「ムギちゃん、大丈夫?」
「え?」
平沢唯の心配そうな声に、ムギと呼ばれた少女は小さく驚きの声を上げて固まった。
「何だか調子悪そうだけど……」
お昼の教室、いつものように唯の机に集まり食事をしていた
田井中律、
秋山澪、
真鍋和も、ムギと同じく驚いたような顔をする。
「おいおい、いきなりどうしたんだよ、唯」
「私にはそんな風には見えないけど……和はどう思う?」
「ムギ、どこか身体の具合でも悪いの?」
和の問いかけで我に返ったのか、ムギはやわらかく微笑んだ。
「ううん、平気。 大丈夫よ」
「ということらしいわよ、唯」
「だって、ムギちゃん今日あんまりご飯食べてないし、顔色もいつもより赤い気がして」
確かに、普段から量が多いと感心するほどのムギのお弁当箱の中身は、ほとんど箸が付けられていなかった。
「んー。 ……そう言われてみるとちょっと疲れてるっぽいかもなー」
「この前の日曜日は六科目模試だったから、そのせいとか?」
眉をひそめる律に同調するかのように、澪や和も心配げな表情を浮かべる。
「もしよかったら、私が保険室まで付き添うけど」
「えっと……」
自分に集まった視線がまぶしいかのように、ムギは下を向き、頬を染めてはにかんだ。
「……実は、今日二日目なの」
ムギのその一言で、場の空気が一気に弛緩する。
多少の差はあるものの、月に一度やってくるお客さんに対する感覚を共有しない女子高生はまずいない。
どうやらこの中でも重めな方らしい澪などは、自分の時のことを思い出したのか、お腹に手をあてて顔色をうっすらと青くしている。
そんな親友の様子を横目で見ながら、律が頭を掻きつつ謝る。
「あー、なんだ。 その……すまん」
「いいの、私の方こそ心配かけてごめんなさい」
律と同様、少しだけ気恥ずかしげにする和たちに笑顔を向けると、ムギはお弁当を包み直して立ち上がった。
「私、ちょっとお手洗いにいってくるね」
「ムギちゃん」
自分の席に行こうとしたムギに、唯が再び声をかけた。
振り返り見ると、唯の眉尻はまだ下がったままだった。
「ほんとのほんとに大丈夫?」
自分でも、しつこいかもしれない、と思っているのだろう。
気おくれしながらも、問題が無いことを確かめるかのように尋ねる。
そのことがムギにはとても嬉しく感じられた。
「うん、ありがとう、唯ちゃん。
ほら、このとおり元気だから」
ふんす、とばかりに小さくガッツポーズをしてみせると、ようやく安心したのか唯は笑顔になる。
それにつられるように、律たちも表情をやわらげた。
(――あぁ、やっぱりみんなといるのは楽しいな)
身体の痛みを軽くする胸の温かさを感じながら、ムギはもう一度笑った。
教室を出たムギが向かったのは、講堂だった。
一階へ降りて下駄箱の横を通り、渡り廊下の方へゆっくりとムギは進む。
昼休みも半ばを過ぎていることから、わざわざ用もなしに校舎と講堂を結ぶこの場所を訪れる者などいなかった。そもそも講堂は施錠されており、基本的に生徒の立ち入りは出来ないのだ。
入口に着くと、ムギは下腹部をかばうように押さえつつ、目を閉じて耳をすまし、周りに何の気配がないことを確認する。そして、ポーチから取り出した合鍵で中に入った。
扉を閉め、内側から鍵をかける。
カチリという音が、やけにムギの耳には大きく響いた。
当然のことながら、無人の講堂は静寂によって満たされている。
ムギの記憶の中にある学園祭や新入生歓迎会のライブ、入学式、始業式、終業式などの様々な行事が本当にここで行われたとはとても思えない。
――当たり前だ。
そのどれもムギは直接体験していないのだから。
(まるで教会かお墓みたい)
頭の中にそんな連想が浮かぶ。
しかし、ムギは実際にはどちらも行ったことはない。
