>きたくろ
紬「ふふふーん」

唯「ムギちゃんごきげんだね」

紬「そう見える? 」

唯「うん」

紬「ふふっ。そうかもしれない」

紬(唯ちゃんから久しぶりに誘ってもらえたから)

唯「ねぇ、ムギちゃん」

紬「なぁに?」

唯「今日、憂が家にいないんだ」

紬「えっ? あっ、和ちゃんのところに」

唯「うん。泊まるって」

紬「……」

紬(唯ちゃんがよそよそしいのは私に対してだけだと思ってたけど)

紬(ひょっとして憂ちゃんと上手くいってないのが原因なのかしら?)

紬(唯ちゃんと憂ちゃんは本当に仲がいい姉妹だから……)

紬(憂ちゃんの存在が唯ちゃんのメンタル面に及ぼす影響ははかりしれない)

紬(それなら……)

唯「そ――」

紬「唯ちゃん!!!」

唯「」ビクゥ

紬「今日は家に来ない?」

唯「えっと、そうじゃなくて…」

紬「お菓子があるの!」

唯「だから…」

紬「アイスもあるわ!」

唯「じゃなくて…」

紬「ケーキもつけ――」

唯「ムギちゃん!!!!!!」

紬「は、はい……」

唯「今日は家に泊りに来てほしいかなって……」

紬「えっ、今なんて」

唯「泊まりに来て欲しいんだけど」

紬「えっと……」

唯「無理かな? 無理なら……」

紬「ううん。そんなことない! 万難を排して行っちゃうから。ちょっと待ってね」トトトトトト

唯「う、うん」

>でんわちゅう
紬「斎藤。…………ええ、友だちの家に」

紬「そんなのキャンセルよ、キャンセル!!」

紬「絶対無理? …………無理を無理やり捻じ伏せるのが斎藤の仕事でしょ!!」

紬「お願い! 本当にお願い! 一生に一度のお願いだから!」

紬「初めて聞いた? だって一生に一度のお願いだから、使っていいのは一回だけじゃないのかしら」

紬「……そう。やってくれるのね、斎藤。ありがとう。本当にありがとう」

紬「うん。うん。……それは大丈夫だから。女の子しかいないから」

紬「それじゃあお願いします。いつもありがとう、斎藤」


>でんわご
紬「なんとかなったみたい」

唯「だ、大丈夫? 凄く大きな声がしたけど……」

紬「うん。家は外泊には厳しいの。でもなんとかなりそうだから、唯ちゃんは安心して」

唯「迷惑なら……」

紬「迷惑じゃないから!!」

唯「は、はい」

紬「わかってくれた?」

唯「……ん。あっ、そっか!」

紬「どうしたの?」

唯「な、なんでもないよ」

紬「そう?」

唯「うん!」

唯(夏休みにお誘いを断られちゃったのは、お家の人に駄目って言われたからだったのかな?)

唯(合宿はムギちゃん家の別荘だったから良かったのかな?)

唯(……)

唯(なにはともあれ、嫌われてないってわかってよかったよ……)

唯(うん……)

唯(これで迷うことはなくなった)

唯(きっちりムギちゃんの願いを叶えてあげなきゃ)

唯(ムギちゃんを私の妹にしちゃおう!)

唯「とうちゃーく」

紬「お邪魔しまーす」

唯「誰もいないけどね」

紬「お約束みたいなものだから」

唯「そう?」

紬「ええ」

唯「あっ、待ってて。お茶をいれてあげるから」

紬「うん」



唯「はい、どうぞ」

紬「ありがとう」ゴクゴク

唯「ムギちゃんいい飲みっぷりだね」

紬「それで、何をしよっか?」

唯「今日は、ですね」

紬「うん」

唯「なんと」

紬「なんと?」

唯「ムギちゃんのために夜ご飯をつくあってあげようと思います。おー」

紬「おー」パチパチパチパチ

唯「だからムギちゃんはゲームでもして遊んでてくれる?」

紬「私も手伝いたい!」

唯「だーめ。ムギちゃんはゆっくりしてて」

紬「うーん。それじゃあここから唯ちゃんの様子でも見てようかしら」

唯「退屈じゃない?」

紬「そんなことないよ」

>ゆいりょうりちゅう
唯(お姉ちゃんといったらやっぱり妹の世話をしないと)

唯(私はいつも憂にお世話してもらってるけど、世間一般では逆だよね)

唯(料理をつくあってあげて、お姉ちゃんっぽいことしてあげよう)

唯(そしたらムギちゃんもきっと喜んでくれるはず)

唯(作る料理はシチュー)

唯(まずは野菜の下ごしらえから)

唯(じゃがいも切って、玉葱切って、人参は……皮を剥いたほうがいいのかな?)

