結果発表(1)

【知識部門】
1位 7番手:◆Ritsu/ZuXY 「市内のお出かけはロンドン交通局で」: 49点
2位 9番手:◆ym58RP.VtE 純「期限の勘違いにはご注意を!」: 44点
3位 1番手:◆ZavxytTKqo 和「これで学べる! 真鍋和の豆知識!」: 42点
4位 6番手:◆UwUOv4/shU 紬「先端百合半導体工学 その発見の瞬間」: 39点
5位 8番手:◆CQDDPJeh8k 澪「ヴィンテージ」: 33点
6位 4番手:無名 ◆4xyA15XiqQ 梓「Tonight We are Super Star!」: 32点
7位 2番手:◆dWVtcnK36s 澪「私の言葉」: 30点
8位 5番手:◆ywLV/X/JUI 唯「唯2101?」: 23点
9位 3番手:◆HZgEJIzDeQ 唯「こんなに君はあったかいんだね」: 21点

和「――と。いうわけで、」

唯「結果発表! じゃっじゃーん!!」

和「・・・」

唯「・・・」

和「・・・ねえ唯、もう一人は?」

唯「さすがにもうすぐ来るはずなんだけどなぁ。なにかあったのかな?」

和「気分的にはかれこれ二週間近く待ってる気がするんだけど」

唯「やけに具体的だね・・・」

 < ガチャッ

律「ごめーんっ! ちょっと目覚ましかけそb――うひゃっ?!」ズルッ

唯「り、りっちゃん?!」

  \どってーん/



★― 結果発表《知識・解説編》 ―★

 第1位 49点 7番手:◆Ritsu/ZuXYさん
  「市内のお出かけはロンドン交通局で」

 第2位 44点 9番手:◆ym58RP.VtEさん
  純「期限の勘違いにはご注意を!」

 第3位 42点 1番手◆ZavxytTKqoさん
  和「これで学べる! 真鍋和の豆知識!」

 第4位 39点 6番手:◆UwUOv4/shUさん
  紬「先端百合半導体工学 その発見の瞬間」

 第5位 33点 8番手:◆CQDDPJeh8kさん
  澪「ヴィンテージ」

 第6位 32点 4番手:無名 ◆4xyA15XiqQさん
  梓「Tonight We are Super Star!」

 第7位 30点 2番手:◆dWVtcnK36sさん
  澪「私の言葉」

 第8位 23点 5番手:◆ywLV/X/JUIさん
  唯「唯2101?」

 第9位 21点 3番手:◆HZgEJIzDeQさん
  唯「こんなに君はあったかいんだね」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
律「ったぁ・・・って唯、それまだ見ちゃダメだからーっ!」ぐいっ

