梓「はい、どうぞ。あ~ん」
紬「あ~ん」パクッ
梓「…」
紬「うん、美味しい♪」
梓「あげてるのムギ先輩が持ってきたケーキなんですけどね」
律「この餌付けシーンも見慣れたなぁ」
澪「あぁ、最初見たときはドキっとしたけど」
唯「うんうん。すっかり軽音部の風物詩だね」
梓「最初はムギ先輩がショートケーキかチョコケーキかを選べなくて、私のを一口あげたのがきっかけでしたが…」
律「まさか一年以上続くとはなぁ…」
紬「♪」ニコニコ
澪「そして餌付けされた後のムギはとても機嫌がいい…って聞いてないか」
紬「♪」ニコニコ
-次の日の朝-
紬「あ、唯ちゃん。…それに憂ちゃん。おはよう」
憂「おはようございます、紬さん」
唯「ムギちゃん、おはよう! 朝に会うなんて珍しいね」
紬「うん。唯ちゃん達、いつもはもう少し遅いものね」
唯「せっかくだし一緒に学校へいこっか」
紬「…お誘いは嬉しいんだけど…」
憂「何かあるんですか?」
紬「うん。梓ちゃんのところへ行きたから。またね」ダッ
---
唯「行っちゃった…」
憂「紬さん、ほんと梓ちゃんにべったりだね」
唯「そうだね。…ちょっと寂しいけど仕方ないよね…」
憂「じゃあ私達も手を繋いでいこっか」
唯「そうだね、憂」ギュッ
憂「♪」
---
梓(ふぅ…最近冷えてきたなぁ)
梓(こんなときに…)
紬「梓ちゃん、おはよう」
梓「あ、ムギ先輩、おはようございます。…ってまたですか」
紬「えへへ、きちゃった」
梓「全然通学路違うのに…」
紬「もしかして迷惑だった」ショボーン
梓「違います。ほら」ナデナデ
紬「あ…♪」
梓「…」ナデナデ
紬「…♪」
梓「さ、いきましょうか」
紬「うん♪」
梓「最近冷えてきましたね」
紬「そうね。風邪をひかないように気をつけなくちゃ」
梓「そうですね…」
紬「…」
梓「ムギ先輩?」
紬「どうにかして梓ちゃんを暖めてあげられないかなと思ったんだけど…」
梓「あぁ、抱きついたら歩けませんし…手でも繋ぎましょうか」
紬「…♪」ギュッ
梓「…」ギュッ
紬「ふふふ~ん♪」
梓「楽しそうですね」
紬「梓ちゃんの役に立てて嬉しいの」
梓「そうですか」
紬「…♪」
---
梓「校門に着きましたね」
紬「うん」
梓「あ、そうだ、今日はクッキーを持ってきたんです」
紬「クッキー?」
梓「はい。どうぞ、あ~ん」
紬「あ~ん」パクッ
梓「どうですか?」
紬「さっくり♪」
梓「それならよかったです…」
純「あ、梓とムギ先輩」
紬「あら、純ちゃん」
梓「あ、純」
純「おはようございます」
紬「おはよう、純ちゃん、じゃあ私は行くね」
純「あ、はい」
梓「おはよう、純」
純「うん、おはよ。ムギ先輩相変わらず梓に懐いてるねー」
梓「うん」
純「でも大変じゃない? ムギ先輩結構目立つし」
梓「そうでもないよ。結構気を使ってくれるし」
純「そうなの?」
純「うん」
純「ねぇ、梓にとってムギ先輩ってペットみたいな感じ?」
梓「ペット?」
純「だって食べ物あげて懐いてるし…」
梓「うーん。ペットだなんて考えたこともなかった」
純「ないんだ?」
梓「うん。ほら純、そろそろ行こう」
純「そーだね」
-昼-
梓「はい、どうぞ。あ~ん」
紬「あ~ん」パクッ
梓「どうですか?」
紬「うん、美味しいっ!」
梓「といってもムギ先輩のお弁当ですけどね」
紬「うふふ♪」
唯「この光景も見慣れたね」
純「はい」
憂「おかげでお姉ちゃんたちとお弁当食べられて私は嬉しいです」
唯「うい~」ダキッ
憂「お姉ちゃーん」ダキッ
律「漫才姉妹は放っておくとして」
唯「むむむ」
憂「むむっ」
澪「まぁ、こうやってみんなでお弁当食べるのもいいな」
唯「あ、澪ちゃんの卵焼きちょうだい」
澪「いいぞ」
唯「わ~い。…うん、美味しい。ほら憂も、あ~ん」
憂「あ~ん……うん。美味しいです、澪さん」
澪「作ってくれたのはマ…お母さんだけどな」
紬「梓ちゃん、お茶をどうぞ」
梓「ありがとうございます」
純「あ、ムギ先輩、ムギ先輩」
紬「なぁに、純ちゃん」
純「以前ゴーヤチャンプル食べてみたいって言ってましたよね」
紬「うん。あの苦いゴーヤさんと卵を炒めたらどんな感じになるのか気になってたの」
純「実は今日持ってきたんですけど…」
紬「もらっていいの?」
純「どうぞ」
梓「じゃあ、ムギ先輩、あ~ん」
紬「あ~ん」
純「なんで梓がやるのさ」
梓「だってムギ先輩に食べさせてあげるのは私の仕事だし…。それでどうですか、ムギ先輩」
紬「うん。ちょっと変わってるけど美味しい! ありがとう、純ちゃん♪」ニコッ
純「まぁ、いっか」
憂「凄い雨だったね」
梓「うん」
純「って梓、体操服じゃん」
梓「うん。傘忘れて濡れちゃったから着替えたんだ」
憂「災難だったね、梓ちゃん。あれ…」
