお願いします!」フンス

純「こちらこそ」スッ

紬「えへへ」ギュッ

純「れっつ・イチャイチャ!」

紬「おー!」


以上になります。



最終更新:2013年06月19日 21:57