※リクエスト
最後にのこったシュークリーム巡って、全員お腹の中に暗黒物質でも格納してンの?ってくらいに腹黒い仲間達の中の熾烈な攻防




迂闊すぎた。琴吹紬がそう感じたときには、既に手遅れだった。
こんなに美味しいシュークリームなら部活に持ってくるべきではなかった。
普段美味しい物をみなに分け与えることを楽しみ、それを生き甲斐とすら感じている彼女でも、
シュークリームの前には無力だった。

紬(過ぎたことを悔やんでも仕方ない……)

紬(今日持ってきたシュークリームは6つ。先生はきていない。部員は5人……1つ余る)

紬(シュークリームを持ってきたのは私。まずは所有権を主張するべきかな)

紬「あの……」

唯・律・澪・梓「…!」

紬「そのシュークリーム持って帰ってもいいかな?」

紬「元々私が持ってきたものだし、いいよね?」

澪(やはり所有権を主張してきたか)

梓(確かにムギ先輩が持ってきたシュークリームだから、権利はムギ先輩にある)

律(どうする? どうすればいい?)

唯「えっ……なんで?」

紬(やっぱり食い下がってくのね、唯ちゃん)

紬(その純粋さが今は恨めしいわ。なら…)

紬「えっとね。美味しかったから家に持って帰って妹に食べさせてあげようかな~と」

紬「駄目……かな?」

もちろん紬は家に持ち帰ったシュークリームを自分の腹に納めるつもりである。
そんなことおくびにも出さず、潤んだ瞳で訴えかける。

唯「そ、それなら私も憂にあげたいなーって思ったの」

唯「実は憂、シュークリームが大好きで、毎日毎日シュークリームシュークリーム言ってるんだ~」

澪(嘘だな)

梓(絶対嘘です)

律「そ、それならうちの聡もなんだ」

律「美味しいシュークリームを食べれば、きっと私のいうことをもう少し聞いてくれると思うんだ」

律「だから、な。頼むよ~」


澪(こ、このままじゃ駄目だ。この流れだと、兄妹のいない私達が圧倒的に不利だ)

梓(ええい、このままでは3人にとられてしまうです)

梓(どうすれば……あっ)

紬「じゃあ3人で相談して決めましょうか」

唯「うん」

律「そうだな」


梓「ちょっと待って下さい!!!!!」


紬・唯・律「…!?」

梓「ここに書いてある文字を読んでください!!」

唯「えーっと、消費期限7月4日の午後4時?」

梓「そうです。あと30分で消費期限が終わってしまいます」

紬・唯・律「ナ、ナンダッテー」

澪(梓、グッジョブ!)

梓「このシュークリームは部活動中に食べてしまうべきです。持って帰ってお腹を壊したら大変ですから」

紬・唯・律「……チッ」

紬(消費期限の確認を怠るなんて、私としたことが……)


澪「なぁ唯。この前私のケーキ分けてあげたよな」

唯「……そんなことあったっけ?」

澪「あったんだよ!!」

唯「うーん、あったような、なかったような」

律「あぁ、確かにあったな」

澪「だから今回は譲るべきじゃないか?」

唯「えっ、そんな……」

紬「そうね。唯ちゃん。今回は遠慮してくれないかしら、ね」


梓(唯先輩を脱落させる方向でいきましたか)

梓(ちょっとかわいそうですが、様子見させてもらいましょう)

唯「それを言うならりっちゃんも遠慮しておくべきだよ」

律「なにおー」

唯「りっちゃんは部長としてのミスが多すぎるから、その責任をとるべきかなーって」

澪「あぁ、ステージの申請を忘れたり」

紬「冷房の申請を忘れたり、ね」

唯「うんうん。りっちゃんは責任とって今回は譲るべきだね~」


梓(この調子でいけば唯先輩と律先輩がリタイアしそうですね)

梓(ここは黙ったままで…)


律「……それを言うなら梓も譲るべきじゃないのか」

梓「……えっ?」

律「ティーセットを撤去しろって言ってたよな~」

梓「そ、そんな昔のこと」

澪「あぁ、言ってたな」

紬「ええ、あれは悲しかったわ」グス

梓「ム、ムギ先輩まで…」

唯「そうだねー。あずにゃんも諦めるべきだね」


梓(この流れは不味いです…こうなったら)

梓「……唯先輩、律先輩」

唯・律「…?」

梓「私の足を引っ張っても、先輩方がシュークリームを食べることはできませんよ」

唯・律「…!」

梓「ここは平等にじゃんけんで決めるべきです!」

澪・紬「!?」

唯「あずにゃんいいこと言うね~。確かにじゃんけんなら平等だね~」

律「うんうん。平等サイコー!」

梓「そうです、平等に決めるべきです!」

紬(三対二……分が悪いわね)

澪(ここは従うしかないか)

唯「じゃあ恨みっこなしだよ」

唯・律・澪・紬・梓「最初はグー、じゃんけん」



さわ子「あっ、今日のおかしはシュークリームなのね」パクッ

さわ子「うん。すごく美味しいわ」

さわ子「ねぇ、これもっとないの?」


唯・律・澪・紬・梓「なんだと…」

一週間後

唯「ムギちゃん、ひょっとしてこのシュークリーム」

紬「うん。すごく好評だったから、お取り寄せしてもらったの」

唯「ムギちゃん大好き~」

律「ムギ、でかした」

澪「ああ、流石ムギだ」

梓「ムギ先輩……愛してます」

さわ子「ムギちゃん、嫁にこない?」


琴吹紬は語らない。
このシュークリームが、取り寄せた17個のうちの6個でしかないことを。
10個のシュークリームが既に彼女の腹に収められたことを。

おしまいっ!



最終更新:2014年04月02日 07:59