梓「どうしたの、憂?」
憂「梓ちゃん、いつもより髪がさらさらみたい」
梓「あ、それはムギ先輩に濡れた髪をトリートメントしてもらったから」
純「でもよくトリートメント用の道具なんて持ってきてたね?」
梓「うん。私が傘を忘れるかもしれないからって持ってきたんだって」
憂「それは…」
純「すごいね…」
梓「やっぱり2人もそう思う?」
純「そう思うって?」
梓「ムギ先輩が私のこと気にしすぎてるって…」
憂「私は梓ちゃん達が納得してるならそれでいいと思うよ」
純「うん、私も。見ていてドキっとすることはあるけどさ」
梓「そっか…2人ともありがとう」
純「でもさ、ムギ先輩たち来年で卒業じゃん」
梓「うん」
純「ムギ先輩だけ梓のためにこっちに残ったりしそうじゃない?」
梓「そんなこと…あるかも」
純・憂「…否定できないんだ」
紬「今日は2人きりなんだ?」
梓「はい。ちょっと話したいことがあったので」
紬「そっか。じゃあすぐにお弁当片付けちゃう?」
梓「ううん。食べながらでいいです。ほら、もっとこっちにきてください」
紬「はぁい」
梓「はい、どうぞ…あ~ん」
紬「あ~ん」パクッ
梓「…」
紬「おいしい♪」
梓「それで、話なんですけど」
紬「うん…」
梓「ムギ先輩…」
紬「なぁに」
梓「お手!」
紬「えっと……はい」シュッ
梓「おかわり!」
紬「はい」シュッ
梓「ふーせ!」
紬「はい」シュタッ
梓「…しちゃうんですね。あ、席に戻ってください」
紬「うん…梓ちゃんが言うことならなんでもしちゃうかも」
梓「随分懐いちゃいましたね」
紬「梓ちゃんにずっと餌付けされたせいだよ」
梓「それだけで?」
紬「うん。人にご飯をたべさせてもらうとね、なんだかとっても嬉しくなるんだよ」
梓「それはちょっとわかるような気がします」
紬「今度食べさせっこしよっか」
梓「そうですね」
紬「うふふ、楽しみ~」
梓「それで本題なんですが…」
紬「あ…うん…」
梓「ムギ先輩って卒業した後…」
紬「…あれ、梓ちゃんに教えてなかったっけ?」
梓「えっと…N女子大ですか」
紬「うん。唯ちゃんたちと同じN女子大に行くつもりだけど…」
梓「留年したり、こっちの大学に行ったりは…」
紬「そんな予定はないけど…赤点もとってないし」
梓「…」
紬「もしかして、梓ちゃんはこっちにいて欲しい?」
梓「…」
紬「梓ちゃん?」
梓「実は心配してたんです」
紬「心配?」
梓「はい。最近のムギ先輩は私を最優先してくれますから、私のためにこっちに残るんじゃないかって」
紬「…だから尚更残らないわ」
梓「え」
紬「だって、梓ちゃんがいるからってこっちに残ったら、梓ちゃんは嫌でしょ?」
梓「嫌じゃないですけど…ちょっと困ります」
紬「うん…。だからちゃんと進学するの」
梓「あの…私がいなくても大丈夫ですか?」
紬「…」
梓「ムギ先輩?」
紬「辛いかも」
梓「えっと…」
紬「最初はね、ただのごっこ遊びみたいな感じだったんだけど、最近はね、ずっと梓ちゃんのこと考えてるし」
梓「…」
紬「梓ちゃんに会わずに一年過ごすのは辛いかもしれない」
梓「…そうですか」
紬「でも、辛くても我慢するから…大丈夫だよ」
梓「ムギ先輩…」
紬「なぁに?」
梓「ちょっと酷いこと言ってもいいですか?」
紬「酷いこと?」
梓「この前、純にちょっと言われてから考えてみたんですが…」
紬「うん…」
梓「…実は私、ムギ先輩のこと、ちょっとだけペットみたいに思ってたみたいです」
紬「うん。私も自分のこと梓ちゃんのペットみたいだなって思ってた」
梓「え」
紬「だって毎日餌をもらってるし、梓ちゃんのことで頭がいっぱいになっていくし…」
梓「ムギ先輩は、ペットでいいんですか?」
紬「梓ちゃんこそ、私がペットでいいの?」
梓「私は…そうですね」ナデナデ
紬「あ…♪」
梓「こうやって撫でると喜ぶムギ先輩や、美味しそうにご飯を食べるムギ先輩が大好きなので」ナデナデ
紬「…♪」
梓「でも、ただのペットにはしたくありません」
紬「…?」
梓「ムギ先輩は人間で先輩です。だからいい先輩であって欲しいです。それに…」
紬「それに?」
梓「もっと進んだ関係になるのもいいと思ってます」
紬「…なんだか少女漫画みたい」
梓「そうかもしれません」
紬「でもね、今は梓ちゃんがこうしてくれてるだけで十分かな」
梓「…そうですね、私もそう思います」
紬「うんうん」
梓「…今日はちょっと冷えますね」
紬「そうだね」ギュッ
梓「いいこいいこ」ナデナデ
紬「…♪」
梓「いいこだから一年間我慢してください。…私も辛いんですから」ナデナデ
紬「…」
梓「一年間我慢してくれたら、その時は私が………」ナデナデ
紬「…♪」
おしまいっ!
最終更新:2013年11月17日 07:57