※リクエスト
本編で実現しなかった澪とムギが遊びに行く話が読みたい
澪「お母さんにチケットを2枚もらってしまった」
澪「ライブか映画のチケットなら律と行くんだけど…」
澪「美術館、かぁ……」
澪「はぁ……。律の退屈そうな顔が目に浮かぶようだ」
澪「唯…もなしだな。梓…も興味なさそうかな」
澪「となると残るはムギか」
澪「うん。ムギなら芸術に興味ありそうだな」
澪「よし、メールしてみよう」ポチポチ
________
from澪
toムギ
美術館のチケットもらったんだ。
今週の土曜日にでも一緒に行かないか?
________
紬「あら、メール。澪ちゃんからだ…」ブルブル
紬「ふむふむ」
紬「さっそく返信しなくっちゃ」ポチポチ
________
from紬
to澪ちゃん
デートのお誘い?
喜んでご一緒します
________
澪「おっ、さっそく返事が」ブルブル
澪「デート、かぁ……」
澪「まぁ二人で出かけるんだからデートか」
澪「そうと決まれば着ていく服選ばないと…」
AM9:00 駅前
澪「おはようムギ」
紬「おはよう澪ちゃん。本日はお誘い頂きありがとうございます!」
澪「ムギが来てくれて助かったよ」
紬「そうなの?」
澪「ああ、けいおん部で美術館に誘えるのはムギぐらいだろ?」
紬「梓ちゃんも芸術に興味あるのよ」
澪「そうなのか?」
紬「うん」
澪「ふぅん。今度は梓も誘ってみるか」
紬「それでどこの美術館?」
澪「あぁ、この『ブロウハープ美術館』なんだけど」
紬「あっ、そこなんだ」
澪「ひょっとして行ったことあった?」
紬「うん。父の付き添いでちょっとね」
澪「悪い、ムギ。先にどの美術館か言っておくべきだった」
紬「どうして?」
澪「だって一度行ったところにまた行っても退屈なだけだろ?」
紬「そんなことないよ。行ったのは随分前だし……」
紬「それに、あそこ展示は結構好きなの」
澪「そうなのか?」
紬「うん」
澪「そう言ってくれると助かるよ」
紬「それじゃあ行きましょうか」
澪「あぁ」
紬「この道を真っ…」グゥ
紬「///」
澪「お腹へってる?」
紬「ええ、実は朝ごはん食べる時間がなくて」
澪「じゃあどこかに寄っていこうか?」
紬「いいの?」
澪「もちろん」
同日某時刻 喫茶店
澪「こういう喫茶店入るのはじめてかもしれない」
紬「私も私も!」
紬「メニューはこれね」
紬「澪ちゃん、ナポリタンってなぁに?」
澪「あぁ、パスタのことだよ」
紬「パスタなの? はじめて聞く名前だわ…」
澪「あぁ、そういえば最近はあんまり見ないな」
澪「トマトケチャップを使った簡単に作れるパスタなんだ」
紬「どんな味なのかしら」キラキラ
紬「決めた! これを頼むわ」
澪「朝から大丈夫か?」
紬「大丈夫!」
澪「その自信はどこからくるんだか」
紬「私はナポリタンとエスプレッソを頼むけど澪ちゃんは?」
澪「エスプレッソ?」
紬「濃いコーヒーのこと」
澪「美味しいのか?」
紬「大人の味、かな」
澪「大人の味」ゴクリ
澪「ふむ。私もそれを頼んでみようかな」
紬「すいませ~ん!! 」
店員「はい。ご注文でしょうか?」
紬「エスプレッソ二つとナポリタンお願いします」
店員「かしこまりました」
紬「わくわく」
澪「期待してるほど美味しくないと思うよ…」
澪「そういやムギはなんで朝ごはん食べてこなかったんだ?」
紬「えっと、それは……」
澪「何か言い難いこと?」
紬「実は遊びに行くのがが楽しみでなかなか眠れなかったの…」
澪「くくっ、遠足前日の律みたいだな」
