梓「なんだか家でのムギ先輩を見ているようでしたね」

唯「うん! 今回の作品の中で、一番私が知ってるムギちゃんって感じだったよ」

澪「メイド体験にラーメンに銭湯。どれも実にムギ『らしさ』があったな。
  この作品に出てきたエピソードは、実際ムギが一度はやったんじゃないか、って思えるくらい、どれもありえそうなものだしさ」

律「ムギっていうと、高一と高二以降では大分、キャラ……っていっていいのか?が違う感じだったけど、
  この作品のように、家では今に近い感じだったのか?」

梓「菫から聞いた話だと、今のムギ先輩の方がイメージに近いですけど……」

唯「ムギちゃんの中学時代の友達が、私たちが3年の時の学園祭ライブを見に来てて、
  今のムギちゃんを見て驚いたって聞いたことあるよ」(公式ガイドブック情報:未確認)

澪「一番最初に会った時は、本当にお嬢様、って感じだったっけ。
  でも、別に演技してたって感じじゃなかったし、なんか不思議だな……」

ムギ「……」

唯「不思議と言えば、この作品のムギちゃんは『夢』って言わないんだね」

律「おおっ!ほんとだ!
  ムギお得意の、夢のバーゲンセールがない!」

ムギ「バ、バーゲンセール……」

梓「ちょっと、律先輩!」

律「ご、ごめんな、ムギ」

ムギ「バーゲンセールって一度行ってみたい!」きらきら

律「たはは……さすがはムギだな」

唯「ムギちゃんはいつだってムギちゃんだよ! ねー?」

ムギ「……えへへ。 ねー?」

澪「まあ、ムギと言えば『夢だったの』イメージだけど、実際には『一度でいいから○○したかったの』の方が多いんじゃないか?
  そこまで詳しく数えたことはないけどさ」

梓「そっちはこの作品内でもありますね!」

澪「そういう細かいところが、本当に上手いなぁって感じたよ。
  電気風呂のところとか、ラーメンの食べ方とか、キャラクターの動かし方というか、演技というか振る舞いというか」

唯「セリフだけでも、動く絵が浮かんできたもんね!」

梓「文によって想起の連続を起こして動かすというよりは、なんというか、アニメーションの動画の作り方、見せ方ですか?」

澪「前のセリフと次のセリフがアニメで言うところの動きの始点と終点という感じで、その間のセリフが
  動きのモーションを想像させる『動きの止め絵』というか……ひょっとすると、イラストを描ける書き手の方に特有のものなのかもな」

律「絵と言えば、最後の絵にはビビったな!」

梓「この作品の魅力はそれだけじゃないですし、もしもあの挿絵がなくても評価は変わらないとは思いますが、
  それでもやっぱり別次元の破壊力はありましたね」

唯「このお話の象徴っていうか、空気がぜんぶつまってたもんね。
  あんなふうに『具体化』できるって、挿絵の大きな力なんだろうな、って思うなぁ」

ムギ「……なんだか、ちょっとだけうらやましくなっちゃうな」

澪「そうだな。私も歌詞だけじゃなくて、絵心もあったらなぁ、ってつくづく思うよ」

ムギ「そうね。 そっちも……かな」

 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 4点
 作品の展開    … 5点
 作品の読後感   … 5点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:ああ、いいなあって思える作品だった。挿絵もいいし、とにかくムギちゃんが可愛かった。お父さんへの差し入れのエピソードとかは実際にやってそう。
         いやあ良い作品だった。


紬「受けて立つわ!りっちゃん!!」ヨシキター!

梓「このムギ先輩の『ヨシキター!』がかわいすぎましたね!!」

律「そ、そうだな」

梓「菫に対するお姉さんのようなムギ先輩と、唯先輩たちと一緒にいるときに時々見せる
  ちょっと子どもっぽいムギ先輩の両面がしっかり両立していて、すごくよかったです!」

澪「あ、梓? ちょっと落ちついた方が……」

梓「子どもの頃の律先輩と澪先輩もかわいかったですよ!!」ふんす!

