律(澪の家で遊びすぎちゃった。もう外こんな暗いし)

律(そういや見たいテレビあったんだ!早く帰らないと)

律「フフフフ〜ン♪」

律「……ん?あそこ何やってるんだろ?」


ギャル1「ねぇ、今仕事帰り?おじさん金持ちそうだね」

ギャル2「私たちお金困ってるの〜だからお金貸して〜」

男「いや、そういうのはちょっと困るので……」

ギャル1「キャハハハ!おじさんキョドってるwww」

ギャル2「どーでもいいから、早く金出せよ」


律(あれ、オヤジ狩りとかいうやつ??)

律(やばい!誰かに助けを……でもここ人通り少ないから)

律(ど、どうしよ!?しょうがない、こうなったら……)


律「オイ!てめーら何してんだよ!!」

ギャル1「は?誰こいつ?」

律「おっさん嫌がってるだろ。やめろよ」

ギャル2「あー?お前痛い目あいたいの?」

律「ちなみにもう警察呼んでるから」

ギャル1「……チッ、うっぜぇ」

ギャル2「覚えてろよ」


律「はぁ……なんとかなった」

男「君、は…?」

律「おじさん大丈夫だった?」

男「おかげで助かったよ。なんてお礼すればいいか……」

律「いいっていいって。ここら辺暗くなると危ないからこれからは気をつけてね!」

男「ありがとう。ちょっと散歩してみようと思ったのがいけなかったかな」

律(散歩…?スーツで?変なおっさん)

男「もしよければお礼に……」

律「あ!!見たいテレビあったんだった!じゃあねおじさん!!」

男「あ……」


男(少々ガサツだが良い子だったな。それにあの制服、もしや……)

次の日

紬「ねぇりっちゃん、今日暇だったらうち遊びにこない?」

律「え!?ムギんち行っていいの??」

紬「昨日お父様にりっちゃんの話したらすごく興味持ってて、是非話したいなんて言うから」

律「ムギのお父さんが??うひょーなんか緊張するー!」

紬「うふふ、大丈夫よ。じゃあ放課後部活終わったらね」

律「おう!楽しみにしてる!」


帰り道

律「ムギとこうやって一緒に電車で帰るって新鮮だな」

紬「本当は学校まで車で迎えにきてもらってもよかったんだけど……」

律「いやいや、さすがにそこまでしてもらうと悪いって。ムギの家の車とかめちゃくちゃ緊張しそうだし。運転手さんとかもいるの?」

紬「一応ね」

律「わぁ、家はメイドさんでいっぱいだったり??」

紬「もう。そこまで大勢じゃないわよ〜」

律(でもいるんだ……)

紬「あ、次の駅で降りるね」

琴吹家

律「お、おお……門でけー!!」

ぴっ

律「それは??」

紬「指紋認証で開くようになってるから」

律「へ〜初めて見た〜!」

紬「りっちゃんも押してみる?」

律「私押していいの??」

紬「家全体に警報ベルが鳴っちゃうけど」

律「ダメじゃん!!」

紬「えへへ」

律「それにしても玄関までも長い…!庭綺麗だな〜」

紬「お庭はお母様の趣味でね。季節ごとにいろいろなお花植えてるの」

律「ほへー。お、ここ玄関か」

紬「うん、どうぞ〜」


ぴっ


律「中も広い!!おじゃましまーす」

メイド「お帰りなさいませお嬢様」

律(わ、メイドさん!!)

紬「ただいま。今日お友だちがきてるから私の部屋で遊んでるね。お父様にも伝えといて〜」

メイド「かしこまりました」


律「私メイドさん見るの初めてだよ」

紬「執事もいるのよ」

律「知ってたけど、ムギって本当お金持ちなんだなぁ。家の中も部屋ありすぎて一人だと絶対迷うって!」

紬「ふふ、りっちゃんたら大袈裟なんだから。ここが私の部屋」

律「どれどれ……」

紬「なんもないけどね」

ガチャ

律「お姫様ベッド!?家具もいろいろすげー」

紬「私は普通がいいって言ったんだけど……。でもこの本棚だけは特注で私が考えたのよ」

律「ん…?普通に教科書とかが並べてあるだけな気が……」

紬「ここを引っ張るとね……」

律「後ろに隠し本棚!!」

紬「これはお父様も知らない秘密なの〜」

律「すっげぇ!!漫画本いっぱい!」

紬「私恋愛ものが大好きで見かけたらついつい買っちゃって」

律「ムギらしいな〜。あれ、でもこの漫画男キャラあんま出てなくない?」

紬「女の子同士も素敵よ〜!」

律「??」


トントン

「紬、入っていいかな?」

紬(あ、お父様だ!りっちゃん隠して!)

律(うん…!)


