唯「んっ……」
和「んんっ……」
唯(和ちゃんとのチュー……、これでもう何回目かな?)
唯(両手両足の指の数じゃ全然足りないよね?)
唯(和ちゃんと恋人になったのが三ヶ月前で、チューするようになったのが二ヶ月前で)
唯(それから毎日二回はチューしてたから……)
唯(うん、百回以上チューしてるんだね、私達)
唯(はあー、でも何回しても幸せだよ、和ちゃんとのチュー)
唯(何度でも何時間でもしてたいくらいだもん)
唯(チューだけで私、すっごく幸せなんだけどなあ……)
和「ねえ、唯」
唯「な、何っ?」
和「ちゃんとキスに集中して」
和「キスを単なる日常の習慣にするなんて感心しないわね」
和「確かに欧米ではキスを挨拶にする国も多いし、それは大切な文化だと思うわ」
和「でもね、私はキスという行為をそういう風に扱いたくないのよ」
和「いつまでも大切な人との特別な行為にしておきたいの」
和「それは唯も同じでしょ?」
唯「う……、うんっ!」
唯(考え事してたのばれちゃった……)
唯(でも、今は色々考えたい時なんだよう、和ちゃん……)
唯(今日、お父さん達は旅行に行ってるし、憂はあずにゃんのお家にお泊まりに行ってる)
唯(だから今日は一日中和ちゃんと二人っきり)
唯(この前、二人で決めたんだもんね)
唯(今度どっちかの家で二人っきりになれる日があったら)
唯(……)
唯(エッ……、エッチしようって)
唯(ううー……、思い出しただけで顔が熱くなってきちゃったよ……)
唯(そりゃ私だって和ちゃんと一緒に居たいし、いつかはエッチしたかったけど……)
唯(いざとなるとすっごく緊張するよう……)
和「どうしたのよ、唯? 体調でも悪いの?」
唯「だ、だいじょぶ!」
和「そう? 気分が悪くなったらいつでも言うのよ?」
唯「う、うんっ」
唯(もー……、和ちゃんったら……)
唯(どうして和ちゃんったらそんな平気な顔をしてるの?)
唯(私なんて胸がドキドキし過ぎて息するのも苦しいのになあ……)
唯(ひょっとして私以外とエッチした事あるとか?)
唯(まさか澪ちゃんとエッチしたとか?)
唯(二年生の頃、すっごく仲良くなってたみたいだし……)
唯(な、なんてね……。そんな事ないよね……?)
唯「はあ……」
和「ちょっと……、本当に平気なの、唯?」
唯「ほ、本当にだいじょぶだって和ちゃん!」
唯「元気な証拠見せちゃうよー!」
唯「ほら、和ちゃんチュー……」
和「……ん」
唯(ああ……、やっぱり和ちゃんのチューって気持ちいいよう……)
唯(私の口の中の気持ちいいところが全部分かってるみたい……)
唯(……はっ!)
唯(もしかして誰か他の子とチューしてたとか?)
唯(って駄目だよう、和ちゃんを疑っちゃ)
唯(きっと和ちゃんは人よりチューが得意なだけなんだよね?)
唯(さくらんぼの房を口の中で結ぶの、前に見せてくれたし……)
唯(と、とにかく今はチューに集中しなくちゃ……!)
唯(この後、本当にエッチするかどうかは分かんないけど……)
唯(和ちゃんとのチューを特別なままにしたいのは私だって同じだもん……!)
♯
和「はあ……」
唯「ふう……」
和「お疲れ様、唯。唯のキス、前よりずっと上手くなってたわよ」
唯「そ、そう? だったら嬉しいなー」
唯(チューを褒めてくれるのは嬉しいんだけど……)
唯(うー……、和ちゃんとのチューが終わっちゃったよ……)
唯(ほ……、本当に今からエッチしちゃうのかな?)