唯(一応剥いておこう。ムギちゃんは……)チラ

紬「……」ニコ

唯(///)

>ゆいりょうりご
唯「できたよー」

紬「ホワイトシチューなんだ」

唯「うん。これなら絶対失敗しないと思って」

紬「それじゃあいただきます」パク

唯「いただきまーす」パク

紬「……」

唯「……」

紬「うん。……まぁ、美味しいかな」

唯「ムギちゃん、私も食べてるんだから嘘は言わなくていいよ」

紬「でもでも、食べられないことはないよ」

唯「いいって……どうしてこんなに味が薄くなっちゃったんだろ」

紬「ルーの量が足りなかったとか」

唯「それだよ!」

紬「パッケージの裏にルーの量書いてなかった?」

唯「書いてあったけど、憂はいつも測らずに作ってたから……」

紬「なるほど……シチューのルーはまだあるかしら?」

唯「もうないんだ……」

紬「うーん。ちょっと冷蔵庫の中を見せてもらってもいい?」

唯「いいけど……」

紬「なにかあるかしら……あっ、粉末コンソメがある」

唯「コンソメ?」

紬「ええ、これでなんとかなるわ」

唯「どうするの?」

紬「まずもう一つ小さな鍋を用意して、おかわり用の鍋からシチューをちょっとだけ移して、コンソメを多めに入れて……」

唯「ふむふむ」


紬「あっ、おかわりようの鍋にもコンソメを入れましょ……うん。もう溶けたみたい」

唯「えっと……この小さな鍋はどうするの?」

紬「そのシチューを私と唯ちゃんのシチューに入れてよくかき混ぜるの」

唯「あっ、それは私がやるよ」

紬「そう? じゃあお願い」



唯「できたよ」

紬「それじゃあ食べてみましょ」

唯「うん」パク

紬「どうかしら」パク

唯「うん……。美味しい」

紬「ええ、なんとか美味しく食べられる味になったみたい」

唯「ムギちゃん料理もできたんだね」

紬「お菓子作りをたまにやるぐらいなんだけどね。菫が料理をしてるところをたまに見せてもらうから」

唯「ふぅん。私は憂が料理をつくるところを見てるけどさっぱりだよ」

紬「さぁ、冷めないうちに食べちゃいましょ」

唯「はーい」

>しょくご
唯(うーん。料理でお姉ちゃんアピール作戦は失敗しちゃったよ)

唯(あれじゃあどっちがお姉ちゃんで、どっちが妹かわからないし)

唯(思えば憂にお姉ちゃんらしいことしたことなかったな)

唯(憂ごめんね……)

唯(……)

唯(うん。今は気をとりなおしてお姉ちゃんっぽいことを考えてみよう)

唯(肩もみとか。……これは親孝行だし)

唯(一緒にお風呂に入る。……これは関係ないし)

唯(……相談に乗ってあげるとか?)

唯(うん。これはとってもお姉ちゃんっぽいかもしれない)

唯「ねぇ、ムギちゃん」

紬「なぁに?」

唯「ムギちゃんは悩みとかない?」

紬「悩み?」

唯「うん。私が相談にのってあげるからどーんとぶつけてみてよ」

紬「うーん。昨日まであったんだけど、なくなっちゃった」

唯「えっ」

紬「うん。今の私は何も悩みなんてないよ……あっ」

唯「何かあるの?」

紬「……もうちょっとだけ痩せたいなって」

唯「そんなに太ってるようには見えないけど」

紬「そう?」

唯「うん」

紬「そっかぁ……」

唯「他に悩みはないの?」

紬「うん」

唯「それじゃあ、叶えたい夢とか」

紬「夢?」

唯「そう、夢。私にできることならなんでも叶えてあげるよー」

紬「夢ならたくさんあるよ。今日もたくさんん叶っちゃった」

唯「えっ」

唯(『唯ちゃんの妹になりたい』が叶ったとは思えないし……あっ)

唯(『友達の家に泊りに行きたい』って夢もあったっけ)

紬「こうやって唯ちゃんと一緒にゆっくり食後のお喋りするのも夢だったし」

唯「えっ、これも夢だったの?」

紬「うん。そして、唯ちゃんの手料理食べるのも夢だったの」

唯(そんなことつむぎノートには書いてなかったのに……)

唯「えっと……それって本当に夢?」

紬「うん。そうだよ」

唯「本当に本当?」

紬「うん。どうしてそんなこと聞くの?」

唯「実は見ちゃったんだ。つむぎノート」

紬「えっ」

唯「この前ムギちゃんの家に泊まったときに……」

紬「唯ちゃん、つむぎノートを見ちゃったんだ」

唯「う…うん。ごめんなさい」

紬「ううん、私が迂闊だったの。デスノート見た後だったら、私も絶対同じことするから」

唯(それはどうなんだろ…)

紬「でも、見ちゃったんだ」

唯「うん。ごめんね」

紬「///」

唯「ムギちゃん?」

紬「///」

唯「どうして真っ赤になっちゃったの、ムギちゃん?」

紬「だ、だって……」

唯「えっと……夢をみられて恥ずかしかったのかな」

紬「うん……」

唯「別に恥ずかしがることないのに」

紬「だって……私の気持ちばれちゃったんでしょ」

唯「えっ」

紬「唯ちゃんのこと好きだって、ばれちゃったんでしょ」

唯「ええっ」

紬「ひょっとしてバレてなかった? 私、墓穴ほっちゃった?」

唯「うん。そうかもしれない……」

紬「ちょっと待って、カバンからつむぎノートを出すから」

唯(ムギちゃんのカバン……二重底になってる!?)

