〜放課後の部室〜
律「よーし!今年もひなまつりやろうぜー」
澪「何だよ急に!?てか今年もってなんだよ『も』って!いつの間に恒例行事になったんだよ!」
律「まー細かいことはいーじゃんいーじゃん。実はもうチラシも作ってあるんだ。ホラ」ピラッ
梓「どれどれ……。……だ、第33回軽音部ひなまつり開催のお知らせ…」
澪「思いっきり嘘じゃないか!!いつ32回やったんだよ!」
律「こまけぇことはいいんだよ!」
澪「いくらなんでも大雑把すぎるだろ!」
唯「むむ。会費もかかるの。えーとどれどれ……、…1143円?」
梓(めちゃくちゃ中途半端!!)
律「交通費やらお菓子代やらを厳密に考慮した結果だ」
澪「何でそういうところはしっかりしてるんだよ!」
澪「まったくあきれた……。で、場所はムギの家か。大丈夫なのかよ勝手に決めて」
梓「そういえばムギ先輩の家って予約が必要なんじゃありませんでしたっけ?」
律「いや。事前に聞いたんだがなんかその日はオーケーらしい。なぜなら……」
紬「なぜならその日は女の子同士の日だからよ!!」ガチャッ
唯「ム、ムギちゃん!?」
梓「び、びっくりした……てか来てなかったんですか」
澪「そして『同士』は明らかに余計だろ」
紬「何言ってるの澪ちゃん。3月3日と言えばひなまつりを口実にして女の子同士で色んなことを楽しむ日でしょう、常識的に考えて」
澪「いやいやその解釈は絶対おかしいって!」
紬「とにかく!ひなまつりには私は大賛成です!はい、賛成の人は挙手をおねがいしまーす!」
唯律「はい!!」バッ
梓「唯先輩たちすごいやる気ですね……」
唯「だって女の子の日なんだよ!その日を楽しまないでどうするのさ、あずにゃん!」
梓「まあ確かに……たまにはいいかもしれませんね」
梓「ムギ先輩、私も賛成です」
紬「うふふ。よかった」
律「よーし、これで全員賛成だな。では集合時間を……」
澪「おいちょっと待て」
律「? 何だ澪?かまってほしいのか?うりうり〜」ツンツン
澪「ひあっ!/// ……って違う!なんで私には賛成か反対か聞かないんだよ!」
律「…だってどちらにしろ強引に参加させるし?」
澪「……私に拒否権はないんですか」
律「そんな権利このりっちゃん様の前で乱用するなんて許されないのですわよ?」
澪「どっちが権力乱用だよ!」
唯「とにかく、集合時間とか場所とか決めよ〜。あ、そうだ!おやつは500円以内ですか!?バナナはおやつに入りますか!?」
梓「いや遠足じゃないんですから……」
紬「ちなみに個人的な意見ではバナナはおかずに入ると思うわ」
梓(…すごくどうでもいい情報だ!)
律「……ふっふっふ。安心しろみんな。実は集合時間やらなんやらは全てそのチラシに記載されているのだよ」
梓「え?そんなの書いてありましたっけ?……あ、本当だ書いてある」
澪「へえ全然気づかなかったよ。まさか書いてあるなんて夢にも思ってなかったからな」
梓「まあ律先輩が集合時間とかを しっかりと記載しているって考えがまずありませんでしたからね」
律「私の扱いひどすぎるだろおい!!」
唯「…じゃあ3月3日はこの時間に集合だねー。えーと集合時間はっと…。 ……『9時47分 そしてバナナは主食に入ると思う』」
梓(また中途半端だ! そしてどうでもいい情報!)
