こんにちは、琴吹紬です。
突然ですが告白します。
私は唯ちゃんと憂ちゃん、それに和ちゃんと付き合っています。

今日はイオンにやってきました。
そろそろ唯ちゃんの誕生日だからプレゼントを選びにきたんです。


和「ムギー、こっちよ」

紬「あ、和ちゃん」

和「時間ぴったりだわ。流石ムギね」

紬「本当はもう少しはやく着きたかったんだけど」

和「いいのよ、あの子と待ち合わせしたらこうはいかないもの」

紬「うふふ、そうね。唯ちゃんと待ち合わせするときは、唯ちゃんの家を待ち合わせ場所にしないと」

和「まったくだわ」

紬「じゃあさっそくまわりましょうか」

和「あ、その前に」


和ちゃんに唇を奪われました。

紬「の、和ちゃん。こんなところで……!」

和「せっかく2人で会ったのにキスしないなんてもったいないじゃない。じゃあ行きましょうか」

紬「もったいないって……」


和ちゃんの考えることはときどきよくわかりません。
でもそういうところが和ちゃんの魅力でもあるんだと思います。
特に表情を変えることもなく歩き出す和ちゃん。
私はそんな彼女の後を追いかけます。


和「それで、ムギも考えてみた?」

紬「うん、いくつか考えてみたんだけど、どれもピンとこなくて」

和「そうなのよね。あの子ツボが独特だから。毎年プレゼントには困るのよ」

紬「今まであげたものは?」

和「いろいろあげたわよ。洋服とか玩具みたいな、そういう基本的なものから、生クリームまで」

紬「生クリーム?」

和「ええ、スプレーでふしゅーってする生クリームあるでしょ?」

紬「よくカフェに置いてある?」

和「一時期唯があれを欲しがっててね。誕生日にあげたらとても喜んでたわ」

紬「そうなんだ。今の唯ちゃんがほしがってるものというと……」

和「特にないと思うわ」

紬「そうねぇ」


私達は軽くイオンのなかを回りました。
雑貨屋さんでかわいいグッズを探したり、ファンシーグッズ屋さんでキャラクターものの小物を物色したり。
でもやっぱりどれもピンときませんでした。
まわりはじめて一時間ほどで、憂ちゃんと合流することになりました。


紬「もう憂ちゃんきたんだ?」

和「ええ、用事があると言ってたけれど、急いで終わらせてきたいみたいね」

紬「あ、あそこにいるの」

和「そうね」

憂「あ、和ちゃん、紬さん」

和「おはよう、憂」

憂「和ちゃん!」


挨拶すると同時に和ちゃんと憂ちゃんは抱き合いました。
それから自然にキス。
……舌まで絡めてます。
まわりに人が少ないとはいえ、なんて大胆!


憂「紬さんもおはようございます」

紬「ええ、憂ちゃんもおはよう」


そう言うと憂ちゃんは私に抱きついて流れるように唇を奪いました。
そのまま舌が侵入してきます。
私も恐る恐る舌を絡めると、憂ちゃんは軽く唾液を流し込んできました。


憂「えへへ」

紬「もう、憂ちゃんったら。……それで憂ちゃんは何か思いついた?」

憂「あ、一応考えてみました」

和「そうなんだ?」

憂「うん。女体盛りなんてどうかなって」


え?


和「いやよ、お刺身なんて載せたら臭くなるじゃない」


え、臭くなかったらいいの?


憂「そっかぁ、じゃあ生クリーム塗って私達がプレゼントです、ってやったらどうかな?」

和「それ、憂がしてもらいたいだけじゃない」

紬「そうなの?」

憂「えへへ~、でもおねえちゃんもきっと喜ぶよ」

和「それは憂の誕生日にやってあげるから、今は真面目に考えましょう」

憂「約束ですよ、紬さん」

紬「え、私もやるの?」

憂「もちろんです♪」

紬「私はどちらかというと……」

和「どちらかというと?」

紬「やってもらうほうがいいかなって」

憂「じゃあ紬さんの誕生日は私が一肌脱ぎます」

紬「うふふ、それは楽しみね~」

和「はい、そこ。いちゃついてないで真剣に考えなさい」

紬・憂「は~い」


それから私達はイオンの中を見て回りました。
いろいろ見て回った結果、私はルンバの偽物を。
憂ちゃんはウーパールーパーを。
和ちゃんはスヌーピーの大きなぬいぐるみをプレゼントに選びました。