和「律。知識・解説面でのランキングはもう終わったわよ?」

律「え。まじで?」

唯「うん。りっちゃん遅いから」

律「ぐぬぬ・・・」

和「というより、同じ作品を二回も解説しなおすのは難しいでしょう?」

律「えー。それじゃあこの企画の趣旨って」

唯「りっちゃん! おクチ、チャックだよっ!」

律「ていうか考えたのおめーらじゃん!」

唯「ええ? 先に『ヒマだしなんかやろうぜー!』って言ったのはりっちゃ」

和「と。いうわけで総合順位の発表に移りましょう!」

唯律「「スルー?!」」


★― 結果発表《内容部門》 ―★

律「いっいぇーい!」

唯「ぱふぱふ~!!」


和「あ、ここで補足をひとつだけ。
  内容部門といっても総合点ではなく、今回は合計せず、あくまで別の順位にしたわ」

唯「ええとつまり、某胸糞企画からアイデアをパk・・・」

律「リスペクトさせていただきましたっ!!」

和「というのもね。SSとしては未熟でも豊富な知識を魅せてくれたSSだとか、
  逆に少ない知識を筆の力で輝かせてみせたSSなんかをすくい上げたかったのよ」

唯「でも、読んだ人の“おもしろい”って気持ちってそんな簡単に分けられるのかな?」

律「まぁなー。つーか分けられないからこそランキング一個ぶちまけたわけだし」

和「ほらほら二人とも、ただでさえ時間が圧してるんだから。
  それじゃあ第九位の発表よ」


 第9位 18点 5番手:◆ywLV/X/JUIさん
  唯「唯2101?」


和「知識部門では第8位。株取引についてあなたたちが語り合うSSね」

律「・・・すまん。解説はおまえらに任した」

唯「ええ~っ?! わたしも全っ然だったのに!」

律「というかこれ、最初っから専門用語丸出しでワケわかんねーし!」

唯「そうだよ! ねぇ和ちゃんこのSSの私あたま良すぎ!」

和「ある意味それ自虐になってるわよ・・・。
  でもね唯、これ、私は結構気に入ってるのよ」

律「えー? どの辺が?」

和「私も株取引の子細は分からないけれど、
  キャラが何かを楽しんでる様子は十分伝わってくるのよ」

律「そりゃあ、そうだけどさー?」

唯「ごめん。わたし最初の私の台詞で脱落したよ・・・」

和「確かに専門用語を当然のように使うのはリスキーよね。
  でも、そうね・・・たとえば登場人物の台詞の行数に注目してみて」

唯「ほえ?」

和「分かりやすいのは2レス目ね。
  まずムギが3行、唯が1行、ムギが5行」

律「梓が2行で、次のムギが・・・6行。多いなっ!」

唯「そっから私とあずにゃんが1行ずつ、ムギちゃんが4行だね」

和「ここから分かるのは、台詞の量を極端に振り分けてること。
  解説役のムギの行数が増えるのは仕方ないとして、唯たちが少ないのよ」

律「あー、言われてみれば」

和「こうやって発言量をしぼると、リアクションが分かりやすくなるのよ。
  感情表現や語尾だけの反応が増えて、言ってみれば発言に色気がつく」

唯「えへへー、やだなぁ和ちゃん、わたしにオトナの色気だなんて」

律「和つづけて」

唯「スルー?!」

和「とまあ、このように短い台詞を重ねると『説明してる感』を薄められるのよ。
  そのせいか、たしかに扱う話題が高度なんだけど、
  その割には実はかなりこなれたほのぼのSSになってるんじゃない?」

律「言われてみればなぁ。キャラも立ってる気がしてきた」

唯「そうだね。あずにゃんがあずにゃんぽい」

律「ただなぁ。こんだけ初見殺しのタームを並べるんなら、
  いっそ全部フィクションにしたって同じだったんじゃねーの?」

和「どういうこと?」

律「だからさー、今回だと6番手の百合化学のアレあるじゃん?
  そういうノリでめちゃくちゃな専門用語をでっち上げて並べて・・・って」

和「それだと趣旨が変わっちゃうわよ・・・。
  あ。でもそのパターンだったらひとつ傑作があるわね。
  律「これが澪のグーグルか…」っていう」

律「これが澪のグーグルか…」※百合ノート様に飛びます

律「よりにもよってアレかよ!」

唯「ねえ和ちゃんどんな話なの?」

律「おい和。責任とって話題変えろ」

和「私はどうすればいいのかしら・・・。
  でもね、『短く的確な感情表現をつなぎにして、専門用語を読ませる』という点でなら、
  例のグーグルと今回の株SSは共通項があるかもしれないわね」

