第一話
‐鈴木家‐
淳司「おい純」
純「どうしたのあっちゃん」
淳司「お前冷蔵庫に入ってたシュークリーム食べただろ」
純「食べたよ」
淳司「どうして食べた」
純「あっちゃん、その質問はナンセンスだよ」
淳司「はっ?」
純「あっちゃんはおやつを食べるとき、その意味を考えたりする?」
純「普通しないよね」
純「だってこれは人間の本能、決して逆らえない欲求の現れなんだから」
純「だから私も、その質問には答えられない」
淳司「そうかわかった」
純「うん」
淳司「……」
純「……」
淳司「で、どうして俺のシュークリーム食べたんだよ!?」
純「わかったって言ったじゃん!!」
第一話「納得はしてない」‐完‐
第二話
純「不可抗力だったんだってばー」
淳司「そんな不可抗力があってたまるか」
純「だって食欲は三大欲求の一つだよ。抑えられるわけないじゃん」
淳司「その理屈でいくと、性欲も抑えられないものに数えられるけど」
純「あ、あっちゃん不潔……」
淳司「なんでだよ!」
淳司「……あー、お前今から同じもの買ってこい。そしたら許してやる」
純「なんで私があっちゃんのシュークリーム買わなくちゃならないのさ」
淳司「お前が食べたからだろうが!!」
第二話「食べ物の恨みは恐ろしい」‐完‐
第三話
‐外‐
純(もう、あっちゃんも勝手すぎるよ)
純(ていうかこのお店、結構遠くない?
そんなとこのシュークリームを買ってくるなんて……)
純(あっちゃん、私より女子力高いなあ)
純「今度からあれは兄ではなく、姉として見よう」
純(姉といえば唯先輩……)
純(じゃなくて憂。ここで憂を誘っちゃえば買い物ついでに遊べるし、一石二鳥じゃない?)
純「……うわ、なにこれ私頭いい。超冴えてるわ」
純(では早速)
純「あ、もしもし憂? うん、そう。今からちょっと遊べる?」
純「えっ。唯先輩と一緒に出掛けてる?」
純「あー、いいよいいよ。むしろ喜びそうだし」
純「ちょっと遠いけど、美味しいシュークリームを売ってるお店があってね」
純「えっ」
純「そう、そのお店だけど……」
純「……今いるの?」
純「……」
純「……憂、私のぶんも買っておいてくれない?」
第三話「幸運の一石一鳥」‐完‐
第四話
純(いやなんたる偶然)
純(でもこれでシュークリーム問題は解決したことだし、適当に遊びに行こう)
純「というわけで梓ー、遊びにきたよー」
梓「……せめて家に来るなら連絡くれない?」
純「いいじゃんいいじゃん、私たちの仲だし!」
梓「それはあんたのセリフじゃない」
梓「まあ遊ぶのはいいけど、家はダメ」
純「え、なんで。散らかってたりするの?」
梓「……あんたんところのお母さんが来てる」
純「えっ」
梓「で、私のお母さんとワイワイやってる」
純「それはなんというか……」
純「入りにくいよね」
梓「うん……」
第四話「きまずさの共通項」‐完‐
第五話
‐鈴木家‐
純「というわけで、うちにご招待しよう」
梓「お邪魔します」
純「じゃああっちゃん、私の部屋は今から立ち入り禁止だから」
淳司「おい、その前に俺のシュークリームはどうなった」
純「私の腹の中だけど?」
淳司「んなことわかってるわ! 買いに行ったんじゃないのかってことだよ!」
純「全く……、お客さんの前ではしたないよ、あっちゃん」
淳司「くっ……」
梓「あの、すみません……お邪魔してます」
淳司「……ああいいんだよ、いらっしゃい。相変わらず純と仲良くしてくれてるんだね、ありがとう」
梓「えっと、こいつがなにかご迷惑を?」
淳司「お友達が気にするようなことじゃないよ、ごめんね」
梓「いえ、お気遣いはしないでください」
淳司「そう?」
梓「純には私からきつく言っておきますから」
純「あんたは私のお母さんか」
第五話「アズサ、マイオカーサン」‐完‐
第六話
純「あとでちゃんと買ってくるから安心してって〜」
淳司「全く……そんなことだとベース教えてやんねえぞ」
