♯
少し調子に乗って食べ過ぎてしまった。また体重が増えてしまう……。
いやいや、旅行が終わってからがんばって仕事をして動けばいいんだ。そうすれば無理なくダイエットできる……多分。
大広間の向こうを見ると、ステージがあった。あんなところで何があるのかな。
唯「あれカラオケかな?」
律「おっ、本当だ」
菖「使っていいか訊いてみよっか」
すごい行動力の早さだ。菖はあっという間に通りすがりの女中さんに声をかけて質問した。
「はい、21時までならご利用いただけますよ」
菖「ありがとうございます。じゃあ、歌ってみようかなー!」
私たちはステージの近くの席に移動した。
さわ子さんは酔っ払って疲れたと言って先に部屋に戻って行った。律が「年だな」と言いかけたのを制しておいた。幽霊より怖いものは見たくない。
唯「なに歌おうかな〜♪」
菖「おおっ! これにしよっかな〜」
BGMが鳴り始め、カラオケ大会が始まった。みんなが歌って盛り上がりだした。
開始からしばらくの間、私はコップを片手にみんなの歌を聞いていた。幽霊騒動の後だからか、みんなの笑顔がはじけていた。やっぱりこういう時の方が落ち着いていられる。
恵「とっても楽しい人たちと一緒なのね」
澪「はい。私も頼りにしています」
私がそう言うと、曽我部さんはにっこりと頷いてくれた。
律「おい、澪も聞いてばっかいないで何か歌えよ」
澪「え?」
律がマイクを私に向けた。今のところ曽我部さんも含め、私以外の全員が歌っている。
目立ってしまうのがイヤだったので、小さくなっていたつもりだったけど、ついに見つかってしまった。なかなかマイクの方に目を向けられないでいた。
すると、唯が私の背中を押した。
唯「はい、立って立って〜!」
澪「ちょっ」
律「はい、マイク持って」
反論する間もなくマイクを握らされてしまい、そのままステージに上がってしまった。恥ずかしさと緊張とで体温が上昇するのがわかる。
みんなが私を見ている。唯は今までギターを弾きながらこんな舞台で歌っていたのか……と、つい感心してしまう。
さて、もう逃げられなくなってしまった。
澪「あ、えーっと……」
仕方ない。どの曲にしようかな。みんなが知っているような曲を……。
となると、小学校で歌うような合唱曲かな。
……決めた。私が選曲したのは『翼をください』。
BGMが始まってしまった。深呼吸する暇もない。
それに、この場所に立つと喉が渇いてしょうがない。マイクを握る手が少し震える。私は勇気を振り絞って歌い始めた。
いざ歌い出すと、歌詞を追うので精一杯で周りの目は気にならなかった。気になることがあるとすれば、耳が燃えるように熱いことくらいだ。
できるだけ一生懸命に歌うようにした。
間奏に入ったので、みんなの顔を見る余裕ができた。みんなは笑って見ていてくれた。
私も少し微笑んでいると、曽我部さんに目が留まった。口をぽかんと開けてぼうっとしている。頬も赤い。胸の辺りで手を組んで私を見つめている。何かあったのかな……?
