梓「……それで、提案はお母さんからでしたけど今年の澪先輩の誕生日は大学受験のセンター当日ということもあって」

梓「澪先輩に激励の意味も強く込めて、前日に渡すことにしたんです」

澪「梓……」

梓「澪先輩がその、センター試験に挑むのに私の作ったマフラーを身につけていくかは分からないですけど……」

梓「と、とにかく明日は頑張ってください! 私はいつでも澪先輩と一緒ですから!」

澪「…………」

梓「では帰りますね、あまり長居してると明日に響いちゃいますから……」スクッ

澪「待って、梓」

梓「え?」

ギュッ

梓(ん……柔らかくってあったかい……私の小さい体じゃ澪先輩の腕の中に収まっちゃう……)

梓(って、私澪先輩に抱きしめられてる!?)

梓「み、澪先輩!?」

澪「ありがとう、梓。本当はすごく不安だった」

梓「澪先輩……?」

澪「ここ最近、毎日ずっと勉強漬けで……部室では律や唯に勉強教えたりしながら」

澪「自分が覚える分をひたすら勉強してて……それでも、どうしても不安は消えなかった」

澪「もしみんなが合格出来て、私だけ合格出来なかったらって思うと……」

梓「バ、バカなこと言わないで下さい! いつも成績優秀な澪先輩が合格出来なかったら全員不合格になっちゃいます!」

澪「梓ったら……とにかく、センター試験が近付くに連れて不安で」

澪「今日なんてみんなの前では平静を装ってたけど、ほんとに不安でたまらなかったんだ」

梓「澪先輩……」

澪「でも……でもさ」

梓「はい」

澪「梓が一緒に、そばにいてくれるって言うなら」

澪「私はきっと怖がらずに、不安に押し潰されずに頑張れるって……そう思える」

澪「だからありがとう、梓。一日早く最高の誕生日プレゼント貰っちゃったな」

梓「澪先輩!」ギュッ


・・・


澪「送っていかなくて大丈夫か?」

梓「はい、澪先輩からこれ以上勉強時間取っちゃう訳にはいかないですし」

澪「ん…分かったよ」

梓「では明日頑張って下さい、澪先輩!」

澪「梓」

梓「はい?」

チュッ

梓「……えっ?」

澪「今はこれぐらいしか出来ないけど……勇気付けてくれたお礼だ」

梓「み、澪先輩///」

澪「明日は頑張ってくるからな、梓」

梓「は、はい!」


・・・


梓(上手く勇気付けられるかどうか不安だったけど……)

梓(最後に見た澪先輩の表情、明るくて力強さも感じたし、上手くいってよかったあ)

梓「ううー……けどやっぱり寒いな、この季節は」

梓(あ、でもさっき澪先輩からほっぺたにキスしてもらったからかな、顔は何だかあったかい…///)

梓(頑張ってくださいね、澪先輩!)


