律(7月2日、ムギの誕生日)

律(私達は部室でムギの誕生パーティーをやったんだ)

律(ムギのやつは大はしゃぎで・・・あ、唯のほうがはしゃいでたかもしれないけど)

律(澪もみんなを宥める側にまわってたけど、実はかなりはしゃいでたと思う。多分梓も)

律(そんな中、私だけははしゃげなかった)

律(・・・)

律(パーティーの片付けが終わったあと、少し残るようにムギに頼んだ)

律(それから私はムギに告白した)

律(好きだ、って)


紬「り、りっちゃん?」

律「返事はいつでもいいから」

紬「う、うん//」

律「じゃあ」


律(あの時は逃げるように走り去ってしまった)

律(告白なんてはじめてだし・・・)

律(緊張したから仕方がないと思う)

律(ムギ、戸惑ってたなぁ)

律(でも顔がほんのり赤かった・・・ような気がする)

律(私の見間違いじゃなければ)

律(ムギを好きになったきかっけ)

律(きっかけらしいきっかけと言えば、あのお出かけかな)

律(偶然出会って、駄菓子屋にいって、ゲームセンターにいって・・・アレってデートだったんだろうか)

律(・・・)

律(あの別れ際の笑顔が心にひっかかって)

律(いつの間にかムギから目を離せなくなっていたんだ)

律(自分は同性愛から遠い存在だと思ってたけど)

律(ほんと、いつの間にか・・・)

律(・・・今ではムギのことが気になって仕方ない)

律(まぁ、それはいい)

律(それはいいんだ)

律(それより問題なのは・・・)


紬「りっちゃん、はい」

律「ありがとう」

紬「唯ちゃんも、どうぞ」

唯「これなーに?」

紬「親戚の人からもらったの。フランスの地方の焼き菓子だって」

唯「いただきまーす」パク

唯「うん、うん、これは!?」

紬「これは!?」

唯「とっても美味しいよー!!」

紬「そう、おかわりもあるわよ」

唯「え。ほんと!」

紬「ええ」

唯「わ~い、ムギちゃん大好き!」ダキッ

律(お、おい)

紬「うふふ、唯ちゃんったら」

唯「えへへー」

律「・・・ムギ、私ももう一つもらっていいか?」

紬「りっちゃんも気に入ってくれたんだ!」

律「お、おう」

律(なんて眩しい笑顔だ)

紬「はい、りっちゃん」

律「さんきゅー」

紬「・・・」ウズウズ

律「むぎ?」

唯「ちっちっちっ、りっちゃんはわかってないねー」

律「え」

唯「ムギちゃんはりっちゃんに抱きついて欲しいんだよ」

律「え、え」

紬「うふふ、冗談よ。はい、お茶のおかわりもいれるね」


律(という感じにどぎまぎさせられっぱなしなのである)

律(・・・)

律(あの時抱きついてたら・・・ううん、なに考えてるんだ)

律(私とムギはまだそういうんじゃ・・・)

律(と、とにかく、こういうのは困る)

律(この前だって)


紬「そっかぁ、りっちゃんは小海老のかき揚げが好きなんだ」

律「あぁ、ムギは?」

紬「私は紫蘇の葉かな」

律「美味しいよな、紫蘇の天麩羅」

梓「こんにちはー、あ、お二人だけでしたか」

紬「いらっしゃい、梓ちゃん」

律「おう」

梓「むーぎ先輩」ダキッ

紬「あ、梓ちゃん//」

梓「ふふふ」ギュ

紬「も、もうっ、どうしたの?」

梓「抱きついちゃダメですか?」

紬「えっと・・・ダメではないけれど、どうして?」

梓「私にだって誰かに抱きつきたくなることはあります」

紬「そ、そうなんだ」

梓「それにムギ先輩はいいにおいがしますから」

律「・・・」

梓「あ、律先輩も混ざりますか?」

律「え」

律(確かにムギはいい匂いがするけど・・・混ざれるわけないだろ)

梓「いいです、私ひとりで堪能させてもらいますから」

紬「もう、梓ちゃんったら・・・」


律(梓までこんな有り様である)

律(まさかみんなグルになって私をからかってるんじゃ・・・)

律(いや、ムギに限ってそんなことないはずだ)

律(・・・たぶん)

律(と、とにかく、そろそろ返事が欲しい)

律(でも『いつでもいいから』と言った手前、催促するのも気がひける)

律(私の勝手な勘だけど、ムギは『同性だから』という理由で断ることはないと思う)

律(そして、答えを保留することでキープするようなやつでもない)

律(だからきっとムギはまだ迷ってるんだと思う)

律(・・・)


澪「見ら  に来 ?」コソコソ

紬「・・・う 大 夫」コソコソ

律(あれ、あそこにいるのは澪と・・・ムギ?)

律(空き教室の端っこで何をはなしてるんだろう・・・?)