モニターに次の歌詞が表示されたので、私はまた集中し直した。
『天の湯』
ここが旅行最後の温泉。
綺麗な夜空を一望できる壮大な露天風呂だ。都会と違って、大きい星から小さく星まで幾多の星がきらきらと輝いている。
律「はあー……これで最後か〜……」
梓「早いですね」
真っ暗な空に星がきらめいている。最後の温泉にふさわしい壮大な景色と解放感だ。遠くからはかすかに波の音も聞こえ、目を瞑っても安らぎを感じる。
紬「澪ちゃんの歌上手だったね!」
唯「うん! これからは澪ちゃんにもボーカルやってもらわないと!」
澪「そ、それだけはイヤだ!」
律「どうしてだよ〜?」
梓「もったいないですよ!」
菖「私、澪ちゃんの歌もっと聞きたいよ!」
幸「私も聞きたいな。ボーカルが二人だと、幅が広がるよ」
澪「うっ……」
カラオケ大会が終わってから、ずっとみんなからやけにべた褒めされている。
恥ずかしいので歌いたくないという気持ちは今でも変わらない。
ただ、そういった変化を求める気持ちがまったくないわけではなかった。
澪「まあ、演奏を録音する時にでも考えるよ……」
菖「絶対に送ってね!」
幸「楽しみにしてるから」
なんだかこの旅行の最中に大変なことになってしまった。帰ってからもいろいろと仕事以外にもやることが多くなりそうだ。気を引き締めないといけない。
晶「なあ……ちょっといいか?」
澪「ん?」
なぜか、晶が真剣な表情をしていた。私は背筋を伸ばしてから座り直した。
晶「探偵って依頼来なかったら厳しいだろ?」
澪「う、うん……。まあ、私たちの事務所がまさにそうだから……」
晶「やりがいはあるのか?」
澪「うん、あるよ」
晶「…………」
晶「…………」
これは自信を持って言える。やりがいがなければ今、こんな風に楽しく旅行はできなかったと思う。
これからもみんなでがんばっていくつもりだ。
澪「もし事件が解決できると、私もうれしい。そうやってできたつながりの一つが『ティータイム』だから」
晶「……私たちもオファーがなかったら無職となんら変わらない。それは今でも不安だ」
澪「うん……」
晶「けど、同じようにがんばってるお前たちを見てると元気が出てきたよ」
澪「そっか、よかったよ……」
私たちもプロを目指す恩那組の三人の話を聞いて良い刺激を受けた。懸命に前を向いて生きるその姿は尊敬できる。私たちも負けていられない。
晶「だからがんばろうな。互いに」
澪「うん、お互いに」
晶が拳を突き出してきた。私は笑顔でそれに答え、拳を突き合わせると、晶がにっと笑った。
この旅行は一生の思い出になるに違いない。
私はまた夜空を眺めて一人静かに微笑んだ。
♯
菖「じゃあ、明日の朝ご飯一緒に食べようね〜!」
紬「うん!」
唯「じゃあおやすみ〜」
梓「おやすみなさい」
幸「おやすみ」
晶「また明日な」
澪律「おやすみ」
あとは寝て、朝ご飯を食べて帰るだけだ。そう思うと、やはり寂しい気持ちになった。
唯「旅行、明日で終わりだね」
律「明後日からはまた仕事だ」
梓「なんだか……高校の時みたいでした」
紬「友達までできたりしてね!」
澪「そうだな……」
出発前はどうなることかと思っていた旅行だったけど、今となっては夢のような時間だった。
それほどまでに楽しい時間だったと思う。
澪「ん……」
歌を歌ったせいか、眠くなってきた。いや、肝試しの心労のせいかもしれない。さわ子さんには本当にまいった。瞼がとても重い……。
律が私に目をやってから手をぱんと合わせた。
律「よし、もう寝るか。明日の移動は長いからな」
紬「そうね」
唯「それじゃあ、おやすみ!」
梓「おやすみなさい」
律「おやすみ」
紬「おやすみ〜」
澪「おやすみ」
明かりを消すと、部屋が真っ暗になった。次に明るくなった時には朝になっているはずだ。
布団に入り、これまでの楽しさを味わいながら目を瞑った。
早くも、隣から唯の寝息が聞こえてきた。唯は本当に子どもをみたいだなあ。そんなことを思っていると、私も意識が遠のいていくのがわかった。それに抗うことなく、私も眠りについた。
♯
旅行四日目、最後の朝だ。
