墓地
唯「お墓が一杯あるね」
律「そりゃ、墓場だからな」
憂「とみえちゃん、お墓は何処にあるの?」
とみ「こっちです」
紬「とみえちゃん、寒くない?」
とみ「今は大丈夫です」
とみ「ここです」
和「立派はお墓ね」
姫子「手入れも良くされてるね」
律「良く来るのか?」
とみ「月命日には必ず」
純「そうなんだ」
憂「とみえちゃん、気にせず祈ってあげてね」
とみ「はい」
とみ「私の姿が見えてますか?」
とみ「貴方と初めて出会った年齢に少しの間だけ若返りました」
律「えっ?若返った?」
とみ「見えますか?私達の可愛い孫娘の姿が」
澪「孫娘って…何を言ってるんだ?」
とみ「私が14の時にアメリカ兵に絡まれていた時、助けてくれましたね」
和「何を言ってるの?訳がわからないわよ…」
とみ「ほらっ、化粧も教えて貰って服だって可愛い服を選んで貰いました」
梓「あの、どういう事なの?」
とみ「私はずっと1人でした…」
憂「とみえちゃん?」
とみ「貴方が死んでからずっと1人でした…」
姫子「とみえちゃん、説明して欲しいな」
とみ「このお墓で眠ってる人は…」
とみ「私の主人です」
とみ「私は一文字とみえではなく」
とみ「一文字とみです」
律「いやいや、信じられないって」
とみ「サンタクロースが私を若返らせてくれたんです」
とみ「2日間だけ…」
とみ「私は昔、遊べなかった…お洒落もしなかったから」
純「何でしなかったの?」
とみ「正確には出来なかったんです」
梓「それは何故?」
とみ「戦争だったから」
姫子「あっ…」
とみ「だから、サンタさんが願いを叶えてくれた」
憂「まさかそんな…」
和「そんな事有り得るの…」
紬「み、みんな見て!」
律「おいおい、マジかよ…」
澪「サンタさんだ…」
唯「トナカイが空を飛んでる…」
サンタ「こんにちは」
梓「こ、こんにちは」
純「サンタクロースなんて本当に居たんだ…」
姫子「びっくりなんてもんじゃないよ」
サンタ「思い切り遊んでくれてありがとうございました」
憂「い、いえそんな」
とみ「ありがとうサンタさん」
サンタ「楽しめましたか?」
とみ「はい、思い切り楽しめました」
サンタ「それは良かった」
とみ「でも、一つだけ心残りがあるかな…」
サンタ「心残り?」
とみ「今の姿をあの人に見て貰いたかった…」
サンタ「…」
とみ「少しだけでも抱き締めて欲しかった…」
唯「とみえちゃん…」
サンタ「ずっと見ていたよ」
とみ「えっ?」
サンタ「まだ、わからないか?」ファサッ
とみ「あっ…あっ…」ぽろぽろ
律「ま、まさか」
澪「旦那さんなのか?」
とみ旦那「久しぶりだねとみ」
とみ「あなた…」
とみ旦那「そうだよ」
とみ「うわぁぁん」
とみ旦那「よしよし、今まで良く1人で頑張ったね」
とみ旦那「寂しい思いをさせてすまなかった」
とみ「私ね私ね再婚しなかったよ」
とみ「貴方が好きだから貴方しか居ないから」
とみ「貴方しか見えなかったから…」
とみ「それからそれから…」
とみ「あれ?可笑しいな…話したい事も伝えたい事も沢山あったのに…」
とみ「何でだろうね…胸が一杯だ…」
とみ旦那「とみ、こういう時はたった一言で良いんだよ」
とみ「えっ…」
愛してるよ
とみ「わ、私も」
世界中の誰よりも
貴方の事を
愛しています
とみ旦那「ありがとうとみ」
とみ「うん…」ぎゅっ
とみ旦那「時間だ、私は行かないと」
とみ「嫌!行かないで」
とみ「もう、私を1人にしないで」
とみ旦那「君は1人じゃないよ」
とみ旦那「君にはまだ役目が残っている」
とみ「役目…?」
とみ旦那「君にはこんなに可愛い孫娘が居る」
とみ「はい」ぐすっ
とみ旦那「この子達も何れ結婚をして子を産む」
とみ旦那「見守ってあげて欲しい」
とみ旦那「心優しき少女達を」
とみ「はい、あなた」
とみ旦那「皆さん本当にありがとう」
とみ旦那「その優しき心、忘れないで下さい」
律「はい!わかりました」
澪「私達は必ず幸せになります」
唯「とみお婆ちゃんに寂しい思いをさせない事も誓います」
梓「安心して下さい」
憂「私達は貴方の孫娘でもあります」
姫子「私達がとみお婆ちゃんを支えて行きます」
和「必ず必ず幸せになります」
純「私、必ずとみお婆ちゃんみたいな女性になります」
紬「見守っていて下さい」
とみ旦那「皆さん、本当にありがとう」
とみ「あなた…」
とみ旦那「じゃあ、とみ」
とみ旦那「愛してるよ」
とみ「私も愛してます」
とみ旦那「さようなら、とみ」スゥッ
律「消えた…」
澪「夢みたいだったけど、現実なんだな」
唯「とみお婆ちゃん、良かったね」
とみ「うん、今とっても幸せだよ」
姫子「私もメイク教えた甲斐があったな」
紬「可愛い服選んで良かったわ〜」
梓「何て言うか…いいなって思いました」
純「私も思った」
和「とみお婆ちゃんは素敵な恋をしてたのね」
憂「私もいつかは出来るのかな」
純「出来るよ、きっと」
唯「純ちゃん、寂しくないの?」
純「そりゃ、寂しいですけど…仕方ないですよ」
姫子「それじゃ、帰りますか」
桜ヶ丘
律「また明日な」
澪「バイバイ」
梓「さようなら」
姫子「またね」
紬「気をつけて帰るのよ〜」
和「じゃあね」
唯「皆、またね」
憂「お気をつけて」
純「…」
憂「純ちゃん?」
純「あっ…さようなら」
とみ「…」
純「残念だったな…あんな旦那さん居たら敵わないや」
純「…」とぼとぼ
とみ「純お姉ちゃーん」
純「あ、あれ?どうしたの?」
チュッ
純「へっ?あの…」
とみ「唇は将来の恋人とね」ニコッ
純「この、マセガキー」
とみ「お婆ちゃんだもーん」
純「待てー」
数日後
とみ「すっかり、元の生活に戻りましたよ」
とみ「今夜は何にしましょうか?」
とみ「簡単にお漬け物とお茶漬けにしましょうかねぇ」
とみ「お漬け物を切らしたから買ってきましょうかねぇ」
ピンポーン
とみ「あなた、お客様のようですよ」
とみ「ちょっと出て来ますよ」
とみ「はーい」
律唯澪紬梓憂純和姫子「お婆ちゃーん」
あなた
献立変更しますよ
今夜は鍋にしましょう
あなたも可愛い孫娘達と一緒に召し上がって下さいな
ねっ?あなた
おしまい
最終更新:2014年01月01日 20:48