―次の日―

澪「そういえば梓ってどうなったんだ?」

律「あずさってなんだ?」

唯「アレだよ、女の子の暗殺者の時代劇漫画でおーい龍馬の」

紬「じゃなくて、もしかすると私たちの後輩の」

唯「あずみゃん!」

澪「何かフュージョンしてるぞ」

律「そういえばアイツどうなったんだ?」

唯「というか、なんでいないんだっけ」

澪「なんか唯を怒らせたんだろ、なんか忘れたけど」

唯「ウソだ~、私があずにゃんを怒るワケないよ~」


ガサゴソ


紬「はっ」

澪「何かあやしい物音が…」

律「唯、今の音はなんだ?」

唯「ああ…アレかな」


ガサゴソ


澪「ぬああああああ!?」

紬「な、なに、そのクソでかいザリガニは」


唯「ゲロ太だよ」


律「えぁっ?」

澪「な、なんかカエルみたいな名前だな」

紬「唯ちゃん、もしかしてその名前はもしかして」

唯「ふふふ」

律「和と遊びに行った時のヤツか…」



律「しかし、なんだ…このザリガニ、ロブスターの2倍くらいのデカさあるけど…」

律「なんだコレ」

唯「餌が良かったか分からないけどゲロ太の成長はとどまるところを知らないんだよ!」

唯「食べたら食べただけ大きくなるんだ~」

澪「餌はなんなんだ?」

唯「それは企業秘密だよ」

律「一応、秘密なのか?」

唯「私は可愛いと思うけど澪ちゃん的にはあんなモンスターを生み出したのが自分だと知ったらどんな行動に出るか分からないからね!」

紬「そうかも~」

澪「なになに、なんの話?」

唯「思いやりについて話してたの」

澪「わあ~優しい世界って大好きだなあ~」



―次の日―

唯「ヤフオクでゲロ太が5000円で売れた」

律「すげえ!」

澪「というかアッサリ売っちゃったなあ」

唯「巨大ザリガニもっといっぱい作ってもっと売ったら私、就職しないでいいかなあ」

紬「というか、そんな事したらそれはもう事業レベルだと思うけど」

唯「夢が広がりんぐ!」



―次の日―

梓「あずにゃんが帰ってきました!」

律「おっ、元気だった?」

梓「あっ、唯先輩だよスミーレ!唯先輩!唯先輩もふもふ!」

律「待て、アタシは唯先輩じゃないし、スミーレなんていない」

梓「えっ」

澪「なんの騒ぎだ?」

梓「あっ?」

梓「唯先輩が2人!?」

梓「おかしいよスミーレ!?」

澪「コイツは何を言っとるんだ」

律「見えてはいけないものが見えているらしい」



唯「くんくん、あずにゃんのニオイがするよ~」

梓「ウゴホオオオオオァアアア」

唯「肉まん食べる?」

梓「唯先輩の肉まんいただきマントヒヒ!」

ガツガツ


梓「私は正気に戻った!」


澪「正気のヤツが言うセリフじゃないよ」

紬「梓ちゃん、今までどこに行ってたの?心配してたのよ」

梓「えっ」

梓「みなさんが私を山に追い立て新種のザリガニ見つけるまで帰るなって言ったんじゃないですか!!?」

唯「そうだっけ」

律「もう結構前だからよく覚えてない」

紬「私たちがかわいい後輩にそんなヒドい事するわけないわ」

澪「まあ、なんにせよ大変だったな」

梓「あれっ、みんな穏やかな感じ!」



唯「ところで今、新種のザリガニがどうとか言ってたけどなんか見つかった?」

梓「見つかりました」

澪「ないない」

律「そんな簡単に見つかるもんか?」

梓「ふふっ、コレを見てください!!」

バッ

澪「!!」

紬「これは…」



唯「なんで私のスカートをバッって、めくったの?」


梓「めくりたかったからです」


紬「唯ちゃん、意外と大人っぽいの履いてるのね」

唯「あずにゃんの目の所から頭の皮を全部めくろう」

メリ



梓「痛い痛い痛い痛い待ってくださいよ!!私、1ヶ月くらい山でサバイバルさせられたんですよ!!スカートめくりくらいさせてよ!!」

律「なんで最後タメ口なんだ」

梓「それより新種のザリガニは本当に見つかったんですよ」