今日は夢を見ることもなく、気持ちよく目覚めを迎えた。カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。
紬「あ、澪ちゃんおはよう」
澪「おはよう、ムギ」
紬「みんな起こそっか」
澪「うん」
唯と
律と梓はまだ寝ていた。昨日はけっこうはしゃいでたからなあ。
唯の寝顔は相変わらず子どもみたいだ。すやすやと眠る寝顔を見ていると、少し起こすのがためらわれた。けど、ここは心を鬼にして……
澪「もう朝だぞ、ほら起きて!」
紬「りっちゃんも梓ちゃんも起きて!」
律「んー……朝か……」
梓「あ、おはようございます……」
唯「まだ眠いよ〜……」
澪「朝ご飯抜きになっても知らないぞ。はい、着替えて着替えて」
唯律「はーい……」
布団をたたむ際に、律が「立つ鳥跡を濁さず」とつぶやいていた。律の支度は随分と手際がよかった。律が言うには、早いのは警察学校の時にみっちり仕込まれたから、らしい。
まだ半分寝ぼけた唯にちゃんとした布団のたたみ方を指導していた。
それから服を着替え、隣の部屋に向かった。
ドアをノックすると、すぐに菖が出てきた。後ろには晶と幸もいた。
菖「おはよう!」
澪「おはよう。じゃあ行こうか」
唯「お腹空いた〜……」
律「唯は食べてばっかだな……」
八人で大広間に着いた。今ではおなじみになった女中さんたちが行ったり来たりしている。朝から大変なことだ。
中を見渡しても、曽我部さんはいなかった。もう帰ったのかな?
まだ起きていないのかもしれない。いつ頃まで宿泊しているのか訊いておけばよかった。
「何号室にお泊りですか?」
澪「六号室と七号室です」
「ありがとうございます。準備まで少々お待ち下さい」
女中さんがその場を後にした。いい匂いが漂ってくるので、今日の朝ご飯も期待できる。
菖「朝ご飯食べたらすぐに帰るんだっけ?」
唯「うん、そうだよ」
菖「さびしくなるな〜……ねえ?」
幸「もっとどこかに行ければよかったんだけど……」
晶「まあ、仕事もあるし仕方ないだろ」
そうだ。明日からはまた切り替えていかないといけない。今は旅行前よりやる気に満ち溢れている。これもみんなのおかげだ。
菖「そういえば、お土産は買ったの?」
梓「あっ、そういえば……」
紬「まだ買ってないわ」
菖「じゃあ、この旅館にもお土産屋さんあるから、このあと行こうよ!」
唯「何にしようかな〜」
律「そうだなあ……」
私は何にしようかな……。すぐに頭の中で期待が膨らんでいく。
もしかしたら、この地域名物のお菓子とかあるかもしれない。どうせなら、旅行先ならではのものがほしい。
……ただ、『明の湯』関連のお土産は避けようと密かに決めた。
『お土産屋』
手続きを済ませた後、最後にお土産屋さんに立ち寄った。店内にはいろいろな商品があった。ムギが目を輝かせながらいろいろな商品に手を伸ばしている。あの勢いだと出費がすごいことになりそうだ……。
紬「すてきなものがたくさ〜ん♪」
唯「おまんじゅうにしようかな〜」
梓「あっ、お菓子もありますよ!」
澪「石鹸か……」
律「澪はこれなんかいいんじゃないか?」
澪「なんだよこれ……」
律が差し出してきたのは『根性』という文字のキーホルダーだった。
よくわからないけど、一応買っておくことにした。事務所の鍵にでも付けようかな。文字を見ただけで気持ちが変わるかもしれない。
菖「タオルとかもあるよ!」
幸「六種の洗顔だってさ。晶買ってみたら?」
晶「どれどれ……高いな……」
恩那組の三人は明日買うそうだ。今日はまた練習に打ち込むらしい。
その熱意とやる気を。この旅行中に私たちももらえることができた。あとはそれらをきちんと発揮しないといけない。
澪「ふう……けっこう買っちゃったな……」
旅館の外に出て、手荷物を確認した。
パパやママ、憂ちゃん、和や純の分も買うと、なかなかの量になってしまった。帰りに両手が塞がって疲れるのも旅行の醍醐味かもしれない。
澪「あっ、そういえばさわ子さんは?」
梓「あともうしばらく宿泊するそうです。よろしく言っといて、と」
