みんなが帰った後の澪の部屋で酔いつぶれた澪の様子を見つつ、私は部屋の片付けをしていた。
(寒くないかな、一応毛布かけとくか)

勝手知ったる澪の部屋。

毛布をベッドの上から引っ張り出して、誕生日を迎えて1時間もしないうちに潰れて床で寝る泣き上戸に(いや、怒りながら泣くやつって泣き上戸でいいのかな?わからん)毛布をかけてやった。

エアコンもついてるし(28℃にしてやった)
しばらくはみんなが散らかしてった(とはいってもみんな帰り際にお菓子のゴミとかひとつにまとめてくれてるから楽。唯の近く以外は)ゴミを集めてゴミ袋に入れたり、空きカンをまとめたりしてた。

「まぁ、これくらい片付けばいいでしょ。あとはお前がやれ」デコピン

ビシッ

「んぎっ」

一声鳴いたけど、澪の顔はちょっと歪んだあとにまた元に戻った。
なんだよ、つまらんないの。

澪の顔の横辺りに腰を下ろして、缶の1/4とか1/3とか残ってるやつをチビチビと飲みながら、
私は澪の誕生日ってやつについて考えていた。

澪が生まれた時、私は既に生まれていて(なにせ8月生まれだから)、その時は私は澪が生まれたことなんて知らなかった。
もちろん、澪だって私なんか知らなかった。(知ってたら怖い。澪のことだから「運命☆」とか言いそう。ふはは)
小学生4年生までこの世界に秋山澪ってやつがいることなんて知らずに生きてきた。
生きてきたのになぁ。

不思議だよ。
存在すら知らなかったのにこんなに今は大切になってる。
もう、失えない。
不思議だよ。

たとえば、この大切さ、は
澪が他の人より可愛いから一緒に居ると有利、とかそんな気持ちから来てるんじゃないのかしらん、と
悩んだことも私には確かにあった。
中学2年の頃だ。(テラ思春期)
澪と居ると、自然と人が視線を向ける。
自分がはしゃいだり、意見を授業中に言う時ぐらいしか他人の視線を集めたことがなかった私はいささかびっくりした。
(なにこの子、存在してるだけで注目されるのかよ!?)みたいな。
そんな風に人の目を集められる澪と一緒に居るワテクシちょーすげ!と頭がお花畑状態になったこともある。
はずかしや、はずかしい黒歴史や。

でも、だんだんとそういうの(澪が人から注目されるの)って小さいコミュニティーだから起こり得たことなんだなって私は思うようになっていった。
高校に入ると、澪だってもちろん人目を惹くことは変わりがなかったけど(まぁ、異性からか同性からかという変化はあった)
でも、澪と同じくらい可愛い子とか、澪とはまた違った可愛いさを持ってたりそれこそ美人な感じな人が私の周りには多くなった。


可愛いとか人目を惹くとか、そういう理由で澪といるんだったら、私はもっと別のやつと居てもいいってことになる。

でも、それでも私は、澪といた。
澪がよかった。
澪の可愛さがよかった。
一緒にいたかった。
たまにぶんなぐられて頭は痛かった。

高校2年のあの頃の私は中学2年の私に、どうやってこの頃のことを説明できるだろうか。

凄くシックリきている気持ちは胸の中にあるんだけど、私はまだこの気持ちを言葉にするのが難しい。
(言葉が見つからないってか、なんというかそういう難しさではなくて、立場的に)

だから、こうやって澪が寝ててもその横で何もできずに残り酒を呑んで気持ちとか時間を持て余すしかない。

今は澪を私だけが、見れてる。
どうかこのまま、あと少しだけこのままで。
チクタクとなる時計は間も無く午前3時を誘うとしてる。

なんで私だけがこんなに風にモヤモヤしないといけないんだ。
そう思うと途端にすぐ横の寝顔がいじらしくなって、私はもう一発、前が寝息の度に揺れる髪がおでこにデコピンをかましてやった。(ビシッ)


「んがっ」


(豚っぱなかよ......!!!)

澪の豚の鳴き声なんて初めて聴くからたまらず吹き出してゲラゲラと笑ってしまったその笑い声で目を覚ました澪にさぁ、説明してやろう。
かけられた毛布、片付いた部屋の中、地味に痛いおでこの理由を。

でも、この胸の中の気持ちはもうとょっとだけ、このままにしておこうと思う。
もうちょっとだけこの気持ちは、私の独り言のままだ。

おわり