ゴトッ


澪「おや、水槽の中にザリガニが…」

唯「見た感じ、普通のザリーちゃんだけど」

梓「ところがどっこい、ニオイをかいでみて下さい」

律「クンクン…」

澪「むっ」

唯「ん?」

紬「生き物くさく無いわね…」

律「というより、むしろ」


唯「なんだろ、いい香りかも」


澪「紅茶?」

紬「あっ、そうよ」

律「なんか紅茶みたいな香り…かも」



梓「そうなんです」

梓「私は紅茶の香り漂うティーザリガニを発見したですよ!」

律「そんなバカな」

澪「というかこの香り、本当にザリガニから発せられているのか?」

梓「疑り深い人たちだなあ」

梓「もう一回だけ人間を信じてみましょうよ」

唯「でも、こんなのどうやって発見したの?」

梓「それはですね、唯先輩、ちょっとザリガニの入った水槽を持ち上げてもらえますか」

唯「こう?」

梓「あ、水槽の底が見えるように腰の高さより上に掲げて下さい」

唯「こんくらい?」


ズルッ


唯「!?」


梓「はい、これで唯先輩のスカートもパンツも下ろし放題です」

澪「こんなヤツをどうやって信用しろというのだろう」

紬「唯ちゃん、意外と大人っぽいアンダーヘアしてるのね」

唯「」

律「見ろよ、唯が生ゴミでも見るような目つきで梓を見てるぜ」

梓「なんかゾクゾクしますよね!」

澪「同意を求めるんじゃないよ」



―次の日―

澪「梓は唯にハチャメチャにされた」



―次の日―

唯「ヤフオクで紅茶の香りのするティーザリガニが2000円で売れたよ」

律「すげえ!」

澪「というか勝手に売っていいのか」

唯「いいよね、あずにゃん

梓「ハイ」

紬「それより貴重なザリガニだったんじゃないの?」

唯「あずにゃんから作り方聞いたから」

澪「あれ作れるの?」

唯「ザリガニの棲む川に紅茶の葉をぶちこんだら紅茶の香りを気に入ったザリガニが勝手に進化するらしいよ」

澪「ダーウィンもビックリの進化論だな」

紬「私、びっくりドンキーでハンバーグ食べたい」

律「よっしゃよっしゃ」

唯「びっくりドンキーにレッツゴー!」




梓「ハイ」



―びっくりドンキー―

唯「もう一度言うよ?」

澪「うん」

唯「私、巨大ザリガニと紅茶ザリガニを養殖する人になるよ」

律「なれよ」

紬「すいません、ハンバーグおかわり」

澪「お前、食いすぎだよ」

紬「むしゃむしゃ唯ちゃん」

唯「武者唯ちゃん」

紬「唯ちゃんが本気なら私が資金を出すわよ」

唯「えっ、資金って?」

紬「私がお金を出すから大きな池で大量にザリガニを育てれば全国区のビジネスになるわよ」

唯「むむむ」

律「むしゃむしゃ」

澪「もちゅもちゅ」

紬「ハンバーグおいしいいいいいいイイイイイイイイイイイイイイ」

梓「ハイ」



―5年後―

ザリガニカンパニーを立ち上げた唯とムギはハッキリ言って大成功した。


最初、巨大ザリガニは珍しいもの好きのモノ好きに飛ぶように売れ
そのうち、育てたザリガニ同士を闘わせるザリガニバトルが子供たちの間で大流行した。


子供たちの間ではリアルポケモンみたいな感じでザリガニトレーナーになる事が名誉みたいな事になって
巨大ザリガニ関連商品もいっぱい売れた。


また、薫りたつ紅茶ザリガニは女性たちの間で口コミで拡がり、これまた大ヒット商品になった。


ぐうたらだった唯も、好きな事には頑張れるようで
日々、新しい香りがするザリガニの研究開発に余念がない。

次の目標はギターの音で踊り出すザリガニ、と本人は息まいているがどうなる事やら。



ムギは東南アジアやアメリカなど各地でザリガニ養殖ビジネスに精を出し
今や父親が稼ぐ額と同等のお金を自力で稼げるくらい立派になった。


いずれ政略結婚させられそうな事だけが悩みのタネだったらしいが、
今や父親と同等の発言権をもち

結婚相手を自分で決められる資格を手に入れたみたい。


