翌朝

光太郎「いやあ、ありがとう。朝ごはんも用意してくれるなんて」

梓「いいんですよ全然。ところで、光太郎さんは今日どうするんですか?」

光太郎「そうだなあ。僕を呼んでいた、この世界の『わたし』って存在を探さなくちゃ」

梓「探すって……手がかりとか何か、ないんですか?」

光太郎「それは……声の主が、君くらいの女の子みたいだった事かな」

梓「」

梓(ほぼないじゃないですか……)

梓「で、でも!光太郎さんがこの街に倒れてたってことは、案外近くにいるのかもしれませんね」

光太郎「なるほど!つまり、この街の女の子にひたすら聞き込みをすれば――」

梓「えっ」

光太郎「まずい?」

梓「いえ、さすがにその格好でそうしたら……不審者扱いされそうですよ」

光太郎「ええっ、そんなことあるかなあ」

梓「今時知らない人って警戒対象ですし……」

光太郎「そうなのか?」

梓「あと何より、昨日ウルトラマンだってバレてるんです。変に騒がれたら困りますよ」

光太郎「そうか……どうしよう」

梓「うーん――あっ、そうだ!」

二階!

梓「やっぱり!最高に似合ってますって!」

光太郎「本当?変じゃないかな」

梓「全然変じゃありません!お父さんと体格似てるから、サイズもばっちりですし」

光太郎「でも僕、こういうスーツはなあ。どうもピンと来ないよ」

梓「いいんですよそれで。後は適当に髪型を整えればほら、別人みたいじゃないですか!」

光太郎「そう?梓ちゃんがそう言ってくれるならいいんだけど」

梓「後は探偵みたいにアンケートとか、適当な理由をつけて話しかければいいと思います」

光太郎「ありがとう!なんだか見つけられる気がしてきたよ」

梓「あと……もしよかったら、私もついていってもいいですか?」

光太郎「えっ、いいの?せっかくの休みに付き合わせちゃうけど」

梓「いいんですよ、どうせ暇ですし……場所の案内とかなら、任せてください!」

光太郎「そうか、それならお願いするよ」

梓「ありがとうございます!――あっ、ネクタイが曲がってますよ」

光太郎「おっ、やってくれるの?」

梓「いいんですよ。このくらいは……っと」

光太郎「ありがとう。決まってるかな?」

梓「はい!ばっちりです!」

光太郎「よぉし!!それじゃあ――」

梓「行きましょう!」

…………

光太郎「――それで、ここが探す場所?」

梓「ええ。るるぽーとっていって、この辺で一番賑わってるショッピングモールです」

光太郎「なるほど……うわ!本当だ、すごい人だかりだな」

梓「こんな人混みで大丈夫ですか?」

光太郎「大丈夫さ。このくらいなら、まだ聞こえる」

梓「聞こえる……って、えっ?」

光太郎「この中から、似てる声の人を探すんだ」

梓「いや、でも結構ざわついてますけど」

光太郎「おっ、聞こえた……あっちだ!」

梓「えっ!? 待って……もういない」

光太郎「すみませーん!」

?「わっ、なんなんですかあなたは!?世界一カワイイボクにナンパだなんて、身の程知らずですね!」

光太郎「いやぁ、そんなんじゃないよ。アンケートに答えてほしいんだ」

?「アンケート?」

光太郎「そうさ。昨日、怪獣が出ただろ?」

?「はぁ」

光太郎「その時思った事とか、あの怪獣について知ってる事とか、何でもいいから聞かせてくれないかな」

?「なぁんだ、あの騒ぎですか……」

光太郎「おっ、何か知ってるのかい?」

?「どこもかしこも怪獣怪獣!おかげでボクのかわいさがちっとも話題に上がらないんですよ!?」

光太郎「うん?」

?「ほんと、あんなバケモノのどこがいいんですかね!?」

光太郎「う、うん」

?「だいたいボクみたいなカワイイ存在のほうが、よっぽどスポットライトを浴びるにふさわしいのに――」

……

光太郎「くそっ、違ったか」

光太郎(結局、聞けたのは『ボクはカワイイ』ってことだけだったぞ)

光太郎(でも、へこたれても仕方ない。まだまだいろんな人に――)

「だから言ってるでしょ!? あれ絶対闇堕ちしたあるちゃんの仕業だよ!」

「ハッ……貴女の想像力には本当に驚かされるわね。さすがは大人気小説家(笑)」

「(笑)って何よ!」

「まあまあお二方とも、落ち着いてくだされ」

光太郎(おっ――あの子は)

光太郎「すみませーん!みんな、ちょっといいかな」

「へ?」

「……」

「む、何用ですかな?」

光太郎「昨日出た怪獣の事で調査をしてるんだけど、少し話を聞かせてくれないかな」

「怪獣でござるか?それでしたら、このお二方の方が詳しいですぞ」

「……デタラメは止めて頂戴。私があんな稚拙な化物に詳しいわけがないでしょう」

「あたしだって特オタじゃないし……」

「あら、話せばいいじゃない。さっきの闇堕ちしたあるちゃん(笑)の事でも――」

「なっ……こんのクソ猫ぉぉぉ!」

………

梓「光太郎さーん!」

梓(うーん、どこ行ったんだろ……?)