唯「あずにゃ…」

梓「あ!もちろん!唯先輩も!!ショボーンってする先輩は本当にかわいかったです!!!」

ムギ「梓ちゃんが興奮するのもわかるわ。
   梓ちゃんも含めてみんなかわいらしかったし、とても自然だった気がするもの」

梓「そうなんですよ!私は、この作品を読んでいて、
  私や先輩方の楽しそうな声が何度も聞こえました」

律「やっぱり、自然な発言にはキャラクターの声が聞こえてくる気がするよな」

唯「うんうん、読んでて頭の中でみんなの声が聞こえると、それだけで嬉しくなっちゃうもん!
  そんなSSってすっごく素敵だよね!」

澪「しいて言うなら、唯梓のところはもうちょっとタメがあったらもっと良かったと思うな」

梓「確かに『……捕まえますよ』の台詞までの流れがやや早かったかもしれませんね。
  三点リーダーで沈黙、というかタメを演出していますが……
  澪先輩や律先輩の場面では、回想が挟まれていることで、少なくとも読み手の中にはタメが生まれていますし」

律「でも、台本形式って、時間の経過とか台詞の間とかの空白の部分を出すのがちょっと難しいよな」

梓「基本は掲示板で読みますから、レスを区切るというのも一つの手だとは思いますが……」

澪「中の人は、自作では視点変更時にレスを変えてみたけど……」

ムギ「区切りが消えた時には、同じになっちゃうものね」

唯「うーん、むずかしいね」

梓(あの顔はあんまりよくわかっていないんだろうなぁ)

ムギ「……かくれんぼ。 いつかやってみたいなぁ」

 作品の雰囲気   … 4点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:楽しそうなみんなの声が聞こえた。それだけで嬉しくなる。
        やっぱり、自然な発言にはキャラクターの声が聞こえてくる気がする。
        そんなSSってすごく素敵だと思う。


紬「確かに、私達の中で一番デジカメ使いこなしてるの澪ちゃんだもんね〜」ツンツン

梓「ツンツンスキンシップなムギ先輩が可愛いかったです!」

律「それはもういいから!」

ムギ「すごくきれいなお話だったわ」

梓「はい! 前半のまち歩きも、後半の桜もきれいでしたね!」

澪「単に中の人の見てる作品が少ないだけかもしれないけれど、
  あんまり私のカメラを使った作品ってみたことないから新鮮だったな」

律(えーっと……ああ、私と梓のあの話くらいか……)

唯「修学旅行の時は忘れちゃったけど、私もカメラ持ってたんだよね」

ムギ「写真は思い出を切り取る、みたいな感じがあるから不思議ね。
   一枚一枚の写真の積み重ねが、記憶を、思い出を重ねている感じがして、私好きだな」

澪「このお話も、まるで写真の一枚一枚って感じだったな。
  作品の中の唯や私のアルバムを見てるみたいというか」

梓「中の人と仲の良い方が『唯澪は映像性が大事だと思う』、
  『澪関連のカップリングを好きな人って、みんな画になる光景を求めている気がする』、
  『背景の画素数が高いこと、一枚絵として美しいことも条件に入ってる気がした』とおっしゃっていましたが、
  この作品を見るとなんとなく分かる気がしました」

律「ずっと咲いているっていう万年桜はちょっと怖い気がするけどな」

唯「えー、きれいだったよ?」

梓「満開の桜、特に夜桜は一種の神秘的な雰囲気とともに、どこか不安を呼ぶような妖しさがありますからね。
  ずっと咲き続けている万年桜には、美しさとともにどこかアンバランスなものを感じてしまうのかもしれません」

澪「ちょっと話がずれてきてないか?
  えー、こほん。 他に、私がこの話で面白いと思ったのは、直感とか感性についての描写だな」  

実際のところ、他にもカメラを持っている友人はいるにも関わらず唯が澪を選んだのは前述の理由以外にも似通ったセンスをしていることを直感で感じ取っているからかもしれない。

