コネティカットのひょこひょこおじさんを読んでいる途中、
ふと顔を上げたらあの人と似た顔。
梓が立っていた。
「何を読んでいるんですか?」
「なんとかのひょこひょこおっさん!」
梓は呆れた顔をして、
「それ、コネティカットのひょこひょこおじさんですよね?」
「あー、そんな感じ!」
「ナイン・ストーリーズの中でそれが一番好きなんです!」
「おー、読んだことあるんだな。」
共通の話は少し嬉しい。
澪が去ったあの日。
雨の中で何が起きたんだろう。
私と梓が体験していたことはまったく違っていた。
「律がいないんだ。」
いきなり電話が来て梓は戸惑うことしかできなかったそうだ。
「いないって…?」
「分からない。ただ、いなくなる前、思い詰めた顔をしてた。
嫌な予感がするんだ。雷が鳴っているし、たぶん河原にいると思う。
一緒に探してくれないか?」
ここでも矛盾しているが、
私は河原でぼんやりしながら一人で立っていたみたいだ。
私は最後まで一人だった。
「水に飛び込むかと思った。」
梓は言う。
梓の言葉が本当なら澪との別れはなんだろう。
真実はないのだろうか。
まぁ、それでいい。
今は思う。
それでいい。
それ以来、澪の話は聞かない。
少し寂しい…
そう思っているうちに、
私の家に着いた。
梓は楽しそうな顔で笑っている。
「おじゃましまーす!」
「おじゃまされまーす!」
上の方からガタガタとすごい音がした。
今まで澪の家にいたからな。
自分の家が懐かしい…
「姉ちゃん!?…と誰ですか?」
「まぁ、りっちゃん様のハンバーグは絶品だぞー!」
「期待してます!」
「俺が作る方がおいし…「律先輩、可愛いな///」
「…部屋に戻ろう。」
「律先輩ー、聡君が泣いてますけど…」
「…毒舌は怖いな。」
「りっちゃん、きたよー!」
よだれを垂らしている唯。汚いぞ?
「ケーキもあるの~」
デザートを持ってきてくれたムギ。
「私もお手伝いします!」
料理上手な憂ちゃん、期待だな!
「律が料理!?」
以外と失礼な和。
「梓ー!憂ー!」
佐々木…じゃなくて鈴木さん。
「たくさん人きましたね。」
そして、梓。
「馬鹿律。」
最後に澪。
馬鹿騒ぎのお祭りっぽい。
それが終わった静かな夜。
私と梓は二人ぼっちだ。
澪の部屋で…
澪、岩屋の鍵の使い方。
今なら分かるよ。
「梓、大好きだ!」
最終話(第九話)「コネティカットのひょこひょこおじさん」 END
最終更新:2012年10月16日 19:33