光太郎「おーい、あずさちゃーん……」

梓「わっ!大丈夫ですか?なんかやつれてますけど」

光太郎「いやあ、なかなか会話が噛み合わなくてね……」

梓「何か分かりましたか?」

光太郎「そうだなあ。『カワイイは正義』とか、『めるる可愛い』とか……あと、『野郎はみんな豚』とか」

梓「……お疲れ様です……」

光太郎「ハハハ……まあ、平和だって事はいいことなんだけどね」

梓「……辛くないんですか?」

光太郎「えっ?」

梓「手がかりもほとんどなしに、がむしゃらに走り回って……」

梓「これじゃあ、まるで終わりのないマラソンじゃないですか」

光太郎「そんなことないよ。確かに手がかりは少ないけど、ないわけじゃない」

光太郎「大事なのは、最後まで諦めないことだ」

光太郎「諦めないでやり抜けば、不可能だって可能にできる」

梓「でも……たった一人きりで、どうしてそこまで頑張れるんですか」

光太郎「使命だからさ」

梓「使命?」

光太郎「ああ。たとえ誰かが見てなくても、報われなくても、ベストを尽くして頑張る」

光太郎「それが、守るってことなんだ」

梓(……!)

梓(光太郎さんの目は、ただひたすらにまっすぐ、前を向いていた)

梓(『絶対に諦めない』なんて簡単なようで難しいのに、こんなさらっと――)

