———琴吹邸前———
唯「………………」
梓「………………」
澪「………………」
律「……すげえな」
澪「ま、まあ、あれだけ大きな別荘をいくつも持ってるんだから
家も相当なものだろうと思ってはいたけど……」
唯「あっ!あずにゃん、あそこに監視カメラがついてるよ〜。ピースピース!」
梓「や、やめてください!恥ずかしいですよ……」
律「とにかくいつまでも門の前で突っ立っててもしょうがない。澪、チャイム押してくれ」
澪「えっ?わ、私!?律が押せばいいだろ!」
唯「はいはーい!私押したい!」フンスフンス!
律「よーし、唯隊員!二人で一緒に押すかー!?」
唯「了解です、りっちゃん隊員!」
ピンポーン
梓「澪先輩……なにか手土産みたいなもの買ってきたほうが良かったでしょうか……?」
澪「いや、まあ友達の家に遊びに来ただけだし……」
———玄関———
紬「いらっしゃ〜い。ごめんね?今日はわざわざお家に遊びに来てもらっちゃって」
澪「ひゃっ、ひゃい!ほ、本日はお招きいただきまして……」カチコチ
律「落ち着け、澪」
梓「ムギ先輩、お邪魔します」
唯「やっほームギちゃん!おじゃましまーす♪」
?「あっ、い、いらっしゃいませ!」ペコリ
唯「はわわ、が、外人さんだ……えっと、あ、あいきゃんすぴーくいんぐりっしゅ!」アタフタ
梓「喋れることになっちゃってますよ、唯先輩」
?「す、すいません!わ、私、英語はあまり得意じゃなくて……!
あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅです……」アタフタ
澪「あの、ムギ?こちらは……?」
紬「この子は
斉藤菫っていうの。私の……妹みたいなものかな?」
梓「妹……」
律「……みたいなもの?」
澪(律、あんまり突っ込んで聞くなよ?複雑な家庭事情とかあるかもしれないんだから)ヒソヒソ
律(わ、わかってるよ!)ヒソヒソ
唯「おぉう!私達、有名人……?」
律「ほほぅ……放課後ティータイムの名声はムギの家にまで伝わっているか……!」ニヤリ
菫「い、いえ、その……お嬢様が軽音部のみなさんの話をよくしてくれますから……」
紬「菫?みんなの前で『お嬢様』はやめて?」
菫「あ……うん。ごめんね、お姉ちゃん」
梓「菫ちゃんはいくつなの?」
菫「14歳…中学三年生です」
律「じゃあ来年高校かーどこいくか決めてるの?」
菫「はい。桜が丘を受験しようかと……」
唯「おぉ!じゃあ私達の後輩になるんだー。楽しみー♪」
澪「唯、来年は私達卒業してるんだぞ?」
唯「あっ、そっか……残念……でも、あずにゃんがいるから大丈夫だね!」
梓「なにが大丈夫なのかわかりませんけど……まあ、その…よろしくね?菫ちゃん」
菫「は、はいっ!よろしくお願いします!」ペコリ
紬「さあ、こんな所で立ち話もなんだし……私の部屋に行きましょうか」
菫「あっ、じゃあ私はお茶の用意を……」
紬「お茶はもう私の部屋に用意してあるわ。菫も一緒にお喋りしましょう?」
菫「え、でも……」
紬「ねぇみんな、菫も一緒でいいでしょ?」
律「おうよ!」
唯「もっちろん!」
紬「さあさあ、いくわよ、菫♪」グイグイ
菫「わゎっ!ちょっとお姉ちゃん、そんなに引っ張らないで……」
———廊下———
唯「ふわー…すごーい…部屋がいっぱいあるねー」キョロキョロ
梓「キョロキョロしないでまっすぐ歩いてください唯先輩。迷子になっちゃいますよ」
澪「冗談抜きでホントに迷子になりそうだよな」
唯「でもすごいよねー。これだけ広いとかくれんぼとかできそう!」
紬「あ、私ちっちゃい頃、菫とメイドのみんなでやったことある!懐かしいわー♪」
律「かくれんぼか……確かに懐かしいなー……唯、ムギ、やるか?」ニヤリ
澪「お、おい律!人の家でなに勝手に……」
紬「受けて立つわ!りっちゃん!!」ヨシキター!
