暑さのせいか頭がボーとしていて特に何もやる気は起こらない。

私はクーラーが嫌いだからこの暑さを扇風機のみで凌ぐ事しか出来ず。

ただ、うなだれていた。

耳を澄ますと、扇風機の羽が風を切る音と共に二つの笑い声が聞こえてきた。

その笑い声は明らかに私の事を見て笑っている。

「なぁに?」

「ううん。暑そうだなって」

「暑いよ~」

そこで、会話は止まった。
特に何も話したくなかったからだ。

別に私が不機嫌な訳じゃない。
この暑さがすべていけないんだ。

「はい。麦茶だよ」

特に何も言わずに無言で飲み干す。
体が少しだけ潤ったのが全身で感じた。

「もう一杯?」

「もう一杯!」

数秒も経たず新たな麦茶が運ばれた。

今度は飲み干さないように一口だけ飲む。
手に持つコップの水滴が垂れ、私の太ももに落ちた。

どうせなら大量の水を浴びたい。
でも、私にはプールに行く体力もこの暑さに勝てる自信もない。

また笑い声が聞こえてきた。
次は二人してテレビを見て笑っているらしい。

何だか眠たくなってきた。
ちょっとだけ寝よう。

目を覚ますと空はまだ青かった。
時計を見ると六時を回っていた。

「やっと起きたの?」

「うん」

「おかえりー」

「あ、帰って来たみたいね。おかえり憂」

「おかえり。おねぇちゃんもおかえりー」

「おかえりー」

憂は真っ黒だった。
昨日も真っ黒だったけど、今日は少しだけまた黒くなった気がする。

「おねぇちゃんもお外出ればいいのにー」

「だって暑いんだもん」

「ほら、手を洗って来なさい。ご飯出来てるわよ」

今日の夕食はそーめんだった。
昨日もそーめんだった。
一昨日はカレーだった。

二日続けて夕食がそーめんなのはこの季節じゃあよくある事で、憂はえーまたそーめんかぁ・・・とガッカリしていた。

段々と空が濃い青に染まって行き、今日も夏休みの一日を無駄にしたと心の中で呟く。

みんなしていただきますをする。
そーめんを入れている器の氷がカランと音をたてた。

「こら、パパ。そんなに取ると唯と憂の分が無くなるでしょ」

「えぇーいいじゃないか。まだあるんだし」

パパはそーめんが大好きで、毎回一人で沢山食べる。
パパがそーめんを取る度に氷がカランと音をたてるから、まるでその音がそーめんの無くなっていく合図みたいに聞こえ私達も急いで食べる。

そうしていく内にあっという間にそーめんは無くなりまたママが新しいそーめんを湯がき始める。

だいたい家でそーめんが出てきた時はこの繰り返しだ。

「なんで二人は結婚したの?」

憂かそーめんを口に含みながらそう言った。

ママとパパは驚いてお互いの顔を見合わせる。

照れてるのか二人は頬を真っ赤にしていた。

「あーなんでだろうなぁ」

「パパが私の事が大好きだったのよ。告白もパパからだったの」

何となくそうだろうなぁと思ったいた。

「結婚したのはこの人とずっと一緒に居たいと思ったからよ」

「なんだか恥ずかしいなぁ」

パパは頭を掻いた。

「なに照れてるのー」

二人がそうやって楽しげに笑うのを麦茶越しに見ていた私まで楽しい気分に浸る。
こんな結婚してみたいなぁ。

私にとってそれは何度も思ってきた事で、ママとパパは私の憧れの夫婦だった。

考えてる事は憂もきっと同じだろう。
憂の目を合わせ一緒に笑う。
パパとママも釣られて一緒に笑う。

おわりです