※リクエスト
ムギちんの親が大失敗で、今までの人生が一転、貧乏節約生活!命懸けの一ヶ月1万円生活!果たして元の生活に戻れるのか。お父さんが再起をかけて、全財産で買った宝くじと競馬は当たるのか!?



◯紬「私、一ヶ月一万円生活するのが夢だったの~」


唯「えっ、ムギちゃん黄金伝説に出るの?」

紬「うん」

唯「獲ったどーーー!! のアレ?」

紬「そうだよ」

唯「でも、どうしてイキナリ?」

紬「実はね、お父様が事業で失敗しちゃって、再起のためにお金が必要になったの」

唯「えっ」

紬「それでね、そのお金を稼ぐために一ヶ月だけ休学して番組に出演させてもらうことにしたの」

唯「……ムギちゃんのお父さんお仕事で失敗しちゃったんだ?」

紬「えぇ……そうなの」

唯「でも、テレビに出ても多くて数十万円しか貰えないよね。それくらいでどうにかなるの?」

紬「それなんだけど、結構な額をもらえるみたいなの」

紬「実はテレビ局の人がお父様に恩があるらしいんだけど……」

紬「直接お金を渡すと贈与税で国に持っていかれちゃうから、ギャラという形で渡したほうが節税になるとかで」

紬「私が番組に出ることになったの」

紬「そのお金さえ入れば、お父様の会社は不渡りを出さずに済むから……」

唯「た、大変だね~」

紬「ううん。むしろすっごく楽しみ! 私、黄金伝説に出るのが夢だったから」

唯「あっ、それはわかるかも」

紬「唯ちゃんも?」

唯「私もね、一度出てみたかったんだー。スイーツで一週間過ごすやつとか」

紬「あっ、私もそれに出てみたい」

唯「でもムギちゃんが出るのは一ヶ月一万円生活なんだよね?」

紬「えぇ。私で大丈夫かしら……」

唯「……」

◆1日目◆

スタッフ「それでは一万円を渡します」

紬「はい!」

スタッフ「光熱費や水道料金は毎晩徴収にきますので」

紬「はい!」

スタッフ「ではご健闘を」

紬「ありがとうございます」ペコリ

紬(さて、何からはじめましょうか)

紬(あっ、まず電気を消さなきゃ)

紬(……ブレーカーごと落としちゃえ。えいっ!!)

紬(うん。これでよし!)

紬(テレビ局の人には途中でギブアップしてもいいって言われたけど、やれるだけのことはやらないと)

紬(……うん)

紬(まずは買い物だけど……どこのスーパーが安いのかな)

紬(普段スーパーに行かないから全然わからないわ)

紬(どうしましょう……)

ピンポーン♪

紬(あれ、お客さん?)

ガチャ

紬「どちらさま?」

憂「こんにちはー」

紬「あれっ、憂ちゃん?」

憂「はい。きちゃいました」

紬「今、番組の収録中なんだけど」

憂「だからです。紬さんは買い物とか慣れてないんじゃないかって思って」

紬(唯ちゃんが頼んでくれたのね。ありがとう……)

紬「それじゃあ憂ちゃん、今日はお願いしますっ!」

憂「はい! 任せてください」

―――

紬「どこへ向かってるの? こっちには田んぼしかないみたいだけど」

憂「農家に直接お米をわけてもらいに行くんです」

紬「そんなことができるの?」

憂「はい。お爺ちゃんの知り合いが農家をやっているんですよ」

紬「そうなんだ」

憂「お米を安く買うにはこうするしかないんです」

紬「そうなの?」

憂「はい。稲作を関税障壁で保護するために外国米には高い関税がかけられていますし」

憂「国産米は国が正規の価格を決めていますから」

紬「へぇ~」

憂「だから農家の人と直接交渉して、市場に回さず自家消費用にとっておいた、二級品のお米をわけてもらうんです」

紬「なるほど……」

憂「古米だからその分味は落ちちゃいますけど……」

紬「それは大丈夫。それくらいはしないと一万円生活なんて無理だもの」

憂「……そうですね」

紬「確か古米って粘りがちょっと弱いのよね」

憂「そうです。だから炒飯などに向いてるかもしれません」

紬「ふぅん」

憂「実はお姉ちゃんは新米と古米の違いに気づきません。……あっ、これは内緒で」

紬「……憂ちゃん。いま収録中よ」

憂「……」

紬「憂ちゃん?」

憂「ご、ごめんね、お姉ちゃん」アセアセ

紬「うふふ」

―――

紬「精米楽しかったね」

憂「紬さん子供みたいにはしゃいでましたね」

紬「//」

憂「スーパーにも寄ったから、必要なものはだいたい揃ったと思います」

紬「結構買ったね」

紬「小麦粉と蕎麦粉……野菜とお肉……卵と牛乳……調味料と油……」

紬「憂ちゃんのおかげでとっても安く買えちゃった。今日はありがとう」

憂「他にも私にできることがあったら言ってください」

紬「ええ、そのときはお願いね、憂ちゃん」

憂「……あの」

紬「ん?」

憂「私、紬さんのこと応援してますから」

紬「憂ちゃん、ありがとう」

―――

紬(さて、憂ちゃんは帰っちゃったし、料理を作ろうかしら)