菫「お、お姉ちゃん!?」
唯「よぉーし!負けないよ〜!!」フンス!
梓「ホ、ホントにするんですか?」
じゃーんけーん、ぽん!あいこでしょ!!
唯「よし勝った!菫ちゃんがオニだね!」
律「ふふふ…!かつて『かくれんぼの鬼』と呼ばれたりっちゃんの実力を見せてやるぜ!」
梓「『かくれんぼの鬼』って……それただの探す人じゃないですか」
澪「やれやれ……受験生が友達の家でかくれんぼとは……」
紬「じゃあ菫、100数えたら探しにきてね?」
菫「う、うん。わかった……」
律「よっしゃー!みんな隠れようぜー!!」
唯紬「「おーーっ!」」
澪梓「「ぉ、ぉー…」」
_________
澪(よし、ここならオニが来たらすぐに見えるし、逃げ道もある……まずはここに待機だな)
?「あれ、澪?」
澪「うわぁっ!……ってなんだ律か…吃驚させるなよ」
律「なんだよ……いい場所だと思ったのに、お前もここに隠れてるのかよ」
澪「かくれんぼはオニの動きを確認しながら一箇所に留まらないのが鉄則だからな。
まずはここにいるのがベストだ」
律「……ぷっ……くく…ふふふ……」
澪「な、なにがおかしいんだよ」
律「だってそれ、昔私が澪に教えたかくれんぼの極意じゃん」ニヤニヤ
澪「なっ……///」
___
______
_________
じゃんけん、ぽん!
あっ!みおちゃんがオニだー!かくれろー!
りつ「みおちゃん、かくれんぼ初めてでしょ?オニになっちゃったけど、だいじょうぶ?」
みお「う、うん……だいじょうぶ……」
りつ「じゃあ、あたしもかくれるね?がんばって探してねー」
_________
りつ(うーん…けっこう長いあいだかくれてるのにみおちゃんぜんぜん探しにこないな……
ちょっと見にいってみようかな……)
ガサゴソ……
りつ(あれ?あんなところにしゃがみ込んじゃってる……どうしたんだろ?)
りつ「みおちゃん。もっとあちこち探さないとダメだよー」
みお「グスッ……あ……りっちゃん……」
りつ「どうしたの?なんで泣いてるの?」
みお「だって……みんないなくなっちゃったから……グスッ」
りつ「いなくなってないよ?みんなかくれてるだけだから!」
みお「……探したもん……探したけどみんないないんだもん……ヒック」
りつ「こういうしげみの中とか探すんだよ……ガサガサ……あ、ほら!けんちゃんみーつけたー!」
けん「なんだよズルイぞー!りっちゃん今オニじゃないだろー!」
りつ「いーじゃん、みおちゃんかくれんぼ初めてなんだからさー。次はけんちゃんがオニやってよ」
けん「ちぇっ。わかったよ……」
_________
りつ「いい?みおちゃん。かくれるときは一箇所にじっとしてちゃダメだよ?」
みお「う、うん……」
りつ「オニのうごきを見ながらいどうするんだよ!あたしについてきてね!」
みお「うん。わかった!」
_________
______
___
澪「あの後、ずっと見つからなくて日が暮れるまで隠れてたからママに凄く怒られたんだよな」
律「そうだっけ?」
澪「お前なぁ……遊んでる最中に子供が二人行方不明になったって、
ちょっとした騒ぎになったんだぞ?憶えてないのか?」
律「んー……全然憶えてない!」
澪「はぁ……まったくお前は……」
律「いやーそれにしても子供の頃の澪ちゅわんは可愛かったですなー♪
いっつも私の後ろについて歩いて……」
澪「べ、別について歩いてなんか……///」
律「小、中、高とずっと一緒だったけど、さすがにそろそろ終わっちまう……かな?」
澪「もうちょっと……」
律「ん?」
澪「もうちょっとだけ、後4年だけ……」
律「澪……」
菫「あっ!律さんと澪さん。見つけました!」
律澪「「……へ?」」
律「あぁぁぁぁぁ!澪のバカ!話し込んでてオニの接近に気づかないなんてぇぇ!!」
澪「お、お前が昔話なんかしだすからだろ!バカ律!」
_________
唯「……おっ!あのタンスと壁の隙間……隠れるのに良さそうだね……」
ゴソゴソ……
唯(うっ……ちょっと狭いけど……ここなら見つからないね!)