紬「りっちゃん?」
澪「あぁ、律も楽しみなことがあると眠れなくなるんだ」
紬「へぇー」
店員「おまたせしました」
紬「これがナポリタン……ソーセージが入ってるんだ」
紬「うん…」
紬「うん…」
紬「うん…」
紬「普通だ……」
紬「でも嫌いじゃないかも」
紬「なんだか懐かしい味」
澪「……」ジー
紬「あら、澪ちゃん。コーヒーを睨みつけてどうしちゃったの?」
澪「あぁ……なんかオーラが漂ってるなって」
紬「オーラ?」
澪「この量の少なさ、香り高さ、今まで飲んだことのあるコーヒーとは別格って感じがするよ」
紬「そうかな」
澪「そうさ」
澪「味のほうもきっと」ゴクッ
紬「どう?」
澪「にがっ!!!!!」
紬「濃いコーヒーだから…」
澪「み、水っ…水は…………ないのか」
紬「ナポリタン食べる?」
澪「うん」ハフハフ
澪「ふぅ……ちょっとマシになった…。味覚がおかしくなるかと思ったよ」
紬「すいませーん。お冷ください」
店員「はいよ」
澪「やはり普通のコーヒーとは格が違った……」
紬「じゃあ私も」ゴクッ
澪「……平気なのか?」
紬「うん」
澪「ムギは大人だなぁ」
紬「こんなの慣れよ」
澪「慣れれば平気になるのか?」
紬「うん」
澪「まだまだコーヒー経験値が足りないってことか…」
紬「澪ちゃんひょっとしてコーヒー派?」
澪「中学の頃はコーヒー派だったよ。今では紅茶派だけど」
紬「どうして変わっちゃったの?」
澪「ムギのいれてくれる紅茶毎日飲んでれば、嫌でもそうなるよ」
紬「それは……喜んでいいのかな?」
澪「うん。いいと思うよ」
紬「ごめんなさい…こういうときどんな顔していいかわからないの」
澪「笑えばいいと思うよ」
紬「クスクス。それじゃエヴァよ」
澪「ネタ振ったのはムギなのに……理不尽だ」
紬「世の中理不尽なものよ。特に澪ちゃんの場合は」
澪「それ、なんのネタ?」
紬「忘れちゃった」
澪「そうなんだ。じゃあ、そろそろ行こうか」
紬「うん」
ブロウハープ美術館
澪「ついた。ビルの中にあるんだな」
紬「ブロウハープの本社ビルね」
澪「ブロウハープってタイヤ作ってるメーカーだよな」
紬「そうだよ」
澪「なんでタイヤメーカーが美術館なんてやってるんだろう」
紬「社長さんの趣味ね…」
澪「そうなのか? ムギは随分詳しいんだな」
紬「ええ、一度来てるから」
紬(伯父さんの会社だとは言わないでおこう)
紬「ここの絵は古い順に並んでるの」
澪「へー」
紬「古いといっても古代絵の類はないんだけど。古い壺はあるんだけどね」
澪「ふむふむ…あ、壺ってこれのこと?」
紬「ええ、そうよ」
澪「うーん、確かに古そうな壺だなぁ」
澪「ちょっと触ってみたいかも」
紬「係員さんに怒られちゃうわ」
澪「そうか……残念」
紬「そしてここから絵画の常設ね」
澪「あっ…これ教科書で見たことある絵に似てる」
紬「レンブラントね」
澪「レンブラント…聞いたことがある」
紬「光と、闇と、レンブラントなんて煽り文句もあるわ」
澪「凄い厨二ネームだ」
紬「厨二?」
澪「ムギは知らなくていいことだよ」
紬「そう?」
紬「レンブラントは『影』を用いた明暗を描くのが凄く上手いの」
澪「あぁ、確かに他の絵と見比べても、影を描くのが特別上手いってわかるよ」
澪「そのおかげで『光』の部分が凄く際立ってる」
紬「ええ。贋作も多数出回ってて、真作を見抜くためのレンブラント調査委員会なんてものがあるぐらい」
澪「真作?」
紬「本物のこと。偽物は贋作っていうの」