律「専門用語とかいう問題じゃねーだろあれ!!」

和「とにかく、5番手さんの作品は順位はふるわなかったけれど、
  実はほのぼのSSとしてかなり出来のいい作品だと私は思ったわ」

唯「でも、もうちょっとだけ分かりやすい話題がよかったかなー、って・・・」

律「いや、あれは株取引が相当好きじゃないと書けないだろー?
  書き手本人が書きたいもの書くのが一番だって、やっぱ」

和「そうね、発想を無理にしぼって何も作れなくなるよりはずっと健康的よ」

唯「私は最後までよく分かんなかったけど、株って怖いんだね・・・」

律「うまい話はねーってことだろ」

和「野菜を食わず嫌いする子どもみたいね。
  でも結果として専門用語の羅列になってるのは、ある種の愛情なのかしら」

律「はぁ? 読み手を思うんなら分かりやすく読みやすくした方が」

和「今の唯を見てみなさいよ。あれで、不用意なお金のやりとりをできると思う?」

唯「お金こわい・・・もう通帳も全部憂に任せようかな・・・?」ブルブル

律「うわあ、もはやアレルギー症状の域だな・・・」

和「まあ唯は極端な例として、結果的には教育的な内容だった、とも言えるかもしれないわね」

律「ははは・・・」

和「ところで、この書き手さんが同じトリップで書いた過去作は地の文長編が多いわね。
  でも今回のように、ほのぼの台本SSももっと読んでみたいわ」

律「それじゃあそろそろ次いこーっ!」

 第8位 28点 3番手:◆HZgEJIzDeQさん
  唯「こんなに君はあったかいんだね」


和「知識部門では第9位。私と唯が、そういう関係になるSSね」

唯「そういう関係って・・・?」

律「あーっそうだ唯! いっけねえー私教室にカルピス置いてきちゃったー
  あー今日あっついからあれ早くとりに行かないと悪くなっちゃうなあーどうしよー!」

唯「何その無理やり?! しかも棒読みひどいし!」

律「と。いうわけで唯。教室までダッシュ! あとでクレープおごるからっっ!」ぐいっ

唯「ええー?! ・・・んもう。じゃあ私いない間よろしくねっ!」

  たっ たっ たっ  たっ


律「・・・ふぃー」

和「その、お疲れさま・・・」

律「で。和はこのSSどうだったのさ?」

和「正直、個人的な意見でいうなら、
  ・・・あんまり好みじゃなかったのよね」

律「ふぅん? それってやっぱ、えろい話だから?
  つーかソッチ系の話で自分が出てくるって、アレだよな・・・」

和「そういうわけじゃないのよ。
  でもあれよね、私たちはともかく、
  現実のアイドル歌手なんかでもナマモノカプって言って」

律「つーかさ。いわゆる“律澪”だの“唯梓”だのって、
  私たち本人からしたら「ナマモノカプ」になるのかなー?」

和「律、戻して。脱線してる上にメタすぎて何も言えなくなるから」

律「・・・だな」

和「さて、SSの話だけど」

律「私は悪くないと思ったんだけどなー?
  だっていちゃいちゃしてて初々しいじゃん、二人とも。
  ・・・あ、別に和と唯をそういう目で見てるってわけじゃなくて、」

和「だからメタいことはやめなさいって言ったのよ。はぁ。
  うん、一言でいうと説教くさい。良くない意味で教育的だった」

律「うわあ、バッサリだ」

和「たとえば・・・・・こほん。
  ところで律? 私たちって出会って二年になるわよね」

律「へ? え、まあそうだけど、ていうか今の私って高3でいいんだよな?」

和「そうよ。私たちはこれから受験を控えていて、精神も不安定になるかもしれない。
  でもね、2年間、ずっととは言えないけれど、律の成長を私は見てきたわ」

律「お、おう・・・(何か始まった・・・)」

和「確かに律は失敗することもあった。
  部活の提出書類だって期限を過ぎることも多かったから、
  そこは律の瑕瑾、いいえ、青さと言えるかもしれないわ。
  でもね、律。あなたは私の大事な友達なのよ」

律「あ、ありがと・・・てか、何で今なの・・・」

和「私たちのかけがえのない友情は、エイフメなのよっ!
  ズッ友で、激おこぷんぷん丸なのよっ!
  じゃあいつ泣くの? 今でしょっっ!!」ドンッ

律「もうそれ全部ブーム過ぎてるからー?!」

和「さてと。SSの話に戻るわね。はぁ疲れたわ」

律「その前に今の茶番を説明しろっ!
  そして私のモヤモヤ感をなんとかしろー!」

和「まあ今の例は極端すぎたけれど、
  言いたかったのは、関係や状態を示す言葉は劇薬だ、ってことなのよ」

律「うん・・・うん?」

和「『AとBは友達だ』。
  この“友達”って言葉の使い方、本来は第三者からみた定義でしょう?」

律「あー、そうなの、かな?」

和「別に“恋人”でも“親友”でもいいけれど、
  こういう第三者の言葉を当事者に語らせると、作者の意見を代弁しすぎてしまうのよ。
  だって“友達”かどうかを決めてるのって、三人称の神様視点にいる作者なんだから」

律「いやそこまで難しく考えたことないけど」

和「だいたい『俺たち恋人だよな?』なんて言うのはお金がほしい時ぐらいよ。
  大人の恋愛はね、関係をいちいち確認せずにいきなり連れ込んでヤっちゃうの。
  一発カマしたあとで、なんとなく付き合う。男なんてそういうものなのよ!」