澪もまた、そんな唯に自分の知識を貸すことを厭わない。そうすればもっと素晴らしいものを唯は自分に見せてくれる。それを同じように直感で感じ取っているから、かもしれない。


わからない、が、唯は自身の直感を信じることにした。


澪「……いい笑顔しちゃって」

唯「もう暗いけど、見えた?」

澪「なんとなくわかった。よっ、と」

澪「私も、『なんとなく』しかわからないんだけど、冒頭から唯は直感を信じてるというか、
  感覚とか感性に委ねているというか、従っているというか……」

律「澪は、あれだよな。 常識的な部分というか理性的な部分と感性的な部分の両方あるんだけど、
  大体は常識的な部分が前に出るよな」

ムギ「澪ちゃんはその感性の部分の爆発が可愛いわよね。
   普段しっかりしてるから余計」

梓(爆発……はじける……どこかで聞いたような……)

唯「『かもしれない』っていうのが、私の主観なのか、書き手の人の主観なのかはよくわからないけど、
  ちょっとまだ感性の部分が前に出きっていないよね。
  それが、私やムギちゃんと一緒にまち歩きをして、桜を見て、その感性の部分がどんどん前に出てきたのかもなって」

梓「『なんとなくわかった』っていう澪先輩はカッコイイですね」

ムギ「澪ちゃんは、理性と感性のバランスがどちらかに寄りすぎると脆いというか、押されるとよろけたり倒れちゃいそうだけど、
   どちらかをどちらかが受け入れてる時とか、バランスが取れてる時は、すごくかっこいいと思うわ」

澪「そ、そんなことないって……」

律「澪ちゅわーん、お顔が真っ赤でちゅよー」

澪「う、うるさい!」

ムギ「りっちゃんの場合も澪ちゃんと似てるところがあるかも。
   普段の『あたし』と乙女な『私』がいて、それが安定しているとすごくかっこいいもの」

律「そ、そんなことねーし!」

澪「律、顔真っ赤だぞ」

梓「そういえば、今気付いたんですが、澪先輩、ムギ先輩、唯先輩って、HTTの感性担当って感じですね。
  作詞兼ボーカル、作曲、ボーカル兼作詞ですし」

律「そう考えると、私たちが登場しないというのもある意味必然なのかもな」

唯「でも、やっぱりみんなであの桜を見てみたいなあ」

律「そうだな」

梓「はい!」

澪「ああ、今度はみんなで見よう」

ムギ「うん、きっとね!」

 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:綺麗な作品だった。読んだ人の多くが、この作品に綺麗な絵のイメージを持つんじゃないかなぁ。
         それって大きい強みだと思う。


律「え?」

唯・梓「え?」

ムギ「え?」

澪「……とまさしくこんな感じだったな」

梓「ここまで読み手と律先輩をシンクロさせたのは、本当にすごいと思いました」

澪「実際、この作品を読んだ大半の人がみんな同じ感覚になったんじゃないか?」

梓「そう考えると、書き手の人がまさに仕掛け人って感じですね」

唯「はんにんはおまえだ!」

ムギ「あ、ずるい唯ちゃん!私もそれやりたかったのに!」

澪「ひょっとすると、それも狙いだったのかもしれないけれど、
  なんとなく作中の律と同じで、流されるままに状況が進んでしまったって感じで、
  『???』と疑問符が途中から連続したままだったな」

律「どうせムギも騙す側なんだから、ムギも私と一緒になって騙されるフリを徹底的にやって、とかの方がよかったかもなー
  例えば、私を読者と同じく流される役割を与えるとしたら、ムギは私(読者)の当然抱えるであろう疑問(ツッコミ)等の代弁者になるとかさ」

梓「役割と言えば、ムギ先輩のお父さんは上手いなぁ、って思いました。
  トリックスターというか、ひっかきまわすというか。
  ただ、ひっかきまわし過ぎて、そのグルグルに翻弄されちゃいましたね」

唯「でも、いくら騙すためだからって、本人に黙って気持ちを伝えちゃうなんてひどいよ」ぷんすか!