和「それじゃ唯」
唯「ひゃ……、ひゃいっ!」
和「声が裏返ってるわよ、唯。そんなにこれからの事に緊張してるの?」
唯「そそそ、そんな事ないよー?」
和「声も顔も緊張しっぱなしじゃないの……」
唯「だだ、だってエッチだよ? チューより凄い事しちゃうんだよ?」
唯「約束は約束だけどね、どうしても胸がドキドキしちゃうんだよう……」
唯「ずっと一緒に居てくれた和ちゃんとエッチするなんて……」
和「唯、ちょっと待って」
唯「なな、何っ?」
和「私達がこれからするのはエッチじゃないわ」
唯「ど、どういう事……?」
和「セックスよ」
和「私達はこれからセックスをするの」
唯「セセ……セックスって和ちゃん……」
唯「そんな風に言われちゃうと余計に緊張しちゃうよう……」
和「それはごめんなさい、唯」
和「でもね、私、そこははっきりさせておきたいのよ」
和「世間ではエッチって軽い言葉で、自分のする行為の重大さを誤魔化してる気がするの」
和「誰もがしている単純で簡単な事なんだって」
和「さっきも言ったけど、私はキスを日常の習慣にしたくないの」
和「それはセックスも同じ」
和「単に好奇心で試すわけじゃないわ」
和「溢れ出す性欲が止められないわけでもない」
和「私は全力で唯に想いを伝えたいの」
和「指で、肌で、舌で、全身で」
和「特別な想いを特別な行為で特別な存在の唯に伝えたい」
和「それが今日のセックスに対する私の正直な気持ちよ」
和「唯は違うの?」
唯「ち、違わない……と思う……」
唯「私もね、和ちゃん。大好きだって気持ちを和ちゃんにもっと伝えたいんだよ?」
唯「エッ……セックスで和ちゃんと恋人になれた嬉しさを伝えたいよ」
唯「大好き、大大好きって伝えたい」
唯「でもね……、やっぱりドキドキしちゃうんだよう……」
和「初めてのセックスなんだものね、唯が緊張する気持ちは分かるわよ」
和「だけど唯がそんなにセックスに緊張するタイプだとは思ってなかったわ」
唯「どっ、どうして? 初めてなんだよ?」
唯「ドキドキしちゃうに決まってるよう……」
唯「だって和ちゃんの前で裸になっちゃうんだよ?」
和「裸なんて小さな頃からお互いに見慣れてるじゃないの」
唯「そうだけど違うんだよう、和ちゃん……」
和「何が違うの?」
唯「友達で幼馴染みの和ちゃんの前だから、裸を見られても平気だったんだよ?」
唯「でも今の和ちゃんは私の恋人で……」
唯「前よりずっとずっと特別な存在の和ちゃんだから……」
唯「裸を見られちゃうのがすっごく恥ずかしいんだよう……!」
和「気持ちは分からなくもないけれど、私は逆なのよ、唯」
唯「逆……?」
和「私はやっと唯と恋人になれた。恋人になれたからこそ唯の裸を見たいの」
和「それと同時に私の裸を見てほしい気持ちもあるわ」
和「それは唯の事が大好きだから。愛しくてたまらないから」
和「だから唯と全てを見せ合いたいの」
和「ねえ、唯の裸、見せてくれる……?」
唯「和ちゃんがそう言ってくれるのは嬉しいけど、でもでもでも……!」
和「でも?」
唯「私、セックスのやり方も分からないんだもん……!」
唯「りっちゃんからそういう女の子同士の本借りたりしたけど……」
唯「セックスのシーンになったら和ちゃんの顔を思い出しちゃって」
唯「ドキドキしてそれ以上読めなかったんだよう……」
和「女の子同士の本、律から借りたの?」
唯「りっちゃん、私達が付き合ってるの知ってるから友達から借りてきてくれたんだよね……」
唯「でも私恥ずかしくて全然読めなくて……、貸してくれたのにごめんよう、りっちゃん……!」
和「そうなのね……」
和「だけどそれなら尚更ちゃんとセックスしないと律に失礼じゃないかしら?」
和「律は私達のために女の子同士の本を借りてくれたんだもの」
和「そんな律のためにも私達はちゃんと想いを伝え合わなきゃ」
和「勿論分からない事は私が教えてあげるわ、唯」
唯「女の子同士のやり方、和ちゃんには分かるの……?」
和「唯よりはね」
唯「や、やっぱり何か道具しか使うの……?」
和「道具……?」
唯「何か揺れるのとか長いのとか野菜とか……」
和「何を言ってるの」
唯「バッサリだっ?」
和「でも分かったわ、唯。中途半端な知識を持ってるから怖いところもあったのね」
和「心配しなくていいわよ、道具も野菜も使わないもの」
唯「そ……、そうなの?」
和「女の子同士のセックスはね、指でするのよ」
唯「指……なの……?」
和「本だと視覚的効果のために道具を使いがちかもしれないわね」
和「だけど本当に道具を使う女の子同士のセックスは少ないの」
和「バイブレーターを使ったり、キュウリを使ったり、ナスを使ったり」
和「バナナを使ったり、ニンジンを使ったり、ダイコンを使ったりなんてしないのよ」
唯「ダ……、ダイコンは誰も使わないと思うけど……」
和「……ごめんなさい、ダイコンは誇張し過ぎだったわ。ダイコンの事は忘れて」
和「でもね、道具が必要ないのは本当なのよ」
和「思い出して、唯。私達がどうしてセックスするのか」