律「おまえ誰だよ!? そんな歪んだ女子力イヤすぎるわ!」

和「――と。先日合コンで惨敗に終わった曽我部先輩が電話で吠えておりました」

律「うへえ・・・苦労してんだな、和・・・」

和「とにかく、一人称で関係を指示する言葉を使うのは難しいの。
  冒頭の私の台詞だったり、ラストの唯の独白だったり。
  この辺りは一人称の言葉で状況を的確に解説しすぎるあまり、
  他人に聞かせる言葉になりすぎてしまってるじゃない?」

律「え、これSSだろ?
  人に読ませるもんなら、そんぐらい分かりやすい方がいいんじゃね?」

和「だってこれ、私と唯のプライベートすぎる空間なのよ?
  恋人同士、でなくても家族や親友のように深い関係にある相手って、
  そんなに分かりやすい言葉で語り合わないんじゃないかしら」

律「あー・・・。それは分かるかもしんない。
  さっきも唯が『んー』って言っただけで和がティッシュ渡してたじゃん、あんな感じ?
  こう、熟年夫婦っぽい空気感っつーかさ」

和「・・・・とにかく、このSSの話に戻るけど」

律(あ。こいつ照れてる)

律「あーでもさ。そういうなら、このSSって一周回って和らしいんじゃん?」

和「どういう意味よ」

律「いや、だってさ?
  このSSの落ちって、唯が『和ちゃんも不安なんだね・・・!』って気付いて、
  お互いに支え合おうっていうキレイな終わり方なわけじゃん?」

和「まあ、そうだけど」

律「このSSの和は自分の不安を知識で埋めようとしてるわけでしょ。
  だから、関係の“定義”にしつこいのも、そういう不安から、っていう伏線に」

和「・・・・なるほど、言われてみれば」

律「でさ? 和は「第三者視点っておかしくね?」って言ってるんだろうけど、
  この二人が自分たちの関係を?、不安がってるんならさ、
  たぶん「誰かに関係を認めてほしい」って思ってるだろうし、
  そしたら無意識のうち三人称で見てる誰かを説得しちゃうんじゃないかなーって」

和「なるほど。読み手に許しを得ようとしている、という読み方もできるわね。
  百合が禁断の秘められた愛、という考えなら特にね。私は苦手だけど。
  それに流れのたどたどしさは内容とマッチしてるのよね」

律「だから私はこれ悪くないと思うんだけどなー。初々しさが、二人らしくってさ」

和「でもこのSSの――」

 ガチャ

唯「りっちゃーん?! 教室行ったけどカルピスなんて・・・」

和「私は唯のことを心から愛してるわけじゃない?」

唯「・・・ほえっ?!」

和「ゆ、ゆい?!」

律(え。何このラブコメ展開)

和「ち、違うのよ唯・・・って違くはなくて! そうじゃなくて、
  ああもうっあなたが顔赤くするからよけいに・・・だからこれはSSの話で、それでっ、」


 第7位 32点 2番手:◆dWVtcnK36sさん
  澪「私の言葉」


律「つーわけで代打・私が司会だぜ!
  えーっと知識部門でも同じく7位。
  澪が言葉の使い方?で悩んでて、私となんか喋ったりする話だ」

唯「えへへ~。のんちゃんそんなにゆいのこと大好きなんだぁ・・・えへー」

律「おめーは戻ってこい!!」ぽかっ

唯「あぅっ」

律「これは結構良かったよな?
  ってか私、良かったしか言ってないなさっきから」

唯「さすがりっちゃん!」

律「ほめてるように聞こえねえ!」

唯「澪ちゃんもこんな風に悩んでるのかなぁ」

律「まー、言葉を真剣に選んで使ってる人には、それなりの悩みだってさ。
  つーかそれ言ったらSS書き手もそうだよなぁ」

唯「あとがきでも言ってるよね。
  これ、SS書き手としての自分の考えをあらわしたお話なんだよ」

律「あー。なんだっけ、澪が言ってたやつ。
  フランスのすっげー長い小説で、作家志望の人が小説の書き方をずっと探してて、
  ラストでやっと見つかって、その方法で書いたのがこの作品でしたーってオチの」