律「さわちゃんもよくやるな……」
紬「たまにはさわ子さんにもゆっくりしてもらおうよ」
律「事務所でお茶飲んでる姿しか思い浮かばないけどな……」
唯「おまたせ〜」
最後に会計を済ませた唯がやって来た。
澪「それじゃあ……帰ろうか」
唯「うん!」
振り返ると、晶と菖と幸が横一列に並んでいた。私たちもいつの間にか同じように並んでいた。
よく晴れた青空の下で、私たちは向かい合った。みんなにこにこと笑顔を浮かべている。
晶「それじゃあな。元気でやれよ!」
紬「うん。恩那組もプロを目指してがんばってね!」
菖「もちろん! プロになっても、みんなのことは忘れないよー!」
律「また遊ぼうな! 澪の事務所で待ってるから!」
幸「うん、絶対に遊びに行くよ!」
梓「私たちの演奏ビデオも送りますから!」
菖「楽しみにしてるからね!」
唯「またね〜バイバーイ!」
澪「私たちも負けないようにがんばるよ! それじゃあ……」
手を振って、その場を後にしようとしたその時、
「待って!」
晶菖幸「?」
唯紬律梓「?」
大声で誰かに呼び止められた。部屋に忘れ物でもあったのかな……。内心ドキドキしながら声の出所の方を見ると、思わず面食らってしまった。
澪「えっ?」
大声を出して私たちを呼び止めたのはなんと曽我部さんだった。よっぽど大急ぎでこちらに向かってきたのか、肩で息をしている。私は曽我部さんの方へ歩み寄った。
澪「だ、だいじょうぶですか? 何かあったんですか?」
恵「さ、最後に挨拶しておきたくて……」
澪「……わざわざありがとうございます。私も曽我部さんに挨拶したかったので……」
恵「秋山さん……最後に一ついいかしら……?」
澪「はい?」
曽我部さんと目が合った。かなり真剣な表情だ。何か重大な話かもしれない。
私はぴんと背筋を伸ばして曽我部さんの口が開くのを待った。
すると、曽我部さんは顔を赤らめながら、後ろから何かを取り出した。 ……それは色紙だった。
そして、それとマジックとを両手で私に突き出して言った。
恵「サインください!」
澪「へ?」
呆気にとられる私に構わず、曽我部さんは勢いよく続けた。
恵「“めぐみへ、みおたんより”って書いてほしいの!」
澪「え」
一体どうして……あの聡明な探偵の曽我部さんが……?
私の頭の中は疑問符で埋め尽くされ、考えるのが困難になってしまった。
助けを求めるようにみんなの方を見ると、満面の笑みを浮かべていた。
律「ほら、サインしてあげろよ!」
唯「おめでとう、澪ちゃん!」
紬「憧れの曽我部さんのお願いよ!」
梓「ここは思い切りいってください!」
澪「ええーっ!!!!!」
私の大声が温泉中に広く響き渡ったのは言うまでもない。
この旅行は本当に思い出になった……。
♯
『秋山探偵事務所』
澪「さてと……」
唯「お茶の時間だね!」
紬「は〜い♪ 琴吹家自慢の紅茶よ〜!」
律「おっ、サンキュームギ!」
梓「ありがとうございます」
旅行を終え、私たちは仕事に戻った。
ただ、気持ちを切り替えただけで依頼人が来るはずもなく、今のところ仕事はゼロだ。
今日は休日なので事務所に集合している。
澪「仕事来ないなあ……」
紬「またビラ配りしよう!」
唯「うん! 宣伝していくしかないよ!」
梓「時間があれば私も手伝います!」
澪「そうだな……地道にいくしかないな……」
恩那組のみんなもそうやってがんばっているんだ。ここで弱音を吐いても何の意味もない。
『あの後』、曽我部さんに事務所宣伝のコツも教えてもらった。
女性スタッフが多いことを宣伝すると、女性の人が依頼しやすくなるらしい。
私としてもそっちの方がやりやすいので、その方向で行こうとみんなで話し合った。
律「おっ、曽我部さんのブログ更新してるぞ」
唯「見せて見せてー!」
何だろう……この複雑な気持ちは。『あの一件』以来、曽我部さんを見る目が少し変わってしまったことは否定できない。
もちろん、今でも尊敬しているけど……。
五人で一つのノートパソコンを覗き込んだ。
『温泉旅行』
先日休みをいただいて、温泉旅行に行っていました。とても楽しかったです!