澪「あぁ、贋作はわかるよ」
澪「確かにこれだけインパクトのある絵ならみんな欲しがると思うな」
紬「ええ、日本人が一番好きな画家トップ3の一人じゃないかしら」
澪「他の2人は?」
紬「フェルメールとゴッホね。ダ・ヴィンチも人気はあるけど、滅多に絵がこないから」
澪「でも、いつだったかモナ・リザが日本に来たよね」
紬「ええ、結構前の話だけど」
澪「見てみたかったなぁ」
紬「いつかみんなでルーブルにいきたいね」
澪「そうだな」
___
澪「むむっ……これは酷い」
紬「あぁ……これね」
澪「モデルになった人がかかわいそうだ」
紬「実際にこれくらい太ってたのかもしれないよ?」
澪「それでもさ、少しは痩せているように描くのが優しさってものだと思う」
紬「……確かに」
澪「画家の名前は……」
紬「ルノワールね」
澪「女の敵だな」
紬「敵だね」
澪「でも優しい絵だ」
紬「そうだね。暖かさがこっちに伝わってくるみたい」
澪「でも敵だ」
紬「この絵なら、澪ちゃんでも見るだけで誰の絵かわかるんじゃないかしら」
澪「……どっかで見たことあるタッチだな……あっ、わかった。ゴッホだ!」
紬「正解!」
澪「本物を間近で見るのは初めてだよ」
紬「ゴッホの作品で好きなのは沢山あるんだけど、この絵は特に好きかな」
澪「あぁ、なんだか力強さの中に優しさが隠れてる気がする」
紬「澪ちゃんも気に入った?」
澪「あぁ、なんていうかムギみたいな絵だな」
紬「……どう反応していいのか困っちゃう」
澪「喜べばいいと思うよ」
紬「もう……澪ちゃんったら///」
紬「ゴッホは今でこそ人気作家だけど、生前は全く絵が売れなかったの」
紬「ゴッホの絵を買ったのは、彼の弟だけだったそうよ」
澪「そこまで売れなかったのか……」
澪「確か最後は自殺したんだっけ?」
紬「ええ。一緒に絵を描いていた仲間が、一人、また一人と去っていってしまったの」
紬「最後は孤独のうちに自分の頭を撃ちぬいて死んだわ」
澪「悲しい話だな……」
紬「ええ……」
澪「HTTは大丈夫かな?」
紬「音楽性の違いから解散とか?」
澪「……作曲者と作詞者は仲良くしておかなきゃな」
紬「ええ、私も澪ちゃんともっと仲良くなりたいわ」
澪「///」
___
紬「この辺りから20世紀の絵になるわ」
澪「ピカソとかかな」
紬「えぇ、ピカソもあるわ。澪ちゃんはピカソ好き?」
澪「あんまり好きじゃないな。子供の落書きみたいだし」
紬「ピカソの絵は乱雑に描かれてるように見えるけど、確かな画力の上に成立しているらしいわ」
澪「音楽でもよくあるよね。出来る人が崩すの」
紬「そうね。実は私もピカソは良さがわからないの……何かあるとは思うんだけど」
澪「あぁ、何かありそうなんだけどな」
紬「私達にはまだ早いってことかしら」
澪「そうだな」
紬「そしてこれが澪ちゃんに一番見せたかった絵」
澪「なんだかムギが連れてきたことになってないか? …………Wao!」
紬「どう…?」
澪「うんうん」
紬「……」
澪「まさに私が見たかったのはこれだよ」
澪「この絵を書いたのは誰だ!」
紬「マティスよ」
澪「マティス…か。絵はピカソと同じぐらい崩されてるのに、こちらからは強いインスピレーションを受けるよ」
紬「ええ、私もマティスは好きなの。アンバランスな力強さを感じるから」
澪「しばらく見ててもいいかな」
紬「ええ」
30分後
澪「ふぅ……やっぱり凄いな」
澪「…ムギ、そろそろ行こうか」
紬「もういいの?」
澪「あぁ、待たせて悪かったよ」
