憂狐「梓ちゃん、具合どう?」


梓猫「うん、皆のお陰で殆ど治ったよ」


憂狐「良かった」


梓猫「憂は唯先輩の妹なんだよね」


憂狐「うん、そうだよ」


梓猫「優しいお姉ちゃんで良かったね」


憂狐「うん、梓ちゃんの仲間はどんな猫なの?」


梓猫「優しいよ凄く」


憂狐「会いたい?」


梓猫「そうだね、足が完全に治ったら会いたいな」


憂狐「その時は私やお姉ちゃん達も行って良い?」



梓猫「勿論だよ憂」



憂狐「楽しみだな」


梓猫「私、皆に出会えて良かったよ」


憂狐「私もだよ梓ちゃん」


数日後


梓猫「ほっ!はっ!」ピョンピョン


梓猫「痛くない…治った!」


梓猫「遂に治ったよ」


梓猫「これで、狩りも出来るし皆に恩返しが出来るよ」


梓猫「唯先輩、治りました」


唯狐「そっかぁ、良かったね」


梓猫「はい、これで皆さんに恩返し出来ますよ」


唯狐「ありがとう…あ…ず…にゃ…ん…」どさっ


梓猫「唯先輩?唯先輩?」ゆさゆさ


唯狐「…」


梓猫「唯先輩ってば!」


梓猫「こ、これは…」


その時、梓は全てを悟った
唯達は自分達の食べる物を削ってまで怪我をした自分の為に食べ物を運んでくれていた事を
本来、狐は狩りが上手くない 野生の狐の死因の殆どは餓死である


梓猫「そ、そんな…」


梓猫「ほ、他の皆は」


律狐「…」


澪狐「…」


憂狐「…」


梓猫「そ、そんな…私のせいで」


梓猫「取り敢えず、巣穴に運ばなきゃ」


梓猫「…」


梓猫「私がやらなきゃ!」


梓猫「待ってて下さい!必ず獲物を捕まえて来ます」




梓猫「何でもいい何でもいいから大きな獲物を!」


梓猫「鹿だ…」


梓猫「あいつを捕まえたら、みんな助かる…」


梓は冷静さを完全に欠いていた
皆を助けたい気持ちが梓を狂わせた


梓猫「行くよ!」


梓猫「ふしゃー」


鹿「!」ドカッ


梓猫「にゃっ」


鹿「ピィッ!」ダッ


梓猫「や、やられる…」


危ない!