私は生まれた時から持っていた資格なんだが金持ちは金持ちで大変なようである。



律は大学卒業後、しばらくはライブハウスとかでテキトーに働いていたが
そのうち、唯たちに誘われてザリガニの世話をする仕事に就いてテキトーに働いてる。


ちなみに役職はザリガニより低いらしい。


でも1日中ザリガニと遊んでるだけでお金がいっぱいもらえるから本人は満足気だ。



私、秋山澪は公務員試験にうまく合格しちゃったので市役所で働いている。


以前、唯たちにザリガニカンパニーに誘われているが、私は断った。


ザリガニカンパニーは波に乗っているが、同時に浮き沈みの激しい世界であろう。


いつどうなるか分からない。


待遇はいいけれど、公務員を蹴ってまで入社しようとは思えなかったわけだ。


もっとも郵政民営化以降、公務員も絶対に安泰でもないだろうけど。


そして今日は久々に律や唯たちと飲み会だ。

今の彼女らの財力なら一晩で何百万もかかるすごい店で飲むことになるが
私はおごってもらうのも嫌だったので
私の財力に合わせたお手頃な居酒屋チェーンで庶民的に飲むことになった。



―居酒屋―

律「うい~」

唯「えっ、憂?」

律「いや、酔っぱらっただけ」

澪「酔っぱらって、うい~なんていうヤツ、実際に見るのは初めてだ」

紬「あっ、ここのカキフライ、480円のくせに美味しいわね」

唯「本当?一口ちょうだい~」



律「カキフライって一口だけかじって中を見ると、気持ち悪くて食欲なくなっちゃうよ」

唯「じゃあ誰のかじり方が一番気持ち悪いか勝負しよう」

梓「ハイ」

紬「食べ物で遊んじゃだめ!」

梓「ハイ」

澪「しかし、お前たちは変わらないなあ」

澪「なんだか学生の頃のままだよ」

律「まあな」

唯「私、社会ってもっと厳しいのかと思ってたら思いのほか、甘かったよ~」

澪「うーむ、そんなハズないんだがなあ」

紬「澪ちゃんは公務員、大変?」

澪「大変だよ…って、まあ、もっと大変な会社は山のようにあるだろうから、贅沢は言いませんとも」

唯「ねえねえ、澪ちゃんも一緒に働こうよ~」

紬「そうよ、澪ちゃんの席はちゃんと空けてあるんだから」

澪「学生時代の友達だからって、スポッと入ったんじゃ気を悪くする人もいるだろ」

澪「ダメだよ、そういうのは」

律「カタいヤツだなあ」

澪「お前たちこそ、そんな学生みたいな感じで大丈夫な感じ?唯とか代表取締役なんだろ」

唯「だいじょうぶい!」

澪「本当かなあ」



唯「昔さあ」

澪「うん?」

唯「昔、あずにゃんが卒業しないで~とか泣きわめいた事があったけれど」

澪「ああ、あったねそんなこと」

唯「結局、本当に卒業したのは澪ちゃんだけなのかもね」

澪「え?」

唯「澪ちゃんだけが学生を卒業して立派な大人になった気がする」

澪「あ、いや、さっきのは冗談だよ。唯たちだって大きな会社動かして立派な社会人じゃないか」

唯「そうかなあ」

唯「なんかいつまでたっても大人じゃない気がするよ」

唯「別にいいんだけど」

澪「別にいいのかよ」


梓「卒業か…」


律「えっ」

紬「梓ちゃんが5年ぶりに喋った!?」

唯「どうしたの、あずにゃん。卒業がどうしかしたの」

梓「卒業…」



梓「の卒ってロビンマスクが笑ってるように見えないですか」

紬「卒」

律「見えねーよ」

唯「5年間経ってもあずにゃんはあずにゃんだった」

梓「それより私、今年で26歳なんですけど、そろそろあずにゃんって恥ずかしいからやめて下さい、お願いです」

唯「30歳になっても唯先輩はあずにゃんと言い続けるつもりだよ」

梓「私はいつになったらあずにゃんを卒業出来るんだろう」

紬「アラウンドナインティになったら」

梓「90代!?」


唯「私たちの放課後は…永遠だね!」

律「ィヤッホオォイ!!」

澪「じゃ、そういうことで」




!!



最終更新:2013年11月12日 03:09