紬「別にいいのよ。好きな絵をゆっくり見るのも美術館観賞の醍醐味だから」
澪「そういえばムギもさっきどこかに行ってたな」
紬「ええ、ゴッホをもう一度見てきたの」
紬「じゃあ、そろそろ出ましょうか」
澪「あぁ」
紬「あら、喫茶店なんてできたんだ」
澪「なになに、ルーブルフェア?」
紬「ルーブル美術館にあるのと同じモンブランが食べられるんですって」
澪「……食べてみたいな」
紬「食べちゃう?」
澪「そうだな」
紬「じゃあ入りましょう」
ウェイター「二名様でしょうか?」
紬「はい」
澪「あっ、悪い。ムギ、先に座っててくれるか?」
紬「いいけど…」
澪「じゃあちょっと行ってくる。オーダーはモンブランとコーヒーでよろしく」タッ
紬「……お手洗いかしら?」
紬「あっ、戻ってきた」
澪「これを買ってきたんだ」
紬「ブロウハープ美術館の画集?」
澪「あの絵からもらったインスピレーションを忘れないために」
紬「そんなに気に入ったんだ」
澪「あぁ、私のハートが囚われたままなんだ」
澪「今ならとんでもなく素晴らしい詩を作れる気がする…」
紬「どんな詩ができるか楽しみね!」
澪「期待して待っててくれ」
紬「じゃあ私も凄い曲を書かなきゃ」
ウェイター「はい。モンブラン2つとコーヒー2つです」
紬「見た目は普通ね」
澪「あぁ」
紬「味は……」パク
澪「……」パク
紬「うん。美味しい…でも」
澪「物凄く甘い」
紬「コーヒーコーヒ」ゴク
澪「私もっ」ゴク
紬「コーヒー飲んでも甘さが消えない」
澪「……これは難敵だ。だけど、今の私に不可能はない」
20分後
紬「私、これから3年はモンブラン食べたくない」
澪「私は一生食べなくてもいいかな」
紬「えぇ、美味しいのにあんなに甘いなんて」
澪「本家ルーブルもそうなのかな」
紬「たぶんそうだろうね。それ以外にあんなに甘くする理由がないもの」
澪「ふぅ……何か口直しに辛いものを食べたいな」
紬「じゃあお昼ごはんは何か辛いものにしましょう」
澪「そうだな。甘いものの次は辛いもの………」
澪「コーヒーでも消えない甘さ……」ブツブツ
澪「その甘さを消すための辛いもの……」ブツブツ
澪「ここにマティスを混ぜて……」ブツブツ
紬「澪ちゃん?」
澪「大変だ! ムギ! とってもいい詩ができちゃった!!」
紬「そうなんだ。じゃあ辛いもの食べに行こうか」
昼食カット
澪「ムギは午後から用事あるんだよな」
紬「ごめんなさい。ちょっと家の用事があるの」
澪「いいよいいよ。今日は付き合ってもらってありがとう」
紬「こちらこそ澪ちゃんとご一緒できてとっても楽しかったわ」
澪「私も楽しかったよ。色々勉強になったし、新しい詩も作れそうだ」
紬「私も新曲を考えておくわ」
澪「あぁ、ムギとデートする度に新曲が作れそうだ」
紬「私は新曲と関係なく澪ちゃんとデートしたいけど」
澪「ムギ……どんな顔していいのかわからなくなるだろ///」
紬「照れればいいと思うよ」
澪「ムギっ!!」ポコ
紬「やった!! 澪ちゃんに叩かれちゃった!」
帰宅後
秋山宅
律「澪ー、いるかー」
澪「あっ、律」
律「遊びにきてやったぞー」
澪「別に頼んでないけどな」
律「あっ、それとこれおみやげの……」
琴吹宅
菫「あっ、お姉ちゃん帰ってきてたんだ。楽しかった?」
紬「ええ、とっても楽しかったわ」
菫「あっ、実はお姉ちゃんがいない間にケーキ作りに挑戦したんだ。食べてくれる? 私の作った…」
律「モンブラン」
菫「モンブラン」
おしまいっ!
最終更新:2014年04月02日 08:05