梓(あれ……? …そういえばムギ先輩の家って初めて行くな。普通だと予約が必要なくらいだし、きっとすごいんだろうなぁ)
・・・・・・・
3月3日 9時47分
大きな家の前
唯「はぁー!みんな揃ったね!」
梓「てっきり唯先輩は遅刻するかと思ったんですが……。まさか一番早く来てるとは。見直しました」
唯「えへへぇ。早めに来られるように目覚まし時計をいつもより1時間早くセットしたんだー」
澪(……多分セットする時間 間違えただけだな)
律「それより見ろよこのでっけー家!!やっぱりムギん家はすげーぜ!都庁ぐらいあるんじゃねーか!?」
梓「いや流石にそれはないです。……でも確かに大きな家ですね。見てるだけで圧倒されてしまいそうです」
唯「お庭とかもすごい広そうだよねー。隅から隅までゴロゴロしてみたいよ」
澪(……多分そんなことしたら日が暮れちゃうだろうな)
律「とにかく呼び鈴押してみるか」ピンポーン
インターホン『はーい。どちら様ですか?』
梓(あれ……?ムギ先輩の声じゃない? …でもどこかで聞いたことあるような……)
律「あ、あのー。ここって琴吹さんのお宅ですか?」
インターホン『あー、琴吹さんのお宅なら隣ですよー。ちなみに私の名前は鈴木です』
律「え…。お、お隣なんですか……?」
唯「で、でも隣の家って……」
澪「……いかにも普通そうな一軒家だな」
律「…あ、分かった。ひょっとして佐々木さん、冗談を言って私たちをからかってるんでしょう、違いますか?」
インターホン『ちがいますよ!!あと鈴木ですってば!』
梓「と、とにかく一度行ってみましょうか?なんだかにわかには信じられませんけど」
唯「……だね」
律「…ってことで宇津木さんありがとうございました」
インターホン『だから鈴木ですって!』
澪「……とりあえず隣の家の呼び鈴、おしてみるぞ」ピンポーン
インターホン『今うかがいますねー。しゃらんらしゃらんら〜』
梓「……どうやら間違いないみたいですね」
唯「い、意外すぎて言葉が出ないよ……」
律「いや、待てみんな。外見は普通の家だけどきっと中はものすごい豪華なんじゃないか?全部金でできてるとか」
澪「さすがにそれは……あ、ありえるかも」
梓「確かに通常は予約が必要なくらいですからね。も、もしかしたら本当にそうなのかも……」ゴクリ
インターホン『みんな〜、準備ができたわー。玄関で待ってるわね』プツッ
唯「……なんか緊張するね」
澪「あぁ…」ドキドキ
律「では、意を決して! お邪魔しまーす!!」ガチャ
紬「うふふ。みんなよく来たわね。さあ上がって上がって」
梓(……中も思いっきり普通の家だっ!!!)
律(ど、どうなってるんだ……?)
紬「……?みんな玄関で突っ立っちゃってどうしたの?」
澪「!! あ、いや!なんでもないんだ!あはは…」
紬「そう? じゃあ私のお部屋に行きましょうか」
紬「私の部屋はお2階なの。階段気を付けてね」ギシィッ
唯「か、階段も私のうちのと同じようなのだ…」
律(おい、澪どうなってるんだよ、コレ)ヒソヒソ
澪(知るかよ。私だって正直驚いてるんだから)ヒソヒソ
梓(あ、分かりましたよ先輩方。きっとこれは高度なカモフラージュなんじゃないでしょうか)ヒソヒソ
律(カモフラージュ?何の?)ヒソヒソ
梓(要するに、普通の家だと見せかけておくことでギャップを強調させるためではないかと)ヒソヒソ
澪(ギャップ……?)ヒソヒソ
梓(例えば一見普通な家と見せかけて自室はすごい豪華にして驚かせるためとか)ヒソヒソ
澪(あ、ありえなくはないな)ヒソヒソ
律(いや。それだ、きっとそれに違いない!てかそうであってほしい)
紬「……?みんなさっきからどうしたの?こそこそして」
律澪梓「! い、いやなんでもありません!ご心配なく!」
紬「そう? まあいいわ、ここが私の部屋よ。さぁみんな入って入ってー♪」ガチャ
唯「お、お邪魔しま……ってうわぁっ!?」
律「ど、どうした唯!?」
唯「いや、そのあまりにもその普通のお部屋で逆に驚いちゃった」
澪「ほ、本当だ……」
梓「私の部屋と大差ないです……」
紬「よく分からないけどご、ごめんなさい……」
唯「いやムギちゃんが悪いわけじゃないよ!変な期待してた私たちが悪いだけであって!」アセアセ
律「そ、そうそう!悪いのは強欲な私たち!な、梓?」
梓「それは律先輩だけでしょ」
律「…ひどい」
紬「うふふ。それじゃあみんなで遊びましょ。何して遊びましょうか」
紬「人生あてもんゲームする?あ、それともマ○オカートしましょうか!?」
唯「!やろやろ!!」
律「よーし、とりあえず梓をはったおすとするかー。日ごろの恨みを晴らしてやるぜ!!」
梓「それはこっちの台詞です!! 覚悟してくださいよー、律先輩!!」
唯「どっちも頑張れー!!」
澪「ゲーム機、とられちゃったな…」
紬「まあいいじゃない。私たちは人生あてもんゲームで遊びましょ」
澪「……でもなんだかこうしてみると、ムギが段々身近な存在に思えてくるよ」
紬「あら?まるで今までは身近だとは思ってなかったかのような言い方ね」クスッ