紬「ふふ、唯ちゃん喜んでくれるかしら」

和「唯のことだから名前をつけてかわいがってくれるわよ」

紬「それならいいんだけど」

憂「ウーパールーパーはお姉ちゃんが気に入らなかったら料理しちゃおうかな」

紬「え」

憂「ふふ、冗談です」

和「あ、気に入らなかったら私にちょうだい。その子、結構気に入ったの」

紬「大丈夫よ。憂ちゃんの選んだプレゼントだもの。唯ちゃんはきっと喜んでくれるわ」

憂「そうかな~えへへ」


誕生日当日……はHTTのみんなと純ちゃん憂ちゃん和ちゃんで祝いました。
そして誕生日の次の日、私達は4人は唯ちゃんの家に集まり、二度目の誕生パーティーを開くことにしました。


唯「二度も誕生日を祝ってもらっちゃっていいのかな? 嬉しいけど」

紬「うふふ、私も二度も唯ちゃんを祝えて嬉しいわ」

憂「お姉ちゃん、私も嬉しいよ!」

和「さ、料理ができたわ」


昨日の料理役は憂ちゃんだったので、今日は和ちゃんがメインで料理を作りました。
和ちゃんの料理は派手さはないのですが、とっても美味しいんです。


唯「あ、この鶏ハムおいしい」

紬「こっちの芯空菜の炒めものも優しい味がするわ~」

和「あ、もう唯ったら」


ホッペタにソースをつけた唯ちゃん。
それを見た和ちゃんは唯ちゃんの口元をぺろっと舐めました。


唯「あ、和ちゃん、悪いね」

和「ふふ、唯は私がついてないと駄目ね」

唯「そ、そんなことないもん」

和「そうかしら」

紬「うふふ」


4人で一緒にいるときは、こんな風にいちゃつきながらご飯を食べます。
憂ちゃんが私にあーんしてくれたり、唯ちゃんと憂ちゃんが唐突にキスしたり。
ちょっと爛れているけど、こういう時間が私は大好きです。


紬「あ、そうだ。今日のケーキは私が作ってきたの」

唯「え、ムギちゃんが」

紬「ええ、ケーキをちゃんと作るのは初めてだから美味しいかわからないけど……」


私が切り分けて皿に載せると、唯ちゃんは大きく口を開き、パクリと食べました。
それから笑顔で。


唯「とってもおいしーよ、ムギちゃん」

紬「本当?」

唯「うん。ほら、ムギちゃんも食べてみてよ」


そう言って唯ちゃんはもう一口パクリと食べて、私と唇を重ねました。
それから口移しでケーキを食べさせてくれました。


紬「甘いね」

唯「えへへ~、そうでしょ」

憂「あ、おねえちゃんばっかりずるい。私も紬さんに食べさせてあげる」

唯「じゃあ私は和ちゃんに食べさせてあげるね」

和「まったく、唯は甘え上手なんだから」


4人でケーキを食べて、いっぱいお話をして。誕生パーティーは終わり。
唯ちゃんと憂ちゃんに別れを惜しまれながら、私と和ちゃんは帰路につきました。


和「楽しかったわね」

紬「ええ。唯ちゃんちゃんと喜んでくれてよかったわ~」

和「ふふ、全部喜んでくれたわね。ウー子はちょっと惜しかったけど」

紬「本当に飼ってみたかったんだ?」

和「もちろん」

紬「ふふ、そっかぁ」

和「ええ」

紬「……こんな時間がずっと続けばいいのに」

和「……」

紬「和ちゃん?」


和ちゃんは黙ったままなんでもない顔をしました。
でも、今の私にはわかります。
これは和ちゃんが何かを隠しているときにする顔です。


紬「もしかして大学のこと考えてる?」

和「……」

紬「和ちゃんがK大学に入っても会えなくなるわけじゃないし……」

和「私ね、大学にいったら留学してみようと思ってるの」

紬「え」

和「昔からね、海外で勉強してみたいって思ってて……」

紬「で、でも戻ってくるんでしょう」

和「そのつもりだけど、数年は行ったっきりかもしれないわ」

紬「……」

和「だからね、ムギ。その間、唯のことをお願いするわ」

紬「そんな……」


和ちゃんの突然の告白に、私は何も言えませんでした。
海外に行くのが夢なら、それを止めるのは違う気がします。
だからといって和ちゃんとずっと離れるのは、唯ちゃんや憂ちゃんにとって辛いことのはずです。
そして、私にとっても寂しすぎることです。


和「……ごめんなさい、ムギ。暗くしちゃって」

紬「ううん。……でも一つだけお願い!」

和「なぁに?」

紬「年に一度ぐらい会いに来てほしいな。そうだ! 来年の誕生日とか」

和「唯の誕生日に?」

紬「うん!」

和「そうね……できたらね」


それっきり和ちゃんも私も黙ってしまいました。
最後にさよならのキスをして、その日はおしまい。

それからしばらくして、私と唯ちゃん、そして和ちゃんは高校を無事卒業。
私と唯ちゃんはN女子大学へ、和ちゃんはK大学へ、そして憂ちゃんは桜が丘高校に留まりました。

卒業した後も、憂ちゃんとはよく会いました。
土日祝日の三連休があれば必ずと言っていいほど憂ちゃんが会いにきてくれました。
二泊三日で憂ちゃんが泊まりにきてくれて、一緒に御飯を食べたり、デートをしたり……。