唯「ネタバレ?!」

律「いーじゃんどうせ私ら読まないって。
  澪も『大学入ったら四年間かけて読む・・・かも』って言ってたぐらいだし」

唯「えー、なんか納得いかなーい。
  でもこのSSの澪ちゃんは、この後が気になるよね。どんなもの書くんだろうって」

律「案外その辺も作者とかぶってんじゃね?
  「約束したのに書けてない」とかさ」

和「そうね。この点は9番手の発想と近いかもしれない。
  それと、『自分じゃない誰かが作った言葉を借りて』っていうのも興味深いわ。
  これが二次創作のSSで、誰かが作ったキャラを借りて語っていることと重ねると」

律「あ。起きた」

唯「おはよう和ちゃん。えへへ」

和「なんなのよ、その反応は・・・。
  そうそう、さっきの小説はマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』ね。
  唯も話のタネに単行本を一冊だけでも読んでみたらどうかしら?」

唯「おー、私もあたまよくなれるかなぁ?」

律「その発想がすでに偏差値低そうだわ」

和「ちなみに文庫だと13冊に分かれているわ」

律「最初の一冊どんだけ分厚いの?! 六法全書かよ!」

唯「うへぇ・・・やっぱパス。辞書なんて読んだら頭パンクしちゃうよ!」

和「あなたどうやって受験勉強するつもりよ・・・。
  そうそう、ねぇ唯。こんな考え方があるわね。
  私たちが日頃一番使っている辞書って、紙の辞書じゃないのよ」

律「はぁ。電子辞書ってことか?」

唯「わたし持ってないよ?」

和「たしかに、最近はスマートフォンの辞書サイトに頼る人も多いわね。
  でもね、ここで言いたい辞書は辞書の形をしていないの。
  もちろん電子辞書でもなくって、目に見えないものね」

律「えー? もったいぶらずに教えろよー」

唯「なにそれ。空気みたい」

和「そう、それよ。空気」

律「・・・はぁ?」

和「空気といっても場の空気や雰囲気、社会の流れ、そういうものね。
  言葉の意味や感触って案外そういうものに左右されるのよ」

唯「ほへえ」

律「へえー」

和「全く伝わってないわね・・・。
  そうね、あなたたち、次の言葉からどんなことが思い浮かぶ?」

《こちら福島県いわき市のフラワーセンターでは、
  噴水広場から放射線状に広がるツツジ畑が満開となっています。》


律「あー、あの辺てもう復興したのかなぁ。原発とか大変だったしなー」

唯「もう二年も経つもんねぇ」

和「どうして、震災や原発の話になるの?」

唯「え、だって“放射線”って」

律「・・・あー。なんだよそれ、そういう引っかけクイズだったの?」

和「引っかけだなんて人聞きの悪い。
  でもね、言葉の意味やイメージが辞書の定義通りじゃないのは分かるわよね?」

律「そりゃあ、なあ」

唯「うーん、だまされた気分」

和「こういう話題は間テクスト性だとかメタ言語論ともいうらしいわ。
  もっと簡単な例を出すなら、ごく狭い友達でしか伝わらない言葉ってあるでしょう?」

唯「えー、いきなり言われるとわかんないよ」

律「・・・りこ、ぴんッ? (ボソッ」

唯「ぶふぅっ、ちょっ、りっちゃ・・・!」

律「・・・りっこ、ぴー・・・ぶはっ、あははっ」

唯「りっちゃ、あははっ!、・・・自分だって、くふっ・・・!」

和「赤色野菜の色素の何がそんなに面白いのよ・・・」

律「でもさー、和の言ってるのってこういうことだろ?
  『“部室”に来て』っつった時、澪とバト部のいちごじゃ意味が違うとか」

唯「まったく同じ言葉でも使う人や場所で全然違うんだね・・・。
  って、和ちゃん? こんなの当たり前だよ」

和「言われてみればそうなんだけどね。
  だから、私からこのSSの澪にアドバイスするとすれば、
  『自分の信じる意味やイメージを信じ通せば、借り物の言葉でもオリジナルになる』
  ってこと・・・だと思うけれど」

