底知れぬ暗黒の闇と、無限に広がる虹色の光。
互いにエネルギーを凝縮した、渾身の光線をぶつけ合う。
『おおおおぉっ!!』
梓「にゃぁぁぁぁっ!!」
――あずにゃん――
――あずさちゃん――
――あずさ――
大切な人たちをそばに感じる。
それだけで、人は、どんな闇の中でも輝ける。
梓「―――はぁぁっ!!」
『……グォルルルル……!!』
闇のエネルギーを呑み込み、虹色の光――ネオストリウム光線が直撃した。
『これで終わりだ……いくぞ、梓ちゃん!!』
梓「はい!」
両腕を外回りに回転させ、カラータイマーに光を集中させる。
その光を、右の拳に乗せ――
『コスモミラクル――』
梓「――ティータイム!!」
悲しい非日常に引導を渡す、とどめの一撃を解き放った。
『ぐ……うぉぉぁぁッ!!』
闇を浄化する溢れんばかりの光が、内側からグランドキングの体を包み込む。
『貴様ら……これで勝ったと――思うなァァァァァッ!!』
光に吸い込まれるようにグランドキングの姿が消えていき、完全に見えなくなる。
次の瞬間、天地を揺るがすほどの大爆発が巻き起こり、空を覆っていた結界をも吹き飛ばしていった。
「……やった」
律「ぃやったぁぁぁっ!!」
澪「勝った……ウルトラマンが勝った!」
憂「やったね、お姉ちゃん!」
唯「よかったぁ……また、ムギちゃんのお菓子が食べれるんだね!」
紬「ええ!いっぱいごちそうするわ♪」
純「ありがとー!ウルトラマァァーーンッ!」
……
…
……ありがとー!……
…おつかれー!!…
たくさんの歓声が聞こえる。
その光景を、合体を解いて元に戻った三人のウルトラマンが見ていた。
梓「……勝ったんですね」
『ああ。梓ちゃん――君が、いや君たちが、この世界を守ったんだ』
梓「私が……世界を」
『そうだ。これでヤプールもこの世界に干渉することはないだろう』
梓「戻ってくるんですね。日常が――」
ゾフィーの言葉に答え、はっとする。
梓「――っ」
それはつまり、非日常との別れの時。
そして、それは――
『梓ちゃん……』
光太郎さんとの、別れの時だ。
梓「……お別れ、ですか」
『ああ』
梓「楽しかった、です……光太郎さんといた時間」
『僕もだ。梓ちゃん、本当にお世話になったよ』
たった二日。
短い時間に、いろいろなことがあった。
梓「……っく……」
一緒にご飯を食べたこと。
ギターを教え、一緒に弾いたこと。
強大な敵を相手に、ともに戦ったこと。
それらの経験一つ一つが、私の胸を締め付けて離さない。
梓「ひぅっ……うぅ」
『おいおい、泣くなよ。大切な仲間たちが待ってるんだぞ?』
梓「わかってます!でも……っ、せっかく、会えたのにっ……!」
わがままだとはわかっている。
それでも、言わずにはいられなかった。
梓「光太郎さんだって!私の、大切な人なんですから……っ!」
そんな私のわがままに、ウルトラマンタロウは。
『……ありがとう」
東光太郎として、私の前で答えてくれた。
梓「ごめんなさい……光太郎さんにだって、帰る場所があるのに」
『いや、いいんだ。君の気持ちは伝わってきた」
光太郎さんは、そう言って私の頭を撫でた。
『僕をこの世界に呼んでくれて、本当にありがとう」
梓「――どういたしまして」
その手の感触は、私の心を暖かく変えるのに充分すぎるものだった。
『梓ちゃん。君のことは忘れない」
梓「私も――絶対、忘れません」
辺り一面が光で白くなっていき、身体が地上に降りていく。
一体化も解けた今、今度こそ別れの時だ。
(――頑張れよ)
タロウがこちらを見て、しっかりと頷く。
私も、力強く頷き返す。
「――やってやるです」
『トァァァァァッ!』
光に包まれて大空へ飛び立っていくウルトラマンタロウ。
続けて、ゾフィー、ウルトラマンティガも光の中へと消えていった。
梓「光太郎さぁーん!さようならぁぁっ!」
その姿を見届けた私は、ゆっくりと瞳を閉じたのだった。
………
……
…
………
……
…
一週間後!