純「そ、それは勘弁!」
梓「そういえばお兄さんはベースを弾かれるんですよね。
あと純のベースを鍛えているとか」
淳司「まあね。まだまだ俺には追い付いていないけど」
純「絶対追い抜かすもんねー!」
梓(仲の良い兄妹だことで……)
淳司「追い抜かすとは言ってるけどお前、俺に言われたとこ直したのか?」
純「うぐっ……」
淳司「そんなんじゃいつまで経っても上達しないぞ?」
純「で、でも〜……私だって努力してるし〜……」
淳司「はいはい、それは今度の練習で見せてもらおうか」
純「絶対見返してやるんだから!」
梓(でもお兄さんは教えることをやめようとしないし、
純は純で、お兄さんに練習の成果を見せたいようだし)
梓(なんだかんだで、お互いが好きなんだなあ……)
純「……梓、にやにやしててキモイ」
第六話「兄と妹と、にやける猫」‐完‐
第七話
‐純の部屋‐
純「いらっしゃい、マイルームへ」
梓「意外と片付いてるね」
純「へへん」
梓「……と思ったけど、これ雑過ぎ!」
純「えっ、そう?」
梓「適当に箱にぶちこんだだけの雑貨類とか……適当な順番でしまってある本とか……」
梓「あー、なんか気になるー!」
純「じゃ、片づけといてー」
梓「……まずは純を片づけるか」
純「私を!?」
第七話「でっかいほこりを」‐完‐
第八話
純「なんで部屋の大掃除をやる羽目になってんだろ、私……」
純「これならシュークリーム買いに行ってた方が数倍良かったー!」
梓「つべこべ言わない。……ってこれ、三巻だけが抜けてんだけど」
純「ああ、多分それ部室にあるわ」
梓(軽音部は部室を私物化するのが伝統なの?)
純「ていうか、もう読まないような漫画もたくさんあるんだよねー」
梓「捨てちゃえば?」
純「でも売れば少しはお金になるし……」
梓「じゃあ売ればいいんじゃない?」
純「お店まで持っていくのが面倒じゃん!」
梓「とことん怠け者だね」
純「ちっちっちっ。これを怠け者と言っちゃ困るね」
純「これは環境に優しい生き方……そう、エコなんだよ!」
梓「そのせいでゴミはたまる一方だけどね」
第八話「エコのためにエコな生き方は望めない」‐完‐
第九話
純「はあ、乗り気になれないわあ」
梓「これだけ適当にしまってれば、そりゃね」
純「試験前になれば捗るんだけどなあ」
純「ほら、試験前ってなんとなく机の整理とか始めない?」
梓「あー、あるある」
純「……というわけで、今から私たちは試験一週間前ってことにします!」
梓「やる気出してくれるなら、なんでもいいけど……」
純「……」
梓「……どうしたの」
純「まだ一週間もあるからやる気でない」
梓「おい」
第九話「スタート地点を見誤る」‐完‐
第十話
梓「そういえばお兄さんがなにか怒ってたけど、なにしたの?」
純「うんとね、冷蔵庫のシュークリーム食べた」
梓「断りもなく?」
純「だって生存本能だよ? 不可抗力だよ!?」
梓「はあ」
純「断りをいれろって方が理不尽だと思わない?」
梓「今のあんたが一番理不尽だ」
第十話「理不尽の攻防」‐完‐
第十一話
‐淳司の部屋‐
淳司「はあー……」
淳司(純のやつ、人のシュークリーム勝手に食べるわ、
それを買ってこいと言ったら友達を家に誘うわ……自由すぎるだろ)
純「ふんふふふーん」
淳司(久しぶりに実家に来てみたらこれだもんなー。
……まあ元気そうな家族の様子が見れて、よしとするのもまたよし)
純「おっ、あったあった」
淳司(シュークリームに関してもアテがあるみたいだし、心配する必要はないか。
それにこれさえバレてなければ、目的には支障ないし……)
純「それじゃ、これ借りてくからね」
淳司「んっ?」
純「それじゃねー」
淳司「いや待て。お前いつの間に俺の部屋に来た?」
純「ついさっき」
淳司「ノックは?」
純「してないよ?」
淳司「しろよ! 家族でも人の部屋に入るなら、ひとこと言えよ!」
