男1「くっくっく……」

(吉良我ノ助邸の外
 不敵な笑みを浮かべ、歩き出す)

用心棒「……」

(用心棒、闇の中から現れ、男1の後ろに付いて歩く)

ザッザッザ…

用心棒「手筈通り、事が運んだようだな」

男1「ああ」

(男1、愉快そうに肩を揺らした)

男1「こんなに上手くいくとは思わなかったがな
   吉良我ノ助は、予定通り“仕事人”に殺されたよ。
   これで吉良酒造は、俺の物になる」

用心棒「……」

男1「あとは、この足で奉行所に駆け込むだけだ
   『仕事人に店の主人を殺された!! 
    仕事人は、“桜が丘”の芸者だ!!』
   とでも叫べば良い
   俺は奉行所に保護され、“奴ら”は捕えられ磔(はりつけ)獄門、もはや終わりだ」

用心棒「奉行所に駆け込むのは良いが、アンタの“後ろ暗い所”を知られたらどうするのだね?」

男1「都合の悪い事には、目をつぶってもらうのよ
   ……そういう風に、俺が手を回したのさ」

男1「抜かりはございません
   多少“騒がしく”なってもアチラは関知せぬようです
   あとは、旦那様のさじ加減一つで、如何様にも」

男1「ふふ…」

(男1、また笑みをこぼすが、顔を引き締める)

男1「……俺はまだ、“仕事人”に狙われているだろう
   お前には、今後とも護衛を頼むつもりだ
   何、給金は望むだけくれてやろう」

用心棒「まあ、金さえ頂けるならアンタが何者だろうと堂だって良い
    給金分の仕事はして見せるさ」

男1「そう来なくてはな。
   ……それにしても」

吉良「期待しているぞ
   価値の無い農民どもも、こうして財になる
   見込める儲けがありすぎて、もはや笑いが止まらぬわ」

男1「はは――

男1「――同感だよ、吉良の旦那。
   “仕事人(クズ)”には、屑なりの使い道がある物だ

   大昔に奴らの“仕事”を目撃したその日から、いつ口封じに殺されるか気が気でなかったのだが、
   今思うと、素晴らしい幸運に巡り合ったのだな、はは」






堀込「―― なるほど、兎角この世は一天地六。
   世の中どう転ぶか、分からんものですな」

(BGM挿入、“仕事屋大勝負”※)
 ※:必殺必中仕事屋稼業、殺しのテーマ

グイッ

用心棒「!!」

(用心棒の背後に、堀込が現れる。
 手拭いで用心棒の口を塞ぎ――

ザシュッ!!

用心棒「―-!!」

(――すぐさま、剃刀で用心棒の喉笛を切り裂いた)

…ドサッ

堀込「屈強な用心棒どのが、あっと言う間にこの通り
   いやはや、何が起こるか分からぬものだ」

男1「――貴様、仕事人かっ!」スラッ

(男1、脇差を抜いて下段に構える
 堀込も剃刀を構えた)

堀込「そんな事は堂でも良かろう。
   何れにせよ、ただの“屑”には変わりないのだ」スッ

堀込「……お主も、私も、な」

男1「――っ、この!!」

ビュン!!

堀込「―っ!」シュッ!

(男1、堀込に切りかかろうとする
 堀込もとっさに手を伸ばすが、しかし。)

ドスッ!!

男1「ぐふっ……!?」

さわ子「――」ギリッ…

堀込「……」

(男1が、刀を振りかぶったまま動きを止める。
 男1の首筋に剃刀が当てられ、寸止めされている。
 背後にさわ子、男1の背中に、女物の短刀が突き刺さっている)

さわ子「……“ウチの娘(こ)”が、随分と世話になったようだね」

男1「――き、さまら! なぜ此処にぃ……!?」

さわ子「――っ!」

ズブッ バシュッ!!

男1「ぐぁ……!!」

ドサッ!!

(倒れる男1、向かい合うさわ子と堀込)

堀込「……」

さわ子「“間に合った”、ようですね」

堀込「何だ、人の邪魔をしおってからに。
   ――家族はみな無事なんだろうな?」

さわ子「みな、“桜が丘”にて休んでおりますわ
    ……ただ、私も――」

(さわ子、倒れている男1を見下ろす
 BGM、終わりに差し掛かる)

さわ子「――あの娘たちの敵を、討ちたかったので」

堀込「……ふん」

(堀込、さわ子に背を向け、眼を閉じる)

(カメラ俯瞰。
 桜の枝が揺れ、花びらが散っていく
 月明かりの下の2人、そして放課後茶会の4人)

堀込「――」

(その4人に、堀込が回想を重ねる
 若干幼さの残るさわ子と、河口ら“4人”)

堀込「……根っこの部分は変わっとらんな、お前も」

(堀込、そっと笑う
 暗転。 BGM、終了)





(翌日夜、芸者小屋“桜が丘”、置屋)
(BGM挿入、“Have some tea”※
 ※:次回予告の時流れてるアレだよ!!)


