純「おはよう、梓」

梓「ん……、純、おは……っ?」

純「どうしたの、猫が豆鉄砲食らったみたいな顔しちゃって」

梓「それを言うなら鳩でしょ……」

純「まあまあ、細かい事は気にしない気にしない」

梓「細かくはないと思うけど……、ってそれより!」

純「だからどうしたの?」

梓「どうして人の部屋で裸で居るのよ、純は!」

純「それ自分の恰好を見てから言ってよね」

梓「自分の恰好……ってうわっ、何で私も裸なのっ?」

純「うん、二人とも裸だね」

梓「まさか純、私が眠ってる間に服を脱がせたんじゃ……」

純「どうして私がそんな事をしなくちゃいけないのよ……」

梓「だって純ならしそうだし……」

純「梓が私の事をどう思ってるのかはよく分かったけど、本当に憶えてないの?」

梓「憶えてない……って?」

純「ほらほら、私も手伝ってあげるから頑張って思い出してみてよ」

梓「いきなりそんな事を言われても……」

純「まず昨日の事はどこまで憶えてる?」

梓「えっと……、昨日は確か純が急に私の家に遊びに来て……」

純「そうそうその調子」

梓「『家に誰も居なくて寂しがってる梓のために泊まりに来てあげたよ』とか言ってたよね、純」

純「友達思いで定評のある鈴木純ちゃんですから」

梓「はいはい、それで確かお風呂に入った後に純が持って来たお菓子を食べたんだよね?」

純「美味しかったでしょー。もう全部食べちゃったけどまた食べたいよね」

梓「うん、美味しかったよね。美味しかったんだけど……」

純「けど?」

梓「何か癖があるって言うか、食べれば食べるほど変な感じになったって言うか……」

純「アルコール入りだもん、当たり前でしょ?」

梓「やっぱりアルコール入りだったんだ……」

純「私より食べてた梓に言えた義理じゃないけどねー」

梓「そ、そうだっの?」

純「そうだったのさ」

梓「ま、まあ、それは置いといて、とにかく私達はお菓子を食べて暑くなってきちゃって……」

純「どんどん声が小さくなってきてるよ、梓?」

梓「だんだん思い出して来たの……。えっとそれで確か……」

純「ヒント、私も暑くなったから服を脱ぎ始めました」

梓「そう……だったよね……。それで裸になった私達は気付いたら……」

純「気付いたら?」

梓「……」

純「梓?」

梓「ああああああああっ!」

純「わっ、びっくりした! 急に大声出さないでよ、梓」

梓「出さないでいられるわけないじゃない! あの時、私達確か……したよねっ?」

純「した事は色々あるけど、まずは何を?」

梓「キ……、キスとか……」

純「したよ?」

梓「やっぱりー!」

純「ついでに言うと、キスを迫って来たのは梓の方だよ?」

梓「思い出したわよ! 思い出したから頭を抱えてるんじゃない!」

純「あの時の梓、『にゃーにゃー』言っててまさにあずにゃんって感じだったなー」

梓「やめてよ、もう……」

純「可愛かったけどね」

梓「やめてってば……。……ねえ、純?」

純「はいはい、次は何?」

梓「私の身体にね……、感触が残ってるんだよね……」

純「どんな感触?」

梓「何かふにふにって言うか……、柔らかくて熱い感触が……」

純「それはきっと私のおっぱいの感触だと思うよ、梓くん」

梓「ギャー!」

純「ついでに言えば梓はそれ以外にも私の色んな所を執拗に……」

梓「執拗にとか言わないでよー!」

純「だって私が何度も『もう離して』って言っても聞いてくれなかったんだもん」

梓「ううう……」

純「おっ、また頭抱えちゃった」

梓「やっちゃった……」

純「梓、可愛かったよ?」

梓「そういう問題じゃないでしょ!」

純「そういう問題だと思うけどなあ」

梓「うう、どうしよう……、私まだ高校生なのに……」

純「ロック好きなのにその辺は古風なんだね、梓」

梓「一般常識でしょ!」

純「そんなもんなの? それより思い出すまで長かったねー、梓」

梓「途中で何となく思い出してたけど、記憶違いだと信じて順序立てて思い出してみたのよ……」

純「してその結果は?」

梓「記憶違いなんかじゃなかった……」

純「うん、それは私も保証するよ、昨日私と梓はエッチしちゃったって」

梓「エッチって言わないで!」

純「じゃあセックス?」

梓「ちょっ……!」

純「あははっ、梓ったらまた赤くなった!」

梓「もーっ!」

純「怒らない怒らない」

梓「……」

純「梓?」

梓「やっちゃった……、ああやっちゃった……、やっちゃった……」

純「俳句?」

梓「それを言うなら川柳でしょ! じゃなくて……」

純「あ、季語が入ってないもんね。って、じゃなくて?」