この静けさと脳内にある知識が、なんとなく結びついただけだ。
ともかく、施錠され外部から切り離されていたそこは、ムギがさっきまでいた日常からはとてもとても遠い場所だった。
ムギは左の壁伝いに進み、ピアノの横を抜け、舞台の下手袖へと続くドアを開けた。
さらにその奥、下手と上手を繋ぐ通路まで進むと、階段の一番上の段に腰をおろす。
瞬間、まるで腹部を殴られたかのように、身体がくの字に折れ曲がった。
――耐えきれなくなったのだ。
「く……ぅ……」
苦痛を絞り出すように息を漏らす。膝を抱え、なんとか抑えつけようとするが、身体の内側からあふれ出る激痛は、今にも爆発し、自分という存在すら破壊してしまいそうなほどに大きかった。
「はぁっ……はぁ……んっ……」
耐えきれず声が出る。
ぽろぽろと零れる涙を拭くこともできず、ただただムギは汗を流しながら痛みと戦う。
「大丈夫、じゃないみたいね」
いつの間にか、ムギの後ろに人が立っていた。
普通ならば驚いたり、緊張して身体が強張ったりするはずなのだが、声をかけられてムギは逆に弛緩する。
(――来てくれた)
誰なのかは確かめるまでもない。
講堂の入口の鍵はかけてきたし、いくら弱っているとはいえ、一般人が近づいてくればムギには分かる。
第一、その人の音――足音や呼吸音、それに心臓の音をムギが聞き間違える訳がなかった。
ハンカチを取り出すと、痛みでぎこちない動きながらも涙と汗で濡れた顔を拭き、後ろを振り向く。
見上げる視線の先、
山中さわ子が綺麗な眉をしかめ、腕を組んで立っていた。
「いつからそんな状態なの?」
「昨日の……帰り、からです」
「薬は?」
「……昨日までに、全部飲んでしまって」
「そう」
(――あぁ、この子はもうダメなんだ)
さわ子は心の中で呟いた。
彼女の身体はガタが来ている。
おそらくいくつか、あるいはほとんどの臓器が機能不全に陥っているのだろう。
もしくは細胞の寿命が尽きようとしているのかもしれない。
『時間切れ』だ。
さわ子にはそれが分かった。
学校におけるこの二年以上の間、それは何度となく繰り返されてきたのだから。
そうならないために薬を飲むのだが、一定以上摩耗した身体には余り効果がない。
きちんとした施設でしかるべき処置をすればいくらかは改善するとは思うが、それにはコストがかかる。
――彼女をまた『造る』のと同じか、それ以上のコストが。
だから、最初に渡された薬を飲み終わってしまえば終わりなのだ。
「これ、予備の薬だから量は少ないけど飲むといいわ。気休めにはなるはずよ」
「ありがとうございます……えっと」
「いいのよ、無理してそっちの名前を使わなくても。
あなたが今いる場所は学校なんだから、さわちゃんでもさわ子先生でも好きなように呼んでちょうだい」
「……はい、ありがとうございます。さわ子先生」
「いいから、早く飲んじゃいなさい」
さわ子がそう言うと、なぜか彼女は嬉しそうに笑った。
薬とともにペットボトルの水を渡そうとするものの、彼女の手は痛みで震え、赤子のように頼りない。
「ちょっとごめんね」
さわ子は階段に腰かけた彼女の横にしゃがみこみ、ペットボトルの蓋を開け、彼女の口許に近づけた。
自分一人で姿勢を維持するのも難しいのか、ムギはさわ子にもたれかかってくる。
ムギの身体は灼けるように熱かった。
「甘えん坊ね」
彼女の身体が触れている部分から感じる火傷に似た痛みを隠して、さわ子は優しく言った。
最初にムギの口内を軽く湿らせ、薬を含ませてから、もう一度水を飲ませる。
「吐き出さないようにゆっくりとよ」
熱のせいで喉が渇いていたのだろう、彼女はコクリコクリと喉を鳴らしながら、ペットボトルの中身を減らしていく。