唯「大好きって気持ちを身体で伝え合うため……だよね?」
和「そうよ。ほら、それなら道具なんて必要ないでしょう?」
和「私達は自分達の身体で、全身で気持ちを伝え合うんだもの」
和「それには指と肌があれば十分よね?」
唯「そう……だね」
和「納得出来た?」
唯「あ、でもやっぱり……」
和「次は何? もう何でも付き合うわ」
唯「今日はセックスの練習だけっていうのはどうかな……」
唯「上手く出来るか不安だし、本番のために少しずつって事で……」
和「練習ってどんな事をするのよ」
唯「今日はおっぱいだけ触り合うとか……」
和「駄目よ」
唯「二度目のバッサリっ?」
和「じゃあ聞くけど唯。唯は自分の胸を触るとどんな感じがするの?」
唯「えーと……、くすぐったい?」
和「そうね。私もそうだし、大体の女の子はそうでしょうね」
唯「それじゃ駄目?」
和「駄目に決まってるでしょ、そんなの練習でも何でもないもの」
和「さっきの本の話じゃないけれど、俄か知識に踊らされては駄目よ」
和「女の子が胸で快感を得るなんて、フィクションだって唯も分かってるでしょう?」
和「あれも単なる視覚的効果だものね」
和「胸を触られても実際には単にくすぐったいだけ」
和「気持ち良くないわけではないけれど、セックスの感覚とはまた別物よ」
唯「ううう……」
和「他に何か提案があれば聞くわよ」
唯「あ……ありませんです……」
和「それはよかったわ」
唯「だけど本当にいいの、和ちゃん?」
和「どういう事?」
唯「私、分かるんだ。きっと上手に和ちゃんとセックス出来ないって」
唯「多分、ううん、絶対途中で変な失敗をしちゃうと思う」
唯「それでも……いいの?」
和「いいわよ、唯」
和「初めてなんだもの、失敗くらいあるわ」
和「失敗してもいいのよ」
和「いいえ、失敗してほしいわ。失敗したら私が正してあげる」
和「そうしながら二人で成長しましょう」
唯「和ちゃん……」
和「唯……」
唯「あ、えっと……」
和「どうしたの?」
唯「服はどうしよう……?」
唯「自分で脱ぐ? それとも……」
和「唯はどうしたいの?」
唯「きょ、今日は自分で脱ぎたいかも……」
和「そうね……。相手の服を脱がせるのは難しいものね」
和「今日は自分で脱ぐ事にしましょう」
和「脱がせ合うのはまた今度……ね」
唯「う、うん」
和「それじゃあ脱ぎましょう、唯」
唯「ら、らじゃー……!」
唯(ううう、服を脱いだらとうとう和ちゃんとのセックスが始まっちゃうんだ……)
唯(上手く出来ないと思うけど頑張らなきゃ……!)
唯(汗掻いちゃって服が脱ぎにくいなあ……って)
唯「ちょっと和ちゃん!」
和「どうしたのよ」
唯「頭が引っ掛かってる引っ掛かってる!」
唯「ボタン外さずにその服が脱げるはずないってば!」
和「そ、そうかしら……?」
和「でもこうすれば隙間から服が脱げるはずなのよね……」
唯「無理だよう!」
唯「破れる! 服が破れちゃうって!」
唯「ちゃんとボタン外さなきゃ……!」
和「わ、分かったわよ……」
和「ちょっと待っててくれるかしら?」
唯(勿論待つけど、でも和ちゃん……)
唯(見えてないせいか全然シャツのボタンが外せてないよ……)
唯(ううん、違うや)
唯(指先が震えてるんだね、和ちゃん……)
唯「手伝うよ、和ちゃん」
和「ひ、一人で出来るから大丈夫よ、唯……」
唯「ううん、手伝わせて、和ちゃん」
唯「この後いっぱい迷惑掛けちゃうと思うから、今くらいは手伝わせて」
和「……」
和「ありがとう……」
唯「どういたしましてー」
唯(なーんだ……)
唯(和ちゃんも私と同じに緊張してたんだ)
唯(こんなに指が震えるくらい緊張してるのを誤魔化すために)
唯(セックスの色んな勉強をしてきてくれてたんだ……)
唯(初めてのセックスにドキドキしてる私を不安にさせないために……)
唯(嬉しいな……)
唯(すっごく嬉しい……!)
唯「はい、全部ボタン外れたよ、和ちゃん」
和「迷惑掛けちゃったわね……」
唯「いいっていいって。お互い様、だよね?」
和「そうね……、お互い様よね……、でもありがとう、唯」
唯「えへへ。あ、お礼ついでに、裸になる前に和ちゃんに一つお願いしていい?」
和「お願い?」
唯「もう一度だけ和ちゃんと思いっきりチューしたいな」
唯「今度こそ余計な事を考えずに、一番ドキドキするチューを和ちゃんとしたくなったんだ」
唯「いいかな?」
和「勿論よ。私も最初のセックスの前に最高のキスを唯としたかったの」
唯「やったあ!」
唯「それじゃあ一番のチューを、んっ……」
和「んんっ……」
唯(分かるし感じるよ、和ちゃん)
唯(和ちゃんがまだドキドキしてるのと)
唯(私の事を本当に想ってくれてる優しさとあったかあったかな気持ち)
唯(私達、今日だけじゃなくて、これからも色んな失敗をしちゃうかもしれないけど……)
唯(素敵なセックスをして、大大好きな気持ちを伝え合おうね……!)
おしまい
最終更新:2013年10月10日 07:31