?「にゃっ!」
唯「わわっ!」
?「ゆ、唯先輩ですか……?」
唯「びっくりしたぁ……暗くてよく見えないけど……あずにゃんだね?」
梓「はい。あの、ここは私が先に隠れてますんで………どっかいってください」
唯「ひ、ひどいよあずにゃん!別に一緒に隠れててもいいじゃん!」
梓「だってここ狭いですし……それに一緒にいたら二人まとめて見つかっちゃうじゃないですか」
唯「それにしたって『どっかいけ』なんて……」ショボン
梓「ど、『どっかいけ』なんて言ってないです!『どっかいってください』って……」
唯「おんなじだよそんなの……」ショボーン
梓「わ、わかりました!ここに居ていいですから!」
唯「えへへ、ありがとうあずにゃん♪」
梓「それにしてもこの歳になってかくれんぼをすることになるとは思いませんでした……」ハァ
唯「あずにゃんかくれんぼ得意そうだよね!ちっちゃいから色んな所に隠れれそう!」
梓「ちっちゃいは余計です!それに……私はかくれんぼより鬼ごっこの方が得意です」
唯「そうなの?私は鬼ごっこ苦手だな〜。走るの遅いし」
梓「唯先輩なんてどこに逃げてもすぐに追いかけて捕まえてやります」
唯「ぶー、そう簡単には捕まらないもん!」
梓「……捕まえますよ」
唯「……あずにゃん?」
梓「……唯先輩は私より先に卒業して大学に行っちゃうし、その大学も私より先に卒業
しちゃいますけど……絶対に追いかけて捕まえますからね」
唯「………あずにゃん………うん!絶対に追いかけてきてね!」
梓「あ、でも唯先輩、浪人するかもしれないし、大学でも留年するかもしれないから
案外すぐに追いついちゃうかもですね」
唯「な、なんてこと言うのさあずにゃん!さすがに笑えないよぅ……」
梓「じゃあそうならないように、しっかり勉強してください」
唯「うぅ……厳しいっす……。あっ!……あずにゃん……」モゾモゾ
梓「な、なんですか?狭いんだからあんまり動かないでくださいよ」
唯「シーッ……静かにして……」モゾモゾ
梓「な、なんで近づいて来てるんですか!?か、顔が近いです!!///」ドキドキ
唯「……あずにゃん……」
梓「ゆ、ゆゆゆ唯先輩!こ、こんな所でダメですーーー!!!///」
菫「唯さんと梓さん見つけましたー」
梓「……え?」
唯「もう!あずにゃんがおっきい声だすから見つかっちゃったじゃん!」
梓「そ、それは……先輩が急にあんなことするから……///」
唯「菫ちゃんが近づいてきたのが分かったから、あずにゃんだけでも見つからないように
体を張って隠してあげようと思ったのにー」
梓「う、うぅ……///ま、紛らわしいんですよ!唯先輩のバカ!///」
唯「え?えぇーっ!?怒られた……?」
_________
唯「あれー?りっちゃんと澪ちゃんも見つかっちゃったの?」
律「おう。澪のせいでなー」
澪「律のせいだ」
梓「後はムギ先輩だけですね」
菫「はい。じゃあ私お姉ちゃんを探してきますね。
すぐ戻りますから皆さんはお姉ちゃんの部屋で待っててください」
律「おっ?その言い方は……ムギの隠れ場所の見当がついてるな?」