紬(お米を炊くのもいいし、小麦粉を使って何か作ってもいいけど……)

紬「う~ん」

ピンポーン♪

紬(あら、またお客さん)

ガチャ

律「おっ、ムギやってるな」

紬「あっ、りっちゃん」

律「ほぅ、買い物してきたんだ……レシートはこれか……」

律「こんなに安く買ったのか。感心感心」ナデナデ

紬「り、りっちゃん//」

律「ムギに庶民の暮らしは難しいと思ってたけどやるもんだな」

紬「憂ちゃんのおかげよ」

律「なるほど……なら私は料理を教えてしんぜよう」

紬「りっちゃんが料理を教えてくれるの?」

律「あぁ。それで今日は何を作るんだ?」

紬「まだ決めてないんだけど」

律「それならチャーハンでも作ろうか」

紬「うん」

律「まずはフライパンを十二分に熱する……と言いたいところだけど」

紬「……?」

律「テフロン加工だとあんまり熱するのはよくないんだ」

紬「そうなんだ?」

律「しかもIHだし……まぁなんとかなるか」

律「よしムギ。まずは卵を割ってこの容器に入れてくれ」

紬「いえっさー!」パカ

律「それから箸でよく混ぜるんだ」

紬「いえっさー!」カチャカチャ

律「よしっ、次は御飯をこっちの茶碗に入れてくれ」

紬「いえっさー!」ギュッ

律「次は……温まったフライパンに油をしくんだ」

紬「いえっさー!」ドバ

律「う~ん。もうちょっと多めだな」

紬「えっ、けっこう入れたと思うけど……」

律「こら、上官に口答えするな」ポカ

紬「はいっ! りっちゃん隊長」ドバドバ

律「チャーハンはちょっと引くぐらい多めに油をいれたほうが美味しくできるんだ」

紬「そうなんだ?」

律「次はいそがしいぞ。たまごを入れて箸でかるくかき混ぜて油と卵をなじませる」

律「終わり次第即座に御飯を投入して、フライパンを振ってひっくり返す」

律「それからしゃもじでわしわしかき混ぜるんだ」

紬「た、大変そう……」

律「大丈夫。ムギならできるよ」

紬「……いきます!!」

―――

紬「失敗しちゃった……」

律「うまくひっくり返らなかったから、卵が偏っちゃったなぁ」

律「IHじゃなければ鍋振り調理できるから難易度が下がるんだけど」

律「IHで鍋振りすると鍋の温度が下がってべちゃっとしちゃうからなぁ……」

紬「そうね。あっ、りっちゃんちょっと待ってて」

律「うん?」

紬「カメラは……ここね」

紬「はいっ、りっちゃん直伝特製チャーハン(失敗)です」

律「あぁ、そういうのもしなきゃいけないんだ」

紬「うん」

紬「いただきます」

紬「……あら、意外と美味しい」

律「本当?」

紬「古米は粘り気が少ないからかしら。結構ぱらぱらしてるし、パサついてもいないし」

律「ならよかったよ」

紬「はい、りっちゃん。あ~ん」

律「む、むぎ?」

紬「あ~ん」

律「……仕方ない//」パクッ

紬「どう?」

律「……うん。意外といけるな」

◆13日目

紬(残高4200円)

紬(食材は4日分ぐらいあるし……)

紬(なんとかなりそうかしら)