でも和ちゃんは一度こっちに来たっきりで、夏以降は一度も会えませんでした。
私の誕生日には手の込んだバースデーカードが来ましたが、それだけ。
ある日、唯ちゃんに和ちゃんのことを聞いてみました。


紬「ねぇ」

唯「なあに?」

紬「唯ちゃんは、和ちゃんのこと、どう思ってるの?」

唯「大好きだよ」

紬「えっと、そうじゃなくて、心配とか」

唯「心配?」

紬「うん。このまま離れてっちゃうんじゃないかなとか……」

唯「う~ん、そういう心配はしたことないかな」

紬「……どうして?」

唯「えっとね、和ちゃんはすっごく寂しがりやさんなんだ」

紬「それは知ってる」

唯「でね、私達のことが大好きなんだ」

紬「それも知ってる」

唯「だから絶対に帰ってくるよ」

紬「信じてるんだ?」

唯「信じてるのとはちょっと違うかも」

紬「そうなの?」

唯「うん。なんていうかね、和ちゃんのことはわかるんだ」


唯ちゃんと和ちゃん。
2人は私とは比べ物にならないくらい、長い時間を一緒に過ごしてきました。
だから、私にはわからない、強い結びつきがあるんだと思います。

そんな2人のことを羨ましいと思いつつも、私は少し不安でした。
あの時の和ちゃんの寂しそうな顔を思い出すたび、和ちゃんがどこか遠くへ行ってしまう気がしてしまって。

そして、あの日から一年。
唯ちゃんの誕生日になりました。


憂「紬さんはそっちのサラダをお願いします」

紬「ええ、このドレッシングでいいかしら」

憂「はい」

紬「うふふ、こうやって憂ちゃんと料理するのは楽しいわ~」

憂「紬さんは覚えがはやいので助かります」


憂ちゃんがこっちに来てくれたときは、よく一緒の料理を作っていたんです。
だから2人の息はぴったり。


紬「やっぱり、和ちゃんはこれないのかな」

憂「ええ、メールしてみたけど、返信もありませんでした」

紬「そっか、忙しいから仕方ないよね」

憂「……うん」


憂ちゃんもやっぱり和ちゃんのことがきになるみたいです。
和ちゃんに一年前にしたお願い。
あのお願いがあったから、少しだけ期待していたけど……無理だったみたいです。

でも落ち込んではいられません。
今日は唯ちゃんの誕生日なのだから、私達は笑顔でいないと。


憂「紬さん?」


私は笑顔を作って、憂ちゃんの唇を奪いました。
憂ちゃんは突然のことに驚いていたみたいですが、すぐに受け入れてくれました。


紬「たまには自分からやってみたかったの~」

憂「ふふ、うれしいです」


お料理を並べて、3人でテーブルにつきました。
唯ちゃんが軽く挨拶をしようとしたとき、玄関のチャイムがなりました。

私と憂ちゃんは顔を見合わせ頷きました。
唯ちゃんは既に玄関に走っていました。



でも玄関にいたのは和ちゃんではなく、宅配便の人でした。
唯ちゃんはちょっと落ち込んだ様子で荷物を受け取りました。


憂「きっと和ちゃんからのプレゼントだよ」

唯「そうかなぁ~」

紬「ね、唯ちゃん、あけてみましょう。あれ、重い」

唯「ちょっとまってて、はさみで開けるから」


唯ちゃんがはさみでテープを切って、玄関で箱を開きました。
箱の中から出てきたのは、和ちゃんでした。


和「誕生日おめでとう、唯」

唯・憂・紬「……」

和「う~んしょ。……あれ、1人じゃ出られないわ」

唯・憂・紬「……」

和……ちょっと見てないで助けてちょうだい」

紬「……えっと、和ちゃんはなんで裸にリボンで段ボールで運ばれてきたの?」

和「仕方ないじゃない、他にプレゼントが思いつかなかったんだから」

憂「……おねえちゃん、生クリーム持ってくるね」

唯「おお、女体盛りだね」

和「う、憂。ゆ、唯」

唯「ね、ムギちゃん。和ちゃんは甘えん坊さんでしょ」


唯ちゃんはにっこり笑いました。
甘えん坊さんで、ちょっと変わってて、ちょっとおっちょこちょいな和ちゃん。
そんな和ちゃんに生クリームを塗りたくって、楽しい誕生会がはじまったのです。


おしまいっ!