律(・・・小声で全然聞き取れない)

澪「・・・」コソコソ

紬「・・・」コソコソ

澪「・・・」コソコソ

紬「・・・」コソコソ

澪「はは」

紬「うふふ」

律(笑ってるのはわかるけど、さっぱり聞き取れない)

澪「・・・」ポカ

紬「・・・」ニコッ

律(あ、澪が叩いた。ムギは嬉しそうにしてる)

律(あの二人、いつの間に仲良くなったんだろう・・・)

律(なんだか悔しいな)

律(・・・)

律(澪に嫉妬する日がくるなんて・・・)

律(でもムギのやつ、昔は私にスキンシップされて喜んでたのに)

律(さいきんは澪や唯や梓と・・・)

律(・・・)

律(や、やめよう、これ以上考えるのはいけない)

律(あ、出てくる、隠れなきゃ)

ガラッ

澪「それじゃあ・・・」ジー

紬「どうかした? あら・・・」ジー

律「・・・あ、あはは」

澪「律、こんなところでどうしたんだ」

律「ちょ、ちょっと通りかかっただけだよ」

紬「そっかぁ、ねぇ、りっちゃん。りっちゃんの好きな食べ物について教えてくれる」

律「へ」

紬「今ね、澪ちゃんと誕生パーティーの料理について相談してたの」

澪「あぁ、律の好物について教えてたんだ」

律「そ、そうなのか?」

紬「うん」

澪「楽しみにしてくれ。最高の誕生パーティーにするから」


律(私の誕生パーティーの相談・・・)

律(そっかそっか、ムギが私のために料理を・・・)

律(それはいい。それはいいんだけど・・・何かひっかかるような)

律(ま、いっか)

律(ムギの手料理楽しみだし)

律(そんなこんなで月日は流れ8月21日)

律(私の誕生日当日のこと)


パーン
パパパパーン

唯「りっちゃん」
紬「りっちゃん」
澪「律」
梓「律先輩」
唯・紬・澪・梓「誕生日おめでとう!!」

律「おう、ありがとう」

律(やっぱり友達に誕生日パーティーをやってもらうのっていいものだな・・・)

律(ごちそう・・・飾り付け・・・みんな頑張ってくれたんだ)

律(・・・いけない、ちょっと泣きそうだ)

唯「さ、りっちゃん、座ってどーぞ」

梓「あ、飲み物注ぎますね」

律「さんきゅ」

梓「どういたしまして」

澪「じゃあ、料理をとりわけてっと・・・」

澪「さ、じゃあ乾杯の前に、ムギから一言」

律「え、ムギから?」

紬「こ、こほん・・・あー、あー」

律(なにがはじまるんだろう)

紬「えー、えー、っと、りっちゃん」

律「は、はいっ」

紬「わ、私、琴吹紬は、りっちゃんのことが大好きです!! 付き合って欲しいとです!!」

律「え」

唯「ひゅーひゅー」

梓「お熱いです」

澪「やったな、律・・・・・・律?」

律「・・・」

紬「えっと、りっちゃん?」

律「・・・」

紬「りっちゃん・・・もしかして怒ってる」

律(よく考えがまとまらないけど、とりあえず)

律「私がムギに告白したって、みんな知ってたのか?」

唯「うん」

梓「告白のとき、扉の影から聞いてましたから」

律(な、なんだと・・・!?)

唯「それでちょっと気を利かせたりもしたんだけど」

梓「はい。律先輩はほとんど乗ってくれませんでしたが」

梓「ムギ先輩。こんなののどこがよかったんですか?」

紬「りっちゃんは優しくて、かっこよくて、とっても気が利くのよ~」

梓「そ、そうですか・・・」

澪「ほら、律。最高の誕生パーティーになっただろ」ドヤッ

澪「告白現場をみたときに閃いちゃってさ。ムギに返事を先延ばしにしてもらったんだ」

澪「サプライズパーティーは去年やったからさ、今度はパーティーの中でサプライズを・・・ってさ」

律「・・・」

律(あ、わかった)

律(わかってしまった)

律(こいつらは馬鹿だ)

律(それも愛すべき最高の馬鹿だ)

律(それなら私もそれに答えてやらないと)

律「あぁ、確かに最高の誕生日だよ、誕生日だけど・・・」

律「この野郎!」ポカ

澪「り、律が殴った」

律「誰が『こんなの』だ!!」ポカ

梓「あわわわ、ごめんなさい、律先輩」

律「唯は・・・ムギに抱きつくのはほどほどに」

唯「ひー、ムギちゃん、お助けを~」

律「逃すか」ポカ

唯「わ~ん、・・・・あれ、あんまり痛くないや」

律「そして、最後はムギ」

紬「・・・」ウズウズ

律「ふむ。叩いてもお仕置きにならなそうだ・・・」

紬「そ、そんなぁ・・・」シュン

律「だからムギにはこうだ・・・」チュ



律(たんこぶをつくった3人と、顔を真っ赤にした2人が写った記念写真は、私達の宝物になった)



おしまいっ!