唯「うっぷ。もうお腹いっぱいだよ……」ヨタヨタ

唯(このあいだ澪ちゃんが食逃げ犯を捕まえたからって、
  蕎麦屋のご主人と甘味処のご主人がお礼に来たのは良いんだけど――)


ホワンホワン…




(唯、回想)



蕎麦屋の主人「いやあ、この間は助かったよ」

律「」

紬「」

甘味処の主人「ウチもだ。
       澪奴さんがあんまり美味しそうに団子を食うもんで、良い宣伝になって大盛況。
       かなり儲けさせて貰ったよ」

唯「」

澪「……!」パアアッ

蕎麦屋の主人「そんな訳で。
       これは、俺たちからの、ほんのお礼だ」

デデーン! 

(みたらし団子の巨大ピラミッド)

澪「はぁあ……///」キラキラ

甘味処の主人「澪奴さんは、みたらし団子がお好きと聞いて、奮発させて貰ったよ
       芸者小屋の皆で、召し上がってくだせぇ」

律「いや、いや。
  それにしたって」

紬「……多すぎ、よね」

唯「食べ切れるの、かな」




(夜、置屋)

デーン!
(小さい団子の山)


唯「……もう、食べられないよ」ウプッ

律「私らがお八つに食べて、芸者小屋の皆にもおすそ分けして、
  さらにお客様にお出ししてまた私らが食べてなお余るとか、おかしいだろ、絶対
  常軌を逸してるわ、もう」ゲプッ

律「澪とムギは逃げ出したしさー。
  どうすんだよ、コレ…。
  今日中に食べないと、みたらしがカピカピになって食えなくなるから頑張っていたのにさ……」

唯「りっちゃんが“太るぞ?”とか言うからじゃん……
  もう責任とってりっちゃんが食べなよ」

律「……痛! イタタ!!
  持病の腰痛がぁ、くぅ~!
  ってなわけで唯、あとは任せた!!」シュタッ

唯「ずるいよりっちゃん! あと言い訳にもなってないし!!」

律「だってお前太らないから良いじゃん!
  それに、梓と憂ちゃんも居るんだから余裕だろ?
  そんなわけで、あとは任せた!!」 ビュンッ!! ≡3

唯「ちょ、ちょっとりっちゃん!?
  ……もう!」

唯「……あと10本、か……」ハァ…




ホワンホワンホワン・・・

(回想終了、唯の部屋の前)

唯「あのあと頑張って2本平らげて、あと8本……
  さすがにもう無理だよ、あずにゃんと憂に任せよう……」ヨタヨタ


ガラッ


唯「ただいまぁ……!!!!!」

♪デデデデーン!!! (ベートーベンの“運命”っぽい何か)

(みたらし団子パラダイス)

唯「――っ」ウプッ!

憂「あ、お姉ちゃんお帰りー」

梓「おかえりなさい、唯先輩♪」

唯「あ、あのあずにゃん。コレハ、イッタイ……?」

梓「もう、言ったじゃないですか。
  今日は、唯先輩の好きなお菓子、一杯作って待ってますって」

憂「梓ちゃんと私で、頑張って作ったんだよ♪」

唯「え、そんな事言って……?
  ……ああ!!」

ホワンホワンホワン・・・







梓「はい。
  ……明日は、早く帰ってきてくださいね?
  今日散歩に連れて行ってくれなかった、埋め合わせです
  唯先輩の好きなお菓子いっぱい作って、待ってますから」


  唯先輩の好きなお菓子いっぱい作って、待ってますから」

  いっぱい作って

  いっぱい作って


ホワンホワンホワン・・・








唯「うへぇ…」

ガララッ!!

唯「――ごめんあずにゃん、憂!」ダッシュ!!!