ムギ「うんうん!まったくもってそうね!」こくこく

律「まあ、あれは少し親心でもあったような気がするけどな。
  お父さんが単なる憎まれ役というか、意味不明な理屈で律とムギを振りまわしているだけ、って感じだから、
  『ちょうどいい機会じゃないか。一歩踏み出すための』みたいな父親としての部分も『演技でした』にもってかれちゃって惜しい気がする」

澪「読み手としては、神の立場にいるから、あれもちゃんと娘のことを思っているんだろうな、とフォローは出来るんだけど、最後の「演技でした」のぽかーんの衝撃でけし飛んじゃうというか」

梓「あともう1レスか2レスくらい入れて、律先輩にちゃんとみんなで謝って、律先輩に笑って許してもらって、
  その後に『……本当にあの結末でよかったのか?』みたいな父親としての顔を出してあげれば、もうちょっと読後感も変わって来たのかもしれませんね」

澪「ただ、そうなると、あそこまで作中の人物と読み手のシンクロが起こらないだろうな。
  それはそれで、この作品の良さを減らしてしまう気がするけどさ」

唯(……あれ、一番たち悪いのは澪ちゃんだよなあ)

 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:あのラストには、誰しもが律っちゃんとシンクロするんじゃなかろうか。
         あそこまで作中の人物と読み手のシンクロがなされるのはすごい。


澪「うーん、1レスでここまで書けるんだな」

唯「短いのに、きれいにきしょーてんけつがまとめられたね!」

澪「……で、だ。 私と梓ってそんなに似てるか?」

梓「私もあんまり似てない気がするんですが……」

ムギ「実は、私もそんなにあの子と似てるとは……」

律「そういや、この作品の中でやったみたいに、髪下したら唯と似てるって言われたことあったっけ」

唯「えー!? りっちゃんと私似てるかなぁ?」

梓「作中でも菫が言ってましたね」

唯「うーん、私みたいにあんまり同じには見えないと、初めから最後の菫ちゃんのようになっちゃうかも」

澪「これも読み手の感じる当然の疑問に対してある程度の予測と疑問の受け止めをしないと、やっぱりさらさらって読み流されちゃうかもなあ。
  だから、やっぱり最初に読み手より早くツッコミを入れておいた方がよかったかもしれないぞ」

律「ギャグならギャグでぶっ飛んだ確かめ方をする、って方が、『いやいやいやwww』ってツッコミを入れながら読めて楽しいかもな」

律「おいムギ、乳見せろ」

梓「この律先輩の確かめ方とか面白かったですね!」

澪「乳って……」

唯「ちちって言い方がいいよね。ちち!ちち!」

ムギ「そういえば、澪ちゃんと梓ちゃんも胸の大きさでわかるわね!」

梓「いや、それ以外でも分かりますよね!?菫が言うように、背とか色々ありますよね!?」

澪「コホン! ともかく、私と梓、ムギと菫ちゃんのように似てる、ってネタは結構思いつくから、
  そこからの飛躍を見たかったな。

  例えば、そのままどちらがどちらか分からないまま(もちろん、読み手は分かってる)話が進んでいくとか、
  面白がった唯や律の発案で私と梓、唯と律、ムギと菫ちゃんを逆にしたままで普通に過ごしてみるとかさ」

律「書き手の方が言うとおり、憂ちゃんと風子も混ざったところも見たかったな」

ムギ「風子ちゃんは澪ちゃんと似てるもんね」

律「風子の胸ってどれくらいだっけ……澪のは覚えてるんだけどなー」わきわき

澪「そ、その手、やめろって!」

梓(覚えてるんだ……)わきわき

 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 3点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:作者の方もおっしゃっていたけれど、憂ちゃんと風子ちゃんが出なかったのが残念。もともとの想定だった部室で、という方も読んでみたいなぁ。