梓猫「わっ!」


紬猫「梓ちゃん、探したわよ!」


梓猫「ム、ムギ先輩…」


紬猫「あんな大きな獲物に勝てる訳ないでしょ!」


梓猫「でも、やらないと唯先輩達が!」


紬猫「唯先輩?詳しく聞かせて」


梓猫「実は…」


紬猫「そんな事が…」


梓猫「だから、あいつをあいつを!」


紬猫「落ち着きなさい!」


梓猫「うっ…」


紬猫「冷静になりなさい!」


紬猫「体の小さい私達が鹿なんて仕留められる訳ないでしょ!」



和狼「随分と無茶してるのね?」


梓猫「和先輩!」


和狼「せっかく、唯達に助けて貰った命を粗末にするとは感心出来ないわね」


梓猫「実は…」


和狼「何ですって?唯達が…」


梓猫「私のせいで皆が…」


和狼「手を貸すわ」


梓猫「えっ?」


和狼「あの子達のピンチなんだから」


和狼「ワオーン」


純狼「また狩りですか?」


姫子狼「さっき食べたばかりよ?」


エリ狼「お腹一杯なんだけど…」


和狼「皆、聞いて私達の親友がピンチなの」


アカネ狼「何ですって?」


和狼「助けたいの、力を貸して欲しい」


姫子狼「唯達のピンチとあらばやらない訳ないよね」


エリ狼「私達の命の恩狐だからね」


アカネ狼「あいつを仕留めるの?」


いちご狼「早くやろう」


和狼「あなた達も力を貸して」


梓猫「当然です!狩ってやるです!」


紬猫「私もよ!」


和狼「攻撃開始!」






梓猫「いたたた…」


紬猫「大丈夫?」


梓猫「はい、何とか」


和狼「早く巣穴に運ぶわよ」


梓猫「和先輩」


和狼「何よ?」


梓猫「命の恩狐ってどういう事なんですか?」


和狼「私も唯達に命を救われたのよ」


和狼「まだ、私が群れを作る前」


和狼「一匹狼だった頃の話よ」



一匹狼時代




和狼「くっ…なかなか群れに入れない」


和狼「怪我もしたし、これまでかもしれないわね…」


和狼「あっけないものね…」


唯狐「怪我してるの?」


和狼「だから何よ?殺すなら早く殺しなさい」


唯狐「みんなー怪我した狼さんが居るよ」


律狐「何だ?何だ?怪我した狼だって?」


澪狐「大丈夫か?」


憂狐「私達の巣穴に行きましょう」


和狼「殺さないの?」


唯狐「困った時はお互い様だよ」ニコッ


和狼「馬鹿じゃないの?」


律狐「大体、同じ肉食動物なんだから美味くないだろ」


澪狐「私達は余計な争いをしたくないんだ」


憂狐「食べ物もあるから遠慮せずに」


和狼「…」




和狼「可笑しな話よね?あのライオンでも飢餓状態になれば同じ肉食動物のチーターを食べるのよ?」



和狼「野生動物なんだから、相手が弱ってようが殺す時は殺す」


和狼「食べる時は食べるものよ」


和狼「それが当然、でもあの子達は…」



紬猫「優しいけど、野生動物としては致命的…」


和狼「そして、怪我が癒えたら私は群れを作った」


和狼「そうしたら、群れの狼みんなが唯達に助けられた狼だったのよ」



梓猫「皆ですか?」


紬猫「一体、何れだけの動物を助けたのかしら…」




巣穴


梓猫「唯先輩、ほらっお肉ですよ」


唯狐「あ、あずにゃん…」


和狼「ほらっ憂」


憂狐「和さん…」


純狼「澪先輩、お肉ですよ」


澪狐「ありがとう…」


紬猫「はい、どうぞ」


律狐「美味い…」


和狼「どんどん食べなさい」


唯狐「ありがとう和ちゃん…」


和狼「今回ばかりは季節が悪かったわね」


和狼「もう、無茶したら駄目よ?」


唯狐「うん」


和狼「それと、礼なら梓ちゃんに言いなさい」


和狼「あの時、猫の鳴き声が聞こえなかったら」


和狼「ずっと気付かなかったもの」



純狼「梓はたった一匹で鹿に向かって行ったんです」


純狼「先輩達を助ける為に」



澪狐「梓、無茶したら駄目じゃないか…」


梓猫「それは澪先輩だって同じじゃないですか…」ぐすっ


澪狐「ははっ、そうだな」


律狐「その子は?」


紬猫「梓ちゃんの仲間で紬です」


紬猫「ムギって呼んで下さい」


唯狐「ムギちゃん宜しくね」



和狼「じゃあ、私は群れを守らないといけないから帰るわね 」


唯狐「うん、ありがとう和ちゃん」


和狼「また、群れに遊びに来てね」


紬猫「梓ちゃん、私達も行きましょう」


梓猫「…」


紬猫「梓ちゃん?」


梓猫「離れたくありません」



紬猫「梓ちゃん…」


梓猫「ずっとここに居たいです」


紬猫「梓ちゃん、我が儘言ったら駄目」


紬猫「っていうのが夢だったの~」


梓猫「ムギ先輩、良いんですか?」


紬猫「私もみんなと暮らしたいわ~」


梓猫「律先輩、駄目ですか?」


律狐「全く、狭い巣穴なのにな」


唯狐「後、2匹入れるかな?」


澪狐「広げるか」


憂狐「そうですね」


梓猫「あ、あの」


律狐「さて、腹も膨れたしやるか」


澪狐「梓、ムギ手伝ってくれるかな?」


唯狐「早速やるよ!あずにゃん、ムギちゃん」


憂狐「梓ちゃん、忙しくなるよ」ニコッ


梓猫「やってやるです!」


その後



唯狐「えへへ~あずにゃ~ん」ぎゅっ


梓猫「離れて下さい///」


紬猫「木の実を拾って来たわよ~」


澪狐「木の実が美味しいって知らなかったよ」


律狐「本当だよな~」


唯狐「あずにゃんとムギちゃんが来てくれてから狩りの成功率が上がったよね!」


憂狐「猫さんはやっぱり狩りが上手いんだよ」


唯狐「これからも、ずっと皆で力を合わせて生きて行こうね」ニコッ


おしまい



最終更新:2014年01月15日 00:52