※リクエスト
けいおんメンバーはある日、3年前育児放棄した常にグラサンをかけアゴヒゲもじゃい手袋つけた父親に呼び出される。そこで待っていたのは巨大な怪物、そして巨人だった。父親はこの巨人に搭乗し、怪物と戦ってこいとほざく。若干納得がいかない中、お前が乗らなきゃ重症の女の子が戦う事になる、とのたまい、え?どんだけ自分たちが悪い空気作りたいの?と思いつつ巨人に搭乗する。彼女達の運命はいかに…
三年前に失踪したお父さんから一通のメールがきたのは昨日のこと。
友達を連れて第三新東京に来いって。
澪ちゃんに話したところ、一緒に来てくれることになった。
澪「待ち合わせ、ここでいいのか?」
唯「うん。その筈なんだけど……」
ムギちゃんとりっちゃんが失踪して久しい。
さわ子先生も一身上の理由で学校を辞めてしまい、けいおん部は事実上消滅した。
澪「……あれはなんだ?」
見上げると、大きな怪獣がいた。
怪獣?
怪獣だよね?
なんで怪獣がいるの?
澪「唯、逃げるぞ」
私はじっと怪獣を見ていた。
二本足で歩く怪獣。
その足音は大地を揺らし。
その体は太陽を隠す。
大きな怪獣。
澪「おいっ! 唯ってば!! おい!!!」
唯「……えっ?」
気づくと怪獣はすぐ傍に近づいていた。
澪「行くぞっ!」
澪ちゃんが私の手を掴んで走りだした。
私は澪ちゃんにひっぱられるまま怪獣から逃げた。
なんだこれ! なんでこんなことに。
さわ子「乗って!」
唯「さわちゃん!?」
私と澪ちゃんは、さわちゃんの車に乗った。
唯「ねぇ、澪ちゃん。これ現実じゃないよね?」
澪「えっ……」
唯「だって怪獣なんているわけないし」
澪「でも、あれ…」
澪ちゃんの見つめた先にはあの怪獣がいた。
さわ子「残念ながら現実よ」
さわ子「あれは使徒」
さわ子「人類の敵」
さわ子「私達の敵」
さわ子「そして、あなたたちの戦うべき敵」
唯「どういうこと? わけわかんないよ」
さわ子「説明している暇はないわ。早く降りて」
唯「えっ、ここ何もないじゃん」
さわ子「早く」
私達は急かされるままに車を降りた。
さわちゃんは地面をいじりはじめた。
しばらくすると、アスファルトのから四角い建造物が生えてきた。
さわ子「さぁ、これに乗って」
澪「エレベーター…?」
さわ子「そう。早く」
エレベーターはプールのある部屋に繋がっていた。
プールといっても中に入ってるのは赤い液体。
赤い液体の中には、赤い巨人がいた。
和「きたわね」
唯「和ちゃん!」
モニターに和ちゃんが映しだされた。
和ちゃん――中学まで一緒だった大切な幼馴染み。
高校に入ってから音信不通だったけど、こんなところで何を?
和「さっそくだけど唯、澪、これに乗って戦ってちょうだい」
澪「誰だよ!?」
澪「乗って戦えって? そんなの無理。絶対無理!!」
唯「和ちゃん……私も無理だよ」
和「そう。あなた達には失望したわ」
和ちゃんは、私の知らない顔をした。
和「さわ子先生、二人は使えますか?」
さわ子「……正直きついでしょうが、それしかないのね」
さわちゃんは走ってどこかへ行ってしまった。
唯「和ちゃん、あれはなんなの?」
私はモニターに映った怪獣を指さした。
和「あれは使徒よ。人類の敵」
唯「そうじゃなくて……なんであんな怪獣がいるの?」
和「その問いかけは無意味よ、唯」
和「どんな理屈であれ、使徒は既に生まれてしまった」
和「そして使徒を倒さなければ、滅びるのは私達よ」
澪「じゃあ、これはなんなんだ」
澪ちゃんが目の前の赤い巨人を指さした。
和「人形決戦兵器えう"ぁんげりおんよ」
唯「えう"ぁんげりおん?」
和「そう。使徒と戦うための切り札」
和「二人乗りの、人造人間」
澪「なんで私達が乗らなきゃいけないんだ? 軍人さんとか」