菫「はい。多分あそこかと……」
_________
菫「……お姉ちゃん、みーつけた」
紬「………ふぁ……あ、あら?菫?私、寝ちゃってた……?」
菫「ふふ、昔からかくれんぼしたら絶対このクローゼットの中に隠れて、
隠れてるうちに寝ちゃうんだよね」
紬「だってここ暖かくて気持ちいいんだもん♪」
菫「もう……そろそろ寒くなってきたんだからこんなとこで寝てたら風邪ひいちゃうよ?」
紬「はーい……ところで他のみんなはもう見つけたの?」
菫「うん。今はお姉ちゃんの部屋で待ってもらってる。
律さんは澪さんと、唯さんは梓さんと一緒にいたよ」
紬「うふふ♪さすがは仲良し二組ね」
菫「みなさん仲良さそうだよね。ちょっと羨ましいな……」
紬「………菫も学校帰りに誰かのお家に遊びにいったり、友達をお家に呼んだりしてもいいのよ?」
菫「そんなわけにいかないよ……学校終わったら家の仕事手伝わないといけないし、
琴吹の家に私の友達呼んだりしたらお父さんに怒られちゃう」
紬「斉藤には私から言っておくから……」
菫「……お姉ちゃん、もしかして今日みなさんをお家に呼んだのはそのため?」
紬「えっ?」
菫「お姉ちゃんが友達を呼ばないと、私が呼びにくいって思ったから……?」
紬「………菫は私や琴吹家に気を遣いすぎてるの。もっとやりたい事をやればいいのよ?」
菫「うん……でもよかったの?お姉ちゃん今まであんまり友達を家に呼びたがらなかったじゃない」
紬「そうね……昔、友達をお家に呼んだ後、ちょっと距離を置かれるようになった気がして……
あんまりお家に友達を呼んだら私の望む『普通』じゃいられなくなるって思い込んじゃって
それからは控えてたんだけど……でも軽音部のみんななら大丈夫だって思ったから」
菫「そっか……みなさんいい人だもんね」
紬「そうなの!みんなすっごくいい人なの♪」
菫「……お姉ちゃん」
紬「なに?」
菫「中学は今年で卒業だから無理だけど……高校生になったらお父さんにお願いして
なにか部活を始めようと思うの」
紬「それならお薦めの部活があるわ。可愛くて頑張り屋さんの部長がいてすっごく楽しい部活なの!
きっと素敵なお友達もできると思う!」
菫「ふふっ、そうだね」
紬「……さて、随分待たせちゃってるし、そろそろ行こうか?みんなでお茶しましょう。
りっちゃんや唯ちゃんのお話しは私なんかよりずっと面白いのよ?」
菫「うん!」
_________
ガチャッ
菫「お待たせしました」
紬「待たせてごめんね?お茶にしましょう♪」
唯「あ、ムギちゃんも見つかっちゃたんだ〜」
律「この『かくれんぼの鬼』より長時間隠れるとは……やるな、ムギ!」キリッ
梓「律先輩、それはもういいです」
澪「でも確かにさっきの菫ちゃんの言い方だとすぐに見つかるかと思ったけど、
結構時間かかったんだな。何してたんだ?」
紬「うふふ、未来の新入部員を勧誘していたのー♪ほらほら、ご挨拶は?」
菫「え?えっと……来年入部予定の斉藤菫です!よろしくお願いします、先輩方!」
おしまい
最終更新:2014年04月07日 22:21