ピンポーン♪

紬「は~い」

ガチャ

紬「あら、澪ちゃん」

澪「ムギ、元気にしてたか」

紬「ええ、おかげさまで」

澪「……ムギちょっと痩せたんじゃないか」

紬「そうかしら?」

澪「うん……うん……。間違いない。私も黄金伝説に出たら痩せるかな?」

紬「澪ちゃんが出たらきっとすごく人気出るわ~」

澪「そうかな?」

紬「ええ、そうよ」

澪「そうか……//」

紬「それで澪ちゃん。今日は何をしにきたの?」

澪「うん。実は特に用事があってきたわけじゃないんだ」

紬「そうなんだ。でも澪ちゃんがきてくれて嬉しいわ~」

澪「ならよかったよ」

紬「最近学校はどう?」

澪「平常運転だよ。だけど……」

紬「うん?」

澪「ムギの紅茶を飲めないのは寂しいな」

紬「……ねぇ澪ちゃん。ちょっと出かけない」

澪「いいけど、どこに行くんだ?」

紬「ついてきて」

―――

紬「とうちゃーく!」

澪「あれ、このお店って」

紬「ちょっと待っててね」

―――

紬「おまたせ」

澪「なにを買ったの?」

紬「お茶を買ったの。さぁ、帰りましょう」

―――

紬「はい、どうぞ、澪ちゃん。」

澪「ありがとう……。うん。やっぱりムギの紅茶だな~」

紬「ふふふ」ニコニコ

澪「でも良かったの? あそこのお茶って確か」

紬「大丈夫。格安で分けてもらっただけだから」

澪「そうなの?」

紬「それにこうしてお茶をいれるのは、私も楽しいから……」

紬(千円くらいなら大丈夫よね?)

澪「なぁムギ。お返しといったらなんだけど、私にアレをやらせてくれないか」

紬「アレ?」

澪「アレだよアレ」

紬「……?」

澪「ちねりのこと。私、アレをやるのが夢だったんだ」

紬「……! ええ!! 一緒にやりましょう!!!」


絵面が地味なため省略



◆26日目◆

紬(残高があと500円しかない)

紬(光熱費を考えるともう買い物はできない)

紬(これはもう伝説達成は無理かしら……)

紬(はぁ……)

ピンポーン♪

紬「は~い……」

ガチャ

梓「ムギ先輩こんにちは。来ちゃいました」

紬「あ、あずさちゃん」ダキッ

梓「えっ//」

紬「梓ちゃん大変なの、後500円しかないの!」

梓「知ってます。だから私が来たんです」

紬「?」

梓「今日はムギ先輩にこれを渡しにきたんです」

紬「これは……銛ね」

梓「銛です」

紬「……」ゴクリ

梓「……」ゴクリ

紬「海に……」

梓「海へ……」

紬「行くのね……」

梓「行くしかないです……」

紬「オヤツは?」

梓「10円までです」

紬(うまい棒にするべきかしら、それとも5円チョコ×2にするべきかしら)

―――

紬「あっ、海が見えてきた!!」

梓「なんでビーチボールを膨らませてるんですか?」

紬「えっ……」キョトン

梓「なんでそんな顔するんですか」

紬「遊ばないの?」

梓「遊びません!! 私たちは魚を捕りに行くんですから」

紬「残念……」ガックシ

―――

紬「さて、車から降りたのはいいけど、どうすればいいのかしら」

梓「まずはスタッフさんが用意してくれたウェットスーツに着替えましょう」

―――

紬「どきどきするわね」

梓「はい。私もテレビで見て一度やってみたいと思ってました」

紬「梓ちゃんも?」

梓「ムギ先輩もですか。あれは本当に楽しそうに見えますから」

紬「ええ、でも大変そうでもあるわ」

梓「だとしてもやるしかないです」

紬「そうね。もうお金はほとんどないし」

―――

紬(海にもぐったのはいいけど、お魚があまり見つからない)

紬(小さいのならたくさんいるのだけど……)

紬(あれ、あずさちゃんがこっちを見てる?)

紬(指さしてる方向には……)

紬(あれは……海のギャングと恐れられているウツボさんね!)

紬(よーく狙って……えいっ!)

紬(刺さった!! ……っと、外れちゃった)

紬(あっ、今度は梓ちゃんが銛を向けて……刺さった)

紬(でも逃げられそう。なら……私も)

紬(えいっ!!)

―――

梓「やりましたね」

紬「うんっ!」

梓「それじゃあ戻り――」

紬「ちょっとまって!」

梓「……?」


紬「獲ったどーーーーーーー!!!!!!!」


梓「お約束ですね」

紬「ええ、お約束ね」

―――

梓「どうやって調理しましょう」

紬「やっぱりそれもお約束じゃない」

梓「……やっぱりそうですか」

紬「うん」

梓「まず、中華鍋に油をなみなみと注いで」

紬「火で熱して」

梓「遠くから魚を」

紬「投げ入れる」

梓「……」

紬「……」

梓「まぁお約束ですから」

紬「やるしか無いわね」

梓「……」ゴクリ

紬「えいっ!!」ポイ

バシャン!

ボッ!!