和「あなたたち以外乗れないから」
澪「なんでだ!」
和「理由を言っても仕方ないわ」
澪「話にならない」
そうこう言っているうちに、さわちゃんが戻ってきた。
片手で車椅子を押しながら、もう片方の手で包帯だらけの子を引っ張ってきた。
えっ……あれって。
唯「ムギちゃん!? りっちゃん!?」
澪「りつ!!!!」
紬「唯ちゃん……来てしまったのね」
ムギちゃんは片方の目をそらした。
もう片方の目は包帯に隠れて見えない。
りっちゃんは澪ちゃんをじっと見つめていた。
さわ子「いけるかしら」
律「はい!」
紬「大丈夫です!」
唯「えっ、ムギちゃんとりっちゃんが戦うの?」
澪「そんな体で、無茶だ!」
紬「……大丈夫だから」
律「そうだぞ、澪。心配しなくても私達がなんとかするから、な」
澪「そんな……律…なんで」
律「悪いな、澪。誰かがやらなきゃならないんだ」
唯「ムギちゃん……これって現実なんだよね」
ムギちゃんはゆっくりと頷いた。
唯「…………私、やります」
みんなが私を見た。
唯「私、えう"ぁに乗ります。やらせてください!」
澪「私もやる!」
澪ちゃんも続いた。
紬「そんな…。唯ちゃん達が戦う必要なんてないのに」
律「澪、やめてくれ」
唯「大丈夫。あんな怪獣さっさと倒しちゃうから。ムギちゃんはここで見てて」
澪「ああ、私達に任せとけ」
さわ子「決まったようね。じゃあついてきて」
さわちゃんが駈け出した。
私達もそれを追って走り出した。
なんとかなるよね?
直「嫌な役割を押し付けてしまい、すいませんでした」
和「気にしなくていいのよ。必要なことだから」
直「ですが…」
和「それより唯達のサポートを頼むわ、直」
直「はい。全力で――」
私たちは液体の中にいた。L.C.L.というらしい。
中にいても息ができる不思議な液体だ。
澪「準備はいいか?」
唯「うん。でもこれどうやって操縦すれば」
さわ子「ふたりとも、今はえう"ぁに乗ってくれたことに感謝するわ」
さわ子「えう"ぁはあなた達がイメージしたとおりに動くから」
さわ子「えう"ぁんげりおん弐号機、射出!」
なにもわからないまま私達の乗った赤いロボットは発射された。
地上に出ると目の前には怪獣。
この巨人と同じ大きさの怪獣。
澪「立たないと」
さわ子「なにしてるのあの子達」
直「立てないのかと…。訓練してませんから」
さわ子「早く立って、立ちあがるイメージよ」
唯「そう言われても」
澪「立て、立て、立て、立て」
唯「立った!」
立ったと同時に、怪獣の手から何か生えてきた。
えっ?
私の右手がなくなった。
えっ?
唯「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
澪「…………」
さわ子「落ち着いて、ふたりとも、えう"ぁの手がやられただけだから」
直「やっぱり二人にはまだ…」
和「これしか方法はないのよ。今はできることを…」
唯「はーっ、はーっ、はーっ」
和「落ち着いて唯。あなたの左手は大丈夫だから」
左手を見る。確かにある。
澪ちゃんは……気絶してしまったようだ。
和「プログレッシブナイフを使うのよ、唯」
唯「これ?」
和「ええ」
律「……ムギ」
紬「……ええ」
唯「うわあああああああああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
プログレッシブナイフを構え、全速力で怪獣に向かって走った。
目指すは中心の赤い玉。
きっとあれが弱点だ。
しかし、怪獣にぶつかる直前でナイフが止まった。
唯「なんで!?」
和「ATフィールド……」
和「直、なんとかならない?」
直「無理です」
怪獣が手を突き出した。
あっ、私死ぬのかな?