純「えー、あっちゃん、そんな見られたくないもんがあるのー?」
淳司「あったとしても、実家には残さないだろ普通……」
純「じゃあいいよね。それじゃ」
淳司「ああ……」
純「……あ、もし私の部屋に用があるなら、ちゃんとノックしてよ?」
淳司「ああわかってるよ、こんちくしょう!!」
第十一話「理不尽の圧倒」‐完‐
第十二話
‐純の部屋‐
純「やっぱりいいねえ3DSLLは」
梓「画面が大きいだけだと思ってたけど、実物見るとイメージ変わるね」
梓「でもそれお兄さんのなんでしょ?」
純「うん」
純「私のは安くなってすぐに買った、普通の3DSなんだよねえ……」
梓「それでもいいじゃん。あ、青い甲羅行ったよ」
純「そうかもしれないけど、やっぱ羨ましいじゃん。見事に当たったよこんちくしょう」
梓「私なんてどっちも持ってないし。コンピューターに抜かされてやんの、ぷぷっ」
純「梓はそれでいいかもだけど、私がそうじゃないし。そこの六位には黙っててもらおうか」
梓「じゃあ新しく買えばいいんじゃない?」
純「んー……でもなあ……」
純「……可愛い妹に免じて交換してやろう、とかいけるかな」
梓「いやいやいや!」
純「どうして!」
梓「いくら可愛かったとしても、これじゃね……」
純「くっ、女子力が足りないというのか……!」
梓「そこじゃない」
第十二話「検索ワード:遠慮 とは」‐完‐
第十三話
純「お、憂から電話だ……」
純「……憂ー! 会いたかったよー!」
梓「大げさな……」
純「そうかそうか、憂も同じ気持ちだったか。相思相愛ってやつ?」
梓「調子乗りすぎ」
純「うん、買ってきてくれたんだ。ありがと」
純「えっ、いいよ。私が取りに行くって。いやそうだけどさ」
純「んー……じゃあお言葉に甘えさせていただきますっ!」
純「じゃあねー」
梓「憂はなんて?」
純「“純ちゃんのことだから梓ちゃんを誘って、家で遊んでるだろうから、
私も家に遊びに行くよ〜。その時にシュークリームをもっていけば、一石二鳥でしょ?”だってさ」
梓「……察し良すぎない!?」
純「何を言う! 親友ならば、これしきのこと当然」
純「今だって、梓の思ってることが手に取るようにわかるよ」
梓「へえ、言ってみて」
純「ちょっと待っててね……」
梓「……」
純「ふむふむ……」
純「わかったよ、梓。梓は今……」
純「……私のこと信用してないね?」
梓「正解」
第十三話「不名誉な正解」‐完‐
第十四話
憂「お邪魔します」
純「いらっしゃい、憂」
憂「ここが純ちゃんの部屋? 思ったより片付いてるね」
純「梓にも同じようなこと言われた」
憂「……でもこの箱、なにが入ってるのかわかって入れてる?」
純「梓にも同じようなこと言われた」
憂「あ、だけど本棚はわりと片付いてるかもー」
純「梓にも同じようなこと言われた!」
梓「嘘つけ!!」
第十四話「劇的のアフターしか知らない人」‐完‐
第十五話
憂「はい、これが言われてたシュークリームだよ」
純「わ、本当にありがと!」
憂「梓ちゃんのぶんも買ってあるから、食べよ?」
梓「憂、ほんと準備いいね……」
憂「えへへ……」
純「それじゃ、皆さんご一緒に」
「いただきます!」
梓「……おいし! なにこれ、すっごい美味しい!」
純「でしょー?」
憂「純ちゃんのお墨付きだもんね〜」
純「もっと私を褒め称えるといいよ!」
梓「あんたを褒めるのは癪だけど、これを食べれたのも純のおかげだし……」
梓「ありがと、憂」
憂「どういたしまして」
純「あれれー?」
梓「嘘だよ。純もありがと」
純「ふふん、大したことじゃないさ」
憂「でも純ちゃん、よくあんなところにあるお店のシュークリーム知ってたね。
どこで知ったの?」
純「実はねー、これはあっちゃんがー……」
純「あっ」
梓「えっ?」
第十五話「本末転倒」‐完‐
第十六話
純「あわわわ……」
憂「どうしたの純ちゃん?」
純「……憂。いや梓でもいいけど」
純「どっちか今日、家に泊めさせてくれない?」
