唯先輩はギターがうまい。 …のかな?

初めて放課後ティータイムの演奏を見たとき、唯先輩はすごく輝いて見えました。
上手だな、と思ったし、演奏に惹き込まれたし…
唯先輩みたいになりたい、唯先輩と一緒に演奏したい、そう思って軽音部に入ったんですよ?

でも、唯先輩は実は全然ギターの知識が無くて、練習もしなくて…
お世辞にも、高い技術を持っているとは言えません。
それでも、本番とかではやっぱり唯先輩は輝いていましたね。
その時だけは、「上手い」んです。

なんでかな…?ってずっと考えてましたが、やっとわかったんです。

唯先輩は、すごく楽しそうにギターを弾く、というか…全身で楽しさを表現する感じですね。
型にとらわれない、自由な演奏、とも言えます。
だから、見ている人、聴いている人も楽しくなるんですよ?
たとえすごい技術がなくても、唯先輩の演奏は、魅せる演奏なんです。

私は…ギターが上手いって皆さんに言っていただいてますが、唯先輩みたいな演奏はできません。

技術を磨くことはずっとやってきましたが、それだけじゃ楽しい演奏にはならないんです。
唯先輩を見てて、わかりました。
それに気づいてから、ちょっと悩んじゃいました。
私は技術だけなんだ、唯先輩にはかなわないんだ、って…。
唯先輩のまねをしようともしました。でも、私が無理して楽しそうに動きながら演奏しても、なんかしっくりこなくて…

その時は少しふてくされていました。
唯先輩に冷たく当たったこともありました。すみません。
でも、そのうち、こう考えるようにしたんです。
私は私。私は唯先輩にはなれないし、なる必要もない。
私は私の道を行く。
…って。

私は、唯先輩に比べたら、正確にリズムを刻んだり、細かい動きをしたりする自信はあります。
だから、私は唯先輩のいいところを邪魔せずに、足りないところを補おうと思ったんです。
逆に、私の足りないところは、唯先輩がカバーしてくれています。
ひとりひとりが完璧になる必要なんてないんです。
二人で、いい演奏を生み出せれば…

そう思うようになってから、唯先輩と一緒に弾くのがもっともっと楽しくなりました。

――今も。

「あずにゃん、ダブルソロいっくよ~!!」

唯先輩の自由奔放なメロディ。 それを支えるように、しっかりとリズムを刻みます。

「あずにゃん、背中合わせ!」

背中ごしに、唯先輩の鼓動が、リズムが、メロディが伝わってきます。
…ふふ。次はこう弾くつもりですね?
唯先輩の弾き方、もう最近は手に取るようにわかるんですからね。
唯先輩の自由なメロディの合間を縫うように、私の正確なリズムを刻みこんでやります。
…どうですか!

「ぷはーっ、楽しかったねあずにゃん!わたしたち、やっぱり相性いいね~」

そうです。当たり前です。
だって、唯先輩と私なんですから!!

これからも、ずっと一緒にギターを弾いていたいですね、唯先輩。


おわり