唯「『1143円って税込1200円ですよね』って感想を見て、『ああ!?』って驚いちゃった。
  りっちゃんもすごいけど、気づいた人もすごいね!」

ムギ「どうなるのかな?どうなるのかな?って思いながら読んでたわ」

梓「最後は、え、ええ〜?そ、そこ行っちゃうの??って感じでびっくりしちゃいました」

律「お化け屋敷だもんな。ありゃ驚くわ」

唯「でも、澪ちゃんに叩いて(スキンシップして)もらえて良かったね」

ムギ「うん!」

律「ところで、あの設定だと菫ちゃんたちはどこに住んでいるんだ?2世帯同居?」

澪「マリオカートをプレイしてるのが律と梓の二人でだけで、『ゲーム機とられちゃった』のコメントがあるけれど、コントローラーの数はいくつなんだろう……
  まさか家にはあまり友達が来ないから、菫の分の2つしか持っていないなんてことがあったら……」ぶわっ

律「いや、ちょっと待て、その後に『澪先輩とムギ先輩と一緒にゲームしよっと』って言ってるぞ?」

澪「あれ、でも人生当てもんゲームの可能性も……」

唯「そんなことより、バナナはおやつだよね?」

梓「え?デザートって感じじゃないんですか?」

ムギ「食材かしら。あんまりバナナだけ食べるってのは少ないような」

律「おーい、聞いてんのかー?」

澪「だめだ。なんだか気になるところがあり過ぎて、話題が分散してる感じだな」

梓「冒頭はぐぐっと引きこまれたんですが、後半は展開が急すぎて……」

唯「お化け屋敷で暮らすムギちゃんのお話をもっと見たかったなぁ」

ムギ「お化けさんたちと唯ちゃんたちの絡みももっと見たかったわ!」

律「ムギの家がお化け屋敷ってのは、なかなか出ないアイデアなんだから、
  そこを生かした次回作があれば読んでみたいな」

澪「私たちの会話とか、全体的にはすごくクオリティ高かったし、
  続きをまた読んでみたいな、って思う作品だな」

梓「……純も、もうちょっと先輩方と絡みたかっただろうなぁ」

 作品の雰囲気   … 3点
 作品の冒頭    … 4点
 作品の展開    … 3点
 作品の読後感   … 3点
 作品の読みやすさ … 3点

 ひとこと感想:佐々木さ、じゃなかった、鈴木さんのお家の大きさにびっくりした。
        ネタで終わらすんじゃなくて、もうちょっと長めで、そのお化け屋敷的な家で暮らすムギちゃんとお化けたちがけいおん部の日常とどう絡むのか見たかったなぁ。


唯「ムギちゃんは天使だったんだね!」

梓「ちょっと待ってください、それは私じゃ……」

律「違うぞ唯、女神だ、女神」

唯「じゃあ、えいっ」

ムギ「きゃっ」

唯「えへへ、女神にふれたよ!」

梓(ぐぬぬ)

澪「『はいはい。聞いてます』とか言っちゃうムギは本当に可愛いな」

梓「……はっ! 確かに、この作品のムギ先輩は可愛いですね。
  私と一緒の時には絶対に見えなかった、先輩方が1年生の頃を見せてもらえた気がします」

梓「……ひょっとすると、こういう『私の知らない物語』もあったのかもしれませんね」

—————————————————————————————————————————

梓「そう考えると、自作と通じる部分があるかもって思ったりします。
  あれも『私の知らない物語』ですし。
  そして、その『私の知らない物語』の中にこそ『私の知っている物語』があるのかも……なんてことを考えてしまいました」

梓「とは言え、こちらの作品の方がまだ『私の知っている物語』と近いのかもしれませんね。
  自作や蛸壺の中のような、じめじめとした暗さや冷たさ、しめっぽさとは違う、あたたかさややわらかさがありますから」

梓「こうやって、『私の知っている物語』の中に『私の知らない物語』を見せてくれる眼鏡のようなものは好きです。
  まあ、そのレンズの度の強さは作品によって違うかもしれませんが。

  梓唯、唯梓、律澪、澪律、律紬、紬律……エトセトラ、エトセトラ。
  恋愛に悲恋、喜劇に悲劇、希望に絶望……エトセトラ、エトセトラ。
  色々なレンズがあって、それらを重ねるたびに『私の知っている物語』のプリズムの中のスペクトルが見えるようになって、すごく素敵だと思います」