(――これではまるで母親ね)
むせたりしないよう、送る水の量を調節しながらそんなことを思う。
というより、この子が赤ん坊のようだと言った方がいいかもしれない。
可愛らしく、純真で、そして愚かだ。
(――本物《オリジナル》のこの子もこんな風なのかしら)
さわ子は会ったことのない『
琴吹紬』のことを考えた。
孵る時を忘れた卵のように眠り続けているという少女のことを。
琴吹紬は幸せだった。
彼女の家は国内でも有数の名家、資産家だったし、両親は紬のことを心から愛してくれた。
少なくとも中学校に進級するまで、紬はこの国で指折り数えるほどに幸福だったのではないだろうか。
13歳になってすぐ、原因不明の奇病にかかるまでは。
紬を襲った病魔は、発作的に全身に激痛が走り、内臓機能がパニック症状を起こすというものだった。原因すらも分からず、唯一分かっているのはその痛みが『成長痛』のようであるというものくらいで、当然治療法も確立していなかった。
紬の両親はその財力や名声をもって方々に手を尽くし、最後に娘をある『病院』に入れることが出来た。都心から少し離れた郊外の山の中腹に建つというそこで紬は治療を受け、奇跡的に快復し、学校にも復帰した。
――と世間的にはそういうことになっている。
実際には、病気自体は発症が前触れもなく突然だったように、やはり唐突に消え去った。
しかし、紬の身体にはその爪痕が深く刻まれていた。
多数の臓器は機能を失いはしなかったものの衰弱し、意識は最も酷い発作に襲われた際に失ったまま戻らず、今も生命維持装置をつけたまま、眠り続けている。
琴吹紬が今現在、幸せかどうかは誰にも分からない。
それでも、いつかは目覚めるかもしれないという希望が残されており、来るかどうかも分からない『いつか』を待つことが出来ることは幸せなのだろう。
ただ、紬の家が富と名声を有しすぎていたこと、そして彼女の両親が娘を愛しすぎていたことは――『ムギ』にとって不幸だった。
どうやら、彼女の両親はこう考えたらしい。
「意識を取り戻さないのが傷ついた臓器のせいだとするならば、それを交換すれば良い」
「他人の臓器が拒否反応を起こす危険性があるというなら、同じ人間から移植をすれば良い」
「もしも、これらが上手くいかないのであれば、娘と同じカタチをした健康な人間に娘の魂を移し換えれば良い」と。
琴吹家はその妄想染みた考えを実行出来るほどの力があった。
いや、そういった需要を満たす供給者――人間を造り出す技術の研鑽、記憶の移項、大量に造られた生命のコピーがオリジナルと同じ価値を持つかどうか、ということに興味を持つ者たちと協力関係を結べるだけの影響力があったというべきだろうか。
ともかく、様々な目的が合致したことにより、琴吹紬《オリジナル》からムギ《コピー》が造られた。
――と、さわ子は聞いている。
事実かどうかは分からないし、知りようもない。
間違いなく言えるのは、その供給者から学校におけるムギの監視と管理を命じられたさわ子が、既に30人以上のムギを見てきたということだ。
(――ただ)
果たして両親は知っているのだろうか。
コピーとは言え、娘と同じ顔かたちをしたムギの身体を用いて、様々な実験が行われていることを。
例えば、存在する筋肉量でどれだけ効率良くその性能《パフォーマンス》を発揮できるか、その性能の限界は、限界を超えた場合の時間制限は、などと言ったものだが、中にはただでさえ短いコピーの寿命を削り取り、実験中に死亡してしまうこともあったらしい。
事実、さわ子は前日別れた時とは明らかに違うムギを何人も見ている。
それを両親たちはどう考えているのだろうか。
まさか、無断で行われているとは考えにくい。