『『く゛ーっ……』』

梓「あ……」

光太郎「……あっ」

梓「……あははははっ!なんですか今の、締まらないですよー」

光太郎「はっはっはっ!梓ちゃんこそ!」

梓「もー、ちょうどいいタイミングで……そうだ、ここらで気分転換でもしませんか?」

光太郎「気分転換?」

梓「はい!せっかく街に来たんですし、ご飯食べたり遊んだり、楽しみましょうよ」

光太郎「おっ、いいね!案内してくれるかな」

梓「もちろんです!さ、こっちですよ――」

『……――』スゥゥ……

『――お、戻ってきたか。どれ』

『ほー……仲良くデート気取りか。いいご身分だ』

『我々の計画が順調だとも知らずになぁ』

『マイナスエネルギーとこのガディバさえあれば、確実に邪魔者を消し去ることができる』

『それまではせいぜい楽しむんだな……お前たちの墓場の見学を』

「ふふ……あはは――」

澪「こら、律」

律「あてっ!なんだよ」

澪「そろそろ次の授業だぞ。ケータイ弄りはその辺にして、教室戻ろうな」

律「あはは、悪い悪い」

…………
♪~

梓「そろそろラストですよー!」

光太郎「おっと、このっ……うわっ」

ジャーン♪

光太郎「……どうだ?」

『♪all clear♪』

光太郎「やったぁ!」

梓「すごいですよ!昨日ちょっと弾いただけで、ここまで出来るなんて!」

光太郎「いやあ、ついてくので精一杯だったよ。梓ちゃんはすごいなあ」

梓「まあ、私はいつも弾いてますからね」

光太郎「いつからギターをやってるんだい?」

梓「小四からなんで、もう六、七年です」

光太郎「すごいなあ。きっと、部活でもすごく熱心に練習してるんだな」

梓「そんな、全然違いますよ!むしろゆるいくらいです」

光太郎「そうなの?」

梓「ええ。だって、練習よりティータイムのほうが多いんですよ?」

光太郎「てぃ、ティータイム?」

梓「先輩にすごいお嬢様がいて、毎日お茶とかお菓子とか出してくれるんです」

光太郎「すごい息抜きだなぁ……」

梓「でしょう?だからバンドの名前も、放課後ティータイムっていって。私はもっと真面目にやりたいのに」

光太郎「でも梓ちゃん、楽しそうじゃないか」

梓「にゃ!?」

光太郎「僕も思い出すなあ。ZATにいた時のこと」

梓「ざっと?」

光太郎「怪獣や宇宙人から地球を守るチームさ」

梓「ああ、ウルトラマンと一緒に戦うところですか」

光太郎「僕はわりと後輩だったけどね。よく作戦会議中にみんなで差し入れのおにぎりとか食べたりしたな」

梓「……え?いいんですか、それ」

光太郎「なんたって、隊長が『昨日カレー食った奴いるか?』って出動させるとこだからね」

梓「あ、あはは……らしくないですね」

光太郎「でも、すごくいいチームだったよ。僕も隊員としていろいろ学ばされた」

梓「なんていうか、似てますね。私たち」

光太郎「ハハハ、そうだね。楽しいって思える気持ち、大事にしてくれよ」

梓「はい!」

梓「じゃあ、次はあれをしますか!」

光太郎「ぷり……くら?」

梓「はい。これはプリクラって言って、写真を撮るんですよ」

光太郎「なんだか、証明写真みたいだね」

梓「あはは……でも、ただの証明写真と違って、撮った写真にいろいろ細工ができるんです」

光太郎「本当かい?楽しみだなぁ!」

シャーッ

梓「あ、私たちの番で――」

純「でさー、そこで梓ったら……」

憂「……あ」

梓「」

憂「え、梓……ちゃん?その人……」

梓「えっと……憂?これはね、その」

光太郎「あれ?君たち、昨日の」

憂「……あぁーっ!!」

純「本物!本物のウルトrむぐっ!!」

梓「――お話しようか」

純「むー!」

外。

梓「……っていうわけなの」

憂「へぇっ、梓ちゃんちにいたんだ」

純「すごいじゃん!パラレルワールドとか漫画みたいで」

梓「もう……内緒にしてね」

憂「うん!私たちの秘密ね♪」

光太郎「憂ちゃんに純ちゃんか、ありがとう。助かるよ」

純「……で?さくやはおたのしみでしたの?」

梓「ぶっ!! 何言ってんの純!?」

純「そら夜二人ったらそう……ね?」

梓「ないない!! 特に何にもないってば!」

憂「えーっ? すごく仲良さそうだったじゃん」

純「ほらほら、おねーさんに言ってごらん」

梓「うー……光太郎さん、なんとか言ってくださいよお」

光太郎「はっはっは! みんな仲が良いんだね」

梓「ムエンゴ!?」

純「あっははっ、もー最高!梓ってほんっと面白いよね」

梓「デュアッ!」ガッ

純「げふぅっ!」

梓「さ、純。向こうでお話しよ」

純「ひー!?」

憂「あはは!もう、梓ちゃんたら」

光太郎「いいもんだね、友情ってのは」

憂「……あの、タロウさん?」

光太郎「光太郎でいいよ」

憂「じゃあ、光太郎さんは、梓ちゃんのこと――どう思いますか?」

光太郎「えっ?」

憂「梓ちゃん昨日、変な夢を見たとか幻聴がしたとか言ってて」

光太郎「えっ、本当かい?」

憂「はい……その時は特に何もなかったんですけど、少し心配で」

光太郎「そうだったのか……」

憂「どうでしたか?昨日から梓ちゃんを見てて」

光太郎「特に変わったとこはなかったよ。むしろ、楽しそうだった」

憂「良かった……」

光太郎「本当に大事な友達なんだね」

憂「はい!梓ちゃん、すごく可愛いですよね!」

光太郎「ははは、そうだね。昨日なんか、遅くまでギターをすごく丁寧に教えてくれてね」

憂「梓ちゃんらしいなぁ」

光太郎「いやぁ、本当にいい子だよ。素直で、とても優しくて――」

(お願い――この世界を――)

光太郎「……あれ?」

憂「光太郎さん?」

光太郎「いや……今、何かが頭に浮かんで」

『ウルトラマンタロォォォウッ!』

光太郎「何ッ!?」

憂「えっ?」

光太郎「なんだ?どこかから声が」

『どこにいるゥゥッ!』

『出てこい!タロォォウ!』

『出て来ないなら街の人間を皆殺しにしてやるぞ……!』

光太郎「近い……!」

憂「ど、どうしました?」

光太郎「ごめん憂ちゃん!すぐ戻る!」

憂「あっ、光太郎さん!?」

光太郎(この声……テレパシーか?)

光太郎(人間ではない、明らかに強いマイナスエネルギーを感じる……まさか)

光太郎(……宇宙人か!?)

『さぁ来い!ウルトラマンタロォォォウ!』

警官「ひぃぃぃっ!ば、化け物ッ!?」

『おっと……人間か?少し黙っていろ』

警官「うぐっ!」ガクッ

『む、ずいぶんあっさり伸びたな。楽に記憶を消せるからありがたいが、だらしない奴だ』

光太郎(なっ……あれは、テンペラー星人!?)

光太郎(わざわざ等身大で、こんな森の中で一体何を……)

光太郎「テンペラー星人ッ!」


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