◇学生寮

ピンポーン♪

紬「・・・」

ピンポーン♪

紬「唯ちゃんいないのかしら・・・」ガラッ

紬「あら、ドアが空いてる?」

紬「っ・・・この部屋なんて暑さなの・・・。唯ちゃん大丈夫かしら?」トコトコ

紬「・・・唯ちゃん?」

唯「」

紬「・・・寝てるの?」

唯「」

紬「唯ちゃん、唯ちゃんってば!!」

唯「・・・み・・・」

紬「み?」

唯「・・・・・・・・・み・・・ず・・・」


唯「ごくごくごく・・・ごくごくごく・・・プハーッ!」

唯「ふぅ・・・生き返ったよ」

紬「唯ちゃん大丈夫?」

唯「なんとかだいじょ・・・」バタン

紬「唯ちゃんッ!」

唯「ごめん。暑くて・・・」

紬「待ってて、今氷を持ってくるから」

トトトト
トトトト

紬「はい、氷枕」

唯「おーひんやりだねー」

紬「病院とかいかなくて大丈夫?」

唯「うん」

唯「ひやひやー」

紬「でも、びっくりしたわ。一瞬死んでるのかと思っちゃった」

唯「あはは。夏はお隣さんが変死体とか多いよね」

紬「笑いごとじゃないよ」

唯「うん。ちょっと暑さを甘く見てたみた」グー

紬「お腹すいたんだ?」

唯「・・・うん」

紬「ちょっとまってて、冷麦でも作ってあげるから」

唯「・・・お願いします」


唯「・・・」ズズズーズー

唯「・・・」ズズズーズー

唯「・・・」ズズズーゴホッゴホッ

紬「唯ちゃん、お茶!」

唯「ごく、ごくっ・・・ふぅ・・・。ありがとうムギちゃん。急いで食べてたら喉に詰まっちゃったよ」

紬「よっぽどお腹すいてたんだね」

唯「かれこれ2日ほど何も食べてなかったから」

紬「えっ、2日も? 晶ちゃんは?」

唯「実家に帰っちゃったみたい」

紬「夏休みだもんね。でも唯ちゃん。2日もご飯抜いちゃだめよ」

唯「ごめんごめん。でも暑いと何もする気がおきなくて」

紬「もうっ・・・」

唯「うん。ごちそうさま」

紬「おそまつさまでした」

唯「ムギちゃんは実家に帰らないの?」

紬「うん。帰ろうかなって思って唯ちゃんを誘いにきたんだけど」

唯「そうなんだ?」

紬「ええ。唯ちゃんはどうするの?」

唯「私は3日後帰る予定」

紬「じゃあ私も一緒でいい?」

唯「もちろん」

紬「指定席?」

唯「うん」

紬「なら後から切符見せて。近くの席を予約するから」

唯「うん」

紬(やっぱり唯ちゃん元気がないわ・・・)

紬(どうにかできればいいんだけど・・・窓を開けようにも今日は風もないし)

紬(唯ちゃんは冷房苦手だから、こんな狭い部屋でつけるのは良くなさそうだし)

紬(うーん・・・)