梓「純は……平気なの?」

純「何が?」

梓「私とエッ……エッチしちゃって……」

純「私は嬉しかったよ、梓の事好きだしね」

梓「なっ……!」

純「それより梓は私とエッチしたの嫌なの? 初めては先輩達の方がよかった?」

梓「せ、先輩達って……」

純「唯先輩とか情熱的そうだよね、梓と相性が良さそう」

梓「そ、想像させないでよー……」

純「澪先輩とムギ先輩もスタイルいいし、素敵な初体験に出来そうだよね」

梓「だから……」

純「意外と律先輩が純情そうかも! 梓の方が主導権を握っちゃったりなんかして!」

梓「……」

純「どしたの梓? ひょっとして興奮しちゃった?」

梓「純の方こそ……、初めてが私で本当によかったの……?」

純「嬉しかったって言ってるでしょー?」

梓「だって澪先輩澪先輩ってよく言ってたし……」

純「あれは憧れだよー。憧れと恋愛は別腹別腹」

梓「そうなんだ……。えっとこんな事訊いたら怒られるかもしれないけど……」

純「怒らないよ」

梓「うん……、じゃあ訊くけど純も初めてだったんだよね……?」

純「初めてだったよ? 確かめる?」

梓「確かめるってまさか……」

純「あははっ、梓ったらまた赤くなっちゃって」

梓「赤くもなるわよ、もう……」

純「安心していいよ、本当に初めてだったから」

梓「その割には何か手馴れてたような……」

純「練習してたもん、梓の事を思って」

梓「れ、練習って……」

純「いつか梓とそうなれたらいいなって思ってたって事。酔った勢いでもさ、私嬉しかったんだよ?」

梓「あ……」

純「梓はやっぱり初めては先輩達の方がよかった?」

梓(純……、ちょっと泣いてる……?)

純「でもさ、私は本当に幸せでどうにかなりそうだったんだよね……」

梓「えっと、純……、あのね……」

純「うん……」

梓「こんな事になって本当にごめんね。私、酔った勢いでこんな事するつもりなかったのに……」

純「う……ん……」

梓「私ね……、純とはもっとちゃんとした形でこうしたかったんだ」

純「えっ……?」

梓「酔った勢いに任せて気持ちを伝えるなんて情けないでしょ……?」

純「じゃ、じゃあ……」

梓「うん、私も純と初めてで嬉しい。本当はちゃんと告白してからにしたかったんだけどね……」

純「あずさー……!」

梓「わっ、急に抱きついて来ないでってば……!」

純「仕方ないじゃん……、だって嬉しいんだもん!」

梓「ごめんね、酔った勢いになんか任せちゃって」

純「いいよ、私もちょっと酔ってたし……」

梓「両想いでよかった。純が嫌々私と初めてをしたんだったら、私もう耐えられないもん」

純「そんな事無いよー、私ってば梓の事が大好きなんだもん。んー」

梓(あ、キス……)

純「あずさぁ……」

梓(これが素面でのファーストキスになるのかな……? うん、素面の方がずっと幸せ……)

純「んっ……」

梓「ふふっ……」

純「これで私達、本当の恋人になれたよね?」

梓「そうかも。順番はちょっとあべこべになっちゃったけど」

純「そうだね。でもそれも私達らしいって言えば私達らしいかもね」

梓「あはは……、でも悔しいなあ」

純「何が?」

梓「後一日我慢出来なかったのかなって反省中。本当なら明日、ううん、今日純に告白しようって思ってたのに」

純「今日……? あっ、そうだね、今日は……」

梓「うん。そっちの方が記念になるでしょ?」

純「私は嬉しいけどね。だってそれは一日も待てないくらい私の事が好きだったって事でしょ?」

梓「そう……なるのかも」

純「それに私にとっては都合がよかったりもするんだけどね」

梓「そうなの?」

純「ねえ梓、ちょっと目を閉じててくれる?」

梓「いいけど、何?」

純「ちょっと待っててねー」

梓(何だろう?)

純「いいよ、目を開けて」

梓「何なの、純?」

純「じゃーん!」

梓「あ、可愛いリボン……と手首にテーピング?」

純「誕生日おめでとう、梓! プレゼントはわ・た・し!」

梓「……」

純「あれっ? 外しちゃった……?」

梓「もう……純ったら……!」

純「あははっ、しかめっ面で押し倒さないでってば!」

梓「本当は誕生日プレゼント、忘れたんじゃない?」

純「そんな事無いってば。本当に私をプレゼントするつもりだったよー」

梓「……本当?」

純「本当だよ?」

梓「それじゃ遠慮なく……、初体験のやり直し、しよう、純。素面で、お酒に頼らないで」

純「あはは、うん、優しくしてね、梓」

梓「誕生日プレゼントありがとう、純。私、純の事……」

純「私も梓の事……」

梓・純「大好きだよ」


おしまいです。