憂「え!?」

梓「ちょっと唯先輩!?
  なんで逃げ出すんですか、ちょっとぉ!?」

(戸を開けて逃げたす唯と、それを追う梓と憂の静止画)


唯「うわああああん! もうお団子なんか食べたくないよおぉ!!」




おしまい

(暗転、エンディング)

(学園祭ライブの映像が流れる。
 HTTのシャツを着た放課後ティータイム。
 演奏開始、曲は“ふわふわ時間”)

(イントロ5秒で、いきなり映像をカットアウト。
 砂嵐を流す)

ザアアア…

(数秒後、砂嵐を止め、暗転。
 ギターの旋律※と同時に、場面転換。
 夕日に照らされる音楽準備室。
 そこに立ち尽くす、梓1人。
 手に持っているのは、先輩たちとの、“思い出の写真”)
 ※:“Singing!”に近いイメージでお願いします

(エンディングテーマ変更:わかばガールズ『Answer』~Hissatu edited ver~)

(学園祭のステージ)

梓「♪最近気になるのは 他人の目ばかり」

(体育館入口から、梓を撮る
 観客も誰もいない、1人ぼっちのステージ)

梓「♪私はおかしくないかな?」

(場面転換。
 唯の部屋に佇む憂)

梓「♪うまく生活できているかな?」

(菫、お盆を抱えて俯く)

梓「♪でもどうやったら正解なのかな?」

(白紙の入部届を見つめる直)

梓「♪正解なんてあるのかな?」

(髪を下ろした純が、ベースをかき鳴らす)

梓「♪みんなはこの世は全然自由じゃないって言うけれど」

(憂が音楽準備室の扉を開ける
 続いて純が、菫が、直が扉を開け、中に入る
 4人だけの、ティータイム。
 それを入口から遠く、傍観する梓)

梓「♪私には世界が広すぎて」

(HTTのライブ、自分たちの新歓ライブが瞬時にちらつく
 ムスタングを抱きしめる)

梓「♪何をやればいいか全然わからない」


(4人が、梓に気付く
 純が代表して、手を差し伸べる
 微笑みかける4人に、梓は近づき、おずおずと手を伸ばした)

(満員の学園祭ライブ。
 ステージ上で演奏する、“わかばガールズ”)

梓「♪じゃあもう前に進むしかないよね」

(梓の両隣で演奏する純と憂が、微笑み合う)

梓「♪足踏みしていても時間は過ぎるし」

(菫が懸命にドラムを叩く)

梓「♪考えるのはその後でも良いよね」

(直がヘッドホンを押さえながら、ミキサーをいじる)

梓「♪その時に見える光景(せかい)がきっと」

(沸き起こる歓声。やり切った表情の梓)

梓「♪私の答えなんだ」


(音楽準備室。
 ビテオカメラに手を伸ばす梓。
 自信ありげにウインクをして、映像が途絶える
 エンディング、終了)





===おまけ====

(数日後、芸者小屋“桜が丘”)


紬「――まぁ、“おとうさん”が酒屋を?」トクトクトク…

きれいな客1「ああ。
       先日、吉良酒造の主人と番頭が“仕事人”に殺(や)られたのは、知っているだろう?
       その結果、吉良酒造の悪事が明るみに出てな。
       “桜が丘(ここ)の常連だった瓦版の記者が、避難してきた家族へ、片っ端から取材していったそうだ」

紬「……」

きれいな客1「奉行所との癒着も発覚して、そりゃあもう“上を下への大騒ぎ”だったさ
       かといって、あのまま酒屋を畳むわけにもいかなった」グビ…

紬「元より、この藩一帯を取り仕切る豪商でございますものね
  もし倒産するとあっては、相当な人数が職を失ってしまいますわ」

きれいな客1「その通りだ。
       吉良酒造は、早急に“跡目”を決めなければならなかった」

紬「……それで“おとうさん”に、白羽の矢が?」

きれいな客1「新しく入ってきた奉行所の役人のお達しでな。
       未だに信じられんよ、一樽廻船問屋の主に過ぎなかった俺が、酒屋を経営するなどと」

紬「そんな事ありませんわ。
  今の“おとうさん”は、とても誠実で、優しい方ですもの」

きれいな客1「ううむ。
       ここ最近、経営を健全化しようと働きかけていた事が、役人の心象を良くしたらしい
       ……逆を返せば、そこまで“吉良酒造の信用”が失墜していた、という事だろうが」

紬「……いずれにせよ、それは“おとうさん”のお心がけが認められた証拠でございましょう
  私も嬉しいですわ」

きれいな客1「それもこれも、お前がきっかけだよ、紬奴。
       お前の按摩を受けてから、身心の穢れが綺麗さっぱり抜け落ちて、
       何やら善行を働かないと気が済まぬようになってしまったのだ」

紬「ふふ、左様でございますか」

きれいな客1「死ぬかと思ったがな、右手折られかけたし」ボソッ

紬「何か仰いまして?」ニコッ

きれいな客1「いいえ何も!!
       ……ついては紬奴、お前に相談したい事があるのだが」

紬「はい! 私にできる事でしたら、なんなりと」

きれいな客1「うむ。
       俺は廻船問屋の経営には自信があるが、酒屋に関しては素人同然
       さしあたって、支えてくれる有能な人材を探している次第でな
       誰か心当りが居たら、俺に紹介してくれぬか?」