和「というより。私が、そう思いたいのよ」

律「原型とどめてないカバー曲みたいなもんか」

和「その言い方はどうなのよ・・・」

律「つーか。それって逆に言えば、
  『自分の中での意味やイメージがあいまいなままだと、
   作者はオリジナルだと思いこんで作っても借り物にしかみえない』
  とか言えちゃうんじゃねーの? それってこわくね?」

和「身も蓋もないわね」

唯「うーん・・・澪ちゃんも苦労してるんだねえ」

律「それにたぶん、こうやってSSを書いてる書き手もなぁ。
  借り物がTPO次第でオリジナルになるにしたって、伝わらなきゃ意味ないだろ」

和「伝わらなきゃ、って言い出したらオリジナリティ全般の問題になるけれどね。
  って、そろそろ話がずれすぎたわね、次の作品に移らないと」

唯「あ、すっかり忘れてた。
  でもなんだか知識や企画と関係なくなっちゃったね」

律「知識と関係ない、知識だけではない、って考えも大事なんじゃん?
  知識だけだったら、それこそ紙の辞書しか要らない世界になっちゃうだろうし」

唯「うえぇ、考えただけでもおそろしいよ・・・」

 第6位 36点 8番手:◆CQDDPJeh8kさん
  澪「ヴィンテージ」


律「さーって気持ちを入れ替えて!
  第6位は8番手、知識部門では第5位!」

唯「澪ちゃんがりっちゃんのためにジーンズを作ってあげるお話だねっ!」

和「これはあっさり作られてるようで、なかなか巧妙なSSね。
  さすが多作でおなじみ某有名かk」

律「すとーっぷ!!
  この企画で初めて読む人もいるんだから、そんな内輪ネタを出すなー!
  私だって何レルさんだか知らないけどさ!!」

唯「え、ネタなのこの流れ」

和「気を取り直して、作品の話ね。
  このSSのうまさはオチのために視野をわざと狭くしていることなのよ」

律「視野が狭いって普通はよくないことなんじゃねーの?」

和「このSSの澪の場合はそれだけ真剣だったってことよ。
  他が見えないほど細かく丁寧に、律のためだけを思って」

律「照れるなぁおい」

和「ほら、どっかにもいるじゃない。
  ひとつのことに集中すると別の何かが全部パーになるような人」

律「ああ、いるいる」


唯「って、なんで私を見るの?!」

律「やだなあゆいー。ほめてるんだよー」

和「そうよそうよ、それもゆいのひとつの個性じゃなぁい」

唯「すっごい棒読みだよ! 二人ともすごい棒読み!!」

律「あーでもあれだ、唯と澪ってそういうとこ似てるかもしんない。
  ノーガード戦法で突っ走っちゃう感じ」

和「走るなら律の方が、って澪からよくグチ聞かされるんだけど」

律「それはドラムの話だ。ってよけいなお世話だー!」

唯「あずにゃんは・・・どうなんだろ? どっちもそうって感じ」

律「あいつはオールオアナッシングなんだよ。
  周りが見えすぎてて一歩も動けないか、目隠ししたまま突っ走っちゃうか」

唯「案外バランス良いのかもね。
  私が何も見えてない時に、あずにゃん引っ張ってくれるもん」

律「だいたいいつもだろ。でムギは・・・あれだ。気付いた時にはもう突っ走ってました系」

唯「あははっ、『ムギちゃんそこに居たの?!』って感じなんだよね!」

和「って、今はSSの話をするんじゃなかったの?」

律「おっと悪りい」

和「そうね、こんな感じなのよ。
  今で言えば、唯たち一人一人が向こう見ずかどうかを考えていた。
  真剣・・・かどうか分からないけれど、本題を忘れてしまう感じ」

律「皮肉かよ!」

和「このSSでいう澪の実況するような地の文は、
  その細かさだけ見ても適度に臨場感があってこなれてるんだけど、
  さらに“細かい”ということ自体がネタになってるのよ」

唯「そっか、書き方が最初から向こう見ずだったってことだ!」

律「あー、はいはい。
  このオチに持ってくために、ギャップ出すために地の文を細かくしていった、と」

和「実際は逆かもしれないけれどね。
  地の文で細かく書きすぎて、たるくなって、自分でそれをちゃかす形で締めた、とか。
  けれどもそういうバランス感覚がそのまま書き手としての力量といえるはずよ」