紬「火柱がきれいねぇ……」

梓「これは、料理なんでしょうか」

紬「どうかしら?」

―――

梓「まぁまぁでしたね」

紬「ええ、食べられなくはなかったわ」

梓「それでムギ先輩」

紬「どうしたの?」

梓「これが終わったら、その……」

紬「えぇ、そうね。たぶん大丈夫だと思う」

紬「ちゃんと学校に戻れると思うわ」

梓「ほんとうですか?」

紬「ずっと心配してくれてたんだ。梓ちゃんだいすき」ダキッ

梓「///」

紬「うふふ。本当にありがとう、梓ちゃん」


◆32日目◆ 

紬「ありがとうございました」

―――

紬「一番苦労したことですか?」

紬「う~ん。特になかったです。とにかく楽しかったから」

紬「部活のみんなも遊びにきてくれたし……」

―――

紬「えっ、数字が良かった? SPでちねり二時間ノーカット放送が決まったんですか?」

紬「ええ、澪ちゃんもきっと喜んでくれると思います」


―――


紬「ふぅ……やっと終わった」

唯「むーぎーちゃん!」

紬「あっ、唯ちゃん」

唯「やっと終わったねムギちゃん」

紬「さっき斎藤から電話があったんだけど、お父様の会社も持ち直したみたい」

唯「……! じゃあ」

紬「えぇ、これで学校にも戻れるわ」

唯「やったね」ダキッ

紬「もう……唯ちゃんったら//」

―――

唯「それにしてもよく一万円で生活できたねー」

紬「えぇ、これもみんなが来てくれたおかげだわー」

唯「ムギちゃんの頑張りがあってこそだよ」

紬「……ねぇ、唯ちゃん」

唯「なぁに?」

紬「あのね、こんなの聞くようなことじゃないかもしれないけど、どうして唯ちゃんはきてくれなかったの?」

唯「あっ、それはね……」

唯「私は他のみんなみたいに出来ること無いから、迷惑かけるだけかなーって思って……」

紬「……そんなことない」

唯「ムギちゃん?」

紬「唯ちゃんと774時間も会えなくてとっても寂しかったもん」ダキッ

唯「ムギちゃん……かぞえてたんだ」ヨシヨシ

紬「……うん」

唯「もう……ムギちゃんは寂しがりやさんだね」

紬「……うん」

唯「実は、私も寂しかったんだよ。ムギちゃんと会えなくて」

紬「ほんとう?」

唯「うん」

紬「私、唯ちゃんとお話したいこと沢山あるの」

唯「うん。私も。だから……これ」

紬「……? 書類?」

唯「一週間スイーツだけで過ごす企画だって。さっきプロデューサーの人に渡されたんだけど」

紬「私と唯ちゃんの二人で一週間スイーツだけで?」

唯「うん。これをやってみない?」

紬「ふふふ」

唯「むぎちゃん?」

紬「唯ちゃんは私と一緒にそれに出たいのかしら? それともスイーツが食べたいの?」

唯「……ひみつかな」

紬「うふふ。じゃあ唯ちゃん。一週間お願いします」

唯「まだ企画なのに……でも一週間よろしくね、ムギちゃ――」

律「あっ、いたいた」

梓「やっと見つけました」

澪「探したんだぞ」

憂「お姉ちゃん、紬さん……」

紬「あっ、みんな……」

澪「実はさっきプロデューサーの人にこういう企画を渡されたんだ」

紬「これは……えっ、澪ちゃんと私でダイエットする企画?」

梓「私も渡されました」

紬「梓ちゃんと私で釣りをする企画?」

律「私も……」

紬「りっちゃんと私でハニカミデート?」

憂「実は、私もです」

紬「憂ちゃんと私で農業をやる企画?」

唯「だっ、駄目だよ! ムギちゃんは私と一緒に一週間スイーツ生活やるんだからっ!」

梓「駄目です。私と釣りで自給自足やるのが先です!」

澪「なぁムギ。その道のプロがダイエットの指導してくれるらしいんだ。テレビに出るのはちょっと恥ずかしいけど……」

律「はにかみでーとなんて似合わね~し//」

憂「紬さんと農作……//」


紬「うふふふ」

紬(お父様、紬は今とっても幸せです。)


それから先の話を少しだけ。

紬父の買った宝くじと馬券があたり、結果的に紬嬢のギャラは必要なかった。
彼女は黄金伝説のギャラをHTTのCDを販売するために使った。

軽音部関連の企画はことごとくヒットし、
彼女たちは黄金伝説のレギュラーとなり、
HTTはメジャーデビューへの階段を登り始めることになるのだが……。

そのお話は別の機会に。


おしまいっ!