梓「ちょっと確認しないとわからないけど、どうしたのいきなり……」
純「緊急に避難の必要が出てきたといいますか、そのー……」
「おーい、純ー。入っていいかー?」
純「ひいっ!」
「純、あの子がシュークリーム持ってきてくれたんだろー?」
憂「純ちゃんのお兄さん?」
梓「あんたまさか……」
純「……ナチュラルに食べてしまった」
梓「馬鹿だ……」
純「だって三大欲求が不可抗力で、ナンセンスで!」
梓「意味が分からん」
憂「とりあえず正直に謝ろう? ねっ?」
純「うう……でもー……」
憂「純ちゃん」
純「わ、わかったよ……」
純「……開けるよ?」
梓「う、うん」
梓(なんで私まで緊張してるんだ)
純「……せーのっ」
純「あっちゃんごめんっ!」
淳司「誕生日おめでとう、純!」
純「……えっ?」
第十六話「サプライズの連続」‐完‐
第十七話
純「……これはどういう……」
憂「シュークリームのお店でね、美味しそうなケーキがあったんだ」
憂「だから買ってきたの」
純「憂……あっちゃん……」
淳司「まあ誕生日当日には実家にいないし……。ちょっと早めになったけど、これプレゼント」
純「嬉しい! あっちゃんありがとう!」
淳司「おうおう、喜んでくれたなら俺も嬉しいぞ」
梓「……なにか企んでるなら、私にも話してくれればいいのに」
憂「今日はお兄さんが祝う番なんだよ。私たちはまた後日にね」
梓「ふーん。それで、いつの間にお兄さんと話しつけてたの?」
憂「この部屋に来る前。廊下でお兄さんと会って、お話をしてたんだ。
そしたら渡すタイミングとかで悩んでて……」
憂「ケーキと一緒に渡しちゃおうってなったの」
梓「なるほどね」
憂「……それにしても、二人ともとっても幸せそう」
憂「え、そうかな?」
純「ねえあっちゃん、お礼に歌を聴かせてあげようか?」
淳司「いらねえって」
純「遠慮しなくてもいいのにー」
淳司「そんなことより、俺はあのシュークリームが食べたいな」
純「えっ」
淳司「えっ?」
淳司「いやだって買ってきてくれたんだろ、あの子が?」
憂「あ……」
純「……ねえ憂」
純「シュークリームはこのサプライズに含まれたものじゃ……」
憂「……ないよ?」
純「……」
梓「うわあ」
淳司「……お前、まさか」
純「……」
純「ねえ二人とも」
純「……どっちでもいいから、今日は泊めさせて?」
梓「はい解散!」
憂「じゃあね純ちゃん」
淳司「純、話がある」
純「誰か助けてえええええ!!」
第十七話「急転直下の誕生日」‐完‐
第十八話
‐梓の家‐
梓「ただいまー」
純母「あら梓ちゃん。お邪魔しました」
梓「あ、どうもです」
純母「純の様子はどうだった? 騒がしかったでしょ?」
梓「はい、まあ……」
梓「……あの、差し出がましいようですけど」
梓「帰りがてらシュークリームを買っていってあげてください」
純母「純が食べたがってた?」
梓「というよりはお兄さんが……」
純母「んー……よくわからないけれど、わかったわ」
梓「よ、よろしくお願いします」
梓(……はあ。なんでこんな気を遣わなくちゃいけないのやら)
梓母「お帰り、梓」
梓「ただいま。その箱は?」
梓母「鈴木さんのお母さんが置いて行ってくれたの。シュークリームだって」
梓「へえ……」
梓「……シュークリーム!?」
梓(しかもこの箱は……間違いない、今日憂が買ってきてくれたものと同じ……)
梓(……)
梓「……世界は広いようで狭くて、でもうまく回らないもんなんだなあ……」
梓母「なに言ってるの?」
梓「なんでもない。このシュークリーム美味しいよ」
梓母「知ってるんだ」
梓「うん。今日、皆で食べたら、とっても美味しかった」
≪純「すばらしきこの町と友とシュークリーム」≫‐ お し ま い ‐
あとがき
純ちゃんの誕生日は二期BDBOXの特典ブックレットで明らかになるって信じてます
最終更新:2014年04月08日 08:37