紬「どうぞ」

紬父「やぁ。お友だちがきてると聞いて」

律「……あ!!おじさん昨日の…!!」

紬父「昨日はお世話になったね」

律「ムギのお父さんだったんだ…!」

紬「え?りっちゃんお父様と会ったことあったの??」

紬父「そこらへんの話もしながら、どうだい?今夜一緒に夕食でも」

夕食

紬父「……というわけで昨日は律さんに助けられて」

紬「あぁ、だからお父様昨日りっちゃんのこと私に聞いてきたのね」

紬父「どうしてもお礼がしたくてね。いきなり飛び込んで私を守ってくれたヒーローに」

紬「りっちゃんほんとすごい!」

律「いやいや……たまたま運良く追い払えただけで」

紬父「でもああやって勇気を出すのはなかなか普通の人じゃできないことだよ。ありがとう」

律「へへっ、どうしたしまして」

紬父「今の若者は弱そうなやつばかりで、会社の経営をしていても困ることが多くてね。君みたいな人だったらうちの会社も任せることができるんだが」

律「そこまでじゃ……」

紬父「紬もあとを継いでくれないと言うし、将来が不安だな……」

紬「もう、今はそんな話いいじゃない」

紬父「……そうだ!律さん、紬の許嫁になってくれないか?」

律「え……」

紬「そんな冗談を…」

紬父「いやいや、本気で律さんになら琴吹グループを託してもいいと今思ってね。どうだい?律さん」

律「そ、そそそんなこと急に言われても……」

紬「りっちゃん困ってるよ!それに女の子同士で結婚なんてできないじゃない」

紬父「海外にでも行けばいいだろう」

紬「話がいきなりすぎるよ…!」

紬父「ふむ。確かにいきなりじゃ心の準備もできないだろう。落ち着いて律さんの気持ちを決めたら教えてくれないか」

律「へ?は、はい」

紬父「ありがとう。いい返事を期待してるよ。では私はお先に」



律「……はぁ、すげぇびっくりした」

紬「ごめんね。お父様ってば勢いで行動する癖があって」

律「さっきの話まじで言ってるのかな??」

紬「お父様自分で言ったことだけは絶対守るからたぶん……」

律「ふへぇ……」

紬「どうしようりっちゃん??」

律「とりあえず断るにしても早すぎたらもっと考えろとか言われちゃいそうだし、なんて言おうか一晩じっくり考えてみるよ」

紬「本当ごめんね……」

律「ムギが謝ることじゃないって!あ、もう遅くなったから帰らなくちゃ」

紬「そうね!りっちゃんの家まで車で送るわ」

律「大丈夫!歩きながら考え事したい気分だし。今日は夕食までごちそうになっちゃってありがとな!」

紬「ううん。じゃあ気をつけてねりっちゃん」

律「おー!また明日学校で!」

夜道

律(今日はいろいろすごかったな〜)

律(ムギの家広すぎだし)

律(もしムギと結婚したら玉の輿だな!)

律(……なんて、ないけどね〜)


紬父の部屋

紬「お父様、なんで急に許嫁なんて」

紬父「仕事に必要な手段だ」

紬「…!」

紬父「それと、昨日紬が律さんの話をしているの聞いてて思ったのだが、紬……律さんのこと好きなんだろ?」

紬「え……//」

紬父「一応これでも父親だからな。娘の気持ちくらい分かる。どうせお前のことだから何も言わずに終わりにするつもりだったのだろう。昔からしたいことをさせてあげられないことが多かったからその癖がついたのか……ちょうどいい機会じゃないか。一歩踏み出すための」

紬「お父様……」

紬父「今日はもう遅いから寝なさい」

紬「……はい」

次の日
部活

唯「そういえば昨日りっちゃん、ムギちゃんちどうだった??」

梓「あ、私も気になってました」

律「すごかったぞー!ドカーンとしてババーンとして!」

澪「それじゃ伝わらないだろ……」

律「とにかく広かったってこと!」

唯「いいなぁ。りっちゃんずるーい!」

律「ムギのお父さんに気に入られてたからな」

澪「律ってムギのお父さんに会ったことあったのか??」

律「まぁね。そんでムギの許嫁にならないかなんて言われちゃったよ」

梓「え、え〜〜〜〜!?!?ムギ先輩それ本当ですか??」

紬「そうなの。お父様結構本気で」

唯「りっちゃんとムギちゃんが結婚!?」

律「いや、決まったわけじゃないから」

唯「結婚したらりっちゃんが社長!?」

律「それちょっといいかも!」

梓「でも本当に結婚するなら海外とか行かなきゃいけないんじゃないですか…?」

唯「え〜二人に会えなくなっちゃうのやだよ〜!」

律「だからまだ決定じゃないって〜」

澪「……話してるのもいいけど、そろそろ練習するぞ」

律「ちぇー。ま、時間なくなっちゃうか。それじゃやるかー」


♪♪


帰り道

唯「じゃあね!」

梓「お疲れさまです!」

紬「またね〜」

律「おぅ、じゃあな!」

澪「また明日」


てくてく

澪「……なぁ律、さっきの話」

律「ん?ムギの許嫁ってやつ?」

澪「うん……あれ律はどうするつもりなんだ??」

律「そりゃもちろん断るって〜。琴吹家を背負うなんて荷が重いよ」

澪「そっか……でも……」

律「澪…?」

澪「……私今日ちょっと寄ってく場所あるから!じゃ!」

律「??じゃあな」

律(澪のやつどうしたんだろ)