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ムギちんの親が大失敗で、今までの人生が一転、貧乏節約生活!命懸けの一ヶ月1万円生活!果たして元の生活に戻れるのか。お父さんが再起をかけて、全財産で買った宝くじと競馬は当たるのか!?



◯紬「私、一ヶ月一万円生活するのが夢だったの~」


唯「えっ、ムギちゃん黄金伝説に出るの?」

紬「うん」

唯「獲ったどーーー!! のアレ?」

紬「そうだよ」

唯「でも、どうしてイキナリ?」

紬「実はね、お父様が事業で失敗しちゃって、再起のためにお金が必要になったの」

唯「えっ」

紬「それでね、そのお金を稼ぐために一ヶ月だけ休学して番組に出演させてもらうことにしたの」

唯「……ムギちゃんのお父さんお仕事で失敗しちゃったんだ?」

紬「えぇ……そうなの」

唯「でも、テレビに出ても多くて数十万円しか貰えないよね。それくらいでどうにかなるの?」

紬「それなんだけど、結構な額をもらえるみたいなの」

紬「実はテレビ局の人がお父様に恩があるらしいんだけど……」

紬「直接お金を渡すと贈与税で国に持っていかれちゃうから、ギャラという形で渡したほうが節税になるとかで」

紬「私が番組に出ることになったの」

紬「そのお金さえ入れば、お父様の会社は不渡りを出さずに済むから……」

唯「た、大変だね~」

紬「ううん。むしろすっごく楽しみ! 私、黄金伝説に出るのが夢だったから」

唯「あっ、それはわかるかも」

紬「唯ちゃんも?」

唯「私もね、一度出てみたかったんだー。スイーツで一週間過ごすやつとか」

紬「あっ、私もそれに出てみたい」

唯「でもムギちゃんが出るのは一ヶ月一万円生活なんだよね?」

紬「えぇ。私で大丈夫かしら……」

唯「……」

◆1日目◆

スタッフ「それでは一万円を渡します」

紬「はい!」

スタッフ「光熱費や水道料金は毎晩徴収にきますので」

紬「はい!」

スタッフ「ではご健闘を」

紬「ありがとうございます」ペコリ

紬(さて、何からはじめましょうか)

紬(あっ、まず電気を消さなきゃ)

紬(……ブレーカーごと落としちゃえ。えいっ!!)

紬(うん。これでよし!)

紬(テレビ局の人には途中でギブアップしてもいいって言われたけど、やれるだけのことはやらないと)

紬(……うん)

紬(まずは買い物だけど……どこのスーパーが安いのかな)

紬(普段スーパーに行かないから全然わからないわ)

紬(どうしましょう……)

ピンポーン♪

紬(あれ、お客さん?)

ガチャ

紬「どちらさま?」

憂「こんにちはー」

紬「あれっ、憂ちゃん?」

憂「はい。きちゃいました」

紬「今、番組の収録中なんだけど」

憂「だからです。紬さんは買い物とか慣れてないんじゃないかって思って」

紬(唯ちゃんが頼んでくれたのね。ありがとう……)

紬「それじゃあ憂ちゃん、今日はお願いしますっ!」

憂「はい! 任せてください」

―――

紬「どこへ向かってるの? こっちには田んぼしかないみたいだけど」

憂「農家に直接お米をわけてもらいに行くんです」

紬「そんなことができるの?」

憂「はい。お爺ちゃんの知り合いが農家をやっているんですよ」

紬「そうなんだ」

憂「お米を安く買うにはこうするしかないんです」

紬「そうなの?」

憂「はい。稲作を関税障壁で保護するために外国米には高い関税がかけられていますし」

憂「国産米は国が正規の価格を決めていますから」

紬「へぇ~」

憂「だから農家の人と直接交渉して、市場に回さず自家消費用にとっておいた、二級品のお米をわけてもらうんです」

紬「なるほど……」

憂「古米だからその分味は落ちちゃいますけど……」

紬「それは大丈夫。それくらいはしないと一万円生活なんて無理だもの」

憂「……そうですね」

紬「確か古米って粘りがちょっと弱いのよね」

憂「そうです。だから炒飯などに向いてるかもしれません」

紬「ふぅん」

憂「実はお姉ちゃんは新米と古米の違いに気づきません。……あっ、これは内緒で」

紬「……憂ちゃん。いま収録中よ」

憂「……」

紬「憂ちゃん?」

憂「ご、ごめんね、お姉ちゃん」アセアセ

紬「うふふ」

―――

紬「精米楽しかったね」

憂「紬さん子供みたいにはしゃいでましたね」

紬「//」

憂「スーパーにも寄ったから、必要なものはだいたい揃ったと思います」

紬「結構買ったね」

紬「小麦粉と蕎麦粉……野菜とお肉……卵と牛乳……調味料と油……」

紬「憂ちゃんのおかげでとっても安く買えちゃった。今日はありがとう」

憂「他にも私にできることがあったら言ってください」

紬「ええ、そのときはお願いね、憂ちゃん」

憂「……あの」

紬「ん?」

憂「私、紬さんのこと応援してますから」

紬「憂ちゃん、ありがとう」

―――

紬(さて、憂ちゃんは帰っちゃったし、料理を作ろうかしら)