なんと、温泉が六つの種類も。それぞれ異なった効能があって大変興味深かったです。
その中で、『明の湯』という温泉には怖い怪談話があり、その話を聞いた夜は怖くてなかなか眠ることができませんでした。
今回、わたしは一人旅行をしていたのですが、宿泊した旅館でとても楽しい人たちと交流することができました。
プロバンドを目指す人、そしてわたしと同じ探偵の人も!
二人の探偵が温泉旅行の旅館で偶然出会うだなんて……何か事件でも起こりそうなシチュエーションですね。まるで小説みたいでした。
カラオケ大会があったりして、とても楽しかったです。
……実は、その探偵の方の歌声がとても綺麗で、思わずサインをお願いしてしまいました。
そのサインは私の宝物です。
……とまあ、本当にいろいろなことがあってとても楽しかったです。
温泉に浸かった後のリラックスした気持ちで今日も仕事を頑張りたいと思います!
みなさんの成功をわたしもお祈りしています。
澪「…………」
律「澪はよっぽど気に入られてるんだなあ……」
唯「澪ちゃん、大人気だね!」
紬「そのうち『澪ちゃんファンクラブ』とかできちゃうかも!」
澪「そんなの絶対に認めないからな!」
梓「けど、曽我部さんのあの勢いならやりかねないですね……」
澪「うっ……」
そんなのは絶対にイヤだ……。これ以上目立ちたくなんかない。
ましてやファンクラブなんて……考えただけでも気が遠くなる。
律「ところで、今日はどうするんだ? せっかく集まったわけだけど」
紬「あっ、忘れてた! 私、ビデオカメラ持ってきたの!」
唯「じゃあ演奏ビデオを撮って恩那組に送ろうよ!」
梓「いいですね、それ!」
律「よし、じゃあ近くのスタジオでやるか」
澪「ちょっと待って。そんな急に……」
律「いいじゃん! せっかくの休みの日なんだからさ!」
澪「……仕方ないなあ」
唯「それじゃあ、楽器を持ってしゅっぱーつ!」
律紬「おーっ!!」
梓「なんだか、いつも通りですね」
澪「やれやれ……」
梓と顔を見合わせて苦笑いした。
まったく……私たちはいつもバタバタしている。これは旅行中、晶にも指摘されたことだ。
ただ、それが私たちらしさだと思う。これからもずっとこんな調子になるかもしれない。
でも、みんなといればどんな困難も乗り越えられる。
唯が、ムギが、律が、梓がいつも私を支えてくれる。
コンコン
澪「え?」
不意にノックが鳴った。事務所に静けさが訪れ、みんなの視線が扉に集まった。
今日は休日だ。一体誰だろう……? もしかすると待望の依頼人かもしれない。
そうなればいくら今日が休日といっても、追い返すのはあまりにもったいない……。
少し躊躇していると、今度は私に視線が集まっていた。みんな笑っている。
紬「ほら、澪ちゃん!」
律「出番だぞ!」
梓「がんばってください、澪さん!」
唯「もしかしたら依頼人かもしれないよ!」
そうだ。私は困っている人を助けたいんだ。
なら、当たり前のことをしないといけない。一度頷いてから、扉の方へと歩いた。
そして、胸に手を当てた。
──みんながいるから、がんばれる。
意を決して、扉を開けた。
これは私でも恥ずかしがらずに堂々と言える。深呼吸して、思い切り言った。
澪「はい、秋山探偵事務所です!」
〜完〜
最終更新:2014年03月13日 08:01