梓「どこかの誰かが書いた偽史、遠い遠い『月日の先』というのも、その眼鏡をかけて今の私たちを覗けば見えるものなのかもしれませんね」

梓「ただ、なんとなく、眼鏡をかけるのは読み手でも、語るのは私だったり澪先輩、和先輩が多い気がしますけど。
  うーん、これはどうしてなんでしょうね?」

—————————————————————————————————————————

唯「あずにゃん……あずにゃん?」

梓「あ、すみません。ちょっと考え事をしてまして。
  そう言えば、原作などでは、いつごろから明確に『軽音楽部』は『けいおん部』になったんでしょうか。私が入部した時にはもう『けいおん部』でしたよね?」

唯「アニメでは、1話の冒頭からりっちゃんが『澪、クラブ見学に行こうぜ!』『軽音部だよ!軽音部!』って言ってるね」

ムギ「決定的なのは、2話の澪ちゃんの「やっとスタートだな」の後にりっちゃんが「私たちの『けいおんぶ』」って言ってたからここかもね」

澪「この作中での『けいおん部』ってのは『私たち』のもの、ってことで律の主観性の現れを示しているのかもな。

  もっと深読みすれば、女神が叶える願いは

  >『けいおん部をつくること…4人部員を集めてけいおん部を作って…
   バンドをやりたいッ!それが私の願いだッ!』

  だから、律の『けいおん部』に関わろうとする人は『軽音楽部』じゃなくて『けいおん部』として認識するようになるのかもしれない」

梓「そう考えると、斎藤さんの『軽音楽部の設立』という願いの認識と、ムギ先輩の『けいおん部を作る』という願いの認識のズレも筋が通りますし」

律「さわちゃんが『けいおん部』と認識しているのも、かつて『私たちのけいおん部』にいたせいなのかもな。
  実際、アニメの1話冒頭から、さわちゃんは『頑張ってね、けいおん部』って言ってるし」

唯「強いて気になったところを言うなら、『私、あなたのことただの嫌なうるさい使用人だって思っていたわ』かなぁ。
  ちょっと言い方にびっくりしちゃったよ」

澪「いや、これは親しいからこそ言える言葉なんだし、直後に

  >そうだ、私認めてもらいたかったんだ。誉めてもらいたかったんだ、斎藤に。

  >他の誰でもない、斎藤に誉めてもらいたかったんだ。

  ってあるから、おじいちゃんとかに甘える感じと言うか、そういった素直になれない部分なんだってのは分かるんだけどな」

律「たとえば『私、あなたのこといつも口うるさいことばかり言うって思っていたわ』みたいに変えるとか?」

澪「そんなところかな。唯の言うとおり、『嫌な』『うるさい』『使用人』ってのはちょっときついしさ」

唯「でも、女神なムギちゃん、すっごくよかったね!」

ムギ「ふふっ、ありがと。 私はこのお話の中の唯ちゃんにすごく助けてもらったわ。

   >ムギちゃんはね。ムギちゃんであればいいの。それでいいんだよ。他にはなにもいらない。
   >女神様だとか人間だとか、そんなことどうだっていいことだよ

    って言われて、すごくすごくうれしかったもの」

澪「あれは良い場面だったよな。
  主役?の律がかすんじゃうくらいにさ」にやにや

律「わ、わたしだって、その……」ごにょごにょ

ムギ「うん!もちろん、りっちゃんも。それに澪ちゃんも。
   みんな本当にありがとう。
   さわちゃんもだけど、私みんなに会えてよかったわ」

律「そうだな!」

澪「ああ!」

唯「うん!」

梓(わ、私だって出演していれば……)ぐぬぬ

ムギ「梓ちゃんもよ。
   いつも一緒にいてくれてありがとう」

梓「……えへへ、はい!」

澪「書き手の方が続編を書いてくれると言っていたし、きっと次は梓の出番もあるさ」

梓「そうですね!」

唯「次はどんなお話なのか、今から楽しみだよ〜」

 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 5点
 作品の読みやすさ … 4点

 ひとこと感想:全然ベクトルは違うんだけど、何となく自作に通じるものがある、『けいおん二次創作』としての佳作だと思う。
        女神なムギちゃんが原作のお嬢様なムギちゃんと二重写しになって、上手いなぁって思った。
        どうしてこういうふわふわなものが僕には書けないのかなぁ……