紬(お米を炊くのもいいし、小麦粉を使って何か作ってもいいけど……)

紬「う~ん」

ピンポーン♪

紬(あら、またお客さん)

ガチャ

律「おっ、ムギやってるな」

紬「あっ、りっちゃん」

律「ほぅ、買い物してきたんだ……レシートはこれか……」

律「こんなに安く買ったのか。感心感心」ナデナデ

紬「り、りっちゃん//」

律「ムギに庶民の暮らしは難しいと思ってたけどやるもんだな」

紬「憂ちゃんのおかげよ」

律「なるほど……なら私は料理を教えてしんぜよう」

紬「りっちゃんが料理を教えてくれるの?」

律「あぁ。それで今日は何を作るんだ?」

紬「まだ決めてないんだけど」

律「それならチャーハンでも作ろうか」

紬「うん」

律「まずはフライパンを十二分に熱する……と言いたいところだけど」

紬「……?」

律「テフロン加工だとあんまり熱するのはよくないんだ」

紬「そうなんだ?」

律「しかもIHだし……まぁなんとかなるか」

律「よしムギ。まずは卵を割ってこの容器に入れてくれ」

紬「いえっさー!」パカ

律「それから箸でよく混ぜるんだ」

紬「いえっさー!」カチャカチャ

律「よしっ、次は御飯をこっちの茶碗に入れてくれ」

紬「いえっさー!」ギュッ

律「次は……温まったフライパンに油をしくんだ」

紬「いえっさー!」ドバ

律「う~ん。もうちょっと多めだな」

紬「えっ、けっこう入れたと思うけど……」

律「こら、上官に口答えするな」ポカ

紬「はいっ! りっちゃん隊長」ドバドバ

律「チャーハンはちょっと引くぐらい多めに油をいれたほうが美味しくできるんだ」

紬「そうなんだ?」

律「次はいそがしいぞ。たまごを入れて箸でかるくかき混ぜて油と卵をなじませる」

律「終わり次第即座に御飯を投入して、フライパンを振ってひっくり返す」

律「それからしゃもじでわしわしかき混ぜるんだ」

紬「た、大変そう……」

律「大丈夫。ムギならできるよ」

紬「……いきます!!」

―――

紬「失敗しちゃった……」

律「うまくひっくり返らなかったから、卵が偏っちゃったなぁ」

律「IHじゃなければ鍋振り調理できるから難易度が下がるんだけど」

律「IHで鍋振りすると鍋の温度が下がってべちゃっとしちゃうからなぁ……」

紬「そうね。あっ、りっちゃんちょっと待ってて」

律「うん?」

紬「カメラは……ここね」

紬「はいっ、りっちゃん直伝特製チャーハン(失敗)です」

律「あぁ、そういうのもしなきゃいけないんだ」

紬「うん」

紬「いただきます」

紬「……あら、意外と美味しい」

律「本当?」

紬「古米は粘り気が少ないからかしら。結構ぱらぱらしてるし、パサついてもいないし」

律「ならよかったよ」

紬「はい、りっちゃん。あ~ん」

律「む、むぎ?」

紬「あ~ん」

律「……仕方ない//」パクッ

紬「どう?」

律「……うん。意外といけるな」

◆13日目

紬(残高4200円)

紬(食材は4日分ぐらいあるし……)

紬(なんとかなりそうかしら)