律(まぁいっか)


紬父「律さん」

律「わっ、ムギのお父さん!どうしてこんなところに!?」

紬父「また散歩がしたくなってね。大丈夫、今日は執事も一緒だから」

斉藤「どうも」

律「はぁ」

紬父「それで、答えはもう出たかい?」

律「え、いやまだ考え中で……」

紬父「まぁあせらずゆっくり考えてくれ。私は本気ということだけ知っといてほしい」

律「……分かりました」

紬父「ところで律さんは紬のことが好きか?」

律「はい…!もちろん」

紬父「それは恋愛感情で?」

律「そこまでは……考えたことがなかったので」

紬父「そうだろうね。私も同性の友人に、なんて考えもしないからな。だけど、私の娘は……」

律「??」

紬父「紬は君に恋してるんだ」

律「え……?」

紬父「律さんには紬の気持ちもしっかり考えた上で答えを出してほしい。いろいろ押し付けてばっかで本当すまないと思ってるが、私も娘には幸せになってもらいたいんだ……」

律「……」

紬父「じゃあ、また会おう。行くぞ斉藤」

斉藤「はい。律さんお気をつけてお帰りくださいませ」

律「あ、さよなら……」


律(ムギが、私に恋……?)

次の日
放課後

紬「どうしたのりっちゃん?二人きりで話がしたいなんて」

律「その、許嫁のことで……」

紬「それ私もお父様にどう断ればいいか考えてみたんだけど」

律「昨日ムギのお父さんに会ったんだ」

紬「へ…?」

律「まだ返事はしてないんだけど……お父さんからムギのことちゃんと考えてほしいって言われた」

紬「お父様が……」

律「なぁムギ、ムギは私のこと、さ……」

紬「……」

律「ごめん、なんでも…」

紬「…………好きだよりっちゃん」

律「ムギ……」

紬「でもだからと言ってりっちゃんに無理してもらいたくはないの」

律「……」

律「私、は……」


ガタっ

律紬「!?」

澪「ご、ごめん…!盗み聞きするつもりはなかったんだけど……」

律「澪、いつから……」

澪「本当ごめん!!」タッタッタ


律「澪……」

紬「りっちゃん……澪ちゃんのこと追いかけてあげて」

律「なんで…?」

紬「命令♪」

律「え、えぇー」

紬「……きっと、行けば分かるから」

律「うーん……分かった!澪のことは放っておけないしな」

紬「うふふ」

律「じゃ、行ってくる!」

紬「行ってらっしゃい」



紬「……りっちゃんごめんね」

律「澪!」

澪「…………どうして追いかけてくるんだよ」

律「分からん!」

澪「はぁ??」

律「なんかムギに澪を追いかけてって言われてさ。澪機嫌悪いみたいだけど大丈夫かよ〜?」

澪「……それならムギのとこ戻ってあげて。大事な話をしてたんでしょ」

律「そうだけどさー」

澪「律……」

律「んー?」

澪「……ムギの許嫁になるって決めたの」

律「それは……」

澪「海外、行っちゃうんだろ……そしたら会えなくる」

律「まだ決まっても先の話だよ」

澪「準備のためにいろいろあるかもしれないじゃないか…!」

律「まぁHTTはおろそかにしないって」

澪「社長さんは大変なんだぞ!」

律「う、うん」

澪「ムギとの間に子供が生まれたら育児だってしなくちゃいけない!」

律「ちょっと待て澪…!」

澪「授業参観には忙しくても行ってあげるんだぞーー!!」

律「お、落ち着けっ!」

澪「私だって、律のこと……」

律「澪……?」

澪「…………そばにいてよぉ」

律「……!」

澪「……ぐすん」

律「澪………………ごめん」

澪「っ!」

律「……ムギの気持ちも、全然分かってなかった。私、本当ばかだよ」

澪「律……」

律「いかなーい」

澪「へ?」

律「私、今回は許嫁になりにいかない!」

澪「どうしたんだよいきなり」

律「なんかね、今大事なこと分かった気がする。ムギのため、ムギのお父さんのために……そんなふうに考えていろいろ見失ってた。こんな状態で許嫁になったとしてもムギもきっと喜ばないよな……。本当にしたいことはいつだって一つだったのに……。私はこれからもみんなと、澪とずっと一緒にいたい!!」

澪「律…!」

紬「瞬間移動!」

紬父「私も!」

律「えっ?」

紬父「実の事、我々は代々引き継がれてきた忍者一家なのだ。今風に言えばスパイと言ったところか。今回は澪というひとからの依頼であなたを試させてもらったんだ。お金に釣られてここを去るか、そして情で浮気する癖があるかということをね」

澪「全部演技でした」

紬「全部演技でした」

紬父「全部演技でした」

ギャル1「全部演技でした」

ギャル2「全部演技でした」



律「えっ?」





最終更新:2014年04月07日 22:33