紬「そうだわ!!」

唯「ムギちゃん?」

紬「唯ちゃん、ちょっと待ってて!」

唯「あ、うん・・・」


紬「唯ちゃーん」

唯「あ、帰ってきた。それ、洗面器?」

紬「ええ、中に水と氷を入れてあるの」

唯「もしかして体にかけるとか?」

紬「これに足をつけるの、ほら、唯ちゃん」

唯「・・・! いいねぇ、それ」ドプン

紬「どう?」

唯「うん。ひんやりです」

紬「ふふっ、よかった」

唯「ムギちゃん、これとっても気持ちいいよー」

紬「うふふ、ちょっとは元気になったかしら」

唯「うんっ!」

紬「じゃあ、さらに団扇で仰いであげる」パタパタ

唯「ごくらくーごくらくー」

紬「気持ちよさそうねー」パタパタ

唯「そうだ、ムギちゃんも足入れなよ」

紬「え、でもそんな狭い所でくっついたら暑いよ」

唯「いいからいいから」

紬「それじゃあお邪魔します・・・わっ、ひんやりっ」

唯「でしょっ!」

紬「こういう夏もいいものねー」

唯「うん。これにアイスがあったらいうことないんだけど」

紬「冷蔵庫に買ってないんだ?」

唯「うん」

紬「それじゃあ、後から私のアイスキャンディを食べさせてあげる」

唯「私のって、ひょっとしてムギちゃんお手製?」

紬「ええ、最近ジューサーを買ったの」

唯「ジューサー?」

紬「うん。オレンジとかグレープとかを使ってジュースを作るためにね」

紬「ジューサーでできたジュースを製氷容器に入れて、お手軽アイスキャンディ」

唯「楽しそう・・・」

紬「うふふ。今度一緒に作りましょうか」

唯「うんっ!」


紬「冷房がなくても結構涼しいものね」

唯「うん」ゴクゴク

紬「唯ちゃん、脱水症状には気をつけないとダメよ」

唯「はーい」

紬「もうっ、唯ちゃんったら・・・」

唯「涼しいけど、随分汗かいちゃったね」

紬「ええ、唯ちゃんのシャツ、少し透けてるし」

唯「ムギちゃんのブラも透けてるよ」

紬「それは、唯ちゃんの部屋が暑いから・・・」

唯「ね、そうだ。お風呂に入ろうよ」

紬「お風呂?」

唯「うん。水よりほんの少しだけ温かいお湯をためて、ゆっくり浸かるんだ」

紬「それ、よさそうね」

唯「じゃあ私、ためてくるね」

紬「え、唯ちゃんの家で入るの?」

唯「うん。2人ぐらい入れるから」

紬「そっか」

唯「えへへームギちゃんとお風呂」

紬「嬉しいんだ?」

唯「うん。だってムギちゃんの体って柔らかいもん」

紬「唯ちゃん?」

唯「も、揉んだりなんかしないって」

紬(揉むつもりだったのかしら?)

◇お風呂

紬「わ、ぬるくて気持ちいい」

唯「うん。ひんやり」

紬「意外と横に2人並べるものねー」

唯「うん。本当はムギちゃんの上にのっかる予定だったんだけど」

紬「なら・・・えいっ!」

唯「わ・・・おおっ!」

紬「私の上はどう?」

唯「ムギちゃんの上、やわらかい」

紬「うふふ、プールみたい」

唯「プールもいいねぇ」

紬「あっちに帰ったら、みんなでプールに行かない?」

唯「みんなって、りっちゃん達は帰ってないんだよね」

紬「ええ、だから憂ちゃんや菫を誘って」

唯「いいねいいね」

紬「ふふ、みんなで流れるプールで流されたいわ―」

唯「ムギちゃん、夏の陽気に流されちゃだめだよ」

紬「はいっ、気をつけます」

唯「それにしても・・・」

紬「・・・?」

唯「これ、出られないね・・・」

紬「・・・うん」

唯「どうしよう」

紬「炬燵の夏版みたいなものねぇ」

紬「ふやけちゃうまで入ってましょうか」

唯「そうだね」

紬「ねぇ、唯ちゃん、夜ご飯は何が食べたい?」

唯「ムギちゃん作ってくれるの?」

紬「ええ」

唯「やった! あ、でも・・・」

紬「どうしたの?」

唯「えっとね・・・ムギちゃんに甘えすぎるのはよくないかなって」

紬「どうして?」

唯「うんとね、ムギちゃんって優しいでしょ」

紬「そうかな」

唯「うん、優しいよ」

唯「だからね、ムギちゃんに甘やかされると際限なく甘えちゃうんだ」

紬「それって何か問題あるの?」

唯「ムギちゃんとは対等でいたいから」

紬「対等?」

唯「うん。対等」

唯「高校の頃はずっとムギちゃんのお世話になりっぱなしだったでしょ」

唯「お菓子や紅茶だけじゃなくてギターの時も・・・」

唯「何か返してあげられるならいいんだけど・・・」

唯「私がムギちゃんにしてあげられることって少ないから・・・」

紬「唯ちゃん、そんなこと考えてたんだ」

唯「・・・うん」

紬「じゃあお風呂上りのアイスキャンディはなしでいいかしら」

唯「え!」

紬「うふふ、冗談よ」

唯「むむむ・・・」

紬「ね、唯ちゃん」

紬「私ね、優しいから唯ちゃんを甘やかせてるんじゃないんだよ」

唯「えっ」

紬「私はね、唯ちゃんのことが大好きだから、唯ちゃんに色々やってあげたいの」

紬「それにね、こうやって一緒にお風呂に入ると楽しいし」

紬「だからね、あまり難しいことは考えず、私に頼ってくれると嬉しいわ」

唯「ムギちゃん・・・」

紬「ね!」

唯「う~ん、やっぱり本格的に考えてみるべきかな」

紬「なにを?」

唯「ムギちゃんにどうにかして何か返せないか」

紬「うふふ、甘えてくれる気になったんだ」

唯「だって私もムギちゃんのこと大好きだし」

紬「ありがとう。けど本当にお返しなんて考えなくていいのよ」

唯「それは駄目だよ。私の気が済まないもん」

唯「ねぇ、ムギちゃん。ムギちゃんは私に何をしてもらったら嬉しい?」

紬「それは・・・秘密かな」

唯「え、秘密なの?」

紬「うん」

唯「えーー。誰にも言わないから、私にだけ教えて」

紬「うーん。じゃあ唯ちゃんにだけ特別に教えてあげる」

紬「私はね、唯ちゃんに料理を作ってもらいたいな」

唯「え、料理?」

紬「うん。唯ちゃんの手料理が食べたい」

唯「毎日?」

紬「うん。毎日でも」

唯「そっか。でも、それがどうして秘密なの?」

紬「・・・え」

唯「ムギちゃん、ごまかしたでしょ、今」ムギュ

紬「ゆ、唯ちゃん、そこは駄目」

唯「嘘つきなムギちゃんには少しだけ先払いしちゃうんだから」

紬「ゆ、唯ちゃん」

唯「これからもよろしくね、ムギちゃん」

チュ

紬「///」


おしまいっ!


最終更新:2013年07月27日 09:39