ピンポーン♪

紬「は~い」

ガチャ

紬「あら、澪ちゃん」

澪「ムギ、元気にしてたか」

紬「ええ、おかげさまで」

澪「……ムギちょっと痩せたんじゃないか」

紬「そうかしら?」

澪「うん……うん……。間違いない。私も黄金伝説に出たら痩せるかな?」

紬「澪ちゃんが出たらきっとすごく人気出るわ~」

澪「そうかな?」

紬「ええ、そうよ」

澪「そうか……//」

紬「それで澪ちゃん。今日は何をしにきたの?」

澪「うん。実は特に用事があってきたわけじゃないんだ」

紬「そうなんだ。でも澪ちゃんがきてくれて嬉しいわ~」

澪「ならよかったよ」

紬「最近学校はどう?」

澪「平常運転だよ。だけど……」

紬「うん?」

澪「ムギの紅茶を飲めないのは寂しいな」

紬「……ねぇ澪ちゃん。ちょっと出かけない」

澪「いいけど、どこに行くんだ?」

紬「ついてきて」

―――

紬「とうちゃーく!」

澪「あれ、このお店って」

紬「ちょっと待っててね」

―――

紬「おまたせ」

澪「なにを買ったの?」

紬「お茶を買ったの。さぁ、帰りましょう」

―――

紬「はい、どうぞ、澪ちゃん。」

澪「ありがとう……。うん。やっぱりムギの紅茶だな~」

紬「ふふふ」ニコニコ

澪「でも良かったの? あそこのお茶って確か」

紬「大丈夫。格安で分けてもらっただけだから」

澪「そうなの?」

紬「それにこうしてお茶をいれるのは、私も楽しいから……」

紬(千円くらいなら大丈夫よね?)

澪「なぁムギ。お返しといったらなんだけど、私にアレをやらせてくれないか」

紬「アレ?」

澪「アレだよアレ」

紬「……?」

澪「ちねりのこと。私、アレをやるのが夢だったんだ」

紬「……! ええ!! 一緒にやりましょう!!!」


絵面が地味なため省略



◆26日目◆

紬(残高があと500円しかない)

紬(光熱費を考えるともう買い物はできない)

紬(これはもう伝説達成は無理かしら……)

紬(はぁ……)

ピンポーン♪

紬「は~い……」

ガチャ

梓「ムギ先輩こんにちは。来ちゃいました」

紬「あ、あずさちゃん」ダキッ

梓「えっ//」

紬「梓ちゃん大変なの、後500円しかないの!」

梓「知ってます。だから私が来たんです」

紬「?」

梓「今日はムギ先輩にこれを渡しにきたんです」

紬「これは……銛ね」

梓「銛です」

紬「……」ゴクリ

梓「……」ゴクリ

紬「海に……」

梓「海へ……」

紬「行くのね……」

梓「行くしかないです……」

紬「オヤツは?」

梓「10円までです」

紬(うまい棒にするべきかしら、それとも5円チョコ×2にするべきかしら)

―――

紬「あっ、海が見えてきた!!」

梓「なんでビーチボールを膨らませてるんですか?」

紬「えっ……」キョトン

梓「なんでそんな顔するんですか」

紬「遊ばないの?」

梓「遊びません!! 私たちは魚を捕りに行くんですから」

紬「残念……」ガックシ

―――

紬「さて、車から降りたのはいいけど、どうすればいいのかしら」

梓「まずはスタッフさんが用意してくれたウェットスーツに着替えましょう」

―――

紬「どきどきするわね」

梓「はい。私もテレビで見て一度やってみたいと思ってました」

紬「梓ちゃんも?」

梓「ムギ先輩もですか。あれは本当に楽しそうに見えますから」

紬「ええ、でも大変そうでもあるわ」

梓「だとしてもやるしかないです」

紬「そうね。もうお金はほとんどないし」

―――

紬(海にもぐったのはいいけど、お魚があまり見つからない)

紬(小さいのならたくさんいるのだけど……)

紬(あれ、あずさちゃんがこっちを見てる?)

紬(指さしてる方向には……)

紬(あれは……海のギャングと恐れられているウツボさんね!)

紬(よーく狙って……えいっ!)

紬(刺さった!! ……っと、外れちゃった)

紬(あっ、今度は梓ちゃんが銛を向けて……刺さった)

紬(でも逃げられそう。なら……私も)

紬(えいっ!!)

―――

梓「やりましたね」

紬「うんっ!」

梓「それじゃあ戻り――」

紬「ちょっとまって!」

梓「……?」


紬「獲ったどーーーーーーー!!!!!!!」


梓「お約束ですね」

紬「ええ、お約束ね」

―――

梓「どうやって調理しましょう」

紬「やっぱりそれもお約束じゃない」

梓「……やっぱりそうですか」

紬「うん」

梓「まず、中華鍋に油をなみなみと注いで」

紬「火で熱して」

梓「遠くから魚を」

紬「投げ入れる」

梓「……」

紬「……」

梓「まぁお約束ですから」

紬「やるしか無いわね」

梓「……」ゴクリ

紬「えいっ!!」ポイ

バシャン!

ボッ!!