澪「今回の企画の中では、この作品の出来が突き抜けてたな」

ムギ「全体のレベルが高かったし、短編の見本みたいだもね」

唯「私とあずにゃんのやりとりも、きゃっきゃっ、って楽しそうな声が聞こえてきそうだったもん」

梓「律先輩や澪先輩が、読み手の入れるであろうツッコミを的確に入れてましたし、

  >律「私ら、友達の家に遊びに行くんだよな・・・?」

  >澪「そうだろ律。……たぶん。きっと。そう願いたい」

  みたいに、物語の構成を設定(整理)しつつ、これからの展開へのラインを引くところとか、
  細かいところもすごく上手でした」

律「あとはもう、個人的な好みって感じかなあ」

梓「なんだか、ひっかかる言い方ですね。
  その『個人的な好み』ってのはたとえばどの辺りですか?」

律「たとえば、37時間かかった、というなら、
  その間、私たちは学校とかどうしていたんだ?ってなるだろうから、
  先回りして2レス目で、『連休だから泊りに行こう』とか『春(夏、冬)休みも残り×日だし、思い出作りで泊りに行こう』みたいな
  ある程度自然な流れを作っておいた方がよかったかもな。

  ギャグは非日常のまま突き抜けても面白いけれど、それってどんどんどんどん加速しなきゃいけないから、『置いてかれる日常』って結構大事な気がするんだ。

  特に、この作品のオチは、非日常から日常に戻るときの落差を落としどころとしているから、戻るべき日常は大事にした方がいいかもなーって」

澪「あと、オチが
  憂ちゃんが発熱→唯の自宅に帰らなきゃ→『ムギの家から(最寄り)駅まで車で15分』
  ってなっているけど、ちょっとタイトルの『唯「ムギちゃんの家は遠いなあ」』から少し離れちゃった気もするな。

  作中では、通学とか登下校が繰り返し出てきているだろ?
  だから、意識としては『家は遠いなあ』は『学校から家が遠い』訳だ。

  そこで、『家から(最寄)駅の距離』の近さをオチにもってくるのは、少し遠いというか……」

律「だから、例えば前述のお泊り云々を使って、泊まるついでに課題、宿題をやる予定だったみたいな風にして、
  学校に課題を忘れちゃった→取りに行かなきゃ→紬「唯ちゃん、それなら大丈夫!ここからなら学校まで車で20分くらいだからっ!とか、
 『〇〇(着替え、課題など)、家に忘れちゃった』→取りに行かなきゃ→紬「唯ちゃん、それなら大丈夫!ここからなら唯ちゃんの家まで車で15分くらいだからっ!」
 とかにすれば、よりそれっぽくなるかもなー」

唯「私の家、学校から徒歩圏内だもんね」

梓「……なんだか重箱の隅をつついているような気がしないでもないですが」

澪「私たちの中の人は好きな作品ほどつっこみたくなる面倒くさい性格だから仕方ないな」

律「初読の時から、多分この作品が1位とるなーって書いた方に言ってたくらいだし」

ムギ「でも、ずるい!私もみんなと一緒に世界旅行したかったのに!」

律「いや、あれは……」

澪「……なあ?」

梓「……はい」

唯「……うーん」

ムギ「むー!」

 作品の雰囲気   … 5点
 作品の冒頭    … 5点
 作品の展開    … 4点
 作品の読後感   … 4点
 作品の読みやすさ … 5点

 ひとこと感想:冒頭の掴みから一気に引きこむテクニックがすごい。
        正直最初に読んだ時、総合的に段ちな筆力を感じた。



最終更新:2014年04月08日 07:51