梓「おはよー、お母さん」
母「あら、おはよう。元気そうじゃない」
梓「まあね。もう退院して3日なんだから」
母「ならいいけど……本当にびっくりしたわよ。
あなたが倒れたって聞いて急いで駆けつけたら、ベッドの上でニコニコしてるんだもの」
梓「あはは……」
母「しかも怪獣やらウルトラマンが現れて、この街がめちゃくちゃになるなんてね……」
梓「夢みたいだよね」
梓「……でも、夢じゃなくて良かった、かも」
母「え?」
梓「おかげで、いろいろ大切なもの……見つかったから」
母「……あら」
梓「どうしたの?」
母「なんか、今の顔……大人の女性って感じ。そんな顔もできるのねえ」
梓「にゃ!?」
母「はいはい。それより、今日は友達と約束があるんじゃないの?」
梓「え、あっもうこんな時間!急がなきゃ!」
母「忘れ物ないわね?」
梓「うん!いってきまーす!」
母「……ふふ」
――
―
梓「ういー、じゅんー!おまたせっ!」
憂「梓ちゃん!おはよ――」
純「う?」
梓「……何よ?」
純「いや、どうしたのよ急に髪下ろして」
憂「梓ちゃん、だよね?」
梓「ひどっ!?」
憂「なに、イメチェン?」
梓「まあ、ね」
純「……光太郎さん絡みか」
梓「にゃっ!?」ビクッ
純「図星かい」
憂「光太郎さんってそういうの好きだったんだ」
梓「ち、違うもん!そりゃ、確かに新鮮だねとは言われたけど……」
純「じゃあ何よ?」
梓「その……私さ、冷静に考えたらすごいことしてるわけで」
憂「ウルトラマンと一緒に過ごすどころか、ウルトラマンになっちゃったもんね」
純「こんなのがねえ」
梓「そう!だから、せめてそれに釣り合う、大人っぽい人になろうとね」
純「……ぷっ」
梓「わ、笑うな!」
純「だ、だってさ!あんたがそういう風にしてたら、澪先輩とモロかぶりじゃん」
梓「えーっ……でも私スレンダーじゃん、差別化はできてるよ」
純「このちんちくりんがそれを言うか」
梓「ちんちくりん言うな!」
憂「まあまあ。梓ちゃんは梓ちゃんなんだから、ムリに背伸びしなくてもいいんだよ?」
梓「うーん……やっぱり無理なのかなあ」
純「そのままでいいじゃん。そのままの梓も、光太郎さんが守った梓なんだから」
梓「そう?……ありがと」
梓「って、そういえば今日はどこに行くの?」
純「それは秘密」
梓「何それ」
憂「そろそろ準備も整った頃じゃないかな?」
純「そだねー。じゃあ行きますか!」
憂「ついてきてねー」
梓「あ、二人とも待ってよー!」
―――
――
―
純「とうちゃくー」
梓「って、ここ憂んちじゃん!」
憂「お姉ちゃーん!梓ちゃん来たよー」
『はいはーい!』
梓「何これ、回りくどいじゃん」
純「いいからほら、入った入った!」
梓「はいはい……」
パァンッ!
梓「!?」
唯「あずにゃん!」
紬「梓ちゃん!」
澪律「「いらっしゃい!」」」
梓「皆さん――」
唯「今日はお祝いだよー?」
澪「梓の退院祝いと、地球に平和が戻った記念のパーティーだぞ」
律「ここんとこ学校から自宅待機とか言われて、ストレス溜まりまくりだったからなー」
紬「食べて遊んで、一気に発散しちゃいましょう♪」
梓「――はいっ!」
こうしてまた、平穏な日常が始まりました
学校が全壊した今、これからの生活がどうなるか想像もつきません
もしかしたら、転校だなんだでみんなと離ればなれになるかもしれません
でも、何も怖がることはありません
「前に進む心」さえあれば、どんな困難にも立ち向かえることを知ったんですから――
梓(――また、どこかで)
おわり。
最終更新:2014年03月28日 07:54