紬「火柱がきれいねぇ……」

梓「これは、料理なんでしょうか」

紬「どうかしら?」

―――

梓「まぁまぁでしたね」

紬「ええ、食べられなくはなかったわ」

梓「それでムギ先輩」

紬「どうしたの?」

梓「これが終わったら、その……」

紬「えぇ、そうね。たぶん大丈夫だと思う」

紬「ちゃんと学校に戻れると思うわ」

梓「ほんとうですか?」

紬「ずっと心配してくれてたんだ。梓ちゃんだいすき」ダキッ

梓「///」

紬「うふふ。本当にありがとう、梓ちゃん」


◆32日目◆ 

紬「ありがとうございました」

―――

紬「一番苦労したことですか?」

紬「う~ん。特になかったです。とにかく楽しかったから」

紬「部活のみんなも遊びにきてくれたし……」

―――

紬「えっ、数字が良かった? SPでちねり二時間ノーカット放送が決まったんですか?」

紬「ええ、澪ちゃんもきっと喜んでくれると思います」


―――


紬「ふぅ……やっと終わった」

唯「むーぎーちゃん!」

紬「あっ、唯ちゃん」

唯「やっと終わったねムギちゃん」

紬「さっき斎藤から電話があったんだけど、お父様の会社も持ち直したみたい」

唯「……! じゃあ」

紬「えぇ、これで学校にも戻れるわ」

唯「やったね」ダキッ

紬「もう……唯ちゃんったら//」

―――

唯「それにしてもよく一万円で生活できたねー」

紬「えぇ、これもみんなが来てくれたおかげだわー」

唯「ムギちゃんの頑張りがあってこそだよ」

紬「……ねぇ、唯ちゃん」

唯「なぁに?」

紬「あのね、こんなの聞くようなことじゃないかもしれないけど、どうして唯ちゃんはきてくれなかったの?」

唯「あっ、それはね……」

唯「私は他のみんなみたいに出来ること無いから、迷惑かけるだけかなーって思って……」

紬「……そんなことない」

唯「ムギちゃん?」

紬「唯ちゃんと774時間も会えなくてとっても寂しかったもん」ダキッ

唯「ムギちゃん……かぞえてたんだ」ヨシヨシ

紬「……うん」

唯「もう……ムギちゃんは寂しがりやさんだね」

紬「……うん」

唯「実は、私も寂しかったんだよ。ムギちゃんと会えなくて」

紬「ほんとう?」

唯「うん」

紬「私、唯ちゃんとお話したいこと沢山あるの」

唯「うん。私も。だから……これ」

紬「……? 書類?」

唯「一週間スイーツだけで過ごす企画だって。さっきプロデューサーの人に渡されたんだけど」

紬「私と唯ちゃんの二人で一週間スイーツだけで?」

唯「うん。これをやってみない?」

紬「ふふふ」

唯「むぎちゃん?」

紬「唯ちゃんは私と一緒にそれに出たいのかしら? それともスイーツが食べたいの?」

唯「……ひみつかな」

紬「うふふ。じゃあ唯ちゃん。一週間お願いします」

唯「まだ企画なのに……でも一週間よろしくね、ムギちゃ――」

律「あっ、いたいた」

梓「やっと見つけました」

澪「探したんだぞ」

憂「お姉ちゃん、紬さん……」

紬「あっ、みんな……」

澪「実はさっきプロデューサーの人にこういう企画を渡されたんだ」

紬「これは……えっ、澪ちゃんと私でダイエットする企画?」

梓「私も渡されました」

紬「梓ちゃんと私で釣りをする企画?」

律「私も……」

紬「りっちゃんと私でハニカミデート?」

憂「実は、私もです」

紬「憂ちゃんと私で農業をやる企画?」

唯「だっ、駄目だよ! ムギちゃんは私と一緒に一週間スイーツ生活やるんだからっ!」

梓「駄目です。私と釣りで自給自足やるのが先です!」

澪「なぁムギ。その道のプロがダイエットの指導してくれるらしいんだ。テレビに出るのはちょっと恥ずかしいけど……」

律「はにかみでーとなんて似合わね~し//」

憂「紬さんと農作……//」


紬「うふふふ」

紬(お父様、紬は今とっても幸せです。)


それから先の話を少しだけ。

紬父の買った宝くじと馬券があたり、結果的に紬嬢のギャラは必要なかった。
彼女は黄金伝説のギャラをHTTのCDを販売するために使った。

軽音部関連の企画はことごとくヒットし、
彼女たちは黄金伝説のレギュラーとなり、
HTTはメジャーデビューへの階段を登り始めることになるのだが……。

そのお話は別の機会に。


おしまいっ!