律「細かくするだけ細かくして話題がとっちらかったまま終わる話もあるしなぁ」

唯「あははっ、今の私たちみたいだねっ!」

律「・・・」

和「・・・」

唯「・・・なんかごめんなさい」

和「それから久々に知識とその見せ方の話に戻りましょうか」

律「久々すぎて何の集まりか忘れかけたぞ」

唯「服を作るっておさいほうだけだと思ってたけど、こういうのもあるんだねぇ」

律「自分で作る、って発想はなかなか出ないからなー。
  古着屋とか漁るのは好きだけどさぁ」

唯「その、壊して、作ってる?とこが目に浮かぶのがいいよね!」

和「そうね。知識系SSって学校と同じで、講義型と演習型があるのよ。
  演習型には、実際にやってみせるSSは特別な楽しさがあるわね」

律「家庭科の実習とか授業って感じしないもんなぁ」

唯「ぜんぶ家庭科だったらいいのにね」

律「家庭科だって座学もあるわい!」

和「そうそう、家庭科で思い出したけれど、
  唯「チャーハン作るよ!」というSSがあったわね」

唯「チャーハン作るよ!」※百合ノート様に飛びます

律「おお、これか!
  カレーだけでもいろんなレパートリーあるもんだなぁって思ったよ」

和「作る場面というより食べてる場面の方が多いわね」

唯「りっちゃん、普段から部室でムギちゃんのお菓子食べてばっかだもんね・・・」

律「おめえが言うな、お め え がっ!!」

唯「あぅっ」

和「ジーンズとチャーハンの二つに言えるのは、
  体験するSSのなかでも自分でもできそうなものを選んでることね」

唯「私も今度憂とカレー作ってみたくなったよ!」

律「ま、料理に比べたらジーンズはハードル高えけどさ」

唯「せっかく買ってきた新品をすぐ壊しちゃうなんて、ちょっと勇気いるよね・・・」

律「そうそう。特に澪って、気持ちを割り切るまでは潔癖タイプだしなぁ。
  あーでも、『相手のために』『傷を付ける』とかって、意外と好きそう?」

和「相手のために傷を付けるSSといえば、律「ガシャコン」なんてあったわね。
  ピアスの穴を空ける話よ。好き嫌いが分かれそうだけど」

律「ガシャコン」※百合ノート様に飛びます

唯「うあ、痛そう」

律「澪と私の話なのに、澪とかぜってー読めなそうだな・・・」

和「ピアスって、相手に傷をつけることと、
  身につけるものを与えるっていう、二重の拘束なんじゃないかしら」

律「重てえ・・・」

和「身につけるものとして、ジーンズではなく腕時計をあげたSSもあったわね。
  澪「タンデム」 ね。これも律澪だったわ」

澪「タンデム」※百合ノート様に飛びます

唯「りっちゃんたちって・・・・・」

律「ま、まて、これはSSの話だっ! 私だってこんなに、」

和「さーて次にいきましょ。ここからはトップ5よ。律は放っておいてね」

律「和おまえさっきのこと根に持ってんの?!
  おいこら私の話を、っていうか釈明をきk」


澪「律?」

律「」

和「あら。噂をすれば」

唯「もう夫婦だよね」

律「え、外堀固められすぎじゃね私?!」

澪「・・・とりあえずロクな流れじゃないのは分かった」

律「っく! この腐った流れを鎮めるにはみおしゃんのおぱんちゅで空気をブチ壊すしか――
  てか、待てよ? そしたらよけいに澪と私の関係が妙なカンジに、」さわさわ

澪「ちょ、へんなとこ触んなバカ!」

律「あだっ!?」

和「・・・これ、企画の順位発表なのよね・・・?」

律「そーだそーだみおー。つーか何しに来たんだよ」

澪「さわ子先生から伝言。
  『進路関係の書類がまだ出ていません。』」

律「げっ」

唯「ええーりっちゃんまだ出してなかったのお?!
  まったく、んもうヒラサワさんと違ってりっちゃんダメダメなんだからぁ」

和「ここぞとばかりに乗っからないの。今に痛い目を」

 ガチャ


2
最終更新:2013年10月17日 23:24