憂「うーん……晩ご飯何にしようかなあ……」
わたしは今、家の近くにあるスーパーにいます。
部活に行っているお姉ちゃんよりも少し先に帰って、毎日夕飯の準備をしています。受験が終わったお姉ちゃんたちはもう授業がないので、部活のためだけに学校に行っています。部活といっても、ライブとかはないそうなのでずっとおしゃべりしているそうです。
軽音部のみんな、本当に楽しそうだなあ……。
憂「肉じゃがは……一週間前に作ったっけ」
合格発表からもう一週間と少し経ちました。この調子だとあっという間に卒業式を迎えそうです。お姉ちゃんの新しいタイツを買っておかないと。
長かった受験勉強でまだ疲れてるかもしれないので、いっぱい食べて体力をつけてもらわなくちゃ!
憂「そうだ。カレーにしよっと!」
カレーに含まれているスパイスにはいろんな効能があって、冷え性や食欲増進にいいとテレビで言ってました。お姉ちゃんにはカレーを食べて元気になってもらわないと!
やる気を胸に中辛のルーを選びました。お姉ちゃんは辛口のカレーが苦手です。
憂「ニンジン、ジャガイモは家にあったからあとはお肉とタマネギかな」
あっ、朝ご飯の牛乳も買わないと! うっかりうっかり。
必要なものはぜんぶカゴに揃えたはずです。会計を済ますと、寄り道せずにまっすぐに家に帰ります。早く帰って晩ご飯の支度をしないと、お姉ちゃんが帰ってくるのに間に合いません。
家に着く直前に、少しおばあちゃんと話をしてから家に帰りました。
今日も夕焼けがとてもきれいです。
さて、家に帰ってきました。エプロンに着替えてっと……。
晩ご飯の準備です! 完成図を想像しながらの料理はとても楽しいです。
中学の頃から、お姉ちゃんが「おいしい〜!」と笑顔で言ってくれるのが一番うれしいです。
一年間、いっぱいがんばったお姉ちゃんのためにわたしもがんばらなくちゃ!
♯
憂「ふう……」
あとは弱火でルーが完全に溶けるのを待つだけです。一息つくと、玄関から鍵が開く音が聞こえてきました。お姉ちゃんが帰ってきたみたいです。
足音でまっすぐこちらに向かっているのがわかりました。玄関に続いている真ん中のドアが開き、お姉ちゃんが帰ってきました。
憂「あっ、お姉ちゃん。おかえり!」
唯「ただいま、憂!」
お姉ちゃんは今日もにこにこ笑って帰ってきてくれました。その顔を見ると、わたしまでにこにこしてしまいます。笑顔になると、心まで温かくなります。
……あれ? お姉ちゃんがいつもよりにっこり笑顔です。何かあったのかな?
憂「何かいいことでもあったの?」
唯「うん。今日はいい日だよ! だってね……」
憂「えっ?」
唯「ふふふ〜♪」
お姉ちゃんは笑顔のままわたしに近寄ってきました。どうしたのかな……。
そんなことを思っていると、両腕を広げたお姉ちゃんがわたしにぎゅっと抱きつきました。
唯「憂っ!」
憂「お、お姉ちゃん……?」
抱きついてくれるのはよくあることですけど、こんな風にいきなり抱きつかれることは珍しかったので少し驚きました。すると、お姉ちゃんがゆっくりと言いました。
唯「憂、お誕生日おめでとう」
ああ……。
やっと笑顔の理由がわかりました。わたしも目を閉じてお姉ちゃんを抱きしめました。
憂「ありがとう、お姉ちゃん……」
唯「ケーキも買ってきたんだ。あとで一緒に食べよう!」
憂「うん!」
いつも抱きしめてくれるお姉ちゃんはとても温かいです。そんなお姉ちゃんを見ていると、つい甘えたくなります。顔を上げると、目が会いました。わたしたちは二人とも笑い合いました。
お姉ちゃんが笑顔の日は、わたしにとってもいい一日です。
ありがとう、お姉ちゃん!
〜完〜
憂ちゃんお誕生日おめでとうございます。
最終更新:2014年02月22日 08:31