紬「有能な人材、でございますか」

きれいな客1「ああ。
       紬奴は芸者という職業柄、人脈は広かろう
       誰か居ないのか?」

紬「……」

きれいな客1「無理に酒造経験者、と絞るつもりは無いのだ。
       それこそ、“吉良酒造”の者が居るのだからな。

       俺が求めているのは、組織の中に上手く溶け込んで仕事を憶え、
       “こちら”側との潤滑剤となりうる人材だ
       もしその人間に商才があるのなら、そのまま家督を譲ってしまっても良いと考えておる
       いわば、後継者探しだ
       まだ“候補”、だがな」

紬「……。
  1人、心当りがございます」

きれいな客1「ほう、誰だ?」

紬「農家から“桜が丘(ここ)”へ年季奉公して来た子なのですが、とても明るく、周りに元気を与えてくれる、素敵な子です
  家族を助けるために一生懸命仕事を憶えて、番頭様にも認められた、頑張り屋さんなんです
  きっと、“おとうさん”のご期待に添えると思います」

きれいな客1「ふむ、がぜん興味が湧いてきたな
       その者の名前は、何と申す」

紬「はい!」

(紬、これ以上無いほど誇らしげに)


紬「―― 中島、信代ちゃんです!!」





(同時刻、置屋、勝手口)


菖「……おっ唯ちゃん!」

唯「あっ、菖ちゃん! おいっす!」

菖「おいっす!
  …大分調子が良くなったみたいだね」

唯「えへへ…
  菖ちゃんの針治療のおかげですよ…」

(菖、嬉しそうに鼻を鳴らす)

菖「ま、あね!
  人呼んで、“桜が丘の藤枝梅安(ふじえだ ばいあん)”!! なんてね」えっへん

晶「――調子に乗るな」ポスッ

(晶、菖の背後から突っ込みを入れる)

唯「お、晶ちゃんだ、おいっす!」

晶「……ん。(控えめに手をかざす)
  唯。お前もさ、変な挨拶を止めて、もう少しお淑やかにしとけっての
  一事が万事そんなんだから、食べ過ぎて菖の世話になるんだよ」

唯「違うもん、あれは不可抗力だもん!」

菖「そうだそうだ!
  第一、晶がお淑やかとか、説得力無さすぎるわ
  前田様に気に入られたくてそんな恰好しているくせに!」

晶「な……///
  き、気に入られたいとか、誤解を招くようなこと言うんじゃねえよ!」

唯「? 気に入られたくないの?」

晶「は? そ、そりゃぁ……

  き、気に入ってくれたら嬉しいなって思うけどさ///(ボソボソ」

唯(可愛え……
  は! 駄目駄目、私にはあずにゃんがいるんだから!!)ブンブン

菖(あー、やっぱり晶からかうと面白いわぁ……)ニヨニヨ

幸「……はいはい、そこまでにしようね、2人とも」

唯「おお、幸ちゃん。こんにちわ!」

晶「!?」

晶(コイツ……学習しやがった!?)

唯(ふんす……私は今までの私じゃないのです)フンス

幸「あ、あれ? 私には『おいっす!』しないんだ……
  やっぱり私の背が高いから……」しおしお

唯「ち、違うよ幸ちゃん! 別に仲間はずれにしようってんじゃなくて」アセアセ

菖「晶がやれって言ったんだよ!
  ――そう。悪いのは全て、晶だったんだ!!」カッ!(←集中線)

唯・幸・晶「な、なんだってーーっ!!」

晶「――ってやかましいわ!!」

唯・菖・幸「イエーイ!」パンッ!

晶「ハイタッチするな!!」
 ※:細け(ry

菖「晶も乗っかったくせにー」

唯「くせにー」

晶「ぐぬぬ……」

幸「……さて、と」

パンッ

幸「冗談はここまでにして、そろそろ行こうか、2人とも」

(幸、晶と菖に視線を送る
 晶と菖、頷く)

唯「ええ、もう行っちゃうの?」

菖「まあ、元々唯ちゃんの様子を見に来ただけだったし」

幸「見た感じピンピンしているし、もう大丈夫だよね」

晶「体調管理も仕事の内なんだからな?
  お前との勝負は、まだついてないんだ
  せいぜい、三味線の腕を磨いておくんだね」

唯「みんな、ありがとう!
  それじゃ、またね!!」

(3人、唯の言葉で少しだけ表情が固まり、
 そして少しだけ、優しい笑顔になった)


晶・菖・幸「――うん、またね!!」


(暗転)






          制作・協力

けいおん!!!制作委員会/桜高軽音部・N女子大軽音部