澪「い、いやいや!!そういうわけじゃないんだけどさ!」
澪「……でも正直、ムギのことは私たちとはちょっとかけ離れてるな、と思うときはあった」
澪「部室にティーセット持って来たり、別荘持ってたりしてたからさ。やっぱり私たちとは少し違うのかな、って思ってた節はあったな」
紬「……ねぇ澪ちゃん」
澪「……なんだ?」
紬「正直、幻滅しなかった?こんな家で。割と普通の家だし……」
紬「だからあんまりみんなには知られたくなくって……。実は予約が必要っていうのは嘘だったの」
澪「ムギ……」
紬「で、でもね!みんなには本当のことを知ってもらいたかったから!今日はみんなを誘ったの!!」
紬「だから、そ、そのぅ……こ、これからも……」
澪「……バカだなぁ、ムギは」ペシッ
紬「!? み、澪ちゃん!?」
澪「ムギは心配しすぎだよ。大体、そんなことで私たちの友情が崩れると思うか?」
澪「それに、私たち5人がずっと友達であるっていう事実は、例え家がどんなものであったとしても変わるわけないだろ?」ニコッ
紬「……!」
紬「……そうよね。いや、絶対にその通りだわ!!」
紬「……ありがとね、澪ちゃん」
澪「いやいや。それに、そう思ってるのは私だけじゃない。なぁ、みん……」クルッ
律「くらえっ、梓!!赤コウラ3連発だ!」
梓「ふふん。私がスター持ってるの忘れたんですか?残念ですが無効にさせてもらいますよ」
律「……こちょこちょ〜」コチョコチョ
梓「って!!な、ひゃにするんへす!あ、足の裏はやめ、あはははは!!」
唯「おーっと!ここでりっちゃん選手盤外戦術で勝負に出ましたー!!この勝負、まだまだもつれそうです!」
澪(…みんな聞いてませんでした)
・・・・・・
律「くそっ!負けた!!」
梓「あんな卑怯な手使うからです!!正義は勝つ!」
唯「おめでとう、あずにゃん。ごほうびにほっぺにチューしてあげるね」
梓「さてと。澪先輩とムギ先輩と一緒にゲームしよっと」
唯「ガン無視!?」ガーン
ピンポーン
唯「あれ……?誰か来たみたいだよ、ムギちゃん」
律「え、私たちのほかにも誰か来る予定あったのか?」
澪「私たち邪魔になっちゃうんじゃ……」
紬「大丈夫よー。みんなにも紹介しようと思ってた人だから」
唯「へぇ。ムギちゃんのお友達?」
紬「うん♪大切なお友達よ。じゃあ私、迎えにいってくるわね」
・・・・・・
紬「みんなお待たせ〜」ガチャ
律「おー、けぇったか、ムギ。……で、お友達っていうのは?」
紬「紹介するわね。のっぺらぼうさんよ」
のっぺらぼう「どうもー」
唯律梓「……はい?」
澪「……ふぇ?」
澪「ってうぇえええええ!!?か、かおかおかおがががが!!!!」
律「な、なんじゃこりゃああ!!本物か!?本物なのか!?」
唯「私のっぺらぼうさん初めてみたよ〜。よろしくね!」
梓「唯先輩は少しは怖がってください!!」
紬「あらあら。みんなこんなに喜んでくれるなんて」
のっぺらぼう「照れるわ///」
梓「どんだけポジティブシンキングなんですか!!」
紬「さて、のっぺらぼうさんも来たことだし。ゲームの続きをしましょうか」
律「んなことやってる場合か!!」
梓「そうですよ!!大体、妖怪なんているはずがないんです!!よってこののっぺらぼうはニセモノです!」
澪「そ、そうだ!!騙されないぞ!!ドッキリかなんかなんだろ!?」
トントントン……
澪「ほら、誰かが階段を上がってくる音がする!!きっとドッキリ大成功の札を持った執事さんが誰かが……」
ろくろっ首「ゴメーン、ムギちゃん。遅れちゃた☆」ガチャ
澪「」バタッ
律「みおーっつ!!!」
そうだ
これは悪い夢なんだ
私は今、夢を見ているんだ
目が覚めたとき、
まだ3月3日の朝
起きたらママにおはようを言って
朝ご飯を食べて、律たちとムギの家に行って、
ムギの家ではみんなとおもいっきり遊ぶんだ・・・
澪「ふっ……。なんだ夢だったのか、まったく驚かせてくれるよ…」
澪「ママ、おはよう」ガバッ
妖怪たち「「「「「「ママ?」」」」」」ニヤニヤ
澪「さっきより増えてるんですがそれは」
紬「……ごめんね、澪ちゃん。隠すつもりはなかったんだけど…。やっぱりみんなのこと驚かせたくって」
紬「それに、みんなもすっかり馴染んだみたいだし…。だから澪ちゃん、許して?」
唯「あー、ろくろっ首さんかわいいよーっ!」ギュー
律「こ、これは本当に現実なのか……?」
梓「悪霊退散悪霊退散悪霊退散……」ブツブツ
澪「とても馴染んでるようには見えないよ!! 唯以外は!」
紬「ごめんね、澪ちゃん。でも私、澪ちゃんが例え家がどんなものであったとしても、私たちは友達だって言ってくれたのがあまりにも嬉しくて///。
つい、呼んじゃったわ」
澪(めちゃくちゃ軽いノリだ!!)
紬「その……私の家、確かに予約は必要ないけど結構お客さまは来るから♪」
澪「お客様っていうか妖怪だろ!!」
紬「だから澪ちゃん、ちょっと私の家は妖怪さんがよく遊びに来るけど!これから毎日一緒に遊びましょうね!!」
澪「そ、それだけは勘弁してくれー!!」
おわれ
最終更新:2014年04月07日 22:45