ならば「我が子にはより健康な身体を与えてやりたい」とでも考えているのだろうか。
「何度も作りなおす試作品なのだから有意義に活用しなければならない」
「ひょっとすると、その器に娘の魂を入れることがあるのかもしれない。
ならば、完璧なものであるべきなのだ」
「どうせコピーがどうなろうと、所詮はコピーなのだから」と。
(――最小費用による最大効用? 本当に糞《マジでファック》ね)
怒りをこめてそう吐き捨てたくなる。
けれど、自分もその一端を担っていることをさわ子は自覚していた。
お涙ちょうだいのドラマのお約束のような、切実で、現実的な理由から、さわ子には今の状況から得る利益が必要だった。
彼女を酷い目にあわせている連中に利用され、彼女が流す血や汗や涙を利用することで得る利益が。
(本当に……糞だわ)
「はぁ……」
水を飲み終わったムギの息で、さわ子は我に返った。
穏やかな呼吸と表情からも、少しは痛みが治まったことがうかがえる。
まだ普段以上に高いとはいえ、あの灼けつくほどの熱も治まっている。
それでも、先ほどの痛み――物理的な痛みに対して耐性のあるこの子が表面化することを抑えられないレベルの痛みに襲われるということから、限界を超えているのは間違いない。
まもなく、先ほどよりも、さらに大きな痛みに襲われて気絶するか、体温が上昇して、意識を失うだろう。
そして、この子は死ぬ。
さわ子はムギに気付かれないよう、ポケットの中の通信機を操作した。
内容は、コピーの活動限界がほんの僅かなことの報告とその死体の回収の要請だ。
「……先生、私死んじゃうの?」
自覚していたのか、それとも今の動きを気付かれたのか、小さな声でムギが呟く。
「大丈夫よ。痛みを感じさせないようにする薬があるから」
答えにならない答えを返すさわ子の声は、思った以上にはかすれていなかった。
「あの……もう少し、もう少しだけでいいんです。
なんとか放課後までもちませんか?
私……今日、手作りのマドレーヌを持ってきたんです」
「みんなと食べるつもりで、その、ずっと家で練習していて。
唯ちゃんや梓ちゃんたち、みんな……!
みんなが好きって、言ってたから……
昨日、初めて上手にできて……
だから、今朝、ひとっ……ひとりで……焼いて……」
嗚咽で徐々に聞き取りにくくなるムギの呟きをさわ子は黙って聞き続ける。
「私……お友達と手作りのお菓子でお茶するのが夢だったの……」
「さわこせんせいとも」
それ以上は言葉にならなかった。
さわ子はそっとムギの頭に手をおいて抱き寄せると、彼女の瞳から零れる涙が止まるまで、その髪を撫で続けた。
やがてムギは泣き終わり、さわ子の顔を見て、少しだけ恥ずかしそうに笑った。
さわ子はポケットからハンカチを取り出し、ムギの顔を拭いてあげた。
拭き終わった後、もう一度ムギは恥ずかしそうに笑った。
さわ子もようやく微笑み返すことができた。
その後、二人はぽつりぽつりと話をした。
話と言っても、ムギが話し、さわ子はもっぱら聞き役だった。
ムギは色々なことを教えてくれた。
学校の授業のこと、部活のこと、家で過ごしているときのこと。
唯のこと、律のこと、澪のこと、梓のこと、和のこと。
さわ子のこと。
さわ子の授業が面白かったこと、ティータイムの時に律がさわ子の分のケーキを食べて澪に怒られた時のこと、一度だけ夜中にさわ子から私的な通信を貰えて驚いたこと、その返事を考えるのにいっぱいいっぱい頭を使ったこと、さわ子の車に乗ってみたかったこと、さわ子の部屋に遊びにいってみたかったこと、もっとさわ子の好きなケーキを知りたかったこと、変なコードネームではなく名前で呼ばせてもらえてうれしかったこと、「ムギちゃん」って呼んでもらえてうれしかったこと……