・・・


律「うおっほん、ではみんな無事全員が大学合格したこと、そしてだいぶ遅れてしまったが…」

紬「澪ちゃんの18歳記念も祝って!」

唯律紬梓「かんぱーい!」

梓「ですっ!」

澪「えっとその…わざわざ私の誕生日記念も兼ねてくれてありがとうな」

律「まあ誕生日当日はセンター試験もあってゴタゴタしてたしな」

紬「合否もまだ分からない状態じゃ澪ちゃんも気になって祝われる気分にはなれないみたいだったし」

唯「けど無事にみんな合格出来たし、やったね!」

梓「澪先輩とムギ先輩はまず大丈夫として唯先輩も本番には強いから何とかなるとは思っていましたけど、まさか…」チラッ

律「んー? 何が言いたいのかな梓くん?」ジロッ

梓「えっと、勝負は時の運と言うか一か八かのまぐれ勝ちとも言えますし、予想外と考えると晴天の霹靂とも…」

律「なにお! ゆるさーん!」バッ

梓「きゃあー!」

澪「こら、お茶がこぼれるからもどったもどった」グイッ

律「うぬー」

澪「なかなか勉強に集中するまで大変だったけど律も頑張ったんだ、今回ばかりは褒めてやりなよ梓」

梓「む、澪先輩がそう言うなら……律先輩も今回はお見事でした」

律「うむ、よろしい」

紬「りっちゃんも今回は男を見せたわ、うん!」

律「そう今回は男を……って、わたしゃ女だ!」コツン

紬「うふふ、ごめんなさいっ」

唯「りっちゃんにツッコミを入れてもらってご満月だね、ムギちゃん」

梓「唯先輩、それをいうならご満月じゃなくご満悦ですよ」

唯「はうっ! 満月だと思ってたよ」

澪「ふふっ」


・・・


澪「いや、今日はまた騒いだな…」

梓「先輩達全員が揃って無事合格したとはいえ、あまりはめを外しすぎないようにしていただきたいです」

澪「勝って兜の緒を締めよ、という所だな……気をつけるよ」

梓「いえっ、今のは唯先輩や律先輩に向けてのもので、その」

澪「ともあれ私が無事に合格出来たのも、梓の応援に加え前日に貰った梓のマフラーが私に力を与えてくれたから…」

澪「改めて礼を言わせてくれ、本当にありがとうな」

梓「言い過ぎですよ、全ては澪先輩の努力が実った結果です」

澪「ありがとう、梓にそう言ってもらえると嬉しいよ」ナデナデ

梓「んっ…/// そ、それで今日はどうして家に呼んでくれたんですか?」

澪「ああ、梓にこれを」スッ

梓「え、これってマフラー……?」

澪「誕生日プレゼントのお返し、もちろん私の手編みだ」

梓「ええっ! 澪先輩に作っていただいたマフラーだなんて……感激ですっ」

澪「裁縫とかはそこそこ出来る方だから上手く作れたとは思うんだけど、どうかな?」

梓「はい、とても綺麗に作られていて、とってもあったかいです!」

澪「よかった……受け取ってくれるかな?」

梓「もちろんです、ありがとうございますっ!」ダキッ

澪「わっ、梓喜びすぎだぞ」

梓「す、すいません、ちょっとはしゃぎすぎちゃって」パッ

澪「ふふっ、可愛いからいいけどさ」

梓「///」

澪「来年、受験の前になったら色々と大変で辛い時もあると思うけどその時はこれを見て思い出してほしい」

澪「私はいつでも梓と一緒にいるから……自惚れかもしれないけど、でも」

梓「そんなことないです澪先輩、なら私からも」

澪「ん?」

梓「大学に行って、色々と大変なこともあると思いますけど」

梓「私はいつでも澪先輩と一緒にいますから……忘れないでくださいね?」

澪「梓……うん、もちろんだ」

ギュッ

梓「んっ……澪先輩から抱きしめてもらえるの、これで二度目です」

澪「いやかな?」

梓「いいえ、すごく嬉しいです」ギュッ

澪「梓……」スッ

梓「あっ、待ってください」

澪「あ……ごめん、流石に嫌だった?」シュン

梓「いいえ、そうではなくて」

澪「?」

梓「キスするなら……口に、してほしいです……///」

澪「えっ!?」

梓「ダメですか?」

澪「ううん、梓がいいっていうなら……」

梓「澪先輩……」

澪「じゃあ、梓……」スッ

チュッ

澪「ん……」

梓「はぁ……澪先輩」

澪「私、ファーストキスだったけど……上手く出来たかな」

梓「私も初めてだからよくは分からないですけど、お上手ですきっと」

澪「そ、そうかな……けど」

梓「?」

澪「初めての相手が、梓でよかったって……そう思うよ」

梓「私もです、澪先輩」

澪「ん……好きだよ、梓」

梓「私も大好きです、澪先輩……」

チュッ


おしまい!




最終更新:2014年01月15日 22:26