「唯ちゃん!!」
青い巨人が怪獣に体当たりしたおかげで、私は死なずに済んだ。
この声は…。
唯「ムギちゃん!?」
和「零号機!? 誰が乗っているの?」
律「私とムギだ」
和「律なの? 無茶よ。やめなさい」
紬「唯ちゃんと澪ちゃんだけで使徒を倒すほうが無茶よ」
和「だからって…」
その時だった。
和ちゃんが喋っているその途中――。
使徒の攻撃が青い巨人を貫いていた。
ちょうど心臓の部分。
唯「ムギちゃん!? りっちゃん!?」
紬「……」
律「……」
唯「返事してよ!!!」
紬「……」
律「……」
和「唯っ!!」
唯「あっ……」
ムギちゃんとりっちゃんに気を取られてる間に、怪獣が迫っていた。
怪獣の手が私の頭を掴んだ。
骨のようなものが伸びてくる。
私の頭は貫かれた。
唯「私、死んだのかな」
唯「死ぬのは嫌だな」
唯「まだギターも弾きたいし」
唯「憂とおしゃべりしたいし」
唯「りっちゃんと遊びにいきたいし」
唯「澪ちゃんの照れるところも見たいし」
唯「ムギちゃんの紅茶も飲みたいし」
唯「でも仕方ないよね」
唯「死んじゃったら諦めるしかないもん」
紬「唯ちゃんはそれでいいの?」
唯「だってしかたないじゃん」
紬「そうかな?」
唯「そうだよ」
紬「唯ちゃんはもう学校に行けなくていいの?」
紬「友達と遊べなくていいの?」
紬「けいおん部で演奏できなくていいの?」
紬「りっちゃんと悪ふざけできなくなってもいいの?」
紬「澪ちゃんのパンツを見れなくなってもいいの?」
紬「……私と会えなくなってもいいの?」
唯「……」
唯「……」
紬「本当に…いいの?」
唯「……」
唯「……ムギちゃん。私まだ死にたくない」
唯「死にたくないよ…」
紬「大丈夫。唯ちゃんは私が守るから」
唯「ムギちゃん?」
紬「唯ちゃん、私とひとつになりましょう」
唯「ひとつに?」
紬「ええ。あの二人もひとつになったわ」
唯「りっちゃんと澪ちゃんのこと?」
紬「うん」
直「えう"ぁんげりおん零号機、弐号機、ともに完全に沈黙」
直「ゲル化していきます」
和「もう駄目なの…?」
直「待って下さい。この反応は…………パターン白、新たなえう"ぁです」
さわ子「なにが起こっているというの」
直「溶け合わさったゲルが人の形になっていく……これは…」
さわ子「紫色の巨人…」
和「初号機だとでもいうの!?」
紬「唯ちゃん、わかる?」
律「唯大丈夫か?」
澪「やってしまえ、唯っ!」
唯「うんっ!」
今ならわかる。これは私だ。このえう"ぁは私だ。
私が歩けばえう"ぁは歩く。
私が踊ればえう"ぁも踊る。
そう。簡単なこと。
怪獣が骨のようなものを伸ばして攻撃してくる。
でもこんなもの、ちょっと右に動くだけでかわせる。
お返しに右ストレートを叩きこんでやる。
ATフィールドに阻まれたけど、要領はわかった。
さわ子「普通の人間みたいに動いてる」
直「シンクロ率118%。凄い」
紬「唯ちゃん、私がATフィールドを侵食するからその間に攻撃して」
唯「そんなことできるの?」
紬「ええ」
紬「さぁ、私とひとつになりましょう」
あっ…なにか入ってきた。
拒絶したいと思う心。
自分以外の全てを消してしまいたいという心。
これは……怪獣の心?
心の壁?
唯「ねぇ、ムギちゃん」
紬「なぁに?」
唯「この戦いが終わったら焼きラーメン食べに行こっ」
紬「焼きラーメン? 行く行く!」
律「なぁ澪、私達も」
澪「わざわざ便乗して死亡フラグ立てようとするな、馬鹿律」
りっちゃんと澪ちゃんが楽しそうに話してる。
この戦い、勝てる!
プログレッシブナイフを両手に構える。
もう負ける要因なんてない。
思いっきり走って、怪獣のコアに2本のナイフを突き立てる。
怪獣は断末魔の叫びの後、十字架のなかに消えていった。
戦いの後色々あったけど、それは割愛する。
次の日、私はムギちゃんとの約束を果たすべく、待ち合わせの場所へ向かった。
唯「あれっ、ムギちゃん、怪我はもういいの?」
紬「うん。私は二人目だから」
唯「えっ」
紬「なんでもないよ。さっ、早く焼きラーメン食べに行こ!」
そう言うと、ムギちゃんはクスッと笑った。
怪獣との戦いは、まだ終わったわけではないらしい。
またパイロットとして私は戦うことになると思う。
お父さんとも会えていないし、問題は山積みだ。
だけどきっと大丈夫。
そんな気がするんだ。
その頃ドイツでは
梓「待っているです。日本のチルドレン達。この
中野梓が格の違いというものを見せてやります」
その頃月面では
全裸菫「今度こそお姉ちゃんだけは幸せにしてみせるから」
おしまいっ!
最終更新:2014年04月02日 12:33