紬「ここなんだけど…‥」

唯「憂のところ? えっと……」


『◯憂ちゃんとおしゃべりしてみたい』

『憂ちゃんとお友達になりたい』

『憂ちゃんと一緒にお菓子を作ってみたい』



『憂ちゃんを義妹にしたい』

唯「ん……? 憂を義妹にしたい?」

紬「///」

唯「ムギちゃん、これって」

紬「そ、そのままの意味です」

唯「それじゃあムギちゃんは…」

紬「唯ちゃんのことが好き。結婚したいぐらい」

唯「///」

紬「///」

唯「えっと……だったらなんで私のところには妹になりたいとしか書いてなかったの?」

紬「それは……唯ちゃんのページは破っちゃったから」

唯「えっ」

紬「つむぎノートはね、おまじないなの。夢が叶いますようにって書くんだ」

唯「うん」

紬「でも唯ちゃんについての夢は、自分の力で叶えたいから。おまじないに頼りたくないから。だから破っちゃったの」

唯「……」

紬「『唯ちゃんの妹になりたい』って夢は次のページに書いてあったから残っちゃったんだ」

唯「そうだったんだ……」

紬「実は『唯ちゃんのお姉ちゃんになりたい』とか『唯ちゃんのお母さんになりたい』とも書いてあったんだ」

唯「どうしても私の妹になりたかったわけじゃないんだね」

紬「うん」

唯「そっかそっか……」

紬「ひょっとして唯ちゃん」

唯「うん。どうやったらムギちゃんのお姉ちゃんになれるかって考えて、今日は色々やったんだ」

紬「そだったんだ」

唯「でも良かったよ……やっぱり私の妹は憂だけだし」

紬「それはどうかな」

唯「えっ」

紬「ねぇ、この前日本での同性婚が認められたでしょ」

唯「うん」

紬「ひょっとしたら憂ちゃんと和ちゃんがいつか結婚するかもしれないじゃない」

唯「そうなったらいいね」

紬「そしたら和ちゃんは唯ちゃんの義妹よ」

唯「和ちゃんが私の義妹……。うまく想像できないけど、楽しそうかも」

唯「ところでムギちゃん、私がさっき言ったこと覚えてる?」

紬「えっと……お姉ちゃんになるために色々やったこと?」

唯「もっと前」

紬「それじゃあ、つむぎノートを見ちゃったこと?」

唯「もっともっと前」

紬「なんでも相談に乗るってこと?」

唯「ちょっとだけ後」

紬「……唯ちゃんにできることならなんでも叶えてくれるってこと?」

唯「うん」

紬「唯ちゃん?」

唯「ムギちゃんを憂のお義姉ちゃんにしてあげるよ」

紬「それって……」

唯「ねぇ、ムギちゃん。キスしよっか」

紬「……うん」

チュ

紬「一番の夢が叶っちゃった」

唯「一番だったんだ」

紬「うん。ずっとずっと好きだったから」

唯「て、照れちゃうよ///」

紬「唯ちゃんも私のこと好きだったの?」

唯「うん。だからあのノートを見てちょっとショックを受けたんだ」

紬「唯ちゃんのページは破ってあったから……」

唯「うん」

紬「結局あのノートのおかげで夢が叶っちゃったね」

唯「私があのノートを見つけたのがきっかけだもんね」

紬「ひょっとしたら効果があったのかもしれないね」

唯「えっと……どういうこと?」

紬「デスノートって破っても効果は続くでしょ」

唯「あっ、そういうこと」

紬「うん。あのノートに書いたから唯ちゃんと付き合えたのかも」

唯「それはどうだろう」

紬「どうだろうね」

唯「これからどうしよっか」

紬「ねぇ、唯ちゃん。今から和ちゃんのところに押しかけない?」

唯「えっ?」

紬「未来の義妹さん達に挨拶をしに行かなきゃ」

唯「あっ、私達も憂達も結婚したら、和ちゃんはムギちゃんの義妹にもなるんだ」

紬「ええ」

唯「でも、迷惑じゃないかな?」

紬「遠慮しちゃ駄目。だって、家族なんだから」

唯「そうだね」

紬「それじゃあ行きましょ」

唯「うん。いこっ。あっ、ちょっと待って」

紬「どうしたの」

唯「手、つないでいこっ!」

紬「うん!」


おしまいっ!