ムギは、何度も何度も「ありがとう」と言った。
どれだけそうしていただろうか。
一時間ほどにも思えたし、十分も経っていないようにも思えた。
心地よさそうに目を閉じ、さわ子の肩に頭を預けていたムギの身体は再び熱を帯び始めていた。
それでも、ムギはしゃべり続け、さわ子はムギの身体を受け止めていた。
ほんの少しだけ後に、ムギが声にならない声で「おねがいします」と言うまでは。
最後にムギは、小さなワガママを言った。
さわ子は少しだけ躊躇ったあと、それに応えてあげた。
「おやすみなさい」と一言だけつぶやいて。
「おいおい! 聞いたかみんな!」
翌日のお昼の教室、いつものように唯の机に集まったメンバーに向かって、購買から戻って来た律が興奮した声で話しかけた。
「ほうほう! なんですかな、りっちゃん!」
「こら、唯。 いきなり立ち上がったら机が揺れるわよ」
「律も帰ってきて早々騒がしいぞ。 食事時なんだから静かにしろよ」
「ほらほら、りっちゃん、座って座って」
三者、もとい四者四様の反応に迎えられた律は、とりあえず席に着いた後、仕切りなおすかのように、明るく声を上げた。
「ふっふっふ、今日はなんと!
さわちゃんが、あのさわちゃんがお菓子を持ってきてくれるんだってさ!!」
「へぇ、さわ子先生がお菓子持ってくるなんて珍しいな」
「りっちゃん隊員、して、そのお菓子とは?」
「な、な、な、な、なんと!! マドレーヌだってさ!!」
「……マドレーヌ?」
「どうかしたの? ムギちゃん」
その声に何かを感じ取ったのか、唯が不思議そうに尋ねた。
「ううん、別に。 なんでもないわ」
本当になんでもない、はずだ。
ムギはその言葉を聞いた時に、自分の中に生まれたものを理解することができなかった。
特に自分はマドレーヌが好きな訳でもないし、特別な思い入れがある訳でもない。
当たり前だ。 何しろ、ムギは昨日目覚めたばかりなのだから。
ひょっとして、と脳内のデータを探してみるが、ムギに最初から焼きつけられているこれまでの個体たちの主な経験の記憶が蓄積されたデータベースにも、管理担当者から貰った報告書等にも、マドレーヌに関係するものはなかった。
ならば、この感覚はなんなのだろう。
現在、製造されるムギたちの記憶は、死亡した後に一度全てをデータとしてコピーされる。
そして、実験等の苦痛の記憶などはふるいにかけられ、『オリジナルの人生』となるべき部分のみを記録し、それ以外は破棄される。
新しいムギに移されるのは、データベースに記録されたものだけだ。
しかし、オリジナルの人生に関わる部分であっても、まだ完璧にコピー出来る訳ではなく、まれにムギの記憶の断片が混じり込むことがある。
ああ、そうだ。
そういえば、ムギが所属する軽音楽部の部員たちが好きだと言っていたっけ。
そんな情報が記憶の海の中から浮かび上がる。
……これは誰の記憶なのだろうか。
これまでのムギたちのことを、今のムギは考える。
もしかしたら、この誰のものか分からない記憶が、『ムギ』という自分の存在に刻まれた、『ムギの人生』としての記憶なのかもしれない。
――「おはよう。ムギちゃん」
昨日、目が覚めたときに初めて見た女の人――変なコードネームでなく、『山中さわ子』と呼んでほしいと言ってくれた人に対して抱いた感覚と同じように。
そうであったら、とてもうれしい。
「あ……」
その時、別の記憶も浮かび上がって来た。
「ん?どうかしたの、ムギ」
「私ね、みんなとマドレーヌでお茶するのが夢だったの」
「大袈裟だなぁ、ムギは」
律の言葉に、唯も澪も和も笑った。
そしてまた、ムギも笑った